インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~ 作:filidh
よろしければどうぞ。
作者帰還時中編アンケート
①スタイリッシュゲゲゲの鬼太郎≪鴉~KARAS~≫原案の短編
②スタンド探偵≪ジョジョの奇妙な冒険≫原案の短編
③ファンタジー物≪オリジナル≫の短編
④その他(こんなの書けない?というものがあれば。)
さて楯無はともかく理事長の説得はすぐに終わった。
理事長としても、束がこちらを攻めて来る時の動きをある程度制限できる事はプラスになるらしい。さらに亡国機業に関してもある程度の監視は出来るらしいので大きな動きがあればすぐにこちらも動けるらしい。
ただ……あまり千冬さんを追い込むなとやんわりと釘を刺された。
こちらとしてもそのつもりが無い事は伝えたが……
これで理事長も何かを知っている事がわかった。この狸は本当に何者なんだろうか……
一方楯無のほうは……
「いいからあなた生徒会に入りなさい。」
「嫌です。」
「今ならシャルロットちゃんも入れていいから!!」
「それ、完全に楯無さんのプラスですよね?」
「紅茶おかわりどうぞ。」
「ああ、ありがとうございます虚さん。ほんとおいしいですね、この紅茶。」
「当たり前よ、世界一の紅茶なんだから。」
先ほどからこれの繰り返しである。
現在俺は生徒会室で楯無とお茶を飲みながら話していた。
ちなみに俺に紅茶を入れてくれているのは布仏 虚。
整備科の三年生で主席らしい。そしてさらにのほほんさんの姉。
眼鏡に三つ編みといういかにもお堅い感じのしっかり者なのだが…そういわれるとどこかのほほんさんと似ているところがある。
現在話しているのは束がせめてきたときの対策を話しているのだが…
こちらとしては楯無にはの生徒の避難ともしもの時の防衛を頼むつもりだった。
だが彼女としては自分がメインになって戦うつもりらしいのだ。
「あら?彼女の事を高く評価するじゃない?」
「そりゃそうですよ。アイツはかなり使えますよ?」
「……男としてそれをいってるの?」
「人として言ってるんですよ。何考えてるんですかエロ会長。ちょっと…真面目に引きます…」
「ちょっと何それ!!別に私はそういう意味で――」
「どういう意味ですか?」
「ベタなネタは止めなさいよ!?まったく……」
と怒る楯無。
まぁ互いに本気で話しているわけじゃない。
しかし…なぜ彼女はここまで引き下がらないのだろうか…
「会長、何でそこまで譲らないので?」
「生徒を守るならあなたを引き込んでおいた方がいいからよ」
「生徒の安全を考えるなら俺を学園から追い出すのが一番だと思いますけど?」
「あら?そんなことしても篠ノ之博士の学園への襲撃は止まらないでしょ?」
そう平然と言葉に出す楯無。
近くにもう一人生徒会の役員が居るというのに…
俺がそれを気にしていると楯無はにやりと笑う。
「彼女は大丈夫よ。あらかじめこの事は知ってるから。」
「でももしかしたら僕が勝手に喧嘩を売ったせいでせめてくるのかもしれませんよ?」
「……2ヶ月前の『織斑 一夏』対『凰 鈴音』の試合の謎の無人ISの襲撃…あれが篠ノ之博士の仕業かもしれないって言ったのはあなたよね。」
「ええ、確かにそうですね。」
「私たちもそれをメインで考えてさまざまなところに枝を伸ばしたわ。そして今回おきた福音の事件……『更識』の方で調査した結果…裏でいろいろと取引があったのが確認できたわ。」
「だがどのような話がおこなわれてたか、まではわからないっと。」
「ええ、ただアメリカ、イスラエルに『謎のISコア』が渡された事はわかったわ。確認されているどのISコアとも違うナンバーなしのコアがね…」
「……それでですか…」
これは彼女が確信するのには十分な理由になるだろう。そしてこれの危険性も…
ISコアを造れるのは篠ノ之束のみ、そして福音の事件後なんだかの取引をおこなってコアを秘密裏に取引に使う…さらに無人ISについてもこちらは知っている…
