インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~   作:filidh

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第六十一話 VS紅椿

海岸が遠く見えなくなるほど距離をとる。

途中おっさんに連絡を入れたらとりあえず許可は得れた。

ただし特殊兵装の使用は無し、使うとしても3分のみ。

武装の方は一通り説明は受けてるが……アレをぶっちゃけ本番で使うのは勇気がいるな…

まぁ今は使いたい衝動の方が上だけど。

千冬さんの指示ではここら辺で待機だっけ…

箒は申し訳なさげな顔をしている。

このままでは試合にもならないな…通信は聴かれる可能性もあるし近くに行って直接声をかける。

 

「箒、通信は?」

「……切ってる…言いたい事があれば言ってくれ…」

「じゃあまず一言『気にすんな』。こうなったのは基本的にお前の姉のせいであってお前のせいじゃない。まぁ…お前が頼んだんだろうけどこうなるとは思わなかったんだろ?」

「……だが実際…」

「それを含めて気にするなって言ってるの。今は俺との試合のことだけ考えろ。それが終わってからいくらでも一緒に考えてやるからさ。一夏だって協力してくれるさ?」

「……」

 

そう言いながら箒に苦笑しながら笑いかける。

こいつは単に一夏の隣に立つ力がほしかったんだろう。

それがあそこまで発展しちまうとは思わなかったって所か……

まぁ考えが甘い事は否定できないけれど……それを与える側のほうが問題だよなぁ…

まぁ与える側は脳みそがいろいろとおかしい事になっちゃってる人物だ止められるのは千冬さんのみ、そしてそれを見逃しているって事は止める方法がないって事だよな…

多分そこに千冬さんが動けない理由があるんだろう。

まぁとりあえず今箒のモチベーションを下げてもどうにもならん。

 

「とりあえずお客さんAコース、Bコース、Cコースどれにします?」

「…なんだそれは?」

「Aコースは俺が全力で逃げる、Bコースは俺が華麗に逃げる、Cコースは僕が泣きながら逃げる。今なら全部同じ値段、さぁどれ!!」

「…全部逃げてばかりではないか。」

「それが僕の生き方です!!」

「…胸を張って言う事ではないだろう。」

 

そう言ってくすりと笑う箒。

先ほどまでと比べて幾分かマシな顔になったな。

その後一旦目をとしてすっと真面目な顔になる。

 

「頼みがある。」

「料金はまけないよ?」

「全力で戦ってほしい。」

「……とりあえず7分間に僕に一撃でも当てられたら本気で戦う。」

「…わかった。ではよろしく頼む。」

 

そう言って距離をとる箒。

さぁて大見得切ったけどどう戦おうか…

って言っても落とす気は無いんだよなぁ…ここで落とせは箒のテンションは下がるし篠ノ之博士には目をつけられるしでいい事がまったく無い、さらに言うなら……試合とは言え人に銃を向けるのはいい気がしない……ハァ…逃げたい……

そう考えていると通信が入る。

 

『こちらの準備は終わった。二人とも準備はいいか?』

『はい、大丈夫です。』

「先生。緊張しておなかが痛いのでトイレに行ってもいいですか?」

『双方問題は無いようだな。』

「まさかのスルー!?」

『くだらない事はいいからさっさと構えろこの馬鹿が。』

 

千冬さんはまだあの状態のままか…

一体何のせいでここまで機嫌が悪いんだ?

そこは今気にしても仕方ないか…

俺は武器も構えず戦いに思考を移す。

 

『では……試合開始!!』

 

俺はすかさずスラスターを展開して一気に箒に近づく。

箒も同じことを考えていたようで面をくらっている。

まさか遠距離武器の使い手が接近してくるとは思わなかったのだろう。

俺は勢いを落とすことなく突っ込む。

箒は勢いを止め俺を両手に持ったブレードで切りつけようとする。

だが俺はすかさずスラスターの向きを90度変え間合いの外にでる。

結果まったく見当違いのところをきりつける箒。

俺はそのまま距離をとる。

 

「どうした箒、しっかりと集中しないと当たらないぞ?」

『っく!!武器も出さないで!!』

「出さないのは作戦。」

 

と笑いかけるが関係無しに切りかかってくる。

そのまま近くで斬撃をかわす。確かに打鉄の時の箒と比べ動きが格段に早いな…

だが鋭さは感じないな。時間切れまでこうやってかわすのもありかなぁ…と思うと今度は背中の方から二枚のビットが飛んでくる。

なるほど二つじゃ手数が足りないから二枚のビットを含め全方位の攻撃をしようって事か…

だが悪手だ。

 

