南賀ノ神社の白巫女   作:T・P・R

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今回、あとがきが過去最多文字数です…
本編は平均よりちょっと少ないくらいです…


19話

私たちを担当するらしい先生は遅れることも早すぎることもなく時間ピッタリに迎えに来ました。

先生に連れられて私達第九班―――私ことうちはコトと空野カナタ、月光マイカゼさん―――はアカデミーの教室から抜け出します。

 

若い男の先生でした。

班員全員女子だったことから、なんとなく担当する上忍の先生も女性の方なんじゃないかな~と予想してたのですが、外れでしたね。

綺麗に整ったアーモンド形の目が印象的です。

というか、整いすぎてイマイチ表情が読めません、いえ顔は笑ってるんですが……目が笑ってないというか。

暗いわけでも冷たいわけでもないのですが…何考えているか読めません。

 

なんとなくイタチお兄さんと同じ空気を感じるのです。

これはあれですかね。

 

「あの……ひょっとして暗部出身だったりしますか?」

 

「……どうしてそう思うんだい?」

 

先生がこちらをじっと見つめて聞いてきます。

鋭いのではなく、吸い込まれそうになるような視線。

全身を余すところなく見透かされるようなこそばゆい感覚。

 

「いえ、なんか表情とか感情とかを消すのに慣れてる感じがしたので」

 

私は正直に答えました。

隠す必要もないですし、何よりこれから上司になって指導してくれる先生に隠し事とかしたくないですからね。

それにこの人、どことなく苦労人の気配もします。

なんとなく労わらなきゃいけないような気になっちゃうのですよ。

 

「……まさか初見で見透かされるとはね」

 

大した観察眼だ、と先生は苦笑し視線を緩めました。

否定はしないのですね。

 

「さすがだな。私は全然気づかなかったよ」

 

観察眼(それ)がコトの(数少ない)取り柄だからね」

 

マイカゼさんは感心したようですが、カナタは相変わらずつれないですね。

数少ないって聞こえてますよ?

少なくないです。

私にも取り柄はいっぱいあるんですからね! ……たぶん。

 

 

 

「そうだな、まずは何はともあれ自己紹介といこうか。君たちも僕のことが気になるだろうし、僕も君たちの事を書類の上でしか知らないからね」

 

アカデミーの教室から木ノ葉隠れの里にいくつもある演習場の1つに移動した私たちは改めてお互いに向き直りました。

 

「まずは言いだしっぺから。僕が君たち第九班を担当することになった『ヤマト』という。忍者登録番号は010992、その娘が言ったとおり元暗部で、好きなものはクルミで嫌いなものは油っぽいもの。趣味は建築関係の本を読むこと……こんなものかな? よろしく頼む」

 

担当の先生―――ヤマト先生は一息にそれだけのことを言ってのけました。

何というか、物凄い几帳面な人みたいですね。

迎えに来た時間もぴったりでしたし。

 

「これは私達も同じように自己紹介するべきですかね」

 

「いやでも私、好き嫌いや趣味はともかく忍者登録番号なんて覚えてないんだけど…」

 

「右に同じだ。コトは覚えているのか?」

 

「……そういえば私も知りませんでした」

 

今まで気にしたこともない数字でしたからね。

 

「ハハハ、君たちの登録番号はこちらで把握しているから問題ないよ」

 

「あ、そうですか」

 

さすが上忍なのです。

 

「代わりにそうだな、将来の夢でも答えてもらおうか」

 

「それはそれで答えにくいわね」

 

口をへの字にして言うカナタ。

恥ずかしがり屋さんですね。

 

「では私から。初めましてヤマト先生、うちはコトと言います。好きな食べ物は愛情籠った手料理! 嫌いな食べ物はインスタント食品です。趣味は料理と掃除と模様替えと創作と実験と研究と魔改造と……」

 

私は思いつく限りの趣味を指折り数えつつ片っ端から列挙しました。

 

「(相変わらず無駄に女子力高い…)」

 

「(これでお洒落があったら完璧だったな。後半の趣味は女子とは言い難いが…)」

 

外野が何やらつぶやいていますが無視です。

 

「…将来の夢はうちは一族の復興。とある人の汚名返上。そして……」

 

私はここでいったん言葉を切りました。

おなかにググッと力を込めて

 

「忍術を忍者以外の一般人に普及させることです!」

 

力強く宣言しました。

かつてこれを聞いた人たちは同級生も教師も極一部を除いて皆鼻で笑ってバカにしましたけど…ヤマト先生はどうでしょうか?

ヤマト先生はどこか呆けたような表情になって

 

「忍術を一般人に……それはあれかな? 世界中の人たちを忍者にするってことかな?」

 

「そうじゃないです。忍者は忍者、一般人はたとえ忍術を使えるようになっても一般人です」

 

そもそも勿体ないんですよ。

忍術を戦闘行為にしか使わないなんて。

 

それに私は証明したいんですよ。

例え忍者じゃなくても、立派に忍術を上手く扱えるということを!

