インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~ 作:filidh
現在俺は部屋に篭って落ち込んでいる。
布団も敷かずに座敷にうつぶせに寝ている状態だ。
あぁ~これで作戦失敗したら絶対俺のせいだわ……
原作よりひどいことしてるんじゃない?俺。
でもさぁ……あそこで誰か言ってあげないとさぁ…
悲惨な目に遭ったときの箒がさぁ…って俺は何誰も居ない部屋で言い訳を一人で考えてるのだろうか…ああ、こんな時ヴァッシュだったらどうするのだろう…
あの人なら一人で勝手に突っ込んで一人ですべて解決できそうな気がするわ……
じゃあ初めからこんなことで悩むことすらないんだろうなぁ…
……いや、多分彼は彼で別の理由で悩むんだろうな………
じゃあ俺がこうなるのは仕方ないのでは?
そんな事言っても作戦失敗したら俺のせいだよな……
と何回目になるか解らないネガティブな堂々巡りをおこなっているとこちらに走って来る気配が…2つ。
ふすまを思いきり開けるシャルロットとその後ろの簪。
「ソウ!!大変!!」
「作戦失敗か!?」
俺は勢いよく立ち上がり自身のISを取りに向かう。
後を付いてきながら簪が叫ぶように話す。
「違うんです!!織斑くんが…」
「一夏がどうした!!」
「トランス状態って言うか…声をかけても反応がないの!!」
トランス状態……まさか!!
俺は格納庫として使われている場所ではなく司令室に向かう。
「作戦前にかなり集中してなかったか!?」
「え?う、うん、鈴と戦った時と同じ感じがするから一人で集中させてくれって…」
「どれだけ集中していた!!その時は声は通じたのか!?」
「う、うん、話は出来たけど…反応は鈍かった。でも今はまったく反応が無くて…」
「何か戦ってる最中に言っていたか!?」
「ごめん…何か言ってたけど中身まではわからない…」
そう言って顔を伏せるシャルロット。
クソ!!流石に原作で起きてない事は予想できん!!
司令室に走りながらシャルロットと簪に質問を投げかける。
「セシリアと鈴とラウラは!?」
「通信が切られた後に飛び出して行きました!!」
「千冬さんは!?」
「織斑先生はさっきから一夏に呼びかけてるんだけど…」
反応がないのか……
千冬さんの声にすら反応しないって事は恐らく俺の声も届かないか…
司令室のふすまを開けると目の前のスクリーンに一夏が映し出されている。
千冬さんは俺の事など気にもかけず一夏に叫びかけているが完全に反応はない。
しかし俺もそれを気にする余裕は無かった。
「なんだ…この動き…」
スクリーンに映し出されている一夏、それは完全に異常と言っていいほどの動きだった。
本来一夏の白式は瞬間加速の動きは早いが高速機動戦専用の機体と並んで飛べるほど基本的な速度はそれほど早くはない。
だが現在モニターに映し出されているのは高速で逃げる福音とそれを直角的な動きで被弾しながらも追い詰めている一夏である。
近くに紅椿の姿が見えるが二人の動きには付いていけていない。
これは…瞬間加速を連続使用、それも急停止を織り交ぜているのか!?
そんな動きをしたら体の方にも負荷がかかるし第一エネルギーが持たない!!
「山田先生!!一夏の体のダメージは!?」
「え?」
「早く!!」
「は、ハイ!!現在それほど大きなダメージはないですが…蓄積されて言ってるダメージがあります……」
「エネルギー残量は!?」
「それが……減りが異常に少ないんですが…残り1/3ほどです…」
どういうことだ!?
あれほど瞬間加速を使えばエネルギーなんてすぐ尽きる。
さらに零落白夜も使用しているように見える……本来ならもうエネルギー切れでもおかしくは無い。本当に訳のわからない機体だ!!