<―ドンッ!!―>

 

という銃声と共に弾き飛ばされるビットと二振りのブレードそして体の方には数発の弾丸が当たり箒はビットを自身の近くに配置する。

俺の右手には今まで使ってきた銃に良く似た、だが改造が施されているらしい銃が握られている。

ちょっと早撃ちで無茶をしたが機体からのダメージアラートは無し…いいぞ。

 

『これがお前の早撃ちか…喰らってみるとなおの事わかる…化け物じみてるな…』

「そんな失礼な。それに……まだ上はあるよ?」

『……行くぞ!!』

 

再びブレードに力を込めこちらに突っ込む箒。

自然体で構えることなく箒の動きを見る。

ある程度動きは予測できるがこれはさっきみたいに近距離でかわすのは骨がおれるな…

仕方ないすべて撃ち落そう(・・・・・・・・)

俺は自然体のまま箒の斬撃をすべて撃ち落す。

柄を撃ち貫きはじき返す。VTシステム戦で見せた動きだ。

この程度なら機体にそれほど負荷はかからないだろう。

箒は必死にブレードを振るうが見えない壁に弾き返される用にまったく俺の体には届かない。

 

『ッ……ならば!!』

 

箒はいったん距離を取り二本のブレードを構える。

とたんにブレードから桃色の光が放たれる。

さっき見せたあのエネルギー弾か、まぁわからない状況で使われるのならまだしも、どういう風な攻撃をするかわかってる状況なんだ不意打ちにすらなりやしない(・・・・・・・・・・・・・)

銃ならモーションが小さく反応が遅れるだろう、だがその武器から出させるエネルギー弾は刀を振らなければ出ない上に振り方で大体何を出すかがわかる。

近接攻撃に織り交ぜて使うならまだしもここまでわかりやすく使ってくれるなら反応もしやすい。

箒は右腕のブレードを突くように振るう。

…が俺の弾丸で弾き飛ばされまったく別方向に向きを変える。

そのまま撃ち出さなかったって事はある程度自身の意思で放出するかどうかを決められるのか。

左手をなぎ払う様に振るうがそれすらも弾き飛ばす。

向こうも一度俺の様子見をしようとしているのか動きを止める。

 

『……強いな…』

「うん?ありがとう。」

『だが!!』

 

そのかけ声と同時に箒がこちらに突撃をしてくる。

まぁ、下手に遠距離で戦うよりそっちの方がよっぽどいいよな。

自然体は一切とかずに感覚だけを研ぎ澄ませる。

箒は両手のブレードを光らせながらビットを展開する。

俺に処理できないレベルの手数を出すつもりか。

あたえられるダメージも自身の装甲なら耐えられるって考えかな?

ならばこっちも手数で応戦しよう(・・・・・・・・・・・・)。それもめちゃくちゃな奴で。

箒の斬撃をかわしビットも弾丸ではじく。

そしてわざと距離を取って隙を作る。

 

『!!貰った!!』

 

箒の左腕のブレードからエネルギー状の斬撃が飛ぶ。

そして俺はそれをかわさない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奏が被弾した!!」

「嘘でしょ!?アイツ余裕な感じで何やってるの!?」

「いえ……確かに当たりましたわ!!」

 

その頃海岸では一夏たちが動揺していた。

あの出鱈目()が被弾したのだ。今までどんな事があってもすべての攻撃をかわしてきたアイツがである…。

一夏はちらりと自身の姉を見るが表情は一切変っていない。

そして自身の妹がやっと攻撃を当てたのに束の反応は薄い。

そして何よりあわてそうなシャルロットと簪。兄と慕っているラウラは落ち着いているのだ。

 

「落ち着け、奏兄は喰らったんじゃなく受け止めたんだ。」

「ソウ、無茶するなぁ…」

 

そういわれて全員再び試合をISを通して見る。

そして自身の目に映ったのは普通では考えられないものだった。

 

「……一夏…奏が持ってるのって…」

「いや…いや、いくらアイツが神父や牧師を目指してるからって……」

「……なんですの…あれ…」

「……奏さんの…アイディアで出来た武器らしいです…」

 

簪の言葉に全員唖然としてそれを眺める。

奏の体の前に突き出す様に展開されていたもの。

それは誰がどうみても巨大な白い十字架だった。

ほぼISと同じ大きさ、その中心はノズルのようになっていてそこを左手で持っているのだ。

 

