南賀ノ神社の白巫女   作:T・P・R

15 / 59
原作での定説「影分身チート説」に代わる新説として「おいろけの術最強説」を前話でとなえてみたわけですが、予想外に同意してくれる人が多くてびっくりです…

あと、今回イラストを描いてみました。


13話 ☆

そんなこんなで放課後。

私は落描きにより威厳も風格もなくなってしまった歴代火影様の顔岩を暗澹たる思いで見上げました。

うう、今度という今度はこうなるはずじゃなかったんですが…結局、今度もナルト君共々罰として顔岩の掃除なのです。

しかも今回はペンキです。

水遁による一発洗浄ができない以上、地道に擦って綺麗にするしかないのです。

正直、やってらんね~なのです。

 

あ~駄目ですねこういうの。

気持ちを切り替えないとです。

 

大きく息を吸って深呼吸……よし、大丈夫です。

私は気持ちを新たに落描きの攻略に取り掛かります。

 

しかしこの落描き、改めて見てみるとなんというか…

 

「ナルト君……腕、上げたのですね」

 

「あ、コトちゃんもそう思う? いや~照れるってばよ! 俺も実は今回結構自信作でさ、特にこのあたりアートっぽく決まったっていうかさ」

 

「ですね。作品に込められた拘りと熱い魂を感じるのですよ」

 

私は思わずうなりました。

全くナルト君は妙なところで多彩ですね。

前の悪戯の時は正真正銘子供の落描きでしかなかったはずなのですが…この上達ぶりは何なのでしょうか?

本当に忍びにならなくてもやっていけるような気がするのですよ。

 

…そんなことを考えてしまうと、今度は先とは別の意味で消しにくくなってしまいました。

 

「イルカ先生、これどうしても消さなきゃダメですか?」

 

「当たり前だ!」

 

「じゃあ、消す前にせめて記念写真を…」

 

「何の記念だ!? 却下だ却下! そんな写真を残してあまつさえ他里に出回ったりしたら木ノ葉の汚点だ!」

 

ぐぬぬ、芸術のなんたるかが分からない人はこれだから…

 

「まあ、仕方ないですね」

 

火影の顔に文字通りの意味で泥を塗る行為の記録なんてスキャンダルにしかならないでしょう。

ナルト君には是非とも違う場所で芸術活動をしてほしいところです。

 

「他のところって?」

 

「う~ん、例えばそうですね。火影様の顔がダメなら、自分の顔なんかいかがでしょう?」

 

それなら誰も文句は言いっこなしでしょう。

なんたって自分の顔なんですから。

 

ナルト君が感心するように唸って考え込んでます。

 

……ほとんど冗談のつもりだったんですが。

そういえば、ナルト君は火影になるのが夢でしたね。

ナルト君は未来の火影の顔にまで落描きする気のようです。

 

「こら、口じゃなくて手を動かせ。全部綺麗にするまで帰さんからな」

 

っと、イルカ先生に注意されてしまいました。

無駄話が過ぎたようですね。

 

「へっ、どうせ帰っても家に誰もいないし」

 

ナルト君が珍しくスレた様子で吐き捨てました。

 

 

ちなみに私もアパートで独り暮らしなのですが、1人ではないですね。

火影邸に居候してた時に懐かれたのか、火影様のお孫さんがかなりの頻度で遊びに来るのですよ。

小っちゃなナルト君を見てるようでカワユイのです。

今はどうしてますかね木ノ葉丸君。

 

 

「あ~、そうだな。お前等…」

 

そんな様子のナルト君を見て何を思ったのかイルカ先生は目をそらしながら

 

「掃除終わったら……ラーメン奢ってやる」

 

ナルト君の眼が一瞬で輝きを取り戻しました。

かく言う私も喜色満面なのです。

久しく食べてませんからね、ラーメン。

 

「イルカ先生大好きー!」

 

 

 

 

 

 

「そんなものあるわけ無い」と決めつけていたから今まで見つかりませんでしたが。

「ある」という前提で探してみると意外にあっさり見つかるものなのですね。

 

「『マダラの書』? 不思議物質『マダラ』について書かれた書物ってことか?」

 

「いや、話の流れからして忍術なんじゃない? だからこれは秘伝忍術奥義『マダラ』について書かれたもので…」

 

「ハッハッハどっちも大ハズレなのですよこのおバカさんたちめ~」

 

マダラは人名なのですよまったく。

一楽でのひと時から一晩たった次の日の翌朝、アカデミーの教室でトンチンカンな反応をするナルト君とカナタに思わず乾いた笑いがこぼれました。

アカデミーの歴史の授業にも出てくるビッグネームなんですから覚えて、もしくはもっと驚いてほしいものです。

 

