インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~   作:filidh

99 / 120
第八十一話 『造りだすモノ』

ISスーツのままアリーナ内を探し歩く。

多分こっちの方にいると思うんだが……

しばらく歩いているとデュノア社長がそこに居た。

近くには恐らく警備のボディガードだろうか…3人いる。

そのうち一人は女性…おそらくデュノア社のパイロットだろうか…

とりあえず声をかけよう。

 

「お久しぶりです、デュノア社長。」

「…お前たち、しばらく席をはずせ。」

「「「っは。」」」

 

そういうと三人はかなり距離が離れた場所に向かった。

しかし……IS学園内でここまでボディガードをつける必要があるのだろうか…

さて、そこは無視して話を進めよう。

 

「完成したISはどのような評価を?」

「……先ほどの戦いを見る限りではかなりの高評価はもらえると思う…」

「……シャルロットについては?」

「そちらの方はフランス政府のほうで完全に黙認されている状態だ…一応はここから完全にフランスの代表候補生としてしっかりと認めさせるつもりだ…」

「反社長派のほうの動きは?」

「ほぼ終わりだろう。買収した会社の方がほぼ虫の息だ。」

「……問題は?」

「…あの子の今後だ。今のところIS学園に居る限りは大丈夫だろう…だがあの子が卒業すればあの子を守るものは…」

 

そう言って顔をしかめるデュノア社長。

本来ここで自分が後ろにつきたいのだろうがそれでは自分が父親面をしていることになる。

それがどうしても気に食わないんだろう。

 

「…とりあえずシャルロットのその後に関しては俺が後押ししますよ。」

「な!?だがそこまで君に!!」

「理由もありますし…約束もあるので。あ、社長との約束じゃないですよ?」

「……聞いてもいいか?」

「流石に秘密ですね、こればっかりは。」

「……」

 

まぁ…父親としては納得できないだろう。

だがこれに関して俺は話すつもりは無い。

どうしても知りたいのならば…

 

「どうしても知りたいならシャルロットと話してみてください。」

「っ!?しかし…」

「ええ、アイツもあなたとどう接すればいいかわからないと思いますよ?」

「……ならば私は関わるべきでは無い…」

「……あいつが聞きたいって言ったらどうしますか?」

「………応じれるはず無いだろうに…」

「応じることが出来るなら理由説明してもいいですよ?」

「っ!!……だが…」

「まぁ…応じる気になったら俺に電話してください、じゃあ。」

 

そう言って突き放すように社長と別れる……

今話している最中にもデュノア社長が悩んでいた事は十二分にわかる。

だが同時にシャルロットも悩んでいるのだ。

このときに俺はやはりシャルロットのことを優先していた…

う~ん……やはりヴァッシュのように誰にでも笑顔というのは難しい…

いまさらになって難しさを改めて自覚しため息をつく。

そう考えながらシャルロットの元に向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

さて…シャルロットの方に戻ると丁度シャルロットの方も調整が終わったらしい。

見るとシャルロットが普段つけているネックレス・トップの形が変っている。

ラファール・リヴァイヴ・カスタムIIの時はオレンジ色のリヴァイヴの盾に翼が生えたような感じだったが、現在のものはロザリオが4枚の翼に包まれた感じになっていた。

 

「お、待機状態も出来たんだ。」

「あ、ソウ。どこに行ってたの?」

「ちょっとね。後シャルロットのやる事は?」

 

俺がシャルロットに聞くとおっさんが反応する。

おっさんも少し考えた後俺に対して話し始めた。

その顔はかなり真面目なものだった。

 

「…風音、お前だけ残れ。」

「了解。じゃあシャルロット先に帰っといて。」

「え?待ってるよ?」

「ああ、嬢ちゃん、結構こいつの事借りるからよ、先に帰っときな。」

「……解りました。ではお先に失礼します。ソウまたね。」

「ああ、また。」

 

そう言ってシャルロットは出て行った。

さて、おっさんがここまでシャルロットを遠ざけるって事は何かあったのか?

それにおっさんは俺のことを風音と呼んだ…かなりのことだろう…

辺りを確認すると誰もいない…という事はそれほど大切な話しなのか?

 

「おっさん、何があった?」

「……お前のISについてだ。」

「うん?どうしたのさ。」

「……恐らくだがお前の機体は単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)が既に発動している。」

「はぁ?」

 

突然のおっさんの言葉につい声を漏らす。

いくらなんでもおかしすぎる。

単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)って言ったら問答無用の超能力みたいなものじゃないか。それに思い当たることといえば…

 

「あ、エネルギー兵器の無効化。」

「それだ、さらに…お前のISのエネルギー効率がおかしすぎる。」

「いや、僕エネルギー兵器も使ってないしエネルギー攻撃した記憶は…」

「だからと言って回復なんてするか。」

「………ごめん、もう一回言ってもらっていい?」

「お前の機体は嬢ちゃんのほうのシールドエネルギーを削り、そしてどういう仕組みかはわからないが自身の機体のエネルギーを回復していた。考えられるか?理論上お前の機体は敵さえ居れば戦い続けることが可能だ。」