「…あいつなんていう罰当たりなもの作って…」

「い、いえ…ある意味信仰深いのでは…」

「アレで箒の攻撃を防いだのか…って事はシールドなのか、シャル?」

 

と一夏はシャルロットにたずねる。

シャルロットは苦笑いをしながらその質問に答える。

 

「……ソウいわくとんでもでたらめ兵器だよ、あれ。見てれば多分わかると思う。」

 

そういわれて再び試合の方を見るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…エネルギー兵器は一切効かないって聞いたんだけどなぁ…ダメージはいってるじゃん。」

『……なんだその十字架は。』

 

自身のある意味俺にとっての目玉兵器をぶっつけ本番で試してみた。

一応対エネルギー攻撃用のシールドにもなるはずなのだがダメージありとの表示だ。

と言っても表面上は一切見えないしダメージがあると言っても微量だ。

箒は突然現れたそれにどきもを抜かれている。

 

「うん?僕の新兵器。さて、今までは箒が攻めていたけど今度は…こっちの番だ!!」

『!!』

 

唖然としている箒にスラスターで一気に距離をつめ接近戦を挑む。

箒は不意をつかれたが、両手のブレードで右から左にかけて横薙ぎに振るわれる巨大な十字架(それ)を防ごうとするが、質量差と突撃時の勢いのせいで防ぎきれず弾き飛ばされる。

 

『!?鈍器か!!』

「いや、兵器だよ。」

 

振るった十字架の先端一番長くなっているほうを箒に向ける。

ガシャっと言う音と共に箒に向けたれた十字架の一部が左右に開く。

そして十字架そして中から現れたのは巨大な機関砲の砲身。

さらに唖然とする箒。

そして

 

<―ゴォォオオオオオ!!―>

 

という銃声とはあまりにも言いにくい、風が唸るような轟音をならしながら銃弾、否砲弾が放たれる。

今まで撃たれていた銃弾と比べ格段に威力が高い砲弾が雨のように撃ち込まれる。

箒は数十発はもろに喰らったがその後なんとか展開装甲を防御形態に変え攻撃を防ぐ。

 

『な、なんだ!?それは!!』

「僕の考えた最強の個人兵装、名づけてパニッシャー。」

 

正確には考えたのは俺ではないが…

そう言いながら防御形態の箒に向けていた砲身を180度回転させる。

先ほどまでの砲身は再び閉じ代わりに反対側の短い方が開きミサイルランチャーが現れる。

 

「箒、耐え切れると思うなよ?」

『な!?』

 

その言葉と共に撃ちだされるミサイル弾。

箒のシールドなど関係無しにそれを撃ちこむとかなりの爆発が起こる。

そしてその爆発の煙が収まる前に箒が飛び出す。

 

『はぁぁああああああ!!』

 

かけ声と共に振るわれるブレードに対し俺はパニッシャーで応戦する。

確かにこの武器には鋭さは無いかそれ以上にかなりの硬度の装甲と質量が与えられている。

これで殴れば鋭さなど関係ない鈍器と化す。

箒は俺の攻撃が大降りになると踏んだのだろうが残念ながらそこも考えている。

横薙ぎの接近攻撃にあわせ機関砲を撃つ。

かわしたと思えばそのままの流れでパニッシャーを半回転、ミサイル弾を撃ち込まれる。

それもかわせたかと思うとそのミサイル弾を右手の銃で撃ちぬかれ目の前、もしくは後ろで爆発させられる。

そして爆発の衝撃を受けている間に接近、そのまま回るようにして再びその鈍器が振るわれる。

箒は完全に砲弾の嵐の中に放り込まれた状況だった。

しかし…流石に本家のように自由自在の近距離戦は出来そうにないな。

現在はどちらかと言えば銃弾が来るぞ~って脅しながらパニッシャーの近距離戦をやっているようなものだ。しかもどこかぎこちない。

さてそろそろ時間だし、一応受け止めたとはいえ一撃は貰ったんだ、本気を出そうか。

俺はパニッシャーを拡張領域内にしまう。

いきなり収まった嵐から開放された箒はこちらに疑問を投げかける。

 

『……どうした奏…』

「一応さっき攻撃当てたられたからね、本気で行こうかなって。」

『ならなぜアレをしまった!!』

「アレで戦ったらアレが強いのであって僕の力じゃない。今から見せるのが僕の本気だ…それに……こっちの方が10倍は強い。」

『っ!!』

 