だが一番の問題はあの一夏だ、確かに福音を追い詰めているようにも見えるが…あの被弾数、このままじゃ確実に一夏の方が先に落とされる。
「千冬さん!!俺も出ます!!」
「!?…っ!駄目だ…許可できん。」
「じゃあそんなのいりません、勝手に出ます。」
「やめろ奏!!お前が行ってどうなる。」
「あの馬鹿ぶん殴ってでもつれてきます。」
そう俺が言った瞬間。
『一夏ぁぁあああああああ!!』
<―ドォオオオンッ!!!―>
箒の叫び声にモニターを見るとそこに映し出されていたのは撃墜された一夏だった。
「え…?いち…か……」
「クソ!!馬鹿野郎!!」
呆然とする千冬を尻目に俺は一夏と俺自身に悪態をつきながら司令室を飛び出した。
「一夏ぁ!!一夏ぁ!!!!」
箒は一夏を抱え泣きながら逃げるように飛ぶ。
昔、自身が一夏からほめてもらったことがある少し自慢だった髪型は完全に崩れていたがそんなことにも気が付かないほどに必死だった。
何も関係なく一目散に逃げる。早く一夏を医務室に届けなければ……
そう考えて一直線に飛ぼうとするが福音はそれを許さないように攻撃を加えてくる。
現在一夏を両手で抱えながら飛んでいるため反撃は出来ないし反撃を入れるつもりもない。
ビットもすべて防御に回しただひたすらに逃げ回る。
「邪魔を…するな!!」
かまわずに飛ぼうとするが誘導弾をかわしきれず何発か被弾する。
だが一夏にだけは絶対に当てないように一夏を自身の胸に隠すように引き寄せる。
拠点まであと3kmというところで自身のISが見つけてしまう……
海上の上、漁船が自身の直進する先に存在している。
現在海域は封鎖されているはずである……なぜ!?そう考えるが現在そんな事よりも一夏が…
関係無しにその上を突っ切ろうと思うが――
『戦争になって人が死ぬ。』
奏に言われた言葉が思い浮かぶ。
……駄目だ、このまますすめば自身のせいでさらに問題が…
だが急がなければ一夏の命が……
その動揺のせいか、それとも福音がそれを感じ取ったのか攻撃がさらに熾烈になる。
ハッっとしてかわし続けるがこのままでは流れ弾が漁船に当たる……
体を小さくして一夏を守るようにして別方向に逃げるが追いつかれてしまう。
そして福音は自身の真正面に来て爪を振り上げる…近接戦…かわせない……一夏にあた…
恐怖で口から言葉が出る。
「いやぁぁぁあああああああああ!!!!」
『諦めてんじゃないわよ!!』
そのかけ声と同時に福音が突然はじけるように吹き飛ばされる。
これは……鈴の衝撃砲……
その後福音を狙うようにして何十発の砲弾が飛び福音が箒から距離をとる。
そちらを見るとセシリア、鈴、ラウラの三名がこちらに飛んでくる。
『箒!!嫁の状態は!!』
「一夏が…さっきから意識もなくて…」
『しっかりしてください!!箒さんは早く一夏さんをつれて撤退を!!』
「わ、わかった!!」
そう言って離れようとする紅椿を狙うようにして福音のエネルギー誘導弾が飛ぶ。
当たるかと思った瞬間三人がシールドを展開しながら間に入る。
そしてそのまま反撃をおこなうが一発も当たらない。
『よくも一夏さんを……絶対に許しませんわ!!』
『人の嫁に…なんてことを!!』
『今すぐぶっ壊してやるから覚悟しなさい!!』