 

なんという…確かにとんでも超能力だ。

いわば弾さえあればどんな時も戦い続けられる…いや待てよ…俺の頭の中にあるものが浮かんでくる。エネルギーだろうとなんだろうと飲み込み、エネルギーをほぼ無限に出し続ける…

おっさんは俺の考えなど関係無しに話し続ける。

 

「よく考えればはじめから気がつくべきだった。お前の機体はある意味この上なくお前に合わせてある。これを『最高状態の相性』といわずになんと言うんだ。さらにセカンドシフトもしている……おい、聴いてるか!?」

「……おっさんちょっと聞きたいんだけどさ…」

「ああ?どうした。」

「僕の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)ってエネルギー吸収だけだと思う?」

「………お前はどう思う?」

「……ごめん、具体的にいえないんだけど…まだ何かあるかもしれない。」

 

そういうとおっさんがため息をつく。

多分おっさんも何か思い当たるところがあるんだろう…

おっさんが口を開く。

 

「お前の機体のことが嬢ちゃんの烈風から少しわかってな…」

「どうだったの?」

「お前の機体が…機体内で銃弾を精製している可能性がある。」

「……」

 

この言葉で完全に理解する。

間違いない、エネルギーを…いや、どんなものであろうと撃ち消すように飲み込むように持って行く。さらにエネルギー回復…いや恐らく生成、そして弾薬の生成。

 

【プラント】だ……

プラント―――それは『造りだす』モノ

ヴァッシュのいたトライガンの世界において、水 紫外線 酸素そして微電力を与えることによって物理法則を超えた生産活動を行なう、本来はまるで電球のようなものの中に居る生体システムなのだ…

そして…ヴァッシュの正体でもある…こいつがもしそのままプラントとしても力があるとしたら……

なんということだろうか…仮に俺の機体がそこまでの機体だとするのなら既にISコア自体がプラントの本体になっててもおかしくは無い。

今考えるとこのISコアはプラントと共通点が多い。

人から生み出され、深層には独自の意識があるとされていて、自らの意思に関係なく人に使われる。

俺に影響されこうなったというのか?しかしそうなると…

 

「お前の機体に積み込んだはずの弾丸、撃ち出した弾丸、さらに戦いが終わったときの弾丸。これらすべてがおかしいことになっている。圧倒的に弾丸の数が増えてるんだ…」

「……」

「このことは…さすがに公開できん。圧倒的な性能、戦い続けることの出来る能力、そしてお前の強さ、全部かみ合ったら最悪本当にお前のISが封印される。」

「……このことを知ってるのは?」

「気がついてるのは今のところ俺だけだ。まぁ…いつばれてもおかしくは無いがな…」

 

とりあえずまだばれていないか…

しかしこれ下手したらISよりもっと危ないものがこの世界に産まれた事になりかねんぞ…

何よりこの…プラントが俺の兵器として使える…本気でゾッとする。

仮に暴走でもしたら…この世界に第二の『ロスト・ジュライ』を引き起こしかねない……

これは本気でこのISを使いこなせるようにならないと…

 

「おっさん助かった…後、このことについては…」

「ああ、データの方も改ざんしておく…風音…お前自分の機体に違和感とか感じてないか?」

「……違和感が無さ過ぎるのが違和感かな?」

「……そうか。話はそれだけだ。」

 

そう言っておっさんと別れ部屋をでる。

自身の体に感じた違和感が無性に大きくなっているのを感じた。

そのまま自分の部屋に戻りベットに横になる。

自身の待機状態のIS、ヴァッシュのサングラスを手に持ち眺める。

俺は現在プラントをもっているも同然だ…それも武器として使うような形でだ…

それについて俺のIS(・・・・)はどう思っているんだろうか…

ISの深層意識…仮にも自身が変っていくことをどう感じたのだろうか…聞けるものなら聞いてみたいものだな…

この際俺のISに語りかけるシステムかなんかは無いんだろうか?

いやそんなのあったらもう既に発表されてるか…

そんなことを考えているとふと眠くなりそのまま眠りに着く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

振動を感じ目を開けると俺の携帯が震えていた。

何かと思うとシャルロットからのメールだ。

見てみると…4件くらいきてる…

内容を見ると

 

『11:34 ソウ、栗城博士との会話終わったら連絡ください。』

           ↓

『12:32 まだ終わらない?ラウラと駅前に買い物いってきます。終わったら合流しない?』

           ↓

『13:06 先ほど栗城博士と会いました…どこにいるの?』

           ↓

『13:52               σ(≧┰≦ )ベー』

 

と言った感じだ。時間を見ると…まだ2時かまぁ行くか…

そう考え適当に着替え学園を出てモノレールに乗る。

合流は向こうについてからでいいか…

俺がそんなことを考えてモノレールから降り街につく。

さて…シャルロットと連絡でもとるかと考え携帯をいじる…すると近くで悲鳴が上がる。

反射的にそちらに走ると…銀行で何か起きているようだ。大量に人が逃げまわっている。

その後。銃声が聞こえる…陰に隠れて中の様子を見る。

 