すべてをまとめて考えると凄まじい危険人物だ。
「既に世界各国は紅椿の所属をめぐって争っているわ、ただの高性能機でね。仮に無人ISなんてものを彼女が発表したら…篠ノ之博士。彼女は事の重大さがわかっているのか、いないのか……ISを使って世界を滅茶苦茶にしかねないわ。」
「世界ですか…大きすぎて想像つかないですねぇ……ただしばらくは他に動く事は無いと思いますよ。思いっきり挑発してやりましたから…問題はそのアグレッシブな動きで俺に全力でせめてくることくらいでしょうか?」
「…やっぱりあなた生徒会に入りなさい。戦うなとはいわないけどせめて私がすぐに駆けつけられるところに居なさい。」
「……悪いですけどお断りします。」
「っ、あなたも攻めてきたときIS学園そのものがどうなるかは…わかるでしょ。」
「楯無さんあなたと一緒に戦うのは最後の選択です。仮にあなたがこちらに付いたら…俺対篠ノ之博士から…IS学園対篠ノ之博士になりかねない。そうできるような約束をしています。」
「なら…」
「では対俺のときの戦力が俺一人に向けられるなら対策はありますが対IS学園の広域に向けられた時に守りきれますか?学園の全員を。」
「……あなたはどれくらいの戦力が来ると思っているの?」
「下手したら三桁の無人ISはくると仮定しています。」
それを聞いて楯無は顔をしかめる。
もちろんここまで来る可能性は低いだろう。
そんなことをしたら確実に無人ISの事はばれ、さらに世界大戦になってもおかしくは無い。
そうした時に被害を受けるのは箒や一夏、さらには千冬さんだ。
そのためそこまでする可能性は低い……だがゼロではないのだ。
流石の楯無もそれほどの戦力が来るとなると守り抜きにくいのであろう。
「これで俺一人を狙うとなれば逃げる方法も戦う方法もあります。でも別々にいろいろなところを攻められるとなると……正直守り抜ける気がしません。」
「だから私を使おうって言うのね…」
「まぁ…そういうことになりますね。あなたは『学園の生徒を守るために俺たちとは別に戦っている』これが一番でしょう。」
「……高くつくわよ。」
「そこを何とかお願いします。」
「はぁ…わかったわ。……ここにシャルロットちゃんを呼びなさい。」
「……いや、待ってください。あいつは――」
「私たちの事情を知っていてなおかつ優秀なんでしょ?それとも他の人に事情を教えるって言うの?私たちが情報を取り合うのは彼女を仲介させるのが一番よ。」
言っていることがわからないでもない。
だが感情は別だ。
楯無も真剣な顔という事は別に茶化しているとかそういう意味じゃないんだろう。
「……」
「…それともやっぱりあなたがこっちに来る?」
「……わかりました、ちょっと待ってください。」
そう言って諦め俺はシャルロットに連絡を入れるのだった。
連絡を入れて数分後シャルロットがやってきた。
「失礼します。」
「どうぞ入って。」
その声にドアを開けて部屋に入ってくる。
緊張しているのか顔は真面目だ。
一方俺は紅茶をのみながら座ったままチョイチョイと手招きをする。
そのまま導かれるままに席に座ると楯無が話しかける。
「はじめましてシャルロット・デュノアさん。私の事は知ってるかしら?」
「はい…現IS学園生徒会長、そしてロシア代表操縦者でもある更識 楯無生徒会長であってますよね。」
「風音君これが普通の生徒の反応よ。」
「いや、僕にとったら明日の海の波の高さの方がまだ気になりますよ。」
と言って興味無さげにお茶を飲む。
楯無のほうも『つまらない』、と言った感じでむすっとした後さらに会話を続ける。
「あなたをここに呼んだ理由は……あなたも知っている篠ノ之博士に対する対策のためよ。」
「!?どういうことでしょうか。」
「あなたも知ってのとおり、恐らく博士は今後も確実にこちらを攻めて来るでしょう、そこに居る彼を狙ってね。」
そう言って楯無はこちらを見てくる。
シャルロットはそのまま楯無のことを見て何か考えている。