そう言ってこの颶風のシステムを起動しようとするが、ここで千冬さんの横槍が入る。

 

『風音、篠ノ之。試合はそこまでだ。』

「あれ?もう十分経ちましたか?」

『わ、私はまだやれます!!』

『問題発生だ、直ちにこちらと合流しろ。』

「了解しました。」

『……了解…しました。』

 

不満げな箒だが千冬さんの言葉には逆らえない。

それに問題という事はようやく来たか…銀の福音。

俺と箒はそのまま千冬さんたちとの合流を目指すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大広間に集められたのは一年部の専用機持ちと千冬さん、そして山田先生だ。

一応ここが作戦本部扱いになるらしくいろいろと機材がおいてある。

そして……篠ノ之博士はどこに行った?

 

「では、現状を説明する。二時間ほど前、ハワイ沖で試験稼動にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型の軍用ISである『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が制御下を離れて暴走。そして監視空域より離脱したとの連絡があった。」

 

この話を聴いた瞬間全員の顔に緊張が走った。

結局根本的に止める事はできなかったのか…

まぁ多分どっかでつながってるとは思うけどさ。

 

「その後、衛星による追跡の結果、福音はここから10km先の空域を約一時間後に通過する事が分かった。学園上層部からの通達によって、我々がこの事態に対処する事になった。」

「質問いいでしょうか?」

「……いいだろう。」

「この作戦で参加できる兵力は僕ら8人と先生方だけですか?」

「…そのとおりだ。現在自衛隊、アメリカ、イスラエル軍両方共に動く事はできない。」

 

反応を見るに千冬さんも納得してる訳じゃないのか。

そして俺の質問に対しての答えではじめに出てきたのがその三つって事は本来動くべきところはそこだけど何らかの理由で動けません…ということか。

 

「現在……という事は動く事に期待できるので?」

「……現状なんとも言えない。」

「……了解しました。」

 

そして動けない理由は時間と言った物理的なものではなく政治的な理由か…

援軍は期待できなさそうだな……

俺が質問を終えると続いてセシリアが手を上げる。

 

「目標ISの詳細なスペックデータを要求します。」

「わかった。ただし、これらは二ヵ国の最重要軍事機密だ。けして口外はするな。」

 

そう言ってデータが公開される。

軍用の第三世代ISか…ここに書かれているスペックだけでもとんでもないな。

 

「広域殲滅を目的とした特殊攻撃型・・・・オールレンジ攻撃を行えますのね。」

「この特殊武装が曲者って感じかな。」

「追尾弾ではなく誘導弾…しかもエネルギーだから基本かわす事しか出来ませんね…」

「攻撃と機動の両方に特化した機体・・・・厄介だわ。」

「いずれにせよこのデータでは格闘性能が未知数だ。教官、データはこれで全てですか?」

「ああ、そのとおりだ。」

 

機密優先か…そして足りない情報で高速移動中のIS相手の作戦を考えろか。

偵察……これはやめたほうがいいな、下手をしたら偵察する方が落とされる。

遠距離からの狙撃……接近される前に落としきれるかが不明だ。

海上での不意打ちは無理、罠をはるのも不可能……

まともに囲んでの面制圧……広範囲攻撃で確実にこっちの被害の方が多くなるだろう。

そうなると……

 

「一撃必殺で決めるしかないですかねぇ……」

「……」

 

千冬さんは何も言わない。

恐らく既に作戦は思いついていたんだろう。

一夏の方を向いて話しかける。

 

「一夏。」

「なんだ?」

 

きょとんとする一夏。

恐らく現状にもろくについてきていないだろう。

千冬さんが何か言おうとするがさえぎるように俺が一夏に言う。

 

「俺の考えでは、お前の必殺の零落白夜で一撃で決めるしかない。」

「で、ですが狙撃で!!」

「向こうは高速で移動してるんだぞ?どうやって撃ち落す。さらに言うなら狙撃で落とすとしたらどれだけ時間がかかるかもわからない。こっちの方が先に息切れになるぞ。どうする一夏。」

「待ちなさいよ!!なら私たちで囲んで攻撃すれば――」

「広域攻撃を連続でされて終わりだろうよ、かわし続けるのはほぼ不可能。その上俺たちが一人でも落ちたらそいつをその広域攻撃から守らないといけない、そのまま芋蔓でお陀仏だろうよ。」

 