 

 

事の始まりは前日の掃除が何とか終わった後の一楽です。

大盛りの味噌チャーシューメンを口に頬張ってハイテンションになったナルト君は改めて火影になると決意表明しました。

あれだけ動いてよくこんなに元気がありますね。

私はヘトヘトなのに。

ちなみに掃除した面積の割合は7割ナルト君、3割私です。

決して怠けたわけではありません。

一生懸命頑張ってこれです。

いわばこの数字はそのまま私とナルト君のスタミナの差なのです。

泣けてきます。

あれ、ネギラーメンなのに塩辛いですよ…

 

「あのさあのさ、コトちゃんは何かないの?」

 

「はい?」

 

「将来の夢とか」

 

ああそういうことですか。

そういえば話したことありませんでしたね。

 

「そうですね。夢と呼べるかどうかは分かりませんが、希望していることはあるのですよ」

 

私は改めてナルト君に「うちは復興」を語りました。

イタチお兄さんの無実も証明したいですね。

 

「俺も復興手伝うってばよ!」

 

「よろしくお願いします」

 

「ッブボハァ!?」

 

何故かイルカ先生が思いっきりラーメンを噴出しました。

 

「ケホッ、ケホッ」

 

「イルカ先生!? 急にどうしたんだってば…」

 

「だ、大丈夫ですか? はいお水」

 

「す、すまん……ところで、さっきの復興を手伝うって…………何でもない」

 

「「?」」

 

 

こんなよく分からないハプニングも織り交ぜつつ、バカな話をして盛り上がったり、真面目な話をして気を引き締めたりもしたりしました。

火影になるなら今よりもっと勉強と修行を頑張らないといけないとイルカ先生にたしなめられ、あるいは激励されたナルト君は勢いのままに修行修行と連呼しながら帰って行ったのが昨日のことです。

 

そして今日、貴方は本当に夜寝たのですかと聞きたくなるくらい昨日のテンションのままのナルト君が朝早くから私に開口一番

 

「一発で火影になれるような、なんかこう、すんごい忍術ってばないかな?」

 

朝の挨拶はもとよりその考えに至った過程すらすっ飛ばした発言でした。

 

真っ先に言うセリフがそれですか、というか他に言うことないのですか。

しかしぐいぐい詰め寄ってくるナルト君を「そんな術あるわけないのです!」と突っぱねることも出来ず、渋々ながらも過去の記憶をあさってみて

 

 

かつて発掘した書物『マダラの書』のことを思い出したのでした。

 

 

「もっとも、私がそう呼んでるだけで実際に『マダラの書』なんてタイトルが表紙に書かれているわけじゃありませんけどね」

 

「そうなんだ……で? 結局何なのこれ?」

 

「木ノ葉創始者の1人、うちはマダラの日誌…じゃないかと」

 

中の日付を見る限りどうやら木ノ葉創設以前から記されていたみたいなのです。

歴史的価値は計り知れません。

内容はまだ一国一里の隠れ里制度ができておらず、一族単位で争っていた時代の話が中心です。

森の千手一族…後の初代と二代目火影になる一族との対決が特に多いですかね。

 

ここまで説明してようやく凄さを理解したのかカナタは感嘆のため息をついて目を見開きました。

 

「なるほどね、要するにその書物にはナルト君の言う「一発で火影になれる凄い忍術」は書かれていないけれど…」

 

「はい、「歴代火影様が実際に戦場で使っていた凄い忍術」が記されているということなのです」

 

これなら多少はナルト君も満足してくれるのではないでしょうか…そう思い私はナルト君に期待を込めて向き直るのですが…

 

「つまり……どういうことだってばよ?」

 

はい、もう1度一から十まで説明するのでちゃんと聞いてくださいね~

しかし、こんな調子だと説明だけでアカデミーの朝の休み時間を食いつぶしてしまいそうです。

……私が言うのもなんですがこんなことしていて大丈夫なのですかね。

アカデミーの卒業試験も近いというのに。

 

 

―――そもそもこれを見つけた切っ掛けはサスケ君でした。

南賀ノ神社の本堂の奥から7番目の畳の裏に一族秘密の集会所への入り口があるということを教えてもらったのです。

 

この話を聞いて、実際に集会所の石板を見せてもらった時私は考えました。

 

 

 

7番目の畳の裏に何かあったということは、それ以外の畳の裏にも何かあるかもしれないということじゃないですか!

 

 

 

一族の秘密? 万華鏡写輪眼?

生憎と昔話に興味はないのです。

いえ、無いわけではないですが、今は過去よりも未来です。

 

そんなわけで私は、神社の畳という畳を片っ端から忍法・畳返し!

