僕とキリトとSAO   作:MUUK

39 / 101
最近、いろんな本を読み漁ろうプロジェクトを個人的に開催しているのですが、余りにも雑多に読み過ぎて、自分の書き方を忘れる始末。
特に強烈だったのが西尾維新。独特ここに極まれり、ただし職業はサラリーマン、みたいなっ!
ダメだ……僕にはみここちゃんを再現出来ない……。
それと、山月記もなかなか面白かったですね。あとは、宮本輝さんも読んでいて楽しかったです。いや、楽しかったは違うかな……。
感想を書いていくと終わらなくなりそうなので、この辺で打ち止めにしておきます。
まあ、これからちょっとづつ、いろんな作家さんのいいトコをちょくちょく拝借して、スタイルを確立していこうかな、と思っております。


第三十九話「風林火山」

「せえやぁぁああッ!」

 

凛々しくも可愛らしい気合いと共に、メイスによる必殺の一撃が深々と巨大蟻の腹を穿った。

颯爽と現れ、苦戦していたMobを一撃で粉砕した美少女に、男達はただただ唖然としている。

そして、先程まで虫型モンスターを見る事さえ嫌がっていたアレックスが、普通に蟻に攻撃した事に僕もただただ唖然としていた。いや、じゃあさっきも攻撃しろよ。体術スキルだけで体力を削り切ることがどれだけ大変だと思っているんだ!一匹のモンスターに最低でも十分かかるんだぞ!ふざけるな!

いやまあ、僕の個人的な愚痴は置いておくとして、そろそろ助けてくれないかなあ!いま襲われたら、僕ホントに死んじゃうよ?

と思っていたら、いつの間にかデバフアイコンは消失していた。アレックスは、ここまで計算して僕を置いてけぼりにしたのだろうか?いや多分、というか絶対僕が麻痺状態である事を忘れていただけだろう。

取り敢えず立ち上がり、アレックスと男六人のむさ苦しいパーティの方へと少し駆け足で近づいて行く。

すると、立たせた赤髪に赤いバンダナというなんとも派手派手しい出で立ちの男が、手に持った曲刀を腰の鞘に差し込みながら、真剣な眼でアレックスを見て堂々と放言した。

 

「俺と結婚を前提にお付き合ゴバハァッ!」

 

顔面に膝蹴りをかましてやった。

 

「い、いきなり何しやがんだ、おめぇ!」

「さあ、アレックス。この男は金的を入れる対象だよ!」

 

アレックスはポカンとしている。きっと、色々とキャパオーバーなのだろう。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 

そう言ったのは、赤いバンダナの男ではなく、少し小太りな槍使いだった。

 

「いまアンタ、この娘の事、アレックスって言ったよな?アレックスってまさか……」

 

発言から鑑みるに、どうやらこのプレイヤーは、アレックスの事を知っているらしい。

まあ、知っていて何ら不思議は無いだろう。アレックスは攻略組の中でも、元ベーダテスターである事を堂々と公言している事もあいまって、相当に名の知れたプレイヤーだ。

そして、当のアレックスはというと、自分の名が通っているという事態に、アレックスは喜色満面の表情だ。まあ、基本的に目立ちたがりだからなあ。

 

「ふっふっふ……そうですっ!この私こそ、攻略組きってのメイサー、百戦錬磨のアレックスちゃんですっ☆」

 

目から星でも出そうなほどのウインクをすると同時に、ファンサービスとでも言うかのように魔法少女モノみたいなポーズをしながらアレックスは言った。しかも裏ピース付き。

くっ!これはあざとい!というか、アレックスが可愛くなければ完全に痛い!いや、可愛くても若干痛い!

 

「うおおぉぉーっ!まさかこんなとこでアレックスちゃんに会えるなんて!」

 

おっと。ガチだった。

すると、今まで黙っていた他の男も、いそいそと懐から、何故か見覚えのある写真を取り出した。

 

「す、すいません!この写真にサインして下さい!」

 

またもやガチだった。

 

「ちょっ!何で私の写真持ってるんですかっ!」

 

おお!アレックスのツッコミだ!これはレアだぞ!

