インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~   作:filidh

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第六十七話 杜鵑草

適当な島に到着する。

三日月状の小さな砂浜、その周りは崖で囲まれるようになっている島だ。

砂浜に着陸するとISを解く。

と言っても俺のISはほぼコートなんだよなぁ……

これそのまま展開してても大丈夫じゃないか?

とふざけた事を考えながら歩く。

砂浜にそのまま座る。

これなら野次馬どもに聞かれる心配は無いだろう。

流石に千冬さんもそのためにわざわざISをつかわせまい。

シャルロットも俺と同じようにISを解除する。

そして俺の右隣に座ると小さくなるように自身の膝を抱え座る。

そのまましばらく海を見ていたが何も言われないのでこちらから話しかける。

 

「あ~……疲れた…」

「………」

「えっと…シャルロット、お前俺のメッセージ聞いた?あの落とされた時の。」

「……うん…」

「俺はあの後あの攻撃を防いで、そしたらISが止まって海に落ちて……しばらく海を漂ってひたすらに泳いで岩山の上で休んでました。」

「………」

「……そんな状況でも俺はこのとおり無事だ。」

「………」

「あ~……だから泣くな、あの程度だったら俺は無事だ。帰ってくるからさ。」

 

シャルロットはさっきから声もあげずに泣いていたのだ。

戦闘中も泣き続けていたんだろう、既に顔はぐしゃぐしゃだ。

戦いが終わった後ずっとこの調子である。もうこちらの調子も狂いっぱなしだ。

 

「じゃあ…終わりみたいに…変な事言わないでよ…」

「いや!?単にほっといたらお前らが突っ込みそうだったからな!?」

「……本当に…あのまま死んじゃったのかと…」

「あ~…それは悪かったけど約束は守るだろ?俺。」

「…まだ守ってもらってない方が多い…」

 

む、…確かにそのとおりだ。

何だかんだ言ってシャルロットの事を後回しにしてしまっている。

未だにシャルロットのすすり泣くような声が聞こえてくる。

凄まじい罪悪感がする…

 

「だからさ、約束は守るために必ず帰ってくるよ。」

「……それも…約束して…絶対私の所に帰ってくるって…」

「了解しましたよ…そうだ指きりでもするか?」

「………する…」

 

そう言って左手をこちらに向けその中でもさらに小指だけをこちらに向ける。

この年になって指切りををする事になるとは…まぁいいか。

苦笑いをしながら『ゆびきりげんまん』と歌いながらシャルロットと指切りをする。

 

「指切った、っと。これで絶対に帰ってくると信じていただけたでしょうか?」

「………うん…」

「まず今すぐ泣き止めとは言わないからちょっとづつ落ち着け、なぁ?」

「うん…」

 

そう言ってシャルロットがこちらにそのまま左手を伸ばして俺の右手を握る。

まぁ握るくらいい良いか…

しばらく何をするわけでもなくボーっと手を握ったまま海を見る。

朝日が昇って綺麗だなぁ…こんな時じゃなければこれも話に使えたんだが……

シャルロットの手を握り、顔を見ずに話をする。

 

「しかしお前は本当に良くがんばったよ。」

「……ソウみたいには出来なかった…」

「いや、俺よりすごいよ。本気で。」

「……私、怖くて…逃げ出したくて…」

 

と言って俺の手を握る力を強くするシャルロット。

その握る手を感じながら俺は話す。

 

「でも逃げなかったしみんなを助け続けたんじゃないか?あの機体にシールドユニット、他の機体の状況を見る限りの想像だけどな。」

「……うん…」

「俺なんて守りきれなくて一人で戦わざるを得なかったんだ。それにみんなのことを足手まとい扱いだぜ?それで落とされてるし。」

「………でも私たちはソウの情報のおかげで…」

「それが無くてもお前たちは勝てたさ、それは俺が保障するよ。」

 

実際に俺が居なくても福音を倒す事は出来ただろう、実際はそういう流れなのだ。

だがその本来の流れ以上のがんばりをこいつはしたんだろう。

 

「でも…ソウのほうが強いよ?多分みんなより…」

「いや、皆俺より全然強いよ。今は俺のほうが力では強いけど既に心の強さではみんなに負けてるよ。そのうち力でも追い越されるさ。」

「え…そんな?でも……織斑先生だって奏の強いところは心だって言ってたよ?」

「違うよ、それは千冬さんの勘違いだ。俺は本当はすごい臆病者なんだよ。」

 