三人はおのおの叫び声を上げながら福音に突撃する。
一刻も早くここから離れなくては…
福音はそれも関係無しに先ほどまでと同じように攻撃を開始する。
数分後、戦いは一方的だった。
どれだけ攻撃を撃ち込んでも当たらない、攻撃をかわそうにも3つに分割しているとはいえこちらに向かって飛んで来るエネルギー弾の雨などかわしきれるような弾幕ではないのだ。
それを相手にかろうじてでもかわし続けた一夏…
そして一夏に当てないように逃げ続けていた箒……
ある意味二人は異常だったといえるだろう。だが二人の内、箒のように動く事は彼女たち全員が出来る。
しかし今やるべき事は逃げるのではなく足止めである。
さらに船のほうに向かうエネルギー弾は防がなければならない。
そして今さっきようやく漁船は距離を取ったが今自分たちが逃げ出せばまた戦場に巻き込んでしまう……
そう考え三人はすでにかなりのダメージを負った機体で戦うのだった。
『鈴さん!!前に出すぎです!!』
『こうでもしないとあんたに当たるでしょ!!あんたが落ちたらどうなると思ってるの!!』
『二人とも!!今は敵から目を離すな!!』
そう言った瞬間再び福音の広域攻撃がおこなわれる。
なれでかわしきる事は不可能だが被弾数をさげることはできる。
三人は必死にその攻撃をかわすが…
『『セシリア!!』』
『え?あ……』
三機の中で一番装甲が薄いブルー・ティアーズに対して、回避に集中しているうちに福音は近接攻撃を仕掛けていた。
クローに対しすかさずインターセプターを展開するがはじかれる、ここで自分が落ちたら二人の方が…
『後ろに倒れろ!!セシリア!!』
『っ!!!』
突然の声にそのように動く事で何とか攻撃をかわす…だがこれでは追撃が……
その瞬間奏が凄まじいスピードで突撃してくる。
左手に持ったパニッシャーでおもいっきり福音を殴りつけ、そのまま力づくで押し続け三人から距離をとる。そして福音を押し続ける状態のまま全員に通信を入れる。
『全員引け!!早く!!』
『あ、あんた一人で…』
『今のお前たちじゃ足手まといだ!!簪!!シャルロット!!引っ叩いてでもつれてけ!!』
『でもソウ!!』
『邪魔だって言ってるんだよ!!押さえておくのも難しい!!早く行け!!』
そう言って通信を切る。
スラスター全開で距離は何とか稼いだ…がまだこいつの目標になりえる、できるだけこいつを食いとどめねば、三人はもう限界だ。
何発か福音の誘導弾を喰らいながら皆のところから1kmは引き離しただろうか、そこでパニッシャーの機関砲を展開する。暴風のような音を出しながら砲弾の雨が福音を襲う。
向こうも負けじとエネルギー弾をこちらに撃ち出すがすべてパニッシャーで叩き落とす。
しかし数発は当てられるがやはり早い。なれないパニッシャーでは戦うのは無理だろう……
こちらの砲弾の雨に対して向こうはエネルギー弾の雨である。
パニッシャーを盾にして防ぐがこのままじゃこちらが先に削り殺されるな……
そのまま数分間停滞するように戦闘を繰り広げていると千冬さんから連絡が入る。
『奏、全員帰還した、貴様もすぐに下がれ!!』
「了解!!」
パニッシャーのロケット弾数発を撃ち出し一気に爆発させる。
その隙に全速力で離脱を……よし福音はこちらには来ない…!?