「でも私たち生徒会が直接彼を守ると篠ノ之博士と敵対してしまうわ。でも他の生徒を守るためには親密な連携をとらないといけない。」
「…その仲介として両方の事情を把握しても問題ない私を使うといった感じでしょうか?」
「ええ、そのためにあなたには生徒会に入ってもらいたいの。そこに居る彼もあなたの事を高く評価していたしね。」
そう言って楯無はシャルロットに手を差し出す。
俺はあえて何も言わない。この程度は言う必要も無いだろう。
しばらくシャルロットは考えた後にっこりと楯無に笑いかける。
「スイマセンがその話お断りします。」
「……どういうことか聞いていい?」
「えっと…私が間に入るのはいいんです…でも生徒会に入る…それだと私はソウと一緒に戦えませんよね?」
「……なぜそう思ったの?」
「まず生徒会が敵対できない理由。それは篠ノ之博士とソウの約束が原因ですよね?『殲滅的に攻めるのは無し』これで仮に表立って生徒会が味方についたら確実に攻める範囲が広がりますよね。そしてそれから他の生徒が巻き込まれないようにするのはほとんど不可能…だから私がソウと楯無さんの間に入って生徒の防衛に関して動く…ここまではあってますか。」
「……続けて。」
「ですがこれをおこなう時に私が生徒会に入ったら…ソウと一緒に戦えません。なぜなら私も生徒会という組織の一員ですから。そこで他の生徒会役員を攻められたら間に入った意味がありませんよね。」
と笑顔で話し続けるシャルロット。
楯無のほうも笑いながら話を聞いている。
「私はソウの役に立ちたいとは思いますが…いざというとき守る事が出来ないなんて嫌です。だからその…スイマセンが生徒会には入れません。」
「……はぁ…流石に騙されてはくれないか……。」
そう言ってため息をついて扇子を広げる。
扇子には『残念』の二文字。
これなんか仕組みがあるんだろうか…それともいくつか種類があるのか?
「スイマセン、でも仲介するだけなら喜んでやりますよ。」
「ええ、じゃあそれだけは頼むわよ。」
「わかりました」
「……ねぇ何でさっきからあなた何も言わないの?」
「いやぁ…僕、口挟まないほうがいいかなぁ…って。」
「あら意外、途中シャルロットちゃんを助けに入るかなぁって思ってたくらいなのよ?」
「必要なかったでしょ?」
「あら?オアツイ事で。やっぱり本音ちゃんの言う事は本当だったみたいね。」
「のほほんさんなんて言ってます?」
「『ソーとデュッチーが付き合い始めた?』って感じだったわよ?」
やはり彼女は気がついていたか…
でも確証は無いって感じだろうが、時間の問題だろうなぁ…
とりあえずここで下手に出れば楯無にいじられ続けるのは確実だ……
何でもないようにしていよう。
「あらら、あまり広めてほしくないんですけど。」
「まぁ…理由はわからないでも無いけどねぇ…って、否定しないの!?」
「彼女の目の前で全否定って最悪じゃないですか?」
「まぁそうだけど……私が広めるとか思わなかったの?」
「え?広めるんですか?何のメリットがあって?」
「あなた…私がメリットデメリットだけで動くと思ってるの…」
と言って完全に俺の事をいじる気満々の笑顔でこういう楯無。
というか…多分のこの中で一番興味津々なのは虚さんだな…
滅茶苦茶俺とシャルロットを見てる。
「まさか、ただ楯無さんならそこらへんを察して広めるのはやめてくれそうだと思ったからいっただけですよ。」
「裏切るかもよ?」
「その時はその時ですよ。それを気にして誰も信じないなんて本末転倒でしょうに。」
「……本当にあなたってこういうことじゃ焦らないわよね。さっきシャルロットちゃんをこっちに引き込むって言ったときの反応の方がまだ面白かったくらいよ?」
「そいつはスイマセン。ではそろそろ席を立っても?この後織斑先生にも会わないといけないんで。」
「ええ。あ、シャルロットちゃんだけ置いていってもらっていい?」
「それは本人に聞いてくださいよ…」
「あら?もしかして私に嫉妬しちゃうかなぁ…って思って。」