俺は苦笑いをする。

そうか…千冬さんはそう言ってたのか…

過大評価もいいところだ。俺はそんなに強い人間じゃない。

 

「俺はな…どんな時でも何かにおびえているような弱虫なんだよ。弱音を吐ことすら怖がって…戦闘中の軽口も自分を強く見せ落ち着かせるための強がり……それが俺なんだ。こんな弱音を吐いたのはお前が初めてだよ。」

「……そうなんだ…でもやっぱりソウは強いよ。どんなに怖くても逃げないで向かって行って…どんな時でも笑ってる…」

「そうでもしないと怖くて怖くて…自身の恐怖心でつぶれちゃいそうなんだよ。」

「……じゃあ私の前ではそんなことしなくてもいいよ?」

 

そういわれて一瞬言葉に詰まる…

こいつの前で…いや人の前でここまで本音をさらけ出したのは初めてだった。

そして…そんな事をしない自分か…考えてあることに気がつき苦笑する。

 

「あ~無理だな…」

「……私じゃ駄目?」

「いや…結構前からお前の前で普段、愛想笑いすらしてなかったわ…結構前から素だった…」

「……そっか…そうだったんだ…」

 

と言ってうれしそうに笑うシャルロット。

とりあえず…泣きやませれたかな?

そう考えながらも俺も幾分か気が楽になった。シャルロットが笑ったせいか…この世界ではじめて弱音を自分の意思で吐き出したからだろうか……

 

「ねぇソウ……ひとつわがまま言っていい?」

「……よし、何でもこい…」

「そんなに気構え無くてもいいよ…私のこと好き?」

「ああ。」

「……口に出してもらっていい?」

「………一回しか言わないぞ?」

「うん、それでいい。」

 

そういわれた後、いざ言うとなると恥ずかしくなるな…

確かに今まではあえて言わないように心がけていた…

だが覚悟は決まった。俺はこっちの世界でも俺として生きよう。

夢だから、俺はこの世界の住民じゃないからと言い訳するのはもう止めだ。

それと…確かに俺はこれからもヴァッシュを目指す。だがヴァッシュには絶対になれ無いんだ。

だから目標にするだけで…目指しながら生きるだけだ。

そしてシャルロットに答えないままにしておくのもあまりにも不義理だ。

俺は一度ため息を付いた後に言葉を吐く。

この初々しい緊張は体に年齢が引っ張られてるからだという事にしておこう。

 

「……愛してる。俺と付き合ってください。」

「……え?…今なんて?」

「一度しか言わないって言っただろ、ハイおしまい。」

「ちょ、ちょっとソウ!!」

「おしまいなのはおしまいだ。」

「約束は――」

「駄目だったか?それともそっちの方が良かったか?」

「……その言い方はずるいよ。ううん、うれしい。」

 

そう言って顔を緩ませるシャルロット。

それを見ると俺自身顔が赤くなっている自覚がある。

座った姿勢から手を握ったまま横になる。

 

「悪い、ちょっと寝る。流石に疲れた。」

「え?警備は?」

「初めからそんなのいらないでしょ。それに多分そのうち迎えが来るだろうよ。」

「……私も眠ろうかな。安心したら眠くなってきた…」

「ああ寝よ寝よ。」

 

そう言って二人で浜辺に横になる。

結果的に俺とシャルロットはぐっすりと昼間まで寝ており、浜辺で手をつないだまま寝息を立てているのを迎えに来た先生方に見られあきれられる事になった。

 

 

 

 

 

恐らくバスの時間なんだろうと思い戻ったが学園側の計らいでもう一泊できる事になったらしい。

確かにゆっくり休みたかったから丁度いいな…と思っていたところだ。

俺のISは一度おっさんに回収された。

俺の全力に耐えられるISらしきものの秘密を探るらしい。

おかげで俺はゆっくりと休む事ができる……

 

「ああ…いい天気だな…」

「おい…奏…」

「青い空、白い雲、目の前には大海原!!」

「お~い、かえって来~い。」

「そしてなぜか埋められている二人!!」

「あ、そこは自覚あったんだ…」

「なぜだ!!」

「それは俺も聞きたい。」

 

だがしかし現在俺と一夏は砂浜に顔だけ出して埋められていた。

二人の距離感は2mほど離れており…互いに協力して逃げ出すのは難しいだろう。

二人で埋まっていると俺と一夏を埋めた犯人である鈴、セシリア、ラウラが近くにいる。

ラウラは小さなバケツを持っているが…なんなんだ?

