インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~ 作:filidh
ということで書いてくだされば助かります。
「今日はここまでにしておこう。」
「「ありがとうございました!!」」
そう言って訓練が終わる。
さてこれは一夏の暴走対策なのかはわからないが……まぁ何かあるんだろう。
一夏と箒は訓練が終わった後すごい疲れて床に座り込む。
一方柳韻さんのほうはまったく疲れていないようだ。
汗一つかいてない……いや、結構動いてたように見えたんだけどなぁ…
まぁいいや、とりあえず千冬さんと話をしようと思うと柳韻さんと千冬さんが二人で話し始めた。
そのまま道場の外に出て話し始める。
まぁ仕方ないか。俺は一夏と箒のほうに向かう。
「お疲れ、二人とも。」
「あ~…手足が重い…久しぶりに全力で動いた気がする…」
「普段から動かないからこうなるんだ……」
「いや…それは違うだろ…」
「なんだと?」
「だったら箒も息切れしないだろ…先生俺たちそれぞれに全力出させたんだろうよ…」
「………確かに…」
と息を切らしながら話す一夏と箒。
笑いながらもそれを聞く。
この二人のお師匠さん『篠ノ之柳韻』さん…正直今の訓練だけでは底が見えなかった。
もしかしてこの人も篠ノ之束と同じように特異体質かと思ったんだが…とりあえず今わかることは底が見えないけど一夏と箒の二人が相手になっても勝てるだろうって所かな?
しばらく適当に三人で話していると千冬さんの声がする。
「奏、すまない来てもらってもいいか。」
「了解しました千冬さん。じゃ、ちょっと行ってくる。」
と俺はどう話そうか考えながら外に出る。
そこでは千冬さんと柳韻が真剣な顔をしていた。
「えっと…なんでしょう。」
「……お前の話をする前にこちらの方を先に話してもいいか?」
「どうぞ。」
「………お前から見たあの一夏の暴走…あれはどう感じた…」
「……ここで話してもいいのですか?」
と俺は柳韻さんのことをちらりと見る。
千冬さんはうなずいた後に話し始める。
「ああ、先生は……ある意味一番あれに詳しい。だが…」
「深くは聞きませんよ。」
「…すまない…」
「一夏の暴走ですか…正確に言うとあれって暴走じゃないんじゃないんですか?」
「……」
「理由はわかりませんが…一夏は…多分意識していないですが普通に戦っている時にもあの動きが少しずつできるようになってます。さっきの訓練中にも出来るようになってるところがちらほらありました。」
俺の言葉に千冬さんは何も言わない。
先ほどの剣道での試合中にも一夏はかなり戦い方が変ったように感じた。
まぁ…感じただけで違うかもしれないが。
「そこで体が覚えてる…って話ならなぜ暴走していた時の方が洗練された動きなのか……そこら辺はわかりませんがどちらかといったらこれは暴走ではなく…なんというか…元に戻ってるって感じですかね。変な話ですけど。」
「……そうか…」
「まぁ僕の感じた限りですけどね。」
「……」
「それで他には?」
「……すまないが話せない…」
「了解しました。」
そう言ってすんなり引き下がる。
そうすると千冬さんは俺の事を見て苦笑する。
「…お前は本当に私を信じているんだな…」
「?疑ってると思ったんですか。」
「自分のことを殺しかけた相手だぞ…」
「じゃあ僕が死んでから文句を言いましょう。よくも殺してくれたなぁって。」
そう言って茶化すように話かける。
まぁ…千冬さんの考えがわからないわけじゃないけど…
初めから俺はこの人を信じるって決めたんだ。
だったら最後の最後まで信じぬこう。
「…スイマセン先生。私は一夏と話してきます…その後に一夏の事は…」
「ああ、わかっている。」
と言って千冬さんが道場の中に入っていく。
……柳韻と二人きりになってしまった。
すごく気まずい。
「……君は何か…武術か何かを嗜んでいるのかい?」
「い、いえ。…ただ少し鍛えてるだけですよ。」
「…何か目的が?」
「あ~…目標ですね。どんな時でもどんな相手が敵でも逃げ回れるように。」
「……獲物は銃か…」
そういわれて俺は驚く。
俺この人の前で一度も銃について話した記憶はない…
「千冬さんか一夏から聞いたんですか?」
「いや…君の右手の人差し指…異常に皮が硬くなっているそれはそっとやちょっとじゃそうはならないだろう…さらに私が踏み込む時の体の反応も一番先に動いたのは右手でさらに指がわずかにだが動いた…」
「うわぁ…隠せてたと思ったんですが…」
「体に染み付くほどの鍛錬もしているわけか…その年齢でよくそこまで…」
「いや…まぁ…あまりほめないでくださいよ。」
そう言って話を打ち切ろうとする。
なにこの侍、産まれる時代を間違っちゃいませんか?