まあ、何はともあれツッコミの対象である写真が、ムッツリ商会印である事は伏せておこう。全く、迂闊な事してくれるなよ。もし女性プレイヤーにバレて、ムッツリ商会が取り壊しになったらどうしてくれるんだ。

まあもしバレても、アレックスは笑って済ましてくれるだろう。ホントに怖いのは優子だ。彼女は、オレンジプレイヤーになる事を厭わずに攻撃してくるのだ。不用意な発言で、死の淵に立たされた事だって一度や二度じゃない。

想像以上に峻峭な性格だからなあ、優子って。そして何故か、僕と秀吉にだけ当たりが強い気がする。これは自意識過剰だろうか?

アインクラッド有数の美少女、優子に別の意味で思いを馳せていると、あの赤いバンダナの野武士ヅラした男が決まり悪そうに声をかけてきた。

 

「まあその、何つーか、さっきはすまねえな。ジョークのつもりで言ったんたが、まさかツレがいるとは思わなくてよ……」

 

あれ、思ってたより常識人だな。そうなると、いきなり顔面に膝蹴りは、ちょっと悪い事しちゃったかもな。

いや待て、仮に冗談であったとしても、紐なしバンジーくらいの刑罰に値する罪悪だ。女子に告白では飽き足らずプロポーズするなど、度し難いにも程がある。

もしこの場に、須川君以下FFF団の屈強な嫉妬心を持った強者共が同席していたならば、このバンダナの男は、公平公正なる異端審問の場において、極刑を通達されていた事だろう。

ああ、同志達よ。何故、君達はSAOにログインしていないんだい?君達にもこの不幸を分けてあげたいよ。

 

「ついでってのもなんなんだが、おりゃクラインってんだ。んで、こいつらは俺のギルドの風林火山のメンバーだ。よろしく!」

 

と、いきなり自己紹介を始めたバンダナ男改めクライン。幾らいけすかない野郎だとしても、ここは礼儀として、僕も自己紹介した方が良いだろう。

 

「僕の名前はライトだよ。それと、もう知ってると思うけど、彼女はアレックス。こちらこそよろしく、クライン」

 

そう言うと、風林火山のメンバーは俄かに騒然とした。一体、何が彼らの琴線に触れたのだろうか。

 

「ライトってまさか……」

「だよな、やっぱり……」

 

なるほど、僕も攻略組の端くれだし、少しは名が売れているという事なのだろう。まあ、それはそれで悪い気はしないけど、ちょっと恥ずかしいな。

一体、僕はどのように思われているのだろうか。僕の特徴と言えば、体術スキルによる前衛支援だ。

となると、名前が知られる要因としては、素手で前衛に立つ男らしさ、とかだろうか?

そんな心持ちで、僕は風林火山の反応を待った。

 

「ああ、素手で最前線に挑んでるっていう、攻略組随一のバカだろ?」

 

穴があったら入りたい!くそ!名声に期待した僕がバカだった!

何故だ!何故そんな悪い方向ばかりに有名なんだ!

もう体術一本辞めようかな……。いやでもなあ……。もうちょっとで熟練度マスターできるしなあ……。でも、片手剣は熟練度百も無いし……。体術での戦闘スタイルも、結構確立出来てきたし……。

すると、クラインがリーダーらしく、僕の話題で盛り上がる風林火山のメンバーを一喝した。

 

「おい、おめぇら!こんなバカでも、一応は攻略組なんだぞ!表面上だけでも敬意を表しとけ!」

 

あれ?擁護されてる筈なのに、何故か激しく罵倒された気がする。まあ、気のせいだろ。

僕を擁護してくれたクラインは、少しの逡巡の後、僕の目をしっかりと見据えて言った。

 

「あのな、ライト。もし良かったらおれらとフレンドになってくんねえかな?攻略組のプレイヤーに、殆どフレンドがいなくってよぉ」

 

