遅くてごめんなさい
どぞ
「はぁぁぁぁっ!」
セイバーの振るった横薙ぎの一閃。キャスターはそれを器用に剣の腹で受け流しながら、片方の剣をセイバーの首筋めがけて振るった。
「──!」
セイバーは体を反るようにしてそれを避け、キャスターから距離をとった。
「…なるほど、確かに貴殿は剣を振るうに値する腕の持ち主だ。それにそれは、才能ではなく貴殿による武練の賜物。キャスターには惜しい」
「…生前、厳しい師がいたもんでね。才能の無かった私に、剣というものを教えてもらった」
キャスターはフッと笑った。そして再び剣を構える。
「フッ…!」
キャスターが間合いを一気に詰め剣を振りかざすと、セイバーはそれを受け止めずに後退することでその一撃避けた。
「生憎、時間があまり無いものでね…!」
「そうですか…ならば剣を振りながら私の質問に答えてもらいます」
セイバーは剣を握り直すと、キャスターへと斬りかかった。
「何故…!私では王を救えない…!?」
ガキン、と鈍い音をたてながらキャスターの双剣はその一撃を受け止める。
「フン、愚問だな。むしろ私は、何故裏切りの騎士である君が、そうまでして彼女に固執するのか聞きたいものだ…!」
セイバーは弾かれた剣の軌道をそのままに再び剣を振るう。
「私の願いは、王にこの身を裁かれること…!」
キャスターは舌打ちをすると、腰を捻りながら左上からきた剣を受け流す。
「だが、今のようなあの王に裁かれることを私は望んだのではない…!」
セイバーはそのまま剣に力を籠める。
「何故、王があのような姿になってしまったのかは分からない…ただ…」
体勢の悪いキャスターはその重みに耐えきれず、大きくバランスを崩した。
「もしも…もしも、あの丘に…国の結末に絶望し、その身を悪に委ねたとしたならば…!」
セイバーは剣を振りかざす。
「元凶でもある私には、その事実に耐えきれない…!」
「……ッく!」
直撃は避けられたものの、セイバーの一撃はキャスターの左肩に傷を負わせた。
「…!キャスター…!」
アイリは一瞬遅れて、キャスターに治癒をかける。
「…すまない、アイリスフィール。だが、これ以上の魔術の行使は君の命に関わる」
すなわちキャスターは、これ以上は助けるなとアイリに言ったのだ。
「キャスター…」
キャスターはゆっくりと立ち上がると、再び剣を構えた。
「…なるほどな、つまりは自分のためという訳だ」
「……ッ!」
セイバーは駆け出した。そしてキャスターと剣戟を交わす。
「たしかにそうかもしれない…!たが、私が王に…!かつて誰もが理想とした王に戻ってほしいという望みに、偽りはない…!」
「フン…!そうかもな!だがそれも、結局は理想と名の変えたただの押し付けに過ぎん…!」
キャスターはそう言うと、受けていたセイバーの剣を左に委ね、右に持った剣をセイバーへと振りかざした。
「…何故です。貴殿こそ、なぜそこまで我らに…?」
セイバーは左手でキャスターの一撃を捉えるとそう言った。
「…一つ、良いことを教えてやろう」
「…?」
互いの剣が拮抗し合う中、キャスターは言った。
「騎士王があのような姿になったのは、君の言う『国の結末に絶望したから』などという理由ではない」
「な…」
「つまり君の考えは全てお門違いということだ…!」
キャスターはそういうと、セイバーの腹部を蹴り飛ばした。
「ッ!…ではなぜ…なぜ、王はあのような姿に…!」
セイバーは、崩れた体勢を立て直すと叫んだ。
キャスターは何かを考えるかのようにしてしばらく目を瞑り、そして瞼をゆっくりと開くと言った。
「…それはおそらく、未熟者であった私のせいなのだろう」
「「AAAALaLaLaLaLaie!!」」
征服王の咆哮とともに、数え切れないほどの軍勢が一斉に駆け出した。
「…数による暴力、か」
騎士王は構えていた剣を握り直した。瞬間、騎士王の身体中を膨大な魔力が駆け巡る。騎士王の周囲では砂嵐が巻き起こり、さながら騎士王を中心に竜巻が起こっているかのようだった。
