インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~   作:filidh

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第六十二話 第一楽章

俺の突然の箒に対する否定の言葉に回りも俺の言葉に驚いている。

俺はそれを完全に無視して再び千冬さんに話しかける。

 

「正直作戦もスペックもこの上なくいい作戦だと思いますが肝心の箒がこれです。」

「ど、どういう意味だ!!」

「そのまんま、箒、君今すごい舞い上がってたでしょ?この作戦がなんだかわかってる?下手したら死人が出るんだぞ。」

「私と紅椿なら守りきれる!!」

 

箒も完全に敵意をこちらに向けている。

作戦前に緊張するような事を言わせたくないから言わなかったが…

ここでこのまま送り出したら落ちるのは一夏だ、そんな事は(こいつ)に嫌われたってごめんだ。

 

「例えば箒、お前作戦領域内に船が入ってきたらどうする?」

「それとこれが何の関係が有るんだ!!」

「いいから聞け。そして答えろ。」

「なっ……」

 

箒は俺がまったく笑わずに普段とまったく違う重々しい雰囲気で話していることに気が付いたのだろう、勢いが無くなる。

 

「お前が今攻撃をかわせばもしかしたら船に攻撃が被弾するかもしれない、だがその船は犯罪行為を犯して進入してきた上に今お前が攻撃をかわして反撃すれば相手は落ちる。どう行動する。」

「………船に気を配りながら戦う。」

「そうか、じゃあ広範囲攻撃が来たらどちらを守る、一夏かその船か。」

「……一夏だ。」

 

その言葉を聞いた瞬間一夏と篠ノ之博士以外ははっとした顔をする。

篠ノ之博士が興味なさげにいう。

 

「さっきからなんなの?えらそうに。」

「織斑先生、これが理由です。」

 

俺はなるべく篠ノ之博士に関わらないようにして話す。

この人に説得が無駄な事はわかりきっている。

出来る事なら仲良くしたいが今問題なのは箒で時間も無い…無視しよう。

一夏も俺が何を言いたいか解らないのだろう。顔をしかめている。

こいつの場合人を守る方を優先する奴だから言う必要はなかったが言うしかないだろう。

 

「……奏?どういうことなんだ?」

「一夏、確かにもしかしたらそんな事は起きないかもしれない、だがな銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)のせいで死人が出たら確実に自国民が殺されたその国とアメリカ・イスラエルはかなり険悪になるだろうし最悪戦争だ。」

「え!?どうして!?」

軍の兵器で人が死んだんだ(・・・・・・・・・・・・)確実に大問題になる、それも条約では禁止されている軍事使用中でだ、今までは他国は黙認してただろうがこんな問題が起きたらそこを指摘する国は多いだろうよ。恐らくこれに直接関係ない国も非難するだろうよ。『条約違反』だと、『かの国には危険すぎて今後軍部の開発は認められない』ってね。」

「いや……まさか…」

「それにIS学園自体もかなり非難されるだろうよ、『普段アレだけえらそうなことを言ってるのにこの程度か!!』てね、下手な話自国に新しい学園を作るからISコアを渡せって話にすらなるだろうな。さらに言うなら銀の福音《シルバリオ・ゴスペル》のパイロットもかなり罪に問われるだろうよ、下手すりゃ死刑だな。俺なんかでも今パッと思いつくのでもこれだけある。恐らく本物の政治家ならもっといろいろ思いつくだろうよ。」

 

その言葉を聞いてハッとする箒。

そして何よりも口には出さないが一夏はその船を守る(・・・・・・・・・)

箒もその程度の事は一番よくわかるだろう。

だが今の箒では一夏との連携が取れずに撃墜されかねないのだ。

しかし篠ノ之博士はかなりイライラしているようだ。

あ~あ、完全に目をつけられたな俺。

 