誰も反論はないか…いや誰か思いついてくれればいいんだけど。

もし俺が考え付かないような案があるならそれに乗りたいくらいなのだ。

俺の作戦はいわば『一夏に押し付ける』と言ってるのと同じだ。

他のやつらは広域攻撃が来ないように遠方で待機。

しかし下手に囲んで攻撃するより一撃で決めた方がいい。

 

「お、おい、奏。しっかりと説明してくれ。」

「じゃあ一夏、説明する――」

「いや、私から話す。」

「……いやぁ僕の見せ場になりますし、説明させてくださいよ織斑先生。」

「下手に気を使うな。それは私の仕事だ。」

 

そう言って千冬さんは一夏にどのような作戦か説明する。

失敗した、先に説明してから一夏に言うべきだったか…

どこに自分の弟にすべてを押し付ける命令をしたがる姉が居るというのだ。

 

「作戦は織斑、お前の零落白夜の一撃で決めるのが確実だ。これが現在考えられている作戦で一番成功率が高い。」

「お、俺の・・・・・」

「織斑、これは訓練ではなく実戦だ。覚悟がないのなら無理強いはしない。」

 

一応こう言うが……

一夏に拒否されたら全員での波状攻撃する事になるだろう…いつ切れるか解らないエネルギー相手の持久戦……確実に一人ミスれば作戦は失敗だろう。

それに福音が地上に上陸されたらとんでもない事になるだろう。

しかし一夏はしっかりと千冬さんの顔を見て真剣な顔で見る。

 

「織斑先生。俺…行きます!!」

「……わかった。では作戦をまとめるぞ。今作戦は織斑の零落白夜の全力使用が前提となる。そのため織斑の護衛として二機……いや、一機が限界だろう。この中で一番機動性がある機体は何だ。」

「教官、護衛なら奏兄が最適ではないでしょうか!?」

「いや、確かにこの中で一番適任なのは奏だろうが…こいつの機体はまださまざまな試験すら終えていない不確かな兵器だ。作戦中に不具合が起きた場合最悪の事態になりかねん……」

 

確かにそうだが…まぁいざとなったら黙って出よう。

俺が心にそう決めているとセシリアが声を上げる。

 

「織斑先生わたくしのブルー・ティアーズは現在高機動パッケージの最終試験をおこなっています。これなら予定されているスペックを満たして―――」

「ちょっと待ったーーー!!!」

 

と声がする。

声がするほうを見ると天井からあの篠ノ之博士が顔を出している。

とぅ!!というかけ声と共に降りてきた博士は千冬さんの下に駆け寄る。

 

「束……関係者以外立ち入り禁止だ。」

「まぁまぁ、ちーちゃんも硬い事言わないでさ。そんなことより!!ここは断然紅椿の出番なんだよ!!」

「なんだと?どういうことだ?」

「それはね~……」

 

と解説を始める篠ノ之博士。

簡単に言うと紅椿の展開装甲を用いれば超高速機動を行えるらしい。

さらにあの防御力と攻撃力、単純に銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)が紅椿の方を脅威と判断しその分一夏が一撃を決めやすくなるわけか……

 

「…束、紅椿の調整にはどれくらいかかる?」

「7分あれば余裕だよ♪」

「そうか…やれるか篠ノ之?」

「え?」

 

織斑先生に問われて箒は一瞬戸惑う。だが……

 

「はい!やります!」

 

と声を上げる箒……

ああ、完全に舞い上がってるな……

自分が選ばれた事を単純に喜んでる、一夏と一緒に戦えるってだけしか考えてないな……

仕方ない。やりたくなかったが……俺は声を上げる。

 

「千冬さん、自分は反対です。」

「……何言ってるの?あんたの意見は聞いて無いんだよ?」

 

と俺が反対と言うとすぐさまに篠ノ之博士が冷たい視線で俺をにらみつける。

ああ、本当に気はすすまないが言うしかないなぁ…

ため息をつきたくなるほど憂鬱な気分で俺は話し始めるのだった。

 

 

 

 

 

どんな馬鹿げた考えでも、行動を起こさないと世界は変わらない。

                                ~マイケルムーア~

 




ということでやっと出せた!!とんでもでたらめ兵器!!
殴ってよし!!撃ってよし!!盾にも良し!!ただし馬鹿みたいに重い!!
と言ったでたらめ兵器ですね。

箒に対しては…とうとうこう出るしかなくなりましたね。
一応この瞬間まで奏は箒を信じていました。まぁ結果これでしたが。
実際自身の影響がどれほどあるのか確かめたかったという感情もありますねぇ…

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