「クソ!!千冬さん帰還できません!!」
『何!?こちらではお前が離れているように――』
「福音が街のほうに向かってます!!ここで止めなきゃ日本に上陸しちまう!!」
『な!!』
「……ここで食い止めます。一旦通信きります。」
『オイ待て!!そ―』
その言葉が言い終わる前に俺は通信を切る。
時間制限は5分…その後壊れるのを覚悟で3分…
その間に福音を二度落とす。全力で相手をしよう。
俺は自身のイメージ・インターフェイスを起動させる。
この颶風のイメージ・インターフェイスによる機能は最終的に大きく分けて3つである。
一つ目は予測。
二つ目に情報共有。
最後にして俺のためだけに作られた機能。
『イメージのまま機体その物を動かす』
と言ったものだ。
簡単に言うと思考の反射のレベルでビットなどの武器ではなく機体その物を動かすのだ。
普通ISは肌から発せられる電気信号等を一度取り込みそして再びそれを機体に送り込み動いている。
だがこのシステムは完全に体とは関係無しに思考がそのままダイレクトに機体を動かすことになる。
もちろんその間も俺の体にも信号は送られているため普通の人ならば体の動きがついていけず骨折するらしいのだがそれでようやく俺と同じスピードで動ける。
もちろん機体には負荷がかかるが無理やり力ずくで動かすのよりは数倍マシらしい。
だが今は機体のことなど気にしている余裕はない、俺はパニッシャーをしまうと右手に銃を展開する。だが向こうはそんな事関係無しにエネルギー弾の雨を撃ちこんでくる。
「お嬢さん、ダンスはお好き?……って何で俺いつもダンスって言うんだ?」
と口に出してはいるが適当な軽口だ、意味は無い。
向こうも聞こえてはいないだろう。
雨のようにこちらにめがけて飛んでくるエネルギー弾。
だが全力で動けるのならかわせないほどではない。
スラスターで福音に接近しながら銃を撃つ。
確かに全力で動けるな、これなら負ける気がしない。
相手が逃げるようにしてこちらにエネルギー弾を撃ち込んでくるがそれすら紙一重でかわし右手の銃で正確に相手の体を撃つ。
先ほどまでの砲弾の雨と比べればまったく威力が低い上に連射速度も遅い。
だが正確に相手の体を狙い撃ちしている。向こうも全力でかわそうとしているのだろうがそれすらも予測して撃つ。
この程度の動き、全力で動けるのなら相手の攻撃をかわしながらでも簡単に出来る。
だが早いところ落とさなければ……本番はこの後なのだ…
福音に急接近して弾幕を展開、さらにパニッシャーでミサイル弾を数発撃ち込む……
これでどうだ?と思うが煙の中からエネルギー弾がまた飛び出てくる。
バニッシャーで防ぐとさらに距離をとろうとしてくる。逃げ回る気か……
こいつはヤバイな……現在俺の最大攻撃力の兵器を当ててもまだぴんぴんしてるな…
早いところセカンドシフトに移行させたいんだが……
特殊兵器を発動してから時間は既に1分は経過している。
…………覚悟は決まった。
俺はそのまま両手に武器を展開したまま戦いを継続させた。
シャルロットは現在司令室の近くの部屋で専用機持ちの全員で集まっていた。
全員と言っても一夏は未だに医務室で治療中、箒はその場を離れようとしない……
そして何よりソウが帰ってこない……雰囲気は全員暗いものだった。
あの時のソウはいつものような余裕を見せることもなくひたすらに必死な声を出していた…
そして私は助けになることすら出来なかった……
そんな事を考えていると部屋のふすまが開く。
ソウが帰ってきたかと思いハッとそちらを見るが…ソウかと思ったが箒だった。
箒は髪も乱れたまま死んだような顔をしている。
一夏の意識はまったく戻らないらしい……
「…織斑先生が……全員を呼んでいる…」
「……すぐに行きましょう。」
セシリアの言葉で全員立ち上がる。
福音がどうにかなったのだろうか?