「まぁ…これは可能性の話であってそんな事は起きないでしょう…ですがそこら辺の判断が箒は出来てません、ここにいる一夏を除く専用機持ちはすぐさま理解していた事をです。確かに今成功率を上げるのが大切ですが現状をしっかりと理解できていない人物を使うのには賛成できません。」

「あのさぁ…さっきから勝手に言ってるけどそんなの巻き込まれた方が悪いだけでしょ?箒ちゃんは関係ないじゃない。」

「博士がそうお考えでも周りがどう動きくはわかりません。それに箒お前の判断次第で人が死ぬことになる任務をやるんだ、自覚しろ。」

「わ、私は……」

「お前の腕の問題じゃない、お前の腕はかなり成長してると思うし成功できる要素は十分にある。だからはしゃぐな、お前の持つその機体の重さを自覚しろ。」

「……風音そこまでだ。」

 

ここで千冬さんから止めが入る。

まぁこれはこの後起きる事を知らない人物からすればすべて妄想の、しかもただ箒を追い詰めている発言にしか聞こえないだろう……だがそれでも言っておかなければいけないのだ。

千冬さんは顔をしかめてはいるが……多分俺の言っている事は否定する気は無いんだろう。

千冬さんが箒に何かかしらの注意を言うつもりだったのか…だが俺が言った方が箒には伝わっただろうし何より千冬さんは………結構言葉足らずだ。

出来ればこの後モチベーションをあげてやりたかったんだが…

まぁ…言いたい事は言ったからいいか。後はみんなに任せよう。

 

「了解しました。自分の勝手な妄想で、士気を下げるような発言をした僕に対する罰則はどうしますか?」

「……貴様はただ注意しただけだろうが。」

「それでもほぼ確定した作戦にケチをつけて箒を脅した事には変わりありませんし……何より周りに示しが付きませんよ?」

「………ならば作戦終了までお前は自室で待機だ。」

「わかりました。ということで箒、お前は十二分に大丈夫だが気を引き締めろ。遊びじゃないし責任は必ず付きまとう。だがお前の実力なら絶対に成功するさ。紅椿の性能じゃなく僕は君を信じるよ。」

「そ、奏。」

 

いつもどおりの笑顔で箒にそう言って笑いかけながら肩を叩いた後一夏の方に向かう。

 

「一夏……」

「奏……安心しろ、絶対俺が成功させる。そうすれば箒のこともさっきの話もまったく関係ないんだ…箒だって…大丈夫だ!!」

「おお!!心強い!!…まぁ……骨は拾ってやる。」

「いや!?失敗するみたいに言うなよ!!」

「あはは、緊張しすぎだ。肩に力はいりすぎ、お前と箒なら大丈夫さ。初めから何の心配もしてないよ。」

 

笑いながら肩を叩いて部屋を出ようとする際にシャルロットに小声で話しかえる。

 

「(箒を頼む。)」

「え?」

「おとなしく自室で成功の報告待ちしてますわ。じゃあ邪魔者は去ります。」

 

そうシャルロットの返事を聴かずに部屋から出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてしばらくすすんだ廊下で俺はうずくまっていた。

………マジで落ち込む…

もっとスマートなやり方はなかったのか?

これ下手したら箒落ち込みまくって作戦失敗とかになりかねないぞ!?

うわぁ……最低だ……もうこのまま海に頭突っ込んで死にたい…砂浜に埋まってたい…

俺は自身のがた落ちしたテンションのまま自室に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソウがいなくなった後の作戦室兼、司令室は空気が入れ替わっていた。

先ほどまでの奏の発言のせいで箒は落ち込むかと思ったが落ち込みはしなかった。

ただ自身が舞い上がっていた事は自覚できたのだろう先ほどまでのうれしそうな顔はしていなかった。ソウは私に何を頼むといったのだろうか……

 

「篠ノ之、先ほどの風音の言葉を聞いて、まだこの作戦に参加すると言うか?」

「……はい、一夏と奏は私を信じるといったので……大丈夫です。」

「そうか……では作戦の準備をしろ!!」

 