「そうなったらまず簪ちゃんにあること無い事ふきこみますよ。」
「ちょっと!?本当にやめなさいよそれ。」
「それは楯無さん次第ですかねぇ…ではまた会いましょう。じゃあシャルロットまた。」
そう言って笑いながら俺は生徒会室を出た。
今度は千冬さんのほうに向かわなければ…そう考えて動き始めた。
千冬さんに会いに職員室に向かったが現在千冬さんは剣道場にいるらしい。
恐らく一夏の事だろうがと思い剣道場に向かう。
中に入って中を覗くようにみると千冬さんの事はすぐに見つけた、壁際で箒と一緒に現在の試合を見ている。
「やぁぁあああああ!!」
「まだまだ甘い。もっと自分の体の動きを意識しろ。」
そういわれて軽くいなされてる方、防具を身につけている奴は恐らく一夏だろう。
だが相手の方の一切防具をつけてない男性は……と観察しているとこちらに視線を感じる。
一夏を相手にしても俺に気を配る余裕もあると…って言うか…見定められてるのかな?これ…
そう考えながらも、とりあえず微笑み返す。
向こうの雰囲気が一旦鋭くなり一夏に振り下ろされる。
すん止めだったが一夏は気圧され動きが止まる。
うわぁ…竹刀の剣なのにすげぇ圧力…
そう考えてると男性が口を開く。
「鍛錬は一度止めだ。少々休憩しよう。」
「はい先生。」
先生…って事は一夏と箒の師匠の…箒の父親か。
そういわれるとどこか箒と似たような雰囲気を感じるな…
「そこの君、何が用でもあるのかい?」
「あ、スイマセン。鍛錬の邪魔をする気は無かったんです。」
「奏!!」
「奏か…よく帰ってきたな。シャルロットには会ったか?」
「寝起きですぐ説教されたよ。ども、織斑先生。ただいま帰還しました。」
「……戻ったか…」
「ええ、とりあえず研究所からは解放されました。あと…織斑先生、後で少しいいですか…」
「……ああ…」
既に姿も見つけられていたしそのまま中に入る。
他の二人の反応は予想どおりだが千冬さんに声をかけるが反応が鈍い。
確かに理事長の言ったように追い込みすぎだな…
意識してやったわけじゃないんだが…どうしようかと考えてみるととたんに何か気圧される感覚がする。体が反応しないようにして横を見ると箒の父親らしき人からそれを感じる。
そしてさらに気配は強くなっていく。うわぁ…怒らせちゃった?俺…
と思いとりあえず苦笑を返してみるととたんに圧力が弱まった。
顔つきが変らないから何を考えてるのかがわからん…
と思ったらその男性が口を開く。
「一夏、彼を紹介してもらってもいいか?」
「え?あ、はい。アイツは俺の親友の風音奏です。俺よりも全然強い奴ですよ。」
「おい、その紹介は無いだろ。はじめまして風音奏です。えっと…」
「
「あ、ご丁寧にどうも。えっと
「ああ、かまわない…」
「僕…何か気に障ることしましたか?」
と俺が声をかけると一夏と箒は首をかしげる。
って事は俺にのみあの圧力をかけていたのか……
でも千冬さんだけは反応が無いって事は何か思い当たる事があるんだろう。
「どういうことだね?」
「あ~、気のせいかもしれませんがさっきかなり……こっちにやってたじゃないですか、なんと言えばいいか…」
「気当たりかい?」
「あ、それです。それを僕にやってきたじゃないですか。」
「それにしては平然としてたじゃないか。」
「いえいえ、怖くて笑うしかなかっただけですよ。」
と俺が苦笑いをすると柳韻さんが脱力する。
あ、これ来るな……
とおもった瞬間には凄まじい踏み込みで懐に入ってくる。
こりゃかわせないわけじゃないけど本気でも結構苦戦するなぁ…と思いながら反応しない。
振り下ろされる竹刀は凄まじい勢いだ。こりゃ…当たるかもなぁ…
だが竹刀はぴたっと俺の顔ギリギリ、すん止めで止まる。それを見て一夏と箒は固まる。
俺は苦笑したまま柳韻さんの顔を見る。
柳韻さんは一切表情を変えずに俺の顔を見る。
「なぜかわさなかったんだ?」
「かわせなかっただけですよ。」
「嘘は言わなくても良い……」
「いや…本気で怒らせちゃったんだったら…仕方ないかなぁって思いまして…」