この人冗談通じるんだろうか…なんか下手な事をいったらそれを信じ込みそうで怖いな…
普通に会話をしよう…
「……千冬からある程度の話は聞いた。」
「…どの程度でしょう。」
「君が…私のもう一人の娘に殺されそうになっているところまで。」
うわぁ…情報漏らしすぎじゃないですか?千冬さん。
って言っても多分この人は口を割らないと思うけどな…むしろ一夏について何か知っているということは俺以上に関係者なのかもしれない……
って言うか…正確に言ったら俺が束に喧嘩を売ったからこうなったんだよなぁ……
「いや…あれは…」
「……それに関しては…私の教育のせいだ…本当に――」
「いえ…あれは僕にも非はありますし…って言うか…確実にこうなったのは俺の責任なんです。それは柳韻さんのせいじゃないですよ。」
「……だがあの子の代わりに……あやまらせてくれ…すまない…私も止められるのなら今すぐ止めるのだが……」
「あ~……やめましょうこの会話。どう考えても悪い方にしかいきません。」
ここでお互いに悪い方に考えたらまた千冬さんの時のようになりかねん…
自分のことを棚にあげた考えだが……それでも話続けるよりはマシだ。
「……そうか…後こんな事を頼めた義理じゃないが……箒と…一夏、千冬を頼む…」
「あ~……わかりました。でも俺が頼まれるのなんて一夏についてくらいだと思いますよ。箒は一夏と他の友人の方が適任ですし…千冬さんは俺のほうが迷惑かけてる状態なんで。」
「……そうか…」
と言って黙り込む柳韻さん…
うわぁ…会話がつづかねぇ…
って言うか共通の話題が少ないんだよ。
ここで俺が普段の箒についた話すのは違うだろうし、昔の一夏の事を聞くのもお門違いだ…
まぁしばらく黙っていようと思った時に千冬さんと箒が出てくる。
「スイマセン…先生お願いします。」
「ああ、…30分後にもう一度来てくれ。」
「お父さん…」
「箒…話すのはもう少し待ってくれ…時間はある……」
「……はい…」
と言って引き下がる箒。
こいつ…ほとんど家族と一緒にいれなかったんだよなぁ…
そう考えるとどこかやるせなくなってくる。
このISという発明品は何のために作られたんだろうか…
宇宙を目指すための船になるものだと思っていたが…
発明者の考えはわからず、その家族はバラバラになり、世界はかなり歪になった…
一体何のために造られたんだろうな…
と考えていると突然背中を引っ張られる。
「おお!?」
「風音、さっきから呼んでいるのが聞こえないのか?」
「ああ、スイマセン…ちょっと考え事をしてました。」
「……そうか…」
「で…どうします?どこで話しましょうか。」
「篠ノ之、お前は一度寮に戻れ…後で迎えに行く。」
「はい…わかりました…」
そう言って箒は寮の方へと歩いて行った。
さて……これからが本番だ…
アリーナの一室、わざわざここに来たって事は何かあるんだろうか…
そう考えていると千冬さんが話し出す。
「……デュノアの話は聞いたか?」
「はい、まぁ……あれはあいつが悪いですよ。」
「……すまない…あれは完全に私が油断していた…」
「まぁ…過ぎた事を話すのはやめましょう。最近気がついたんですけど僕がそういうことを話すと、ろくなことにならないんですよ。」
と大げさにため息をついた後、そう言って笑いながら話を進める。
今話すべきは今後の対策についてそれと千冬さんをある程度元気つけることだ…
まぁ…生徒の仕事じゃないけどネガティブな話はしないように意識しよう。
「とりあえず僕のISは使えるようになりました。これで一応全力で戦えます。」
「戦い方としてはどうするつもりだ。」
「とりあえず……僕が逃げ回りながら落としてくって感じですかね…多分博士の方も攻撃されない限りは他の人物を攻めるつもりは無いでしょう。それは巻き込む形になりますからね……」
「そこら辺の判断はあいつ次第というわけか……」
「まぁ一応こっちは情報を持って脅してる立場ですし問題は無いでしょう。あと一応千冬さんに言っておきます……あの千冬さんと篠ノ之博士が起こしたあの事件について話があるんですが…」
「ああ……わかっている。」
千冬さんが一番恐れてるのはこれだろう。
限りなくありえないと…でももしこれが本当だったらという恐怖が恐らく千冬さんにはあるんだろう…この恐怖心は自業自得と言ってもいいんだろうが……
まぁ…俺はこれで千冬さんを追い込みたいわけじゃ無いんだ…ここらでネタばらしをしておこう。
「僕は証拠なんて初めから持ってませんよ。」
「え?」
「まぁあの時の音声は録音してるのでそれは使えるとは思いますが、証拠としては弱いでしょう。」
一応束博士の自白とも取れる音声は残しているが……物的証拠は何も無い。
俺は千冬さんに笑いかける。
「まぁ…知っている理由は秘密ですが証拠までは集められなかったんですよ。」
「………」
「なので俺が篠ノ之博士を脅すために使っただけで脅す事は――」
