僕とキリトとSAO   作:MUUK

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さて、毎度おなじみの話の進まなさです。
最初から最後まで会議たっぷりです。ビターです。
むしろ、まるまる飛ばしてしまっても構わないレベルです。
貴方はそれでも、本当によみますか?
しょうがないなあ。そんなに読みたくないのなら、土下座しますんで、読んで下さいorz
内容の無い第四話、開幕です。


第四話「ボス攻略会議」

このデスゲームが開始されてちょうど三十日目の今日。第一層迷宮区から最も近い街である『トールバーナ』の噴水広場で『ボス攻略会議』が行われる。

この時には既に、ゲームオーバー、つまり死亡者の数が千八百人を数えた。

一刻も早くこのゲームをクリアしなければならない、という焦燥感を抱えながら、地平線と第二層の底との間が橙に色付き始めた午後四時頃、ある男の声と共に攻略会議の幕が上がった。

 

「はーい! それじゃ、五分遅れたけどそろそろ始めさせてもらいます! みんな、もうちょっと前に……そこ、あと三歩こっちこようか!」

 

その声の主は、まごうこと無きイケメンだった。何故、こんなイケメンがネトゲ廃人共に混じってゲームなんかしてるんだろう。顔がイケメンでも性格がアレなんだろうか。そうだ。きっとそうに違いない。

その男は、噴水の縁に助走なしのジャンプで飛び乗った。中々の俊敏ステだ。

周囲からちょっとした歓声が上がる

チッ! あ、いやいや。僕は心が広いからね? この程度で人を妬んだりなんてしないよ?

でも、残念だったね! みたところ、この広場に女の子のプレイヤーはいない! 格好つけても虚しいだけだぞ!

…………何か、僕の方が虚しくなってきた。

そんな自問自答? を遮るように、男は次なる言葉を発した。

 

「今日は、オレの呼びかけに応じてくれてありがとう! 知ってる人もいると思うけど、改めて自己紹介しとくな! オレは『ディアベル』、職業は気持ち的に『ナイト』やってます!」

 

広場からドッと笑いが溢れる。

SAOに職業なんて無い。それでもナイトなんて公言できるとは、流石イケメン。ブサイクなら石を投げられるところだ。

いやむしろ、イケメンだからこそ石を投げたい。

そんな演説を聞いてるうちに、僕の中の天使と悪魔が姿を現した。

 

『けっ! 何がナイトだ。夜道を歩く時には気をつけやがれ!』

 

何言ってるのさ、僕の悪魔。今は夜なんて関係ないじゃないか。

 

『はぁ〜、やっぱり明久の頭は腐ってるとしか思えないな』

 

おっと、足が滑って天使を踏み潰してしまった。

 

『ぐえっ! 本当のことを言っただけなのに!』

 

何だこいつ、まだ息の根が止まって無かったのか。

天使の顔面を掴んで持ち上げる。そのまま勢い余ってディアベルの方へと投げつけてしまった。

断っておくが恣意ではない。ただ、何故か僕の右手が脊髄反射的なアレで投擲してしまっただけだ。

 

「痛っ!」

 

ディアベルが誰にも聞こえない程度で、だが確かにそう口を動かした。

アレ!? 僕の天使って実体あるの!?

 

「さて、こうして最前線で活動してる、言わばトッププレイヤーのみんなに集まってもらった理由は、言わずもがなだと思うけど……」

 

何事もなかったかのようにディアベルが演説を再開した。なかなか図太いな。

全体に印象づけるためか、噴水の周りを小さいストロークで周回するディアベル。

小気味良いのは、その軌道に僕の天使がいることだ。

 

『ぐえっ! ぐふっ! ぐほぁっ!』

 

蒼髪のナイトに踏まれる度に喘ぐ天使。

ちょっとくらい静かにできないものだろうか。

 

「今日、オレたちのパーティが、あの塔の最上階へ続く階段を発見した。つまり、明日か、遅くとも明後日には、ついに辿り着くってことだ。第一層の……ボス部屋に!」

 

力強く言い放つディアベル。

それと同時に僕の天使も力強く踏み潰される。

 

『ギィヤァァアアァッッ!!』

 

素晴らしい悲鳴だ。

ああ、ありがとうディアベル。思いがけないカタルシスだ。

その時、空から二人の(本物っぽい)天使が舞い降りてきた。

 

『うわっ! 凄い! 天使なんて初めて見た!』

 

じゃあお前は何なんだ。

 

