南賀ノ神社の白巫女   作:T・P・R

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2話

そんなこんなで本日のアカデミーの授業も終わりました。

さて、さっさと帰れたらいいのになぁ……

 

私がなぜそんなことを考えているかというのかというと、さっさと帰れない状況にあるからです。

 

「うう~腹減ったってばよ~」

 

「ってか、なんで私まで……」

 

現在私は、ナルト君と共に落描きだらけになった顔岩を必死に綺麗にしています。

 

ナルト君だけならわかりますよ?

実際に落書きしたの彼ですし。

私関係ないじゃないですか。

 

「お前も火影様の家に侵入しただろ。その罰だ」

 

そう言ったのは見張りとして私たちに付き添っているうみのイルカ先生。

そういわれると反論できませんね。

 

そもそも、ナルト君の行動は規模こそ規格外ですが悪戯の範疇。

私のそれはれっきとした犯罪です。

 

そう考えると寛大な処置なのでしょう。

うちはのネームバリューと火影様の寛大さに感謝です。

 

「しかし、埒があきませんね」

 

ひたすら顔岩を布でこすりまくってるので、腕が痛いです。

というか、消すのにこれだけの労力と時間が必要だということは、当然これを描いた時も同じくらいの労力と時間を費やしたということで……ナルト君の悪戯に対する情熱にはほとほと勝てる気がしません。

 

と、言うわけで。

ここは忍者の力を有効活用するべきところでしょう。

 

私は懐から「水」と書かれた札を1枚取り出します。

 

「……? コトちゃんそれなんだってばよ?」

 

「秘密兵器です」

 

別に秘密にはしてませんし兵器でもないですが。

様式美というやつですね。

 

別に大したものではありません。

チャクラの基本性質を見極める『紙見式』に用いられる特殊なチャクラ紙をちょこっといじって術式を記し、それに水の性質をもったチャクラを練り込み、ため込んだものです。

いわばチャクラの貯蔵バッテリー。

起爆札の水属性バージョンです。

 

これがあれば術を発動するのにいちいち印を結んだりチャクラを練り込んだりしなくても即座に発動可能なのですよ~。

もっとも、札を用意するのがやたら面倒だというリスクはあるのですが今は関係ありませんね。

 

「符術・水遁水喇叭」

 

かざした札から勢いよく発射された水が景気よく顔岩の落描きを洗い流していきます。

汚物は消毒なのですよ~

 

「おおおおおお!」

 

ナルト君が目を輝かせています。

 

「優秀なのに……無駄遣いさえしなければ」

 

イルカ先生は頭を抱えています。

別にいいと思うんですけどね、掃除に忍術使うくらい。

 

「まあ、なにはともあれこれで綺麗になりましたね」

 

「助かったってばよコトちゃん!」

 

「いえいえ」

 

ちょっと得意げな気分に浸りつつ私はナルト君をやんわりと制します。

勝手に囮にした負い目もありましたしこのくらいしても構わないでしょう。

 

それに汚れが一瞬で落ちたのは私の術が凄かったから、というより落描きが比較的水に溶けやすかったからという理由が大きいですしね。

 

「ただの絵の具で助かりました。これがもしペンキとかだったらこうはいきませんでしたよ」

 

それこそ1日がかりで死ぬ気で擦りまくらなければならなくなるところでした。

 

……ナルト君? あなたはなぜ「その発想はなかったってばよ……」的な顔を浮かべてるのでしょうか?

やらないでくださいね? お願いしますよ?

 




戦闘シーンでもないのにオリジナル忍術登場です。
オリジナルなのは発動形式だけで術自体は原作でもありましたが。

主人公はいわゆる符術使いであり、巫術使いでもあります。
手を使って印を結ぶのではなく、札に印を書き記すことによって術を発動します。
原作でも白が使った片手印のようなオリジナルの忍術発動形式は他にもありそうな気がしたので。

原作でも絶対登場すると思ってたのに結局出てこなかったんですよね、符術使い。
陰陽遁はあるのに陰陽師はいない不思議。

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