そう言って一度作戦会議は終わった。

だが現状準備をすると言ってもそれは箒のセッティングぐらいだろう。

篠ノ之博士は先ほどの話が面白くなかったのか無機質な顔をしている。

私やセシリア、鈴、ラウラ、簪は何もする事はない……

箒の方を見ると緊張しているのか、それとも責任の重さを自覚しているのかとても硬い表情をしてる。恐らくこれがソウのいう『箒を頼んだ』ということなのだろう。

そんな時鈴が箒の肩を叩く。

 

「箒!!奏のこと見返してやりなさい!!」

「え?だ、だが奏の言う事は…」

「いいから!!アイツに作戦の成功を見せ付けて『心配しすぎだ!!この馬鹿!!』とでも言ってやりましょう!!アイツ心配しすぎでいつか禿るわよ、絶対。」

 

そういたずらをするように笑いながら言う鈴。

箒は戸惑った顔をしている。

私も鈴のやりたいことに気が付きそれに乗る。

 

「そうそう。箒、早いところ終わらせてさっさとソウの罰則終わらせちゃおうよ。多分今頃部屋で本でも読みながら『あ~ゆっくり休めて幸せ』とでも言ってるよきっと。」

「ですわね、奏さんのことですからうまく戦いから逃げれて喜んでるかもしれませんわよ。」

 

とセシリアと笑いながら箒の肩を叩く。

ラウラは真面目な顔をしながら箒に向かう。

 

「箒、私は正直今でも奏兄の言っていることが正しいと思う。」

「そうだ…私は確かに自分が選ばれて舞い上がっていた…」

「だが今のお前なら大丈夫だろう、それに奏兄のお墨付きだしな。」

「箒ちゃん……終わったら一緒に海で遊びましょう?その前に奏さんに何を言うか考えないといけませんね。」

「簪……そうだな、私も奏に一言言ってやろう。」

 

ラウラと簪に肩を叩かれた後に笑いながらそういう箒。

ソウが頼んだのは恐らくこういうことだったんだろう。

一夏の方は?と思い見てみるが……かなり集中している…

雰囲気がいつもに近づいた箒と比べ一夏は……別人のように集中していた。

 

「一夏?大丈夫?」

「ああ、シャルロットか…安心しろ集中してるだけだ。」

「緊張しすぎてへましないでよ!?」

「ああ…わかってる。」

 

一夏の反応はそっけない。

普段なら鈴にこんな事を言われたらしっかりと反応が帰ってくるのだが…

流石に不安になりセシリアが心配そうにたずねる。

 

「一夏さん…大丈夫ですか?」

「ああ…なんというか鈴と戦った時と同じ感じになりそうなんだ……悪いけどしばらく集中させてくれ。」

「わかった。嫁の言う事だ、しかたない。」

「ああ。すまない。」

 

集中を深めるために一人座る一夏。

なんというか普段の一夏からは感じられない凄みを感じる。

その集中のための沈黙は作戦開始まで続いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

現在海上10キロ地点上空で俺と箒は待機している。

感覚は待ち望んでいたあの時の感覚に近い。

あまり関係ない事は考えないでさらに集中するんだ…

自身の憧れのため、友人のため。

失敗は出来ない、失敗したら多くの人が死ぬかもしれない…

何よりもそれのせいで千冬姉が…だから俺は全力で…あの時よりさらに深く…

………いや長く…ちがう……………鋭くだ…

……………研ぎ澄ますんだ………………一振りの刀として……ただ相手を斬りつけろ……●●……

自分のことを………●●……何よりも邪魔なものを………………●せ……

 

『織斑、篠ノ之準備は良いか?』

「…はい大丈夫です。」

『こちらも同じくです。』

 