 

「…フフ」

 

「む、何がおかしいんですかカナタ?」

 

「貴女ね……忍術を使えるようになった時点で一般人じゃなくてそれは忍者でしょ? 「なにおう!?」……ってコトに会う前の私なら言っていたでしょうね」

 

「……?」

 

どうにもカナタの言葉は含みがありすぎて真意がイマイチ解りづらいです。

言っていることは分かるけど、言いたいことが分からないというか。

結局、カナタは私を肯定したのか否定したのかどっちなんでしょう?

 

「…将来有望だけど将来が不安。なるほどそういう意味か」

 

「ヤマト先生?」

 

「いや、なんでもない。ただ、忍術を上手く扱えたからといってそれだけで忍者になれるわけじゃないというのは確かだね」

 

「うんうん」

 

ヤマト先生の言葉に私を見ながら深く首肯するカナタ。

何で私を見るんですかね?

 

「逆に言えば、忍術や幻術がほとんど使えなくても忍者になることはできるってことだね」

 

「そうなんですか?」

 

そっちは初耳なのです。

 

「実際に木ノ葉にもそういう人がいて、その人はほとんど体術のスキルだけで上忍にまで上り詰めたんだ」

 

体術一本槍ってことですか。

一口に忍者と言ってもいろんな人がいるんですね。

 

「さて、次は私の番かな? 改めまして初めまして、空野カナタです。好きなことは音楽鑑賞。嫌いなことは予想外のハプニング。趣味は……歌かな? 将来の夢は特にありません。強いて言うなら将来も今みたいに過ごせたらいいなと思います」

 

よろしくお願いします。

カナタはそう言ってペコリとお辞儀して自己紹介を終えました。

無難ですね。

 

「コトとずいぶん打ち解けている様子だけど、顔馴染みかい?」

 

「アカデミー入学当初からの縁です。ダメでしょうか?」

 

「いや、そんなことはない。下忍はチームワークが大事だからね、仲が良いことは良いことだよ」

 

「最後は私だな。月光マイカゼという。好きなことは運動。嫌いなことは勉強。趣味は剣術だ。物心ついた時から打ち込んでいる」

 

何というか、マイカゼさんは解りやすいくらいの体育会系ですね。

私とは本当に正反対なのです。

 

「将来の夢、というより今の目標は木ノ葉流剣術を極めることだ」

 

「木ノ葉流剣術?」

 

私は首をかしげました。

木ノ葉流体術『影舞葉』はアカデミーでも習いましたけど、木ノ葉の剣術流派は聞いたことがないのです。

 

「いや、確かにあまり有名ではないが木ノ葉にも剣術流派はあるよ」

 

ヤマト先生がすぐに補足してくれました。

 

「かつていた木ノ葉最強の剣士は空に漂う雲を一刀両断してみせたそうだ。『白い牙』の異名で他里から恐れられた大剣豪だよ」

 

かの有名な伝説の三忍にも匹敵したとされる英雄だとマイカゼさんが嬉しそうに語ります。

 

「雲を裂いたんですか!? それは凄いですね!」

 

そんなことはどんな忍術を駆使しても私には出来そうにないのです。

それを単なる剣技で……忍者にとって忍術が使えるかどうかは大した問題じゃないのだとしみじみ思います。

 

「でも、そんな凄い忍者ならどうしてアカデミーで習わなかったのかしら?」

 

カナタが首をひねって疑問を呈しました。

 

「……確かに」

 

伝説の三忍に匹敵しうるなら、アカデミーの教科書に名前が載ってしかるべきでしょう。

 

「まあ、別に有名じゃなくても凄い忍者はたくさんいるってことだ」

 

ヤマト先生がそう言ってこの話を打ち切りました。

なんか強引なような気がしないでもないような…

 

「とりあえず自己紹介は一通りすんだところで第九班の今後の予定、明日の演習について説明するよ。詳しくはプリントを見てくれ」

 

ヤマト先生はそう言って私たちにプリントを配ります。

またもや何か隠してますね、と私はそんなことを考えていたのですが、プリントの内容を見た瞬間そんなモヤモヤは全部まとめて吹っ飛びました。

 

「…………!?」

 

「なん…だと?」

 

「これって…?」

 

「理解したかな?」

 

私たちは驚愕の表情でヤマト先生を見つめます。

 

プリントの内容は信じがたいものでした。

新人下忍が班に分かれて最初にすることは任務ではなく演習であり、演習内容は担当上忍の裁量で決定され、その演習で見込みなしとみなされたら卒業が取り消しになるというのです。

しかもその脱落率が…

 

「どういうことですか? 脱落率66パーセント以上って…」

 

「そのままの意味だよ。脱落したら当然、アカデミーに逆戻りだ」

 

それじゃ、アカデミー卒業試験の意味が…

 

「アカデミーの卒業試験は忍術を下忍レベルに扱えるかどうかを審査するためのものだ。でも先ほど言っただろう。忍術を下忍レベルに扱えたからと言って即下忍になれるわけじゃない。コトの言葉を借りるなら、今の君たちは忍術を扱えるだけの一般人ってことだ」