『じゃあ、僕は先に逝くね、明久。まあ、お前程度じゃあと数日くらいでゲームオーバーだろうけど(笑)』

 

おっと。無意識に悪魔を天使に投げつけてしまった。

 

『なんでオレまでえぇぇええぇッ!!』

 

黒白の衝突音が、澄み渡る空に響いた。

激突し反発した二物体を本物天使がナイスキャッチ。

 

『ちょっと待て! オレはまだ死んでないぞ!』

『うるせぇ、悪魔! 煉獄に突き落とすぞ!』

 

恫喝する本物天使。

いやきっと、この世に天使などいないのだろう。

 

『観念しようよ、悪魔。僕らにはもう、明久の無駄な努力を天界から嘲笑うことしか出来ないないんだから……』

 

慈愛に満ちた顔でとんでもないことを言い放つ天使(クソヤロー)

とことん悪趣味だな、あの天使!

 

『とことん悪趣味だな、オマエ!』

 

おっと、悪魔と意見が被ってしまった。

もはや、僕の良心は悪魔だけなのかもしれない。

まあ、その悪魔も天国へと運ばれていってしまったワケだが。

 

『じゃあな、明久。オマエの特技なんてゲームくらいしか無いんだから、その無駄な特技活かして精々頑張りやがれ!』

 

あ、あれ? 悪魔ってこんなに良い奴だっけ?

おかしいな。目から汗が……。

 

『テメェ明久! いつか絶対にブチ殺してやる!』

 

天使の言葉で一瞬のうちに涙が引いた。

あの二人、絶対に配役が逆だと思うのは気のせいだろうか?

そうして、僕の分身二人は天に召されたのだった。

 

「一ヶ月。ここまで、一ヶ月もかかったけど、……それでも、オレたちは、示さなきゃならない。ボスを倒し、第二層に到達して、このデスゲームそのものもいつかきっとクリアできるんだってことを、始まりの街で待ってるみんなに伝えなきゃならない。それが、今この場所にいるオレたちトッププレイヤーの義務なんだ! そうだろ、みんな!」

 

広場に心地よく響くディアベルの演説。

おっと。そういえば、今は会議中だっけ。

広場全体から、ディアベルに惜しみない拍手が送られる。

かく言う僕も、いつしか蒼髪のイケメンに賛辞を送っていた。

そりゃだって、天使の息の根を止めてくれたのだから、好感度も上がるというものだ。

そうして、誰もがディアベルに賛同し、和やかな雰囲気が流れ出したと思われたその時。

 

「ちょお待ってんか、ナイトはん」

 

そんな荒々しい関西弁が広場に流れた。

勇み足で前方に出てきたのは、トゲトゲ頭の妙な男だった。

 

「そん前に、こいつだけは言わしてもらわんと、仲間ごっこはでけへんな」

 

髪型と同じく棘のある物言いの男は、我が物顔で噴水の上に陣取った。

広場中の視線が一身に突き刺さる。

だが、そんな物に臆するような男ではないようだ。

橙髪の不敵な男は、品定めでもするように聴衆を睨め回した。

 

「こいつっていうのは何かな? まあ何にせよ、意見は大歓迎さ。でも、発言するならいちおう名乗ってもらいたいな」

 

あくまで紳士なディアベルの発言。

相手の反応が予想外だったのか、単に気に入らない人種なのか、

 

「……………フン」

 

トゲトゲ頭は鼻を鳴らしてこう言った。

 

「わいは『キバオウ』ってもんや」

 

悪趣味な名前だな。僕の『ライト』とは、比べものにならないや。

キバオウは三白眼で睨みを効かせ、声高に叫んだ。

 

「こん中に、五人か十人、ワビぃ入れなあかん奴らがおるはずや」

 

ワビってなんだろう? ワサビの略称かな? だとすると、入れるっていうのは、鼻にワサビを突っ込まれたりするんだろうか?

やだなぁ。痛そうだ。

 

「ライト、バカの顔になってるぞ」

 

隣に踏ん反り返る赤髪のバカが、珍しく真顔でそんな事を宣った。

 

「バカの顔ってなんだよ!」

「違うな。ずっとなってたぞ」

「僕ずっとバカの顔してたの? 何それ恥ずかしい!」

「別に恥ずべき事じゃないだろ。生まれつきなんだから仕方ない」

「出産直後にバカの顔とか、明らかに怪生物じゃないか!」

「………きっと良い事ある」

「なんて希望的観測の入り混じった励まし方なんだ!」

「おおっ! ライト、お前希望的観測なんて言葉知ってたのか?」

 

この前秀吉が言ってたからね。秀吉との会話なら、一言一句忘れてない自信がある!