司令室内に向かうと中の雰囲気は暗い……
なぜ山田先生は目を赤くしているのだろうか…
嫌な予感がするがまさかソウに限ってそんなわけがない……
織斑先生がゆっくりと口を開く。
「……今から15分前、風音により
「本当ですか!!千冬さん!!」
「さすが奏さんです!!」
鈴とセシリアが声をあげて喜ぶ…
ならソウはどこにいるのだろう…医務室だろうか……
それに作戦が成功したというのになぜこんなにこの部屋の雰囲気は重苦しいのだろうか…
織斑先生が言葉をひねり出すように話す。
「……その後……事態は急変した。」
「「「「「……え?」」」」」
「…
「先生……ソウは?」
「……今から2分前、セカンドシフトした
織斑先生は手をきつく握っている…
かなり強く力をこめているのだろう…血が滴り落ちている。
「千冬さん…?冗談ですよね?」
「……」
「先生……奏さんは…今どこに?」
「教官……教えてください。」
「……現在、風音奏は……MIA(作戦行動中行方不明)にされており……さらに捜索はおこなえない……」
「な!?なぜですか!!」
「……あいつが撃墜された所で
ぐらっと世界が揺れたような気がした。
ソウが……帰ってこない…
話を聞くや否や鈴が部屋を飛び出す。
「凰!!……どこにいく気だ…」
「……奏を探しに行ってきます…」
「話を聞いていなかったのか?捜索はおこなえ――」
「じゃあ奏の事はどうするって言うんですか!!」
鈴は両目に涙を浮かべながら叫ぶ。
それに対してラウラが言葉をあげる。
「鈴!!教官にそれを言っても仕方ないだろう!!」
「じゃあ奏はどうなるのよ!!」
「では私たちだけで探しに行くとしよう!!途中また
「もし無事って何よ!!アイツは…アイツは……!!」
「落ち着いてください!!シャルロットさんの前ですよ!!」
普段大声を出さない簪の声で一気に静まる。
気が付かなかったが私はいつの間にか床に膝をついてへたり込んでいた。
……さっきから背中から支えてくれていたのはセシリアと簪だったんだ……
ソウが……撃墜されて行方不明……?
頭がまったく追いつかない……
「……お前たちに奏からの言葉がある…だが正直今のお前たち…いやシャルロットに直接聞かせるは――」
「いえ…聞かせてください…お願いします…」
「……山田先生…頼む…」
「…はい…」
織斑先生の声で山田先生がスクリーンに映像を映した…
目の前のスクリーンに画像が映し出される。
いきなり光の雨が映っている。
恐らくこれはソウの目線だろう……
アレが
背中にエネルギー状の羽が生えている…そしてその羽からありえないほどの数のエネルギー弾が放出されておりすべてがこちらに向かってきている。
『ッチ!!あ~千冬さん!!こいつの基本性能はさっき言ったように今までの1.5倍くらいは想定した方がいいですね!!でもマグネットコーティングよりはましか……でもシャアの気持ちが少しはわかりました。』
『いいから帰還しろ奏!!』
『そうしたいのもやまやまなんですけど…既にスラスターすらぶっ壊れてて逃げれる気がしません。っていうか二~三本とれっちゃったんですけど……おっさん怒るかな?あっそうだ。死んだふりしたら逃がしてもらえるでしょうか!?このままだと本当に『ふり』が抜けそうですけど……』
『馬鹿なことを言うんじゃない!!教員が既にそちらに向かっている!!それまでもたせろ!!』
『あ~……こっちの方に向かわせるのはやめたほうがいいっすね。ぶっちゃけ後1分持たせるのも難しいですから。』
『話すのをやめて、いいから集中しろ!!諦めるな!!』
『あはは、いやぁ…もともとこんなにもたせられること自体想定外だったんすよねぇ。』
そう軽口を叩きながらもソウは銃を撃ち続ける。
パニッシャーはエネルギー攻撃に対してはかなり優秀なシールドのはずなのだが…すでにボロボロで十字架の形すらしていない……ソウの機体はほとんど装甲がなくなっており…先ほどからアラートが鳴り止むことなく響いている。
右手の銃は…使う素振りすら見せない。
織斑先生がボソボソと話し始める。