 

むう、ぐうの音も出ないのです。

 

「で、でも脱落率66パーセントはいくらなんでも高すぎでは? これじゃ3人に1人しか下忍になれないってことに…」

 

マイカゼさんの言うとおりです。

アカデミーの卒業生は30名でしたから、割合で言えばその中で下忍になれるのはたったの10名ってことになっちゃうのですよ。

 

「そういうことだな。ちなみにその66パーセントというのは平均した数値だ」

 

ヤマト先生が補足するように付け加えます。

ということは合格者の枠は固定されているわけではないのですね。

つまり実際の合格者はもっと多いかもしれないし逆に少ないかもしれないということです。

極端な話をすれば30名全員が狭き門を潜り抜けて下忍になるということもありえなくは……と、私がそんな楽観的なことを考えていると、

 

「すみませんヤマト先生。1つ質問良いですか?」

 

「構わないよ。1つと言わずいくつでも」

 

カナタは眉間にしわを寄せながらヤマト先生に質問しました。

 

「……去年も同じ……かどうかはさておき、似たような演習はしたんですよね? 参考までに聞きたいんですが、去年の合格者の人数は?」

 

「3人だそうだ」

 

「「「…………」」」

 

こ、これはマジでヤバいかもしれません。

 

「質問はもうないかな? それじゃ、明日9時に忍具一式を持ってこの演習場に集合。当たり前だけど遅れないようにね」

 

ヤマト先生はそう言って印を組むと文字通りその場から姿を消しました。

毎度お馴染みの木ノ葉流の瞬身の術……いや、今はそんなことよりも…

 

「……」

 

「…………」

 

「………………」

 

「………………帰って、明日に備えて休む?」

 

「いや、ここは明日に備えて特訓をするべきでは?」

 

「演習は此処でするのでしたよね? 明日に備えて下見をするのはどうですか?」

 

「「「…………」」」

 

どうしましょう?

どれが正解でしょう?

 




ヤマト隊長の額当ての形って、実は扉間様と同じなんですよね。
親戚はないにしてもそれなりに縁はある?
因子を植えつけられる前から実は土台はあったのかもです。

主要キャラなのに実は単行本の表紙に一度も載っていません…影の薄いヤマトに幸あれ。
グルグル仮面の下はヤマトだと信じています。

あと、木ノ葉の白い牙についての設定も妄想です。
チャクラ刀を用いたとのことですが、カカシが外伝で使っていたあれは見た感じ脇差、自害で使用したものではないかと考察します。
切腹で果てるっていかにも侍っぽいと感じました。
血継限界などの血筋に頼らない強者って、ワンピースで言えば悪魔の実を食べないで能力者と渡り合うようなものですよね。
息子が雷切ったんですから、その父親は雲くらい切ってもらわないと…サクモって名前ですし。

原作では合格者は9名で固定ですが、それだと物語がどうしても先行かない+前年度の下忍がガイ班しかいないのはオカシイってことになるので変えました。
実は木ノ葉モブの中にネジやリーと同期の下忍が6名もいるなんてことは……ないですよね?
実はとっくに死んでいるとかはもっと考えたくないです。


あと、このエピソードでオリキャラの忍者登録番号を発表しようとしたのですが断念しました。

というのも番号にこれといった法則性を見いだせなかったんです。
以下「登録番号―名前―誕生日―アカデミー卒業年齢―中忍昇格年齢―第一部終了時の年齢」で

012420―サイ―1125―不明―不明―15

012561―ロック・リー―1127―12―不明―14
012573―テンテン―0309―12―不明―14
012587―日向ネジ―0703―12―不明―14

012601―春野サクラ―0328―12―不明―13
012604―山中いの―0923―12―不明―13
012606―うちはサスケ―0723―12―不明―13
012607―うずまきナルト―1010―12―不明―13
012611―奈良シカマル―0922―12―12―13
012612―日向ヒナタ―1227―12―不明―13
012618―油女シノ―0123―12―不明―13
012620―犬塚キバ―0707―12―不明―13
012625―秋道チョウジ―0501―12―不明―13

登録番号の若い順ですが、これを見たらわかると思いますが、生年月日はまるで無関係であることが分かります。
そしてアカデミーの成績準でもない模様。
確かにサクラが同期でトップですが、主席のサスケとドべのナルトが隣り合ってる時点でこれもなしです。
卒業が確定した順かもと考えましたが、それなら飛び入りで合格したナルトが一番下にならないとおかしいですし…

そうなると、これはもう登録書を提出した順とかなのかもしれません。
生真面目なサクラは早々と書類と写真をそろえて提出、ナルトは合格嬉しさに午前中に(実際午後から木ノ葉丸とおいろけ特訓をするだけの時間はあったようですし)
のんびり屋、優柔不断、面倒くさがり組が下の方になってるわけですね。
しかし赤丸の散歩とかで早起きそうなキバが下の方なのが疑問ですが…

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