 

「嬉しいのか悲しいのか、よくわからんのう……」

「こいつっ! 直接脳内を!?」

「お主は顔に考えておることが出過ぎじゃ」

 

そんな会話を中断させたのは、ディアベルのよく通るシルキーボイスだった。

 

「詫び? 誰にだい?」

 

あっ、成る程、その詫びか。

 

「はっ、決まっとるやろ。今まで死んでいった二千人に、や。奴らが何もかんも独り占めしたから、一ヶ月で二千人も死んでしもたんや! せやろが!」

 

その一言が、広場の温度を凍らせた。

張り裂けるような窒息感。

まるで、僕だけがキバオウの言いたいことを理解できずに取り残されている気分だった。

 

「実は、その通りなんじゃが……」

 

僕をいじめて楽しむなんて、秀吉って以外とSだったんだね。

 

「お主がそう思うなら、それでいいんじゃが……。というかさっきから、はたから見るとワシが一方的に喋ってることになっとらんか?」

「……なっている」

 

秀吉が僕の心を読んじゃうから〜。

 

「ワシか? ワシが悪いのか?」

 

秀吉が落胆する最中、緊張の糸を絶ったのは冷え切った空気よりも冷ややかなディアベルの声音だった。

 

「キバオウさん。君の言う『奴ら』とはつまり元テスターの人たちのこと、かな?」

 

温和だったディアベルが、峻厳な睥睨でキバオウを貫く。

だが、それすらも意に介さず、キバオウは簡素に応答した。

 

「決まっとるやろ」

 

ドスの効いた声調には、心胆を掴む強さがあった。

キバオウは、大仰な動作で拳を振り上げ、明らかに一方的な意見を叩きつけた。

 

「ベータ上がりどもは、こんクソゲームが始まったその日にダッシュで始まりの街から消えよった」

 

あれ? その定義だと僕らもベータテスターになっちゃうよ?

 

「右も左も判らん九千何百人のビギナーを見捨てて、な。奴らはウマい狩場やらボロいクエストを独り占めして、自分らだけぽんぽん強うなって、その後もずーっと知らんぷりや。……こん中にもちょっとはおるはずやで、ベータ上がりっちゅうことを隠して、ボス攻略の仲間に入れてもらお考えてる小狡い奴らが。そいつらに土下座さして、溜め込んだ金やアイテムをこん作戦のために軒並み吐き出してもらわな、パーティメンバーとして命は預けられんし預かれんと、わいはそう言うとるんや!」

 

セリフが長かったから途中から聞いて無かった。

 

「もっかい言って欲しいな」

「ライト、声に出てるぞ」

 

何言ってるんだ、ユウは? 僕がそんなヘマおかすわけないじゃ……

 

「なんやと! 自分アホか! 耳腐っとんちゃうか?」

 

どうやら本当に声に出てたようだ。

初対面の人にアホ呼ばわりされちゃったよ……。よくあることだけど。

親の仇でも見るような目で僕を見据えるキバオウさん。

よし。逃げよう。

アレに目をつけられると後々マズイ。なんか、ババァ長と同じ臭いがする。

広場に背を向け、大腿筋に力を込めたその時。

 

「発言いいか?」

 

浅黒い肌をした偉丈夫が、右手を挙げながら僕とキバオウの間に割って入った。

その黒人の男性は僕を横目で見ながら、頬をほのかに歪ませ、小さくサムズアップしてみせた。

ありがとう! 黒人のおじさん!

 

「オレの名前はエギルだ。キバオウさん、あんたの言いたいことはつまり、元ベータテスターが面倒をみなかったからビギナーがたくさん死んだ、その責任を取って謝罪・賠償しろ、ということだな?」

「そ……そうや」

 

キバオウさんが少し後ずさりながらそう言った。

突然の乱入者に、反応を決めかねているらしい。

よかった。僕の件は忘れてくれたみたいだ。

 

「あいつらが見捨てへんかったら、死なずに済んだ二千人や! しかもただの二千人ちゃうで、ほとんど全部が、他のMMOじゃトップ張ってたベテランやったんやぞ!」

 

成る程、死んだ二千人は重度のネトゲ廃人だったのか……。あれ? 問題なくな……いや、さすがに不謹慎かな。どれだけ社会の底辺だったとしても、人が死んでることには変わりないんだから。

 

