インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~   作:filidh

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第六十五話 第二楽章

時間は経過し夜になる…

私たちは福音が見える範囲まで近づく。

作戦は簡単だ。

大まかに説明すると第一プランとして私たち専用機持ちがひたすらにあの機体のエネルギーを削る。

一応この段階でも倒しきれればいいのだが不可能だと織斑先生が判断した場合機動性の高いユニットによる離脱、同時に教員たちがその戦闘を引き継ぎ時間を稼ぐ。

再び補給が終わり次第交代をおこなう。

初めから教員のみでコレをやるとするなら向こうのエネルギー切れのためには最悪30分近く回避を続けなければいけない……先の戦いでソウの援護付で5分しか持たなかった相手にである…。

そうさせないためにも専用機持ちの攻撃で相手の機体のシールドエネルギーを削らなければいけない…

そしてそのための鍵は箒と…私である。

ソウがラウラのときに前に出たときはどんな気持ちだったのだろうか…

今の私は緊張なんてものじゃない、今にも震えそうなくらいに怖がっている…

でもそれは皆一緒なんだ…それでも全員ここにいる。

 

「……みんな準備はいい?特に簪とセシリアは大丈夫?」

『はい、問題ないです。』

『ええ、よろしく頼みますわ。』

『セシリアの方は任せておけ。』

「うん、ラウラよろしく。あと鈴と箒は…」

『大丈夫よ!!ね?箒!!』

『ああ……いける!!』

『……全員準備は良いようだな。…では各員行動を開始しろ。』

 

その声で全員行動を開始する。

手始め狙撃のできる人は全員武器を展開、それに合わせて私もパニッシャーを展開する。

同時にイメージ・インターフェイスを起動、相手の動きの予測を開始…

しかしこの武器かなり重い……私が手に持って使うのはやめたほうが良いかもしれない…

 

『では行くぞ!!』

 

ラウラのかけ声で狙撃攻撃が開始する。

煙が巻き起こるのも関係なく狙撃を繰り返す…相手の動きに反応有り。

 

「皆!!広範囲攻撃来るよ!!」

『『『『『了解!!』』』』』

 

こちらが声をあげると同時に煙の中から多数のエネルギー弾が飛んでくる。

すべて見える…そして福音がどう動くかも!!

 

「セシリア!!そっちに向かう!!」

『私と鈴が応戦する!!』

 

戦い方はこうである。

まずは私がどこを狙いどう動くかのある程度の予測を常に口にする。

そしてそれの動きを邪魔する様に私たちの機体の中でも装甲が厚い鈴の甲龍と箒の紅椿で囲むようにヒットアンドウェイのように接近戦をおこなう。

相手が箒か鈴のほうを狙い出したら私と簪で攻撃をし注意をそらす。

ラウラは全体の指示を出しながら私たちと一緒に攻撃したりセシリアの防衛など遊撃手のような動きをする事になっている。

セシリアは基本狙撃を当てて随時削っていく感じだ。

セシリアいわく福音の動きの癖は覚えたらしく正確に狙えるのならば外すことなく当てる事は可能らしい。

しかしそれでも倒しきれるかどうかは微妙なところだ…

そんなときにまた福音から反応が来る。

 

「広範囲!!その後収束砲撃、狙いは簪!!警戒を!!」

『わかりました!!』

 

福音が大きく翼を広げ広範囲攻撃を開始する。

辺り一体に撒き広げるかのような光の雨が私たちを襲う、そしてその後機体の上の方に光が集まったかと思うととてつもない太さの光線を撃ち出す。

が、あらかじめくることがわかっていた簪は全力でその攻撃をかわし、攻撃が来ない事がわかるほかは集中攻撃をおこなう。

 

「セシリアに接近!!そのまま近接攻撃!!」

『了解しましたわ!!』

『私のほうで妨害する!!』

「狙い変更!!ラウラに多数エネルギー弾!!その後そのままセシリアを狙う!!」

『させないわよ!!』

 

福音は鈴の衝撃砲を喰らわない様にかわすがそこに狙ったかのように私が攻撃を入れる。

完全に福音の動きは読めている。

何か行動をおこなおうとするとそれがすべて邪魔している。

大きなダメージは与えてはいないがこのまま行けば削りきれるだろう……

そう考えながら随時変り続ける福音の行動を解説し続ける。

 

 

 

 

 

 

『広範囲!!その後箒!!そっちに向かう!!』

『ああ!!わかった!!』

「すごいですね…完全に福音を手玉にとってますよ…」

 

スクリーンに映し出された映像を見ながら山田先生が話す。

確かに現在は手玉に取れているだろう…

山田先生がそのままボソッと話す。

 

「……風音君のときにもコレができていれば…」

「だとしても教員たちの量産機じゃ広範囲攻撃すら数発で耐えきれんだろうよ……それに奏は…それでも一人で戦っただろう…」

「なぜですか?織斑先生。」

「……アイツは他人を基本的に頼らない。自身で何とかできる事であれば自分ひとりで解決する癖がある。どんな無茶をしてでもな……」

 