そんな文字通り足元から引っくり返すような大捜索の結果、出るわ出るわ今まで私の知らなかった忍具やら神具やら巻物やら書物やらが畳の下から壁の中から天井の裏からザックザクです。

 

よもや自分の生まれ育った家がこんな宝庫だったとは……いえ、むしろ宝庫というよりもはや鉱脈です。

探せば探すだけ何か出てきそうなのです。

しかし、これって裏を返せばそれだけ隠し事を抱え込んでいたということで…どんだけ秘密主義だったんでしょうかうちは一族は―――

 

 

説明を聞いたナルト君は理解したように首肯して

 

「つまり、それに書かれている術が使えるようになれば、俺は火影になれるんだな!?」

 

「あ~はいはいそういうことですよ」

 

私は説明を諦めました。

もうそれでいいや。

無力な私でごめんなさいナルト君。

 

「うちはマダラの書き残した記録…ってことは有名なあの『終末の谷の決闘』も載ってるのかしら?」

 

「いえ、それは載ってませんね」

 

初代火影様とマダラ…様が、木ノ葉を創設して、出奔するまでの記録ですから、それ以降の出来事である『終末の谷の決闘』は残念ながら記されていないのです…………ってちょっと待て。

 

「カナタ、うちはマダラ様のことを知ってたんじゃないですか!」

 

「今思い出したのよ」

 

意地悪です。

何か言ってやろうかとも思いましたがナルト君が期待の籠った眼で急かしてくるので勘弁してやりましょう。

 

「あのさあのさ、結局どんな術が出てくるんだってばよ?」

 

「あ、そうでしたね……まあ、読めばわかりますよ」

 

私はマダラの書をカナタとナルト君に手渡しましたが、カナタはページをパラパラと捲って

 

「文字が古すぎるし暗号化されて読めないんだけど?」

 

「大丈夫です。解読済みですから」

 

抜かりはないのですよ。

私はえへんと胸を張りましたが、カナタは呆れたように

 

「…よく読めたわね」

 

そこは素直に褒めてくれてもいい場面だと思いますよ?

私結構すごいことしてるはずなんだけどなぁ…

 

「そんなことどうでもいいから、早く教えてくれってばよ!」

 

酷いです…確かに火影様の術の凄さに比べたら私の偉業なんてちっぽけなものですけど…

 

まあ、出てくる忍術の大半は凄いだけで実力的にも実用的にも使えないと思いますが。

決して負け惜しみじゃありませんよ。

 

目に見える景色をまるごと火の海にしちゃう火遁とか仮に使えたとしても何に使えっていうんですかね。

焼畑とか?

 

別にいいんですけどね。

こういうのって何に使うかじゃなくて使えることが重要なところありますし。

火影様が強くて頼もしいに越したことはないのです。

 

結局、その日の私たちはアカデミーの授業そっちのけでマダラの書に記された忍術修行に明け暮れたのでした。

予想通りというか、当然というか、1つたりとも習得できませんでしたが。

いきなりこんな超高等忍術に手を出すのではなく、基礎からじっくりやるのが一番だということを改めて実感させられたのでした。

 

 

 

……よもやチャクラの説明から始めることになったのは予想外でしたけどね!

基礎からじっくりにも限度があるでしょう!?

というか変化の術教えたときにも私説明しましたよね!?

忘れるのが早すぎなのです!

イルカ先生泣いちゃいますよナルト君!

 

…なんだかとても不安になってしまいました。

余裕だと思ってましたけど、卒業試験大丈夫なのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

そんな漠然とした不安を抱えつつ、月日は過ぎて試験当日。

試験の課題である『分身の術』を、ナルト君は盛大に失敗して不合格になりました。

 




地味にナルトを魔改造。
戦闘方面ではなく、芸術方面で。
物語的には何の影響もありません。

原作で忍者の登録書類作成時、ナルトは自分の顔にものすごいペイントを施して登録写真に臨みました。
あの顔、なかなかどうして凄いと思います。
ポーズといい、表情といい、時と場所さえ選べば普通に賞賛されてたかも…

そんなわけで今回はいろんな意味でペイント回です。


【挿絵表示】


うちはコトです。
頭が白くて残念なのを除けば、割と正統派の巫女さんキャラです。
正統派すぎてナルト要素がほとんどない…
絵柄が違うのはあれです。
とある子供名探偵と大泥棒の孫が肩を並べているようなものだと思えば…無茶かな

巫女装束の下は札で一杯です。
某狩人漫画の旅団員のセリフじゃないですが、こういうヒラヒラした服は何かを隠し持つのに都合がいいです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。