クラインに言われ、はたと気がつく。

そういえば、クラインなんて名前を聞いた為しが無い。ということは、きっと風林火山のメンバーは、この層からボス攻略に参加するのだろう。

そうなれば、攻略組にフレンドが居ないのも頷ける。

そして、ボス攻略において、フレンドが居ないという状況は、多少なりとも危険が生じる。

そう判断した僕は、快くクラインの希望に応える事にした。

 

「うん。それくらいならお安い御用だよ。いいよね、アレックス?」

 

そう確認を取る為に振り返ると、アレックスは首を横に降っている。そして彼女は、口パクでい・や・だと告げていた。

何でそんなに嫌なんだろう?僕はアレックスに近付き、小声で耳打ちした。

 

「どうしたの、アレックス?」

「私この人達苦手です」

「何で?良い人達だと思うけどなあ」

 

ノリ的な意味で。

 

「私のボケが通じません」

「フレンド申請送っておいたよ、クライン」

「ええっ!?酷いっ!私の意見全否定ですかっ!?」

 

それは意見じゃない。我儘である。

 

「おう。あんがとよ、ライト」

 

アレックスを無視しながら粛々と行われる遣り取り。

うーん。突っ込んであげた方が良いのだろうか?いやでもなあ、アレックスってツッコミ入れると調子に乗るタイプだし。

そう思っていると、アレックスも不承不承といった感じでシステムウィンドウを叩き始めた。

覚悟を決めたと言うべきか、ボケるのを辞めたと言うべきか。きっとどっちもだろう。

フレンド申請受理など一通りの操作を終えたらしいクラインが、メニューウィンドウから顔を上げながら言った。

 

「おめぇらのギルド、サーヴァンツってんだな。なかなか洒落た名前じゃねえか」

 

そう言われると、名付け親としては、鼻が高いと言うものだ。

いつも皆からバカにされてる分、ネーミングセンスぐらい褒められたってバチは当たらないだろう。

でもそういえば、ライトって名前も単純だってバカにされたんだっけ。きっとこの九ヶ月で僕のネーミングセンスも向上したのだろう。

思えば、もう九ヶ月も経ったのか。

九ヶ月で進めたのが二十五層というのは、多少落ち込まないでも無いが、まあ、全く進んでないよりはマシだろう。

それに、単純計算なら、三年後ぐらいには外に出られる筈だ。

……うーん。三年か……。結構気が遠くなってしまう。

それでも、もう四分の一なのだ。僕らは、着実に進んでいる。

レベル上げ。情報集め。ボス攻略。繰り返されてきたそれらは、ついに二十五回目に突入したのだ。

そう考えると、少しだけ拳に力が入る。そして頬が緩んでしまう。

こうして積み重ねられた数字が、僕の自信に、そして希望に繋がっているのだ。

いや、僕だけでは無い。二十五という『結果』は、アインクラッド全体の希望でもあるのだ。

このデスゲームに囚われた時、誰もが己の不運に絶望した。百層という、圧倒的なまでの数字に絶望した。

それでも、プレイヤー達は希望を捨てなかった。

ゲームクリアの為に立ち上がったプレイヤー達は一人、また一人と増えて行き、いつしかそれは、攻略組と呼ばれるまでの大集団を形成した。

そして、攻略組にはなり切れていないものの、いつか攻略組に入ろう、少しでもゲームクリアに役立とうと志す中堅プレイヤー達も確かに存在した。

眼前の男、クラインもその中堅プレイヤーの一人なのだろう。いや、だった、というべきか。

クライン達風林火山のメンバーは、既に狩場を最前線へと移しているのだ。それならば、彼らは立派な攻略組の一員だ。

確かに、少しばかり危なっかしいところはあるものの、先程悲鳴を上げたシンジ(フレンド申請窓に記載してあったプレイヤーネームだ)も、大きく体力を損傷してはいるが、ゲージカラーはいまだグリーンのままだ。

つまりは、アレックスの助太刀が無くとも、風林火山のメンバーだけで、先程の大アリには十分対応できた、ということなのだろう。

何故か感慨深くなってしまっている僕の気を知ってか知らずか、クラインはリーダーらしい精悍な面持ちで、風林火山のメンバーと何かを話している。

その姿に、何故か僕は、憧憬してしまった。

彼の佇まいの中に、僕には存在し得ない物が在る気がした。

自分でもよく分からない感情に戸惑ってしまう。いやむしろ、僕のどこからこんな感情が湧き上がってきたんだ。

僕は、彼の何に憧れたというのだろう?