鈴がいたずら成功と言った顔をしながら笑っている。

 

「一夏、あんた今まで昏睡状態だって言うのに今日を遊ぼうだなんて無茶だと思わない?」

「いや、検査結果問題なかったし、第一埋めるのもひどくないか?」

「じゃあ僕はゆっくり部屋で休みたいんで解放していただきたいんですが…」

「いいえ!!奏さんもこのくらいの罰は必要ですわ!!」

 

というセシリア、心なしかっていうか確実に楽しそうだ。

いい顔してるな…俺が笑顔で言い返す。

 

「…せめて罪状くらい教えてくれない?」

「私たちを無駄に悲しませた罰だ。嫁も奏兄もしばらくそうしていろ。」

「………まぁ仕方ないか…そういやシャルロットと箒、簪は?」

「ああ、あの子達なら今来ると思うわよ。」

 

と鈴が言うとシャルロットと簪が箒を引っ張ってくる。

 

「お待たせ!!……なんでソウと一夏は埋まってるの?」

「いや~、鈴にビンタされるか埋められるか選べって言われて仕方なく…」

「俺は問答無用で埋められた。」

「そ、そうなんだ…あ、ねぇ一夏!!見てみて!!」

「すごいんですよ!!箒ちゃん!!」

「しゃ、シャルロット!!簪!!ちょっと待て!!」

 

そう言って一夏の前に引っ張り出され、あわてる箒。

へぇ…真っ白なビキニか…普段と違った感じですごくいいとは思うが…この朴念仁には…

何!?顔を赤くしているだと!?

お前!!この状況でそんな事をしたら!!

 

「へぇ…一夏…あんた私たちの時にはそんな顔しなかったのに箒の時にはするんだ…」

「これは…流石に面白くありませんね…」

「…嫁の浮気は許せないな…」

「待て、いや、とめるわけじゃないけどせめて僕の事は解放しろ。」

「お、おい!!奏!!逃げるきか!!」

「うん。」

「クソ!!正直に言いやがって!!」

 

じたばたと首を動かし逃げようとする一夏…しかし逃げる事は難しいだろう。

おとなしく罰を受けろ一夏、何をされるかは知らないけど。

そしてラウラが何かやっている。

バケツから…おい、まさか…

やはり小さな蟹を取り出した。

一夏が青くなりながらラウラに言葉をかける。

 

「あの?ラウラさん?え!?それまさか…」

「安心しろ、今すぐ非を認めて…鈴が許したら私も許す。」

「私はセシリアが許したら。」

「わたくしはラウラさんが許したら許しますわ。」

「ひ、ひでぇ……」

 

思わず口に出してしまう。

なんという脅しだ…これではただ単に許しを乞い、全員に救いを求める以外方法は無いではないか…

神よ、あなたは今どこにいるのですか!?いるのならばなぜこのような仕打ちを!!一夏はともかく俺の事は助けてください!!

そしてラウラにやりと笑いながらは蟹を一夏の正面に置く!!

そのまま蟹と一夏は正面で向き合う……

……え?正面?…蟹って横歩きだよ?それじゃ下手したら…

 

「「「「「あっ」」」」」

「うん?…あっ」

 

とラウラが気が付いた時には蟹は横に動き始めた……もちろん俺の方にだ。

 

「おぃぃぃいいいいい!!」

「よっしゃぁぁぁぁあ!!」

 

俺と一夏が叫びをあげると蟹は俺の方に向かってスピードを上げる。

ちょっと待て!!俺いきなりこの扱い!?

オイ!!一夏!!蟹に息を吹きかけてこちらに押すな!!

