僕とキリトとSAO   作:MUUK

19 / 101
最近気づきました。前書きを後に書いているという事実に!
というわけで、今回は前書きを前書きしてみたよ!

ガッツリボス戦第十九話、開始ですっ!


第十九話「儚き剣のロンドーXII」

ボス攻略集団全員の視線が一つの方向へと集約される。

 

「……なんで鍛冶屋がこんなとこに居るんだ?」

 

そんな声が何処からか上がる。それは、もっともな疑問だ。事情を知らなければ。

その時僕は、嬉しいような、気恥ずかしいような、よくわからない感情が心の裡からふつふつと湧き上がるのを感じていた。

自然と広角がつり上がる。

彼は、あるソードスキルを獲得しようとしていた。それに必要なのは、特定の二つのスキルを習得していること。その二つとは即ち、投剣スキル、そして、体術スキルだったのだ。つまりネズハは、僕らと同じように三日弱で岩砕きクエストをクリアして、さらに単独で迷宮区を登ってきたのだ。

 

「にしても……カッコつけ過ぎだよなあ……」

 

ヒーローは遅れて登場する。そんな世界の常道に倣ったネズハの参戦に少しだけ嫉妬してしまう。

 

「ネ…………」

 

その時、ブレイブスのリーダー、オルランドは、数日の間連絡が取れなかった仲間の名を呼ぼうとしたが、それ自体をネズハ自身が遮った。

 

「僕がギリギリまでボスを引きつけます!その間に態勢を立て直してください!」

 

三日前までの卑屈な彼は何処へ行ったのか。今の彼は、言葉の節々に爽やかな自信が感じられた。

それを聞いて我に返った僕らは、麻痺を受けなかった人が、麻痺を受けたプレイヤーを壁際まで運ぶという作業を開始した。

ちなみに、僕とムッツリーニを運んでくれたのは、アレックスだった。

 

「ライトさん!貴方速いのに、何で当たっちゃってるんですかっ!」

「逆に君は、僕のすぐ後ろを走ってたはずなのに何で当たってないのかな?」

「え?そりゃ、さらに私のすぐ後ろにいたムッツリーニさんの影に隠れて……」

「ムッツリーニを盾にしたのか!?そうか、そうなんだな!?」

「あう……ごめんなさい……」

「いや、死なない程度になら幾らでも盾にしてくれて構わないよ」

「あっ!はい!じゃあそうさせてもらいますっ!」

「…………解せぬ」

 

視線をネズハに戻すと、アステリオス王のファーストアタックを取ったネズハに、ユウからターゲットカーソルが移っていた。

しかし、アステリオス王の歩行速度は鈍重の一言だった。この速さなら、一人でタゲを取り続けることも可能だろう。

しかし、そんな速度などものともしない必殺技がボスには備わっている。雷ブレスだ。

あれを初見で避けることは、ほぼ不可能に近い。

そう考えていた矢先、王が息を吸い、胸を膨らませていく。くっ!これはまずい!

 

「避けろ!」

 

レイドの誰かがそう叫んだ。しかし、その心配は杞憂に終わった。ネズハは、ボスがブレスの方向を確定したその瞬間に、右に大きく回避をとっていた。確実に、回避のタイミングを知っているとしか思えない動きだ。

 

「ブレスを吐く直前、ボスの目が光るンダ」

 

語尾の発音が特徴的な、聞き慣れた声が僕の肩に投げかけられた。そこに立っていたのは、アインクラッド随一の情報屋、鼠のアルゴだった。

 

ボス戦の後、アルゴから聞いた話だが、二層迷宮区近くの密林にとあるクエストが設定されているらしい。

それをクリアすれば、『アステリオス・ザ・トーラスキング』の情報が手に入ったらしい。

そのクエストをアルゴが発見し、クリアした頃にはもう、ボス攻略レイドは迷宮区の中に入ってしまっていたのだ。ダンジョン内にはメッセージを飛ばせない。だが、僕と同じくAGI極振りのアルゴ単独では、迷宮区を登れない。

そのとき、アルゴと同じように迷宮区前でウロウロしていたネズハと目が合っちゃったのだそうだ。

 

「いつまでへたり込んでンダ。麻痺、もう回復してるゾ」

 

アルゴに言われ、僕は、はっと自分のHPゲージを見ると、そこにはもう、デバフアイコンは存在しなかった。

そしてまずは、もっとも危険な状態にあるユウのもとへと駆けた。

 