「このとき既にシールドエネルギーは底をつきかけ、さらに武装の二つの内右手でよく使っていた小銃は壊れ…あの十字架もミサイルランチャーのほうは壊れ、機体自体…ほぼ全壊状態で動いているがおかしいほどだった…」
「そんな……なぜそんな状況で撤退をしなかったのですか!?」
「奏が離脱を試すたびに……福音が街のほうに向かって飛行を始めたからだ、途中3回ほど撤退を試したがどのタイミングでも奴は街のほうに向かって行った……」
「先生方は……何をしてたんですか?」
「………ほぼ全員落とされた…途中落ちた教員を撤退させるためにアイツはさらに無茶を……」
「そんな……」
スクリーンの方ではソウが機関砲を撃ち続けるが…
突然先ほどまで出ていた弾丸が突然でなくなる。
『あら……弾切れか……そりゃこれだけバカスカ撃てば無くなるか。』
『ソウ!!何でもいい!!逃げろ!!』
『いやぁ…逃がしてもらえればいいですけど…僕彼女に気にいられてるみたいで…これって脈あると思いますか?』
『風音君!!いいから!!』
『あはは……スイマセン、流石に無理っぽいですわ…さっきからスラスターもほとんど反応ないですし、弾もなし、あるのはこのボロボロの鈍器くらいですね…』
『教員は後どれくらいで付く!!早くしろ!!』
『あ、そうだこれ6人ってか一夏も意識があるなら7人か…見せてやってもらっていいですか?あと多分あいつらほっとけば勝手に
と本当にピンチの状態でもいつもどおりに笑っているのだろう、普段のソウの話し方そのままである。
現在ソウは時間稼ぎをしているのかそれともこれしかもう出来ないのかパニッシャーでこちらに来るエネルギー弾を叩き落としている。
『あ~…セシリアは……こいつの高速移動は癖が強い、俺の戦闘映像で確認して癖を覚えろ、そうすればお前なら当てられる。当てれるんならもうお前なら倒せるさ。』
「奏さん……」
『鈴!!みんなを引っ張るのは頼むぞ!!男らしさ…てのは違うな。お前らしさで周りを引っ張ってやってくれ。』
「本当になんなのよ…この馬鹿……」
俯き気味のセシリアと既に泣きそうな鈴。
画面のでは福音が接近して来ている。
『ラウラはとりあえず……もう少し常識を覚えましょう。まぁお前に対して今不安なのはこれくらいだな。みんなを頼む。』
「……了解した。」
『簪ちゃん。悪いけど箒とシャルロットのこと頼んでいい?多分ぐちゃぐちゃなってると思うからさ……本当に悪いね、後でなんか奢るよ。それとも何か作ろうか?』
「……」
『箒、お前ならこいつ相手でも十分戦える、それは今のところ一番長く戦っている俺が保障する。だからこいつ相手にびびるなよ?』
「……いいから…早く…逃げろ……」
簪は何も言わずに唇を噛みながら画面を見続けている、ラウラは了解したとだけいいそのままの姿勢で見続けている。箒はこれが既に過ぎ去った時間だというのに逃げるように言っている。
現在接近戦と同時にエネルギー弾が雨のように降ってきておりかわそうとしているが被弾している。
『一夏は起きてなかったら鼻に山葵でも突っ込んでやれ、起きてるなら…まかせたわ親友。あと後で一発殴らせろこの馬鹿!!多分説教は既に千冬さんにされてると思うしさ。』
『奏!!何でもいいから逃げろ!!教員がもうすぐ到着する!!』
織斑先生がそう言った瞬間、福音はソウの体を蔽うように自身の翼で包み込む。
あたり一面完全に福音の翼だ。
ソウはため息と同時にパニッシャーをさげる。
まるで諦めたのかのように。
『あ~……シャルロットは………今度遊びに行くのどこにする?ちょっと今考える余裕なくてさ…考えといてくれ、じゃあまた。』
そういうと全方位からエネルギー弾がソウを襲い……映像は途切れた。
人は死ぬ。だが死は敗北ではない。
~ヘミングウェイ~
今まで読んでいただきありがとうございました!!
コレで『風音奏』の物語は終了です!!
ス イ マ セ ン 、 嘘 で す 。
ということでかっこつけて
『足手まといだ!!』
とか言っておきながら落とされました。カッコワルッ!!!
新型機での初戦闘は黒星スタートです。それ以前に次の試合はあるのでしょうか。