 

「オイ!!一夏!!やめろ!!」

「フゥーーー!!フゥーーー!!」

「オイ!!だからやめろって!!」

 

周りに視線を送り助けを求めても……こいつら笑ってやがる…

まるで

『ラウラのおっちょこちょい♪』

『いやぁ…すまんな♪』

『『ワッハッハ』』

と言った感じである…お、鬼だ…鬼しか居ない。

ヒーヒー言いながら鈴が話かける。

 

「じゃあ、奏!!シャルロットの告白に対する答えを言ったら助けてあげるわよ?」

「いや、もう言ったから!!」

「「「「「「…え?」」」」」」

「いや、だからもう答えはシャルロットに返した。だから蟹とめて!!」

「!あ、ああ。」

 

そう言って驚きながらも蟹をバケツに回収するラウラ。

ハァ…とため息をつきながらシャルロットを見るとうれしそうにニコニコしている。

そんなにみんなの前で俺に言われるのがうれしいんですかい……

そしてシャルロット以外の全員は唖然として俺を見ている。

 

「え?…奏さん…本当ですか?」

「ああ、ちゃんと返したよ。簪ちゃん。」

「…え?いつ…」

「今朝。あの千冬さんの偵察任務中。」

「……うそ言ってるんじゃないでしょうね?って言うかどう返したのよ。」

「シャルロットの顔見ればわかるんじゃない?」

 

そういうと一斉に皆シャルロットの顔を見る。

シャルロットは完全に幸せそうな顔をしてエヘヘ…と夢心地だ…アホな顔してるなぁ…

一夏が俺に声をかける。

 

「え~っと……おめでとう…?」

「ああ、ありがとう。」

「「「「「…ええええええええええ!!」」」」」

 

と一斉に声をあげる女性陣。

流石に周囲も気が付くな…先に釘をうっておこう。

 

「ああ、いろいろ問題があるからみんなには内緒ね?」

「は、はい……」

「いや!?何であんたそんな平然としてるのよ!?」

「?君たちに隠した方がよかった?」

「い、いえ!?ですが恥じらいというものが!!」

「別に恥ずかしい事でもないでしょ?何か恥じ入る必要があるわけでもないし。」

「じゃ、じゃあ何で私たちに言わなかったんだ!?」

「聞かれなかったから。」

「うわ……お前らしいな…」

「シャルロット…おめでとう。」

「エヘヘヘ…ありがとう箒。」

 

幸せいっぱいのシャルロットとそれをうらやましそうに見る箒…

って言うかシャルロット、顔が緩みすぎだ。

 

「お~い、シャルロット。あんまだらしない顔するなよー。」

「うん…えへへ…」

「駄目だこりゃ。」

 

そう言ってため息をつく。

すると周りに一組のメンバーが集まってきた。

 

「何があったの?」

「いや、昨日の任務の話をしたら驚かれただけ。」

「そういえば…織斑君もだけど風音君も大丈夫なの?」

「ああ、平気平気。このとおり埋められても笑ってるくらいには平気さ。」

「……よくわからない基準ね…」

 

そう言って俺の事を身ながら唸る数人の生徒。

笑いながら俺は話を続ける。

 

「まぁ詳しくは話せないけどたいした事じゃないよ。まぁ…僕としては今日の晩御飯の方が心配。」

「そういえば風音君よく食べるもんねぇ…足りてる?」

「正直足りない…」

「アハハ、ソーは食いしん坊だね。ねぇかんちゃん。」

「本音…まぁそうかもしれないね。」

「ああ!?僕なんか腹ペコキャラにされてない!?」

「実際、奏君よく食べるじゃない。」

「ひ、否定できない…」

 

そう俺が悔しそうに言うと周りが笑い出す。

よ~し。このまま話をそらせれば…と思うとのほほんさんがシャルロットの顔に気が付く。

やめろ…今それを指摘するな…

 

「デュッチー何かすごくうれしそうだね?何があったの?」

「う~ん?のほほんちゃん、なんでもないよ?」

「え~すごい嬉しそうだけど?ソーは何か知ってる?」

「ああ、今度奢る約束しただけだよ。」

「ふーーん…それだけには見えないけどなぁ…ねぇかんちゃん。」

「え!?あ、うん、そうだね…」

「ほら、さっきまで話を聞いてたかんちゃんも違うって言ってる。」

「え!?あ……」

 

簪…お前…そこは『そういう意味じゃないよ?』とでも言えば済むものを…

その発言では認めたも同様ではないか…

のほほんさんはニコニコしながら俺を見下しながら言い寄る。

…まぁ俺が埋められてるせいで自然とそうなるだけだけどさ。

回りもそれに気が付いて騒ぎながら俺に声をかける。

 

「ソーねぇ何があったの?」

「風音くんシャルロットちゃんに何したの!?」

「まさか…デート!?」

「「「きゃーーーー!!」」」

「え!?風音君そんなことを!!」

 

ああ、勝手に話がすすんでいく。

って言うか一夏、いつの間にか助け出されてるんじゃねぇよ。

ラウラ、鈴、俺も助けてくれ…

セシリア、箒、頼む俺と目を合わせろ。

おい…離れていくな…お~い。あとラウラ、蟹は逃がしてやれよ?