そう言ってスクリーンに目を移す。

この作戦は前提条件として福音のエネルギー弾を耐えられることが上げられる、教員の量産ISでは不可能だろう…

現在状況は数発の攻撃を喰らっても大きな攻撃は喰らわないように動けているし、それよりも多くの攻撃を当てる事に成功している。

ただしこちらが先に削りきることが出来なければそのまま教員に引き継がなければならない…

さらに言うならこの状況はデュノアが居ることで成り立っている…仮にデュノアが前線を離脱したとするのならば一気にこの状況は崩れるだろう。

 

「山田先生デュノアの残りエネルギーは?」

「はい、2/3ほどは残っています。」

「作戦どおり誰か落ちかけるかデュノアの残りエネルギーが1/4になったら撤退だ。」

「はい。」

 

出来るだけ早く落ちてほしいという気持ちをこめながら千冬はスクリーンをじっと見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

戦闘開始から5分ほどは経過しただろう…

一向に福音の動きは弱まるところを見せない。

ただ広域攻撃は減ったし先ほどから接近攻撃を主にしてくる。

次の狙いは……私か。

 

「私に接近!!その後…っ」

 

これはソウを落としたあの羽で包む攻撃か!!

全力で距離をとろうとするが簡単に追いつかれる。

 

『全員デュノアの防衛を!!』

 

織斑先生の声が聞こえるが…駄目だ…大きく羽を広げた…

 

『させるか!!』

 

その叫びと同時に箒を全力で私を押すようにして運ぶ。

羽で私をくるむ寸前に自分が羽の中に残るようにして私を押し出した。

目の前で光が強く発する。

 

「箒!!」

『シャルロット!!次の動きだ!!』

 

ラウラの声でハッとして動きを予測するが……

 

「は、判断できず!!今までに無い動きが来る!!」

『な!?』

 

今までに無い動き…羽から開放された箒が下に落ちていく…

何が来る…福音が下に向かう…

まさか!!

 

「皆福音を撃って!!箒にとどめをさすつもりだ!!」

『何ですって!!っ!!ふざけんじゃないわよ!!』

『させませんわよ!!』

 

全員で福音に攻撃をするがこれは当たらない!!すべて回避される!!

私は考える前に箒にまっすぐ飛び抱える。同時に福音の攻撃が来るだろうがパニッシャーを盾にする。攻撃予測…エネルギー弾多数!!

箒の盾になるようにしたが……かなりの攻撃を喰らってしまった。シールドユニットがいくつか砕けた。

 

「っ!!」

『箒ちゃん!!シャルロットさん!!』

 

簪の声を聞きながら下に落ちる…

丁度島に落ちたらしくはげしく体を打ち付ける。

衝撃はすごいが早く次の指示を出さなければ、そのまま福音を目に入れる。

 

「つぎ!!鈴に接近!!警戒!!」

『っ!わかったわ!!』

 

よかった…攻撃予測は間に合ったようだ…

エネルギー残量の確認…もう1/4をきっている。

 

「っ、つぎセシリア――」

『全員撤退だ、教員は前に出ろ。』

「しかし先生!!」

『早く戻って補給をおこなえ。反論は許さん。』

「了解…しました…」

 

撤退命令が出た…

落としきれなかったが…かなり削る事ができたと思う…

先生たちなら落とす事もできるかもしれない…

箒の方を見ると気を失っている…

 

「箒!!目を開けて!!」

「……シャルロットか…」

「ごめん私のせいで…」

「いや…アレは仕方ない…」

「うん…でもごめん…あと一時撤退だって…」

「っ!!…そうか…」

 

箒と共に撤退をおこなおうとした時、簪の声が聞こえる。

 

『箒ちゃん!!シャルロットさん!!危ない!!』

 

その声に反応してパニッシャーを展開して盾を張るが…

収束された砲撃で箒と共にはじけ飛ぶ

 

「きゃぁ!!」

『うわっ!!』

『早く逃げろ!!そちらに向かっているぞ!!』

 

ラウラの声がするが……いけない、狙いは箒で箒はかわしきれない……

そう判断をしボロボロのシールドユニットを盾に箒の前に立つ。

シールドで近接攻撃は防いだが…羽を広げている……

またあの攻撃が……せめて箒だけでも…と思い前に押しだろうとすると後方から高出力の荷電粒子砲が来る。

福音もそれを確認したらしく攻撃より回避を優先した。

 

『俺の仲間はやらせねぇ!!』

『『『『一夏!!』』』』

 

一夏の声が聞こえ箒もそちらを向く。

かなりの速度で近づく一夏…白式もどこか変っている。特に左腕の変化ははげしい。

箒に向かい合うようにして一夏が話しかける。

 

「大丈夫か!!」

「一夏?…っ!!体は?体は大丈夫なのか!?」

「ああ、もう大丈夫だ!!」

「良かった…一夏…本当に…」

「な、泣くなよ!?」

「泣いてない!!」

 

そう言いながらも箒の目は赤い。

このまま見ていたいが…しかし福音がまたこちらに来る。

 