「なぜそれを私にばらした!?私が…束にそれをばらすとは思わなかったのか!?私は既にデュノアにばらすような事を……」
そう言って千冬さんは俺に叫ぶ。
……ここまで感情的な千冬さん、始めて見たな。
俺は笑ったまま話かける。
「う~ん…理論的っていうか…打算があるように説明するならそれを篠ノ之博士に千冬さんが伝えても彼女が俺を攻めてくるのはとまらないだろうってのが一つ。いまさら言っても俺が篠ノ之博士にとって危険人物なのは変わりありませんしね。さらにいえば千冬さん、このままの状態じゃいつミスするかわかりませんからそれの予防ですかね。」
「………」
「まぁ正直の俺の考えを言うなら…落ち込んでる千冬さんを見たくないからでしょうか?」
「そんな理由で……私がやった事は――」
「いやそんな事言われても……俺の知ってる千冬さんはそんな事してるってイメージわきませんもん、なんか理由が合ったんじゃないんですか?第一…過ぎた事の話は禁止です、いいほうに絶対に進みません、必要最低限にしましょう。」
俺が真面目な顔をして話す。
だが千冬さんはまだ納得できないようだ。
「………お前は…なぜそこまで私を気にかける…」
「え?」
「お前が…束にあそこまで言ったのも一夏と箒のためと言っていたがそれだったら初めから私を脅してでも利用すれば…」
「いや…そんな作戦ごめんですよ…後味悪すぎじゃないですか…え?俺結構手段を選ばない男だと思われてた?」
とあからさまに落ち込んでみせる。
このままネガティブ方向に言ってもいいことなど何も無い。ここらでふざけてやろう。
「い、いやそういうわけでは…」
「そうですよねぇ…下手になぁなぁで済ませようとしたセシリアのときは失敗して喧嘩になり、間に入らなければ…と思って鈴に援護射撃をしたらすごい喧嘩を起こす。もうこうなったら強行的にやろうってやったら…一人救うために会社2つとさまざまな国に喧嘩売って、さらにもう一人助けるためとはいえドイツ軍まで使おうとする…あげくの果てに銃を使って脅しかけるとか……その上一回もろくに成功してないですもんね…うわ…自分で言っててなんかへこんできた…」
これは俗に言う箇条書きマジックというものだろう……多分きっと…
だが実際俺これくらいのことをやってるんだよな…
もっといい作戦を考えるべきだな。
これじゃあいつか何らかの理由で指名手配されたりつかまった時に『いつかやると思ったよ、あいつは。』って言われる事になりかねん。
まぁ……現在そんな事を言うのは国のお偉いさん方くらいだろう。
普段から既にいろいろ言われてる身だ。気にする必要は無い……だがショックなものはショックだ。
……あれ?ふざけるつもりが結構普通にダメージ受けてる気が……
千冬さんはあきれている…
「お前…結構こういうときはメンタル弱いな…」
「終わった事ならどうとでもいえますしね。だからこの話も早く終わった事にしましょうよ。」
「……そうだな………私もようやく覚悟は決まった。」
「僕は……決まってるんですかねぇ…」
「早いところ決めておけ。だが……おそらく束はしばらくは動かないだろう。」
そういう千冬さんの顔はかなり元に戻っていた。
話しの内容も大事だが俺にとってはそっちの方が大切だ。
よしこのまま行こう。
「どういうことでしょう?」
「アイツはお前の事を敵だと認識した、だが同時にそれ以上に一夏と箒のほうが大切なんだ。」
「はぁ…それで。」
「今お前を攻めたとしてもあの二人の成長にはつながらない。だから攻めてくるときは確実にあの二人の成長に必要な時だけだ。」
「………え?でも俺を消しちゃえば自由に攻めれるんじゃないでしょうか…」
「言っちゃなんだが…それほどの障害とは思われてないだろうよ。」
「あ、そういうことですか。」
つまり俺は片手間で倒せる相手だと思われてるのか…
まぁ…後半になればなるほど積極的に攻めてくるんだ。
初めのうちはこれくらいでいいのかもしれない。
「とりあえず…どれくらいの頻度で攻めてくると思いますか?」
「……7~8月中に攻めてくることは無いだろう……だが…」
「だが?」
「これも予測でしかない。何か理由があればすぐに攻めてくるだろう。」
「まぁ……そうなりますね。気をつけますよ。」
とりあえずいい情報をもらえた。
攻めてくるのは恐らく…9月の頭…それまでに対策を考えろ…か…
まぁ作戦も何も…やり方は俺が一人で戦う。これが一番良いに決まってる。
「まぁとりあえず他のみんなの事は任せましたよ?」
「ああ……お前には負担を――」
「はい、その話はやめ!!まずそのネガティブな話をするのはやめましょう。」
「……わかった。頼んだぞ。」
「了解しました!!ボス!!」
「誰がボスだ。」
そう言って笑いながら千冬さんとの話は終わった。
まだ元通りの仲というわけにはいかないがそこら辺は時間が解決してくれると考えよう。
断じて敢行すれば、鬼神も之を避く。
~司馬遷~