南賀ノ神社の白巫女   作:T・P・R

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4話 ☆

結局、家に帰った時にはすっかり真っ暗になってしまいました。

お姉ちゃん達は心配しているでしょうか?

 

そんなことを考えつつ私は鳥居をくぐります。

玄関ではありません、鳥居です。

 

南賀ノ神社(なかのじんじゃ)。

それが私の生家であり、つまり私は忍見習いであると同時に巫女見習いでもあるのでした。

 

「ただいま帰りましたなのですよ~」

 

「おお~帰ったか。遅かったから心配したよ~」

 

「コト聞いたよ。先生からラーメンご馳走になったって。良かったわね」

 

家族の皆が温かく―――後日知ったことなのですが、うちは一族の忍の家族において温かい家庭というのは極めつけに珍しいそうです―――本当に温かく迎えてくれました。

 

うちは一族の大人のほとんどは警務部隊という里の治安を維持する部署に所属しています。

忍びが起こす犯罪を取り締まれるのはさらに優秀な忍びだけだ、とのこと。

そんな環境において私の家族は数少ない例外にあたるそうで。

曾おじいさんくらいの代からずっと神社を祀っている家系なのだとか。

 

家長であり神主であるお父さん、うちはハクト。

お母さんの、うちはウヅキ。

長女であり巫女長の、うちはミハネ。

そして次女で末っ子の私こと、うちはコト。

 

計4人が私の家族です。

 

ちなみに私以外全員黒髪で、白髪は私1人だけです。

曾お爺ちゃんの隔世遺伝なのだそうです……一時、養子なんじゃないかと本気で心配したこともありましたが、今はそんなことはありません。

色にとらわれず、目つきとか顔つきを比べたらちゃんと面影がありますからね。

 

なんというか、うちは一族のほとんどが鋭い目つきのクールな空気をまとっているのに対し、うちの家族はなんか緩いうえに温いんです。

目つきはもちろんのこと雰囲気が。

ゆるゆるです。

ふわふわです。

合わせてゆるふわです。

 

どこまでも例外的です。

開眼した写輪眼が可愛らしく見えるうちは一族なんて集落全部探してもうちだけですよ。

 

そんな家族に育ったからなんでしょうね。

私が忍術を戦闘以外に使っちゃおうなどと思い至ったのは。

他の親戚もみんなこんな風だったらなぁ。

 

最近のうちは一族は鋭いを通り越してなんか怖いんですよ。

ピリピリしています。

ご近所さんのシスイお兄ちゃんも最近見かけないし、私の話を家族以外で唯一真面目に聞いてくれたイタチお兄ちゃん(サスケ君の実のお兄さんです。弟と大違いです)まで雰囲気が刺々しく…本当にどうしたんでしょうねうちの一族は。

 

家族が例外的にまったりしててよかったですよ。

一家団欒万歳です。

 

「いいなぁ、ラーメン。久しく食べてないよ」

 

「食べに行けばいいじゃないですか? 別に高いわけでもないし」

 

お父さんの口から洩れたそんな一言に私は何気なく応えます。

和む~

 

「いや、お金の問題じゃなくてな。仮にも神社の神主が一楽の屋台に通ったりしたら……いろいろとあれだろ?」

 

察しろよ、とお父さん。

言ってることは分かりませんでしたが、言いたいことは理解しました。

我が父ながら小さい…けど、その小ささが心地よい。

 

「別に誰も気にしないと思うけどな~ 祀ってる神様やご先祖様もそんなにお固くないでしょ?」

 

そう反論したのはミハネお姉ちゃん。

それでいいのか巫女長?

いや、私も巫女見習いの身でありながら問題児筆頭でした。

それでもバチが当たらないあたり神様の寛大さに感謝です。

 

「そういえば御先祖様はともかく、祀っている神様はいったい何の神様なんですか?」

 

「あら、そういえば私も聞いたことがありませんね」

 

お母さんものほほんと首をかしげています。

 

南賀ノ神社が祀っているのは、大きく分けて2種類、いや2柱です。

1つはうちは一族の御先祖様。

そしてもう1つは何やら物々しい名前のついた神様方です。

 

イザナギ、イザナミ、アマテラス、スサノオ、ツクヨミ、カムイ、アマノウズメ、オモイカネ、ヒトコトヌシ、コトアマツカミ、カグツチ、マガツヒ、タケミカヅチ……

 

とりあえず思いつく限り名前を列挙しただけでもこれだけいます。

聞けば、全部で八百万柱いるらしいとのこと。

記憶力にはそれなりに自信はあるのですが、さすがに覚えきれません。

 

とりあえず名前を聞く限り何やら凄そうなのは分かるのですが、具体的に何がどう凄いのか聞かされていないので私にはさっぱりです。

 

「実は父さんも知らないんだ」

 

「知らないんですか!?」

 

神主なのに?