「…くだらない。いいだろう、数だけでは覆すことの出来ない、本当の暴力を見せてやろう」
轟、という音をたてて、黒き聖剣が唸りをあげた。
「おい、ライダー…!あれって…!」
前方の騎士王を見て、ウェイバーは息を呑んだ。暴風の中心に、剣を構える騎士王。
「不味いって!…あんなのまともに喰らったら…ラ、ライダー…?」
ウェイバーの呼び掛けに応じることなく、そのまま馬を駆り続けるライダーに、ウェイバーは焦った。
騎士王のあの構えは、以前ギルガメッシュに放ったあの宝具の構えだ。いくらライダーでも、直撃を受ければ敗北は免れない。
それでもなお馬を駆り続けるライダーに、あるいは作戦でもあるのだろうか。
「──!!」
その時だった。騎士王の纏う魔力が、全て剣へと集まるのをウェイバーは感じた。
「ラ、ライダー!!」
「…征服王、その総てを打ち砕く」
騎士王はフッと笑うと、聖剣が黒き魔力を帯び巨大化する。
「──我が旭光に飲まれるがいい」
騎士王が、その巨大な暴力を掲げ、そして振りかざした。
「"約束された───勝利の剣""!!」
「どういう…ことですか」
セイバーは困惑していた。
「…騎士王は…いや、彼女の理想は、そんなことでは倒れない」
「…!!」
「あるとしたら、それは恐らく本当に覆すことの出来ない、何か外的要因のせいだろう」
キャスターはゆっくりとセイバーへ歩み寄る。
「それに俺は、心当たりがあるという訳だ」
「それは、なんだというのですか…?」
キャスターはフッと笑った。
「答えるつもりはない。これ以上は役者が多すぎるのでね」
「…そう、ですか」
セイバーは沈黙した。
「遅すぎた、とは思わないのかね」
「なに…?」
「生前彼女を救うどころか、彼女を結果的に裏切ることになった君が、死んで英霊となった今になって"王を救う"と考えている。それを君は、遅すぎたとは思わないのかね?」
セイバーは剣を構えた。それに対して、キャスターも同様に剣を構える。
「たしかに、おこがましい考えかもしれません。──ですが」
「…ッく!?」
セイバーは、キャスターとの間合いを一瞬で詰め、キャスターへと斬りかかっていた。
「──貴殿に、何が分かるというのだ!!」
セイバーの力任せの一撃は、キャスターの防御ごと弾き飛ばすには充分だった。
大きく吹っ飛ばされたキャスターは、塀に背中から衝突した。
「…やれやれ、手荒な騎士だ」
キャスターは口から血を吐き出すと、立ち上がった。
「…形として見せなくては、分からないか…」
セイバーは追い討ちをかけるように、キャスターへと駆け出した。
「─
キャスターは弓を投影すると、セイバーへと矢を放った。
「─
「これは…!!」
セイバーはそれを咄嗟に避けたが、足元に刺さった矢を見て、以前もこのようなことがあったことを思い出した。
「─
「この感覚は、一体…?」
アイリは、キャスターから今までとは違う魔力の流れを感じた。
「─
その時だった。キャスターを中心に、剣が突如として出現した。
「─
「こ、これは…!?」
広がり続ける剣の出現に、今まで沈黙していた雁夜も声をあげた。そして冷静さを取り戻したセイバーも、雁夜を庇うようにしてキャスターと相対する。
「─
誰もが、驚愕していた。
「─
──その、無数の剣と
「
──その、キャスターの世界に
お久しぶりです。枝豆です。
近頃なかなか執筆の時間が厳しくなっておりましてと、まずは言い訳です
遅くても2週間に一回は更新したいですね…
いきなりですがFateアニメ、やったー!やりましたね!
とか言っておきながらこれ(last night 書いてたんで小生、まだ視聴しておりませぬ汗
みーたーいー
話はさておき本編へ
キャスターの詠唱は、士郎のほうになっております。
理由はたくさんあるのですが、解釈は皆様にお任せ致します。
質問などあれば感想欄でお答えはいたしますので
それでは
追記
エミヤさんの台詞はランチャーさんのオマージュ