千冬姉と箒の言葉を聞いても集中は切れないな…

この分なら鈴と戦った時以上にすごい動きが出来そうだ。

あの時は途中で切れちゃったもんなぁ……

…………鋭く……さらに鋭く……

武器の重さを……人の命の重さ…いや…人の命を奪う武器の重さ………………自覚しろ…

と意識を深く沈めるように集中すると千冬姉からの声がかかる。

 

『二人とも来るぞ!!』

『っ!!一夏!!』

「………………了解。」

 

そう言って俺は箒にかまわず前に突撃する。

アレが銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)……巨大な羽のようなスラスター…さらに全身真っ白だな、白銀といえば言いのだろうか…

そんな事今は関係ない。思考から斬り捨てろ。

今やるべき事はアレを落とすことだけ、必要なのは相手の動きのみだ。

こちらに気が付いたアレはエネルギー弾をこちらに撃ち込む……

零落白夜発動、かわせないものは斬り捨てる。

 

『織斑!!無駄にエネルギーを消費するな!!』

「……」

『一夏!!私の後ろに付け!!』

「………」

『おい、織斑?……一夏、聞こえないのか?』

 

二人からの声が聞こえる……

関係ない(・・・・)、思考から斬り捨てる。

周りのことも気にせずにスラスターで突撃する。

 

『お、おい!!一夏!!―――』

「……殺す(・・)。」

 

ほうきがなにかいっている……思考から斬り捨てる。

突撃するようにしてアレに向かう。

何か撃ち込んできているな……回避は可能…

瞬間的に停止、その後別方向への急加速をおこなう。

体に負荷がかかるが許容範囲。だが連続使用は不可。

 

『―――――――!!――!?』

『―――!!!』

『―――――――――』

『――――――――――――!!!!』

 

何か聞こえるが作戦に支障は無し、思考から斬り捨てる。

距離がある程度詰る、瞬間加速を使用。

間合いへの進入に成功。

零落白夜発動、同時に雪片弐型で斬りつける。

敵、腕部のクローによる応戦。

記録、近接戦での敵主兵装の確認。

後方より支援としてのビット兵装確認、同時に敵機からのエネルギー誘導弾の砲撃を確認。

回避行動をと同時に敵機に距離を取られぬようにする。

回避行動失敗、数発被弾。

作戦続行に支障は無し。

 

『―――――――――!!』

『―――!!―――!!―――――!!!』

『――――――!!』

『――――!!』

『――――――!!!』

『――――!!』

 

多数のISコアよりネットワーク通信接続確認。

問題になりかねるのですべて遮断、斬り捨てる。

 

「―――かぁ!!」

 

僚機パイロットの声を確認。

作戦行動には関係ないため思考から斬り捨てる。

現在敵機との高速戦闘中、近接戦ではこちらに分があるが相手は距離を取ろうとエネルギー誘導弾を撃つ、完全回避不能。

回避運動の破棄ヲ思考…突撃する。

雪片を相手の首を切るヨうに振るう…が重い……

当てル事ができず距リをトられる。

雪片ニ型が重い……ナぜだ?思考……

……命の重さ…オリムラ チフユ ノ コトバ…フヨウ キリステ……

…………………………………………………………………………

 

「あ……」

 

俺は今何を捨てようとした?

千冬姉との思い出を…それどころか俺は今まで何を考えていた(・・・・・・・・・・・・)!?

俺はここで考えた、否、考え込んで止まってしまった。

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)がそれを見逃すはずもなく最大の(障害)に全力で攻撃を加えるのだった。

 

「一夏ぁぁあああああああ!!」

 

箒の声とこちらに向かってくる姿が見えるがそれよりも前に俺は光に飲み込まれた。

 

 

 

 

 

化物を倒すのはいつだって人間だ。人間でなくては、いけないのだ。

                                 ~アーカード~

 




ということで原作より早く落ちました。
それにすぐに殺すって言葉を使うなんて…キレる十代ですね。むしろ斬れる十代?
やっぱり原作の方が強いのでは!?……へんなこと言ってスイマセンでした…
ということでとうとう原作から大きく離れてきました。

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