まあ、彼は彼、僕は僕だ。隣の芝は青く見えると言うし、そんなに気にする事でも無いだろう。

そんなこんなで、ぼおっとしながらクラインの面持ちを追っていると、僕の視線に気付いたらしいクラインが、嫌な笑みを見せながらこちらに接近してきた。

 

「なんだぁ、ライト。おれを熱い視線で見つめてくれちゃってよぉ。もしかしておめぇ、ソッチ系か?だったらすまねぇな。おりゃそういう趣味は無えんだわ」

「黙りやがれ、このアゴヒゲ野郎!」

 

アインクラッドに来てまで、そんな噂を流されてたまるか!この話題は全力で終わらせてやる!

 

「だ、ダメですっ!ライトさんを変な道へ連れこまないで下さいっ!ライトさんは健全に女の子が好きなんです?」

「そこは疑問形しちゃダメだ、アレックス!」

 

その掛け合いを見て、楽しげにケラケラと笑うクライン。こいつ、ぶっ殺してやろうか。

ユウと通ずるものをクラインから感じ取りながら、僕は一応の親切心でクラインに訊ねてみた。

 

「攻略組にフレンドが居ないのなら、僕らのギルドの皆ともフレンドになっておく?フレンドは多い方が心強いでしょ?」

「おお!そりゃありがてぇな!是非御言葉に甘えさせてもらおうか」

 

満面の笑みで言うクライン。感情表現が豊かだなあ。

でもなあ、うーん。よく考えると、別にここまでする義理なんて無いんだけどなあ。

不透明な使命感に突き動かされながら、半ば義務的に僕は風林火山に提案した。

 

「じゃあ、僕らのギルドホーム寄って行く?そろそろ皆、攻略から戻って来る頃だろうし」

「おう。そうさせてもらおうか。いいよな、おめぇら?」

 

クラインの言葉に風林火山のメンバーは、攻略組の一角らしい力強さで首肯した。

 

 

そして、ギルドホームに到着。道中は、ものの数分である。

その理由は簡潔明瞭。サーヴァンツのギルドホームは、最前線である二十五層に構えられているからだ。

さらに穿てば、僕らの本拠地は、未だ賃貸だ。

その理由も簡潔明瞭。メンバー全員が納得する物件に出逢えていないのだ。

だからこそいまのサーヴァンツは、攻略が進む度、住まいを最前線に移しているのである。

まあ、そんな事はこの際どうでも良い。今重要なのは、こんなむさ苦しい男集団を連れ帰って来て、それをどう説明したかだ。

ノリと勢いでギルドホームに誘ってみたのはいいものの、よくよく考えると、ここまでする義理は全く持って皆無なのだ。

いやホント、何でこんな事になってしまったのだろう。

まあ、ここまで来て後戻りなど出来るまい。元々、ノリと勢いで始めた事だ。なら、最後までノリと勢いを貫き通すとしよう。

そして僕は、ドアの引き手に手を掛ける。ええい!ままよ!

 

「たっだいまーーー!」

 

おばあちゃんが言っていた。挨拶を元気にすれば、大抵の事は笑って流してくれるのだと!

 

「おう。おかえり、ライ……ブファッ!」

 

僕を迎え入れようとしたキリトは、何故か盛大に飲みかけのコーヒーをぶっ放した。

いきなりどうしたんだろうか。その疑問は、数瞬と経たずに解明された。

 

「な、き、キリト!?なんでおめぇがこんなトコにいやがんだ?」

「く、クライン、お前こそ、なんでこんな処に!?」

 

取り敢えず会話から読み取れることとしては、どうやら二人は知り合いらしい。




クラインって、どんな喋り方でしたっけ?
ぶっつけ的に想像だけで書いてみたんですが、もし違和感ぎあれば、ご指摘して頂ければ幸いです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。