「アホテスター連中がちゃんと情報やらアイテムやら金やら分け合うとったら、今頃はここの十倍の人数が……ちゃう、今頃は二層やら三層まで突破できとったに違いないんや!」

「うーん、さすがにそれは無理じゃないかな」

「また自分か! どんだけワイにケンカ売ったら気が済むんじゃ!」

 

ヤバイ。また声に出てたみたいだ。

 

「まあまあ、抑えて、キバオウさん。あんたも皆の緊張をほぐすためにやってくれたんだろ?」

「そ、そうです……かね?」

 

いやぁ、いい人だなぁ、エギルさん。

確かに皆笑ってるような気が…………僕を見て。

 

「まあ、この場は許したろ。次言うたら承知せえへんぞ!」

 

これが最後通告だ、と言わんばかりのキバオウさん。

僕が言うのもなんだけど、それ、フラグだと思うな。

 

「話を戻すが、金やアイテムはともかく、情報はあったと思うぞ」

 

そう言って、エギルさんが腰のポーチから取り出したのは、僕らもお世話になった『アルゴの攻略本』だった。

 

「このガイドブック、あんただって貰っただろう。ホルンカやメダイの道具屋で無料配布してるんだからな」

 

確かにそうだったけど、なんで今そんな物を出したんだろう?

 

「貰たで。それが何や」

 

どうやら今度はキバオウさんにも分かってないらしい。

よかった、理解してないのが僕だけじゃなくて。

 

「このガイドは、オレが新しい村や町に着くと、必ず道具屋に置いてあった。あんたもそうだったろ。情報が早すぎる、とは思わなかったのかい」

「せやから、早かったら何やっちゅうんや!」

「こいつに載ってるモンスターやマップのデータを情報屋に提供したのは、元ベータテスターたち以外にはあり得ないってことだ」

 

うん。なるほど。確かにその通りだ。

これには返す言葉も無いのか、キバオウさんは悔しげに歯噛みした。

そして、ダメ押しするかの様にエギルさんは声を上げた。

 

「いいか、情報はあったんだ。なのに、たくさんの、プレイヤーが死んだ。その理由は、彼らがベテランのMMOプレイヤーだったからだとオレは考えている。このSAOを他のタイトルと同じ物差しで計り、引くべきポイントを見誤った。だが今は、その責任を追及してる場合じゃないだろ。オレたち自身がそうなるかどうか、それがこの会議で左右されるとオレは思ってるんだがな」

 

上手いな。

話題の展開と転換が絶妙だ。それでいて、キバオウが反論しそうなポイントをきちんと押さえている。

そしてそこに、これまで傍観していたディアベルが言葉を付け足した。

 

「キバオウさん、君の言うことも理解はできるよ。オレだって右も左もわからないフィールドを、何度も死にそうになりながらここまで辿り着いたわけだからさ。でも、そこの、エギルさんの言うとおり、今は前を見るべきだろ?元ベータテスターだって……いや、元テスターだからこそ、その戦力はボス攻略のために必要なものなんだ。彼らを排除して、結果攻略が失敗したら、何の意味もないじゃないか」

 

ここまでくれば、もはやキバオウに打つ手は無い。

二人のリーダーが呈した反証は、キバオウに扇動されたアンチベータテスターの空気を綺麗サッパリ消し去った。

 

「みんな、それぞれに思うところはあるだろうけど、今だけはこの第一層を突破するために力を合わせて欲しい。どうしても元テスターとは一緒に戦えない、って人は、残念だけど抜けてくれて構わないよ。ボス戦では、チームワークが何より大事だからさ」

 

当然ながら、そこで抜けようとする者はいなかった。

それを確認してから、ディアベルは最後に、尋ねるようにキバオウを見た。

見つめられたキバオウが目を逸らす。

小さく嘆息を漏らすと、伏せ目がちにキバオウは言った。

 

「…………ええわ、ここはあんさんに従うといたる。でもな、ボス戦が終わったら、きっちり白黒つけさしてもらうで」

 

キバオウの出現から終始険しかったディアベルは、やっと柔和な笑みを見せた。

そんな彼の歪んだ頰に、噴水からの水が風に乗ってほんの少し降りかかった。

それがこの議論の締め括りだった。




どうしよう……。感想に五話で優子さんを出すと断言してしまった……。
というわけでですね、次の投稿はアホ程長くなるものと予想されます。
文才の無い文章を長々と読み続けた時、貴方の精神力はまた一段と強くなるはずなので、読むことをオススメしますよ?

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