「一夏!!福音は君を狙ってる!!」

「ああ!!任せろ!!」

 

そう言って一夏は福音に向かって飛んでいく。

 

『うぉぉぉぁぁぁぁぁあああああああ!!』

 

声をあげながら一夏は福音に突き進む。

攻撃を正確にかわしているがこちらの声は聞こえているようだ。

皆も一夏に声をかけながら援護をしている。

そんなときに再び織斑先生からの連絡がはいる。

 

『デュノア、篠ノ之。お前たちは早く撤退しろ。』

『し、しかし私はまだ!!』

『お前もエネルギーは残り少ない早く撤退しろ。』

 

一緒に戦えないのは悔しいが仕方ない。

箒もそう考えているのか何か考え込んでいる。

そして目を閉じしばらくすると体が金色に輝き始める。

 

「ほ、箒!?」

『な!?…エネルギーが!!』

『……先生!!コレで私も戦えます!!シャルロット!!手を!!』

「え?う、うん。」

 

そういわれて手をとるとエネルギーが一気に回復する。

一体何が起きたのだ!?

 

「箒!?これは一体!?」

『紅椿の単一仕様能力、絢爛舞踏だ。エネルギー増幅能力がある。』

「そ、そんなのいつの間に!?」

『今できるようになった。』

 

なんというめちゃくちゃだろうか……

だがコレで戦える。

 

「織斑先生!!」

『……わかった。作戦の続行を許可しよう。』

「ありがとうございます!!」

『行こうシャルロット!!』

「うん!!」

 

そのまま二人で飛び立ち戦いに参戦するのだった。

 

「セシリア、鈴、ラウラ、簪は箒のほうに!!エネルギー回復が出来るから!!」

『な!?何が起きたんですか!?』

「詳しい説明は後!!福音!!狙いは…ラウラ!!」

『俺が入る!!』

「狙い変更一夏!!…でも距離をとろうとしてる!!今のうちに全員補給を。」

『『『『了解!!』』』』

 

箒の絢爛舞踏のおかげで戦場は一気にこっちに傾いただろう…

でも相手がいつ落ちるのかはこっちもわからない…

 

『全員エネルギー回復終わりましたわ!!』

『箒!!嫁の近くに!!嫁と積極的に接触して頻繁に回復を!!』

『ああ!!』

『残りの全員福音の動き阻害して気をそらせ!一夏の零落白夜で一気に決めるぞ!!』

『わかったわ。』

『了解しました。』

『シャルロット!!このまま動きの予測を!!』

『わかった!!』

 

ラウラの声で全員で囲むように動く、このまま行けば落とせる…

そんな時福音が羽を広げる…

 

「広範囲…違う!!何か来る!!」

『何かって!?』

「ふめ――なっ!!」

 

羽を広げたかと思うと一気に加速をして私のほうに接近する。

コレが福音の瞬間加速か…しまった…この距離じゃ誰も止められない…

シールドユニットとパニッシャーを盾にするが再び羽に包まれ全方位攻撃を喰らう。

シールドエネルギーが一気に削れシールドユニットもボロボロだ…

皆こっちに近づいているが……福音のクローのほうが早いし、射線が重ねられているため今何か撃たれたらかわされて私に当たるだろう…

 

「みんな…ごめん……」

『シャル!!』

『『『シャルロット!!』』』

『『シャルロットさん!!』』

 

叫んでるけど無理だろうな…

福音のクローはもう私に当たりそうになっている。

スローモーションのように辺りはゆっくりと流れている……

これは多分耐え切れないか…目をつぶって身構える。

結局私は落ちちゃったか…

でも結構私がんばったよね…終わったらほめてくれるかなソウ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何がごめんだ、バ~カ。』

「え?」

 

私に爪が当たる寸前。弾丸が当たる音と遅れて聞こえてくる銃声。

数十発の弾丸が正確に福音の爪を弾きさらに全身にくまなく弾丸が当たる。

一発も外れる事のない正確な銃弾を喰らい福音は私から距離をとる。

そんな事より今の声。レーダーには反応なし…でも確かに居る。

銃弾の来た方向を見るとISでようやく確認できるような距離に確かに居る…

ISを装備しているようには見えないが(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)…銃を右手に構えたソウが昇ってきた朝日を背にして宙に浮かんで居た。

 

『悪いシャルロット寝坊したわ。』

「……本当にソウ?」

『多分本物。』

「……怪我は無い?」

『ほぼ半日近く泳いでて体力がヤバイ…ねぇまだ寝てて良い?』

「………」

『な、なんか言えよ……とりあえず……ただいま。』

 

そう言ってソウは多分笑っていた。

ソウは無事だった、確かに帰ってきたのだ。

 

 

 

 

 

お前が今から相手するのはただのガンマン。

そしてお前はそのただのガンマンの前にひれ伏す…それだけだ。

                          ~ヴァッシュ・ザ・スタンピード~




生きてました(テヘペロッ!!)
しかも謎の装備をしています。
あと今日感想を返せないと思いますが…ご了承ください。

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