「仕方ない?なぜだ。」
「あ~……僕のポリシーみたいなもんです。」
「……今までの無礼を謝ろう。すまなかった。」
「え?」
今度は俺が唖然とする。
目の前の男性が突然頭を下げてきたのだ。
そればかりには本気であわてる。
「ちょ、ちょっと待ってください!?なんなんですか!?」
「君を…いや、あなたを試すような事を突然して…」
「君でいいですから!?本当に頭上げてください!?」
「だが…」
「本当に!!僕が気にしてませんから!!お願いですから頭を上げてください!!」
「そうか…本当にすまなかった。」
と言ってまた深く頭を下げる柳韻さん。
それを見て固まっていた一夏と箒がはっとする。
「お、お父さん!!突然何を!?」
「せ、先生!?」
「………」
「驚かしてすまない、だが彼がどんな人物か知るのにはこれがよさそうだった。」
ああ、この人完全に箒の父親だわ。
自身がそう決めたら一直線…俺はこの時点で完全に箒パパとしてこの人を認めた。
まぁ認めなくても父親である事には変わりないんだろうけどさ…
「だが一つだけ聞いていいか?」
「はい?何でしょ?」
「最後の踏み込み。私は途中まで完全に当てるつもりだったがなぜ反応しなかった。」
「いや、出来なかっただけですよ。」
「反応できなかったというのは嘘だろう。完全に私が踏み込みを入れようとした時点で君は気がついていた。」
という柳韻さんの目には迷いが無い。
これは…下手に言い逃れは出来そうにないな。
「あ~~……織斑先生が居たからですかね。」
「……どういうことだ?」
俺がこういうと千冬さんもピクリと反応する。
柳韻さんは図りかねるといったかんじの顔をしている。
初めての表情の変化がこれかよ…
苦笑しながら話を進める。
「あ~…織斑先生が何も言わなかったんですよ。柳韻さんが俺に何をしても。」
「……だから動かなかったのか?」
「はい。織斑先生が認めた人ならひどい事は起きないだろうって言う…信頼みたいなものですかね。」
「だが途中まで本気で打ち込んだ事は…」
「まぁ…察しましたけど…それで打たれたらそれまでかなぁ…って。信じぬけないよりは格好がつくじゃないですか。」
と言って柳韻さんに笑いかける。
柳韻さんは一度俺に驚いたような顔をした後に元の顔に戻り千冬さんの方を向く。
「千冬、彼はお前の考えているより深い懐の持ち主のようだ。」
「ちょっと!?下手に持ち上げないでくださいよ?」
「お前が心配している事など初めから彼の頭の片隅にも無いだろうよ。それは私が保証しよう。」
そう言って千冬さんに語りかける柳韻さん。
………ああ、この人初めから俺にどう思われてもいいから、千冬さんに俺がどういう人か伝えようとしていたのか。
恐らくこの人は初めから俺に嫌われる事を前提として俺にここまでやったってたのか。
多分あらかじめ千冬さんから何かかしらの相談を受けたんだろう。
それでどんな結果になっても俺がどんな人間かは千冬さんに伝えるっていった感じか。
「……初めから計られてました?」
「…試すような真似をして本当にすまない。だがこれは私の独断だ、うら――」
「イエイエ!?そういうことじゃないんですよ!?ただどういう評価なのかなぁって気になっただけで!?」
「そうだな……確実に私よりも深い懐を持っているだろう、さらに――」
「いえ!?聞きたいわけじゃないですから!?止めてください!!目の前で自分の評価聞くとか、さらにほめ言葉とか本当に体中かゆくなりますから。」
「そうか……君は自己評価が低いんだな…」
「調子に乗ると失敗する性質なんで。」
そう言って話しかけた柳韻さんの顔は柔らかいものだった。
はぁ……この人天然でこういうことする人なんだろうな。
ある意味一番対応しづらい。…婆さんに近いものがあるな。
そんなこんなで俺は結局この鍛錬の終わりまで見学することになったがその間千冬さんの顔が笑顔になる事は無かった。
教師はローソクのようなもので、自ら燃やしつくして生徒を啓発する。
~ルーフィニィ~