「早く金をつめろ!!」

「撃たれたくなければ早くしろ!!」

 

三人の覆面をかぶった男たちが銃で一人の女性銀行員を脅してる……完全に銀行強盗だ。

他のところを見ても…人質にされている人はいないな…中に居るのは男3人女性3人いずれも銀行員…後は犯人だけか…

しかし、俺の今の持ってるものは携帯に財布くらいか……

さすがに生身相手にISを使うのは抵抗があるなぁ、まぁいざとなれば盾にはなるだろう……一応サングラスをそのままつけ顔がばれないようにする。

そのまま犯人の三人に声をかけながら銀行の中に飛び込むる。

 

「ストォォォォォォップ!!」

 

俺の声に反応して反射的に銃弾がこちらに撃たれるがかわす。

銃弾をかわされるのを見てぎょっとし隙を見せる。

 

「伏せて!!」

 

そのまま強盗の間を走り抜け銃を突きつけられていた銀行員を抱きかかえ机の陰に隠す。

周りを見る限り他に人質になりそうな人物は居ないし、全員物影に隠れた。

そのまま犯人に声をかける。

 

「なんだテメェ!!」

「戦うと損な男さ!!ちなみにこれ借りるよ!?」

 

そう言って男が腰に入れていた銃だけを隠れたまま相手に見せる。

これで強行的にはこちらに攻めて来ないだろう。

 

「な!?テメェ!!」

「オイ!!死にたくなければ邪魔するんじゃねぇ!!」

「そんな事言ったって…おじさんたちこそ今すぐ自首しなよ。」

 

とりあえず銀行の店員さんをさらに奥におす。

こちらに向けて銃弾が飛んでくる。

女性の悲鳴が上がる。

 

「ちょっと!?本当に止めなよ。警察も近くまで来てるし今なら罪も軽くなるよ?」

「うるせぇ!!さっさと出てこい!!」

 

再び俺の声がするほうに銃弾が飛んでくる。

この程度ならなれっちゃってるなぁ…感覚が麻痺している。

銃はそれほど精度がいいわけではなさそうだな…残りの銃弾は6発。

さてどうやってこれを治めようか…影から顔をだし相手を見る……よし、覚えた。

そのまま再び犯人に声をかける。

 

「おじさんたち…今すぐ自首するのと、痛い目見てつかまるの、どっちがいい?」

「テメェ…なめてるのか!?」

「……残念…交渉決裂か…」

 

そして机から飛び出しすばやく銃を撃つ。

5発の弾丸は正確に飛んでくれた。

すべて強盗の銃と肩に当たって壊れたはずだ。

 

「がぁぁぁぁ!!」

「っつ!!こいつ銃まで!?」

「いてぇぇぇぇ!!」

「動かないで、まだ弾丸は残ってるよ?」

 

 

銃を向けながら相手を見ると正確に銃と肩を撃ち貫けたみたいだ…急所もはずしてあるが…いまさらになって手が震えてきた。

外ではあれだな、サイレンが鳴り響いてるし…よし。とりあえず犯人を引き渡して後は終わりだな。その前にけが人は居ないのか?

 

「あの、この中にけが人とか居ませんか!?」

「い、いや…大丈夫だが…」

「他の方は!?」

 

と言って辺りを見渡すが…せいぜいすり傷程度だろう。

よかった…そう考え他の人質にされていた人に犯人を引っ張ってもらいながら外に行く。

俺が外に出た瞬間一斉に俺に銃が向けられる。まぁ…何が起こってるか解らないからなぁ…

申し訳なさげに両手を手を上げて警察官の方々に声をかける。

 

「あの~…犯人確保終わりました。」

 

そして後ろからぞろぞろと人質にされた人たちが列を成して現れた。

怪訝な顔をする警察官たちに申し訳なく思いながら笑いかけるしかなかったのであった。

あ、シャルロットにメール返信してなかった。

後で『ただいま警察署』でも送っておこう。

その後俺は警察官と共に警察署に任意同行させられた。

まぁ正確に言えば任意同行ではないのだが…俺のミスで外に出たときに銃を右手に握っていたのだ。

なるほど、だから俺が外に出たとき銃を向けられたのか…そりゃ犯人と間違えられるわ。

と言ってもすぐさま銀行内の人の証言で俺の嫌疑は晴れたのだが、今度は事情聴取のために連れて行かれることになったのだ。

その後しばらくしたら千冬さんが迎えに来てくれた。その時にはすでに事情聴取していた警官さんとは仲良くなっていいたが…

その光景を見るや否や千冬さんにため息をつかれた事だけは言っておこう。こうして俺はIS学園に戻ったのだった。

………その後メールに返信が一切無くかなりいじけたシャルロットの機嫌を直すのに苦労したのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

握り拳と握手はできない。

                                 ~ガンディー~


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。