…んなわけないですね、おそらくこれはあれです。

巫女見習いには聞かせられない企業秘密とかそういうのです。

 

「詳しいことは言えな…分からないが、なんでもうちは一族の中でも特別な力に目覚めた、要するに選ばれた人間だけがその神様達と会えるらしい」

 

今「言えない」って言いかけましたね?

迂闊すぎますお父様。

とりあえず気づかないふりをするのが吉ですね。

 

「選ばれた人しか会えない…人見知りなのですかね?」

 

「はっはっは、かもな~」

 

そういって朗らかに笑って誤魔化すお父さん。

そして誤魔化されてあげる私。

ある意味優しい親子のやりとりと言えなくもないです。

 

「うちはの特別な力って写輪眼のことかしらね?」

 

そんな父娘のやり取りの傍ら、のほほんと首をかしげるお母さん。

この感じ、どうやらマジで何も知らないっぽいです。

つまり、アマテラス様とかツクヨミ様の正体を知ってるのはお父さんだけ…じゃない?

なんか姉も知ってるっぽい気配なんですけどどういうこと?

 

「すると、開眼した人はみんな神様に会ってるってことでしょうか?」

 

「いや、そんな話聞いたことないよ。つうか私も写輪眼使えるけど見たことないし」

 

息をするようにさらっと嘘を―――そう、嘘です、私にはわかります―――つくお姉ちゃん。

 

「僕も見たことがないな。ただの写輪眼じゃない、もっと特別な写輪眼じゃないと駄目なのかもな」

 

「そんな凄い写輪眼じゃないと映らないってことは、よっぽど影が薄いのかしら?」

 

「それかやっぱりものすごい人見知りとか…」

 

「かもな~」

 

はっはっは、と笑い合う家族一同。

ひょっとして私たち実はとんでもなく罰当たりな会話をしているのかもしれません。

それでいいのか?

 

……今日は特別念入りに拝んでおくことにしましょう。

何やら話せない秘密もいろいろあるみたいですしね。

 

というか私以外皆開眼しているんですよね、写輪眼。

忍術だろうが幻術だろうが体術だろうが、見ただけで一発で看破してしまうという夢みたいな瞳です。

一口に写輪眼といっても人によって催眠眼に特化していたり洞察眼に優れていたりと微妙に見え方が違うらしいですが。

噂によると木ノ葉の暗部には相手の術を真似―――すなわちコピーするのが得意な人がいるらしいのです。

いつか会ってみたいですね~

 

特別な写輪眼というのも興味深いです。

もしそんなものがあるのなら、いったいどんな風に世界が見えるのでしょう?

神様方には会えるのでしょうか?

 

「私も早く開眼したいな~写輪眼」

 

 

「「「絶対やめとけ(きなさい)」」」

 

 

「!?」

 

おおう、突然私以外真顔になりました。

何故に?

 




ようやく巫女らしい(?)話が出てきました。

緩いうちは一族がいてもいいじゃない。

原作では家族団欒の描写が驚くほど少ないですし。
天涯孤独だったり厳しい家庭だったり、そもそも登場しなかったり。

神社の設定もやはり捏造です。
忍寺や神社は登場するけど、具体的に何を祀ってるのか原作では語られていないんですよね。
飛段は無神論者だとなじっていましたが、ペインはそれに反論して火の意思、すなわち先祖の意思を信仰していると言いました。
なら南賀ノ神社で祀られているのも祖霊でしょう…たぶん。

あと家族の約一名の名前、最初はうちはイナバだったりするのはここだけの話です。



そしてこっそりイラスト追加。


【挿絵表示】


左からミハネ コト ウヅキ そして手前がハクトです。

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