「ユウ、大丈夫?」

「ああ、なんとかな……。後であの鍛冶屋に礼を言っておかねえとな」

「いや、今は鍛冶屋じゃないよ。彼は剣士だ。例え、持つ武器が遠隔武器だろうとね」

「おっ!なんだ?キリトの受け売りか?」

 

残念ながら、その通りだったりする。

そこで、ティアもユウを心配して駆け寄ってきた。

 

「……ユウ、怪我はない?」

「おう、お陰様で、まだイエローゾーンにも入ってねえよ」

「……良かった。本当に」

 

よく見ると、ティアの目尻には涙が溜まっていた。

うん。ユウが死ぬのが相当怖かったんだろうな。

そのとき、リンドの新しい指示が飛んだ。

 

「よし……攻撃、始めるぞ!レイド1、A隊D隊、レイド2、A隊、前進!」

 

どうやら攻撃は続行らしい。僕は、そしてユウもA隊だ。ならリンドの指示通り、ボスに相対しなきゃいけない。

ユウが、僕の背中をバシンと強く叩き、言った。

 

「行くか!」

 

ユウに小さく頷き返し、僕は一気にアステリオス王との距離を詰めた。

 

一巡目のPOTローテで僕が前線を離れたとき、ネズハの様子が気になり近寄ると

 

「やあっ!」

 

という気合いと共に、ネズハは投剣スキルのサブカテゴリに属する武器、チャクラムを高く舞い上がらせた。

チャクラム用スキルの習得に体術スキルが必要だったのは、雄二の召喚獣のようにメリケンサックのようにして殴るというスキルがあるせいなのだが、ネズハはそんなものを使う機会はめったにないだろう。

ちなみにあのチャクラムは、キリトがトーラス族のチャクラム使いを倒したときにドロップして持て余していたものらしい。

ネズハにとってのチャクラムのもっとも大きな利点は、何と言っても残弾数を気にせず使えることだろう。だって戻ってくるのだから。

王冠にヒットし、牛の王がノックバックする。チャクラムによる確実なノックバックがあるから、今はなんとか戦えているが、もしネズハがいなかったらと思うとぞっとする。

舞い戻ってきたチャクラムを手に取り、僕、キリト、アスナの三人を見ながら、嬉し泣きをして言った。

 

「夢、みたいです。僕が……僕が、ボス戦で、こんな……僕は大丈夫です!皆さんも、前線に加わって下さい!」

「解った。雷ブレスを優先してディレイで潰してくれ。任せたぞ!」

 

キリトが言うと、ネズハは僕らに力強く頷いて見せた。

 

それは、僕らレイド2のA隊と、キリト率いるB隊、そして、レジェンドブレイブスの五人が、アステリオスと鎬を削っていた時だった。

 

「せぇやああっ!」

 

ボスに突っ込んだ僕は、腰の捻転を全て腕の射出に伝え、渾身の閃打を繰り出した。

HPゲージが十ドットほど削れ、アステリオス王から、血のような真紅のライトエフェクトがほとばしる。

だか、王は大金槌の動きを止めようとせず、ユウ以下、がっちりとガードを固めるA隊へとソードスキルを奮う。

完全にガードしたにも拘らず、僕を除くA隊全員の体力は一割ほど削られてしまう。

そのときできた技後硬直のあるかないかもわからないような隙を、キリト達がチクチクと攻撃する。

だが、そんなもどかしい時間も終わりを告げた。ネズハのチャクラムが空を裂き、アステリオス・ザ・トーラスキングの王冠に命中したのだ。

 

「皆、今だ!」

 

というキリトのの声が谺するより一瞬早く、全員がボスへと一歩踏み出していた。

各々が各々の最大の技を繰り出す。

僕も、今使える内でもっとも攻撃力の高い技、体術スキルの回し蹴り『玉覇』を発動させた。

キリトとアスナが大きく飛翔し、シューティングスターとホリゾンタルを発動させた。狙いは当然、ボスの弱点たる王冠だ。

激しいライトエフェクトと金属音のサウンドエフェクトを撒き散らしながら、黒白の二剣士は冠を穿つ。

 

「ヴォォオオオァァアアァーーッッ!」

 

そんな轟音の叫びと共に、アインクラッド第二層フロアボス、アステリオス・ザ・トーラスキングは、その身を青白く光るポリゴンへと変化させ、爆散した。




次次回にはオリ話に入ると思われます。
や、やめろ!お前みたいに文才がない奴がオリ話なんて書いたら碌なことにならない!と思う方がいれば感想にお書き下さい!そうすれば取り止めますので!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。