簪!!は…もう既に囲まれてるな…質問攻めで俺に助けを求めるように見ている。いや、助けてほしいのはこっちの方なんだけど…

シャルロット!!は…駄目だ、脳内お花畑状態だ。役にもたたねぇ…

仕方ない、何とかして逃げ出さなければ。

俺は埋められたままのほほんさんとの交渉に入る。

キグルミのような水着を着た女VS首だけ出されて砂浜に埋められた男

…B級映画にすりゃなりやしない題名の駆け引きが始まった。

 

「ふぅ…のほほんさんには見破られたか…」

「ソーは一体何をしたの!?」

「いや正確に言えばまだ何もしてないよ…」

「という事は今後は!?」

「…何回かあるかも知れないね。」

「風音君……いったい何が!?」

「僕の手料理のご馳走とそのレシピの公開。」

「「「「「「……え?」」」」」」

 

周りは引っ張っといてこれかと言った顔をしている。

俺はそれに気が付いてないような顔をして話し続ける。

 

「出来る事ならあまりいいたく無いんだよね。作る量が増えそうだし…何より一応約束で作り方も教える事になってるから秘伝のレシピが…」

「………え~っと…それだけ?」

「それだけって!?僕がいろいろと頼み込んで教えてもらったレシピを人に教えるんだよ!?適当なレシピを教えるわけにもいかないからしっかりと教えないといけないし、あまり広げたくないものなんだ!!例えばマイケルのドーナッツ!!あのレシピを手に入れるためにどれだけ苦労した事か……」

「そ、そうなんだ……」

「いや他にもいろいろとある。例えば―――」

 

そう俺が料理について熱く語りだすとどんどん人が離れていく。

よしいいぞ…そのまま皆いなくなれ。

最後まで語っていると残っていたのはのほほんさんと簪、そしてお花畑状態のシャルロットだけだった。

 

「―――ってことで料理を相手に教えるのは極力遠慮したいんだ!!」

「ふ~ん…じゃあさソー。」

「なんだいのほほんさん。」

「そこまで必死になって語るようなものを何でデュッチーにだけ教えたの?」

「それは僕の作戦中のミスをシャルロットが庇ってくれたからかな。」

「ふーん……まぁそういうことにしておこう。」

「いやぁそれ以外の理由は無いんだけどね。」

 

俺が笑顔で話しかけるがのほほんさんは納得していないようだ…

しかしその後にんまりと笑いかけてくる。

 

「……まぁいいや、かんちゃんいこう。」

「え!?あ、奏さんは!?」

「うそつきソーはしばらくそうしておこうよ。」

 

そう言いながら離れて行くのほほんさん。

っち、のほほんさん、感覚的に気が付いているな。

この情報は確実にOsaに伝わると見たほうがいいな…

そうやって離れていくのほほんさんと後を追う簪。

結局残ったのは埋められた俺とお花畑のシャルロットだった。

 

「お~い、シャルロット。」

「ん~何?ソウ。」

「出して。」

「……エヘヘ…」

「おい、ごまかせてないぞ!?」

「…もう少しそのままでいない?」

「何で?」

「……こうすればソウはどこにも行かないでしょ?」

 

そういうシャルロットは俺の横に座る。顔を見ると既に元の顔に戻っている。

…こいつ俺がどっかいくと思ってるのか?

再びため息をつきながらシャルロットと話す。

 

「このままじゃ約束守れないんだけど。」

「?なんのこと。」

「いや、お前と海で遊ぶ約束。いや、守らなくて良いって言うなら別にいいけど。」

「い、今すぐ掘るから。」

 

そう言ってISの腕部だけ展開して掘り進めるシャルロット。

こんなのでISを使うなよと思いながらも俺は空を眺めながら平和をかみ締めていた。

 

 

 

 

愛は憎しみより高く、理想は怒りより高く、平和は戦争より気高い。

                                ~ヘルマン・ヘッセ~


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