インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~   作:filidh

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第四十八話 対戦相手発表

試合の前日の放課後とうとう一回戦目の相手が発表された。

やはりというか案の定一回戦目の相手はラウラと箒……そしてなぜか簪だった。

え?お前なんで参加してるの?

確かこの時期の簪は……ああ、そうか。

打鉄弐式は本体の方は既に完成してるからか。

武装の方も『山嵐』以外はすべて使えると……

確かにデータ集めとしてはこの上なくいいだろうがちょっと予想していたよりきつい戦いになりそうだな……

丁度近くに簪が居たため声をかける。

 

「よ、簪ちゃん。一回戦目であたちゃったね。」

「……奏さん出ないんじゃなかったんですか?」

 

とちょっとにらまれる。

そういや…戦いは嫌いで出ないって言っておいてこの有様だからな……

ここは素直に謝っておくか。

 

「いや…僕は出る気なかったんだけど織斑先生に言われてね…まぁ巻き込まれちゃったって言うか勝手に暴れた罰というか…」

「?何かあったんですか。」

「ちょっと…頭に血がのぼって…アリーナ内で大喧嘩をしかけてしまいまして…」

 

俺が暗い表情で恥ずかしげに話すと簪は驚いていた。

 

「……奏さんからですか?」

「……結果的には…ハイ…」

「……誰と?」

「…ボーデヴィッヒさんと……もう本当に情けないというか…結局、嘘ついた形になっちゃってごめんね?」

「………」

 

というと簪はいまだに驚いていて反応は無い。

もう少しちゃんと謝った方がいいかと思ったらくすくすと笑い出した。

 

「ど、どうしたの?」

「…奏さんも怒って喧嘩するんですね。ちょっとびっくりしちゃいました。」

「そりゃ怒る時は僕だって怒るさ。本当に恥ずかしいからあんまり笑わないでよ…」

「そうですよね、ごめんなさい。でも想像できなくて。」

 

と言ってさらに笑う簪。

そこまで面白かったのだろうか。俺も笑いかねながら話す。

 

「それにしても簪ちゃんが出場しているのはちょっとびっくりした。」

「箒ちゃんに頼まれたんです。私と一緒に戦ってくれって。」

「そうだったの。」

 

なるほど、そして空いた残り1枠にラウラが入った感じかな?

 

「箒にも伝えといて。『僕はお前のことを応援してるけど勝負は別だよ?』って。」

「嘘はついてないけどずるいですね。」

「そんなこといわないでよ。まぁいい勝負をしよう。」

「はい解りました。では。」

 

そう言って俺は簪と分かれる。

あの子も結構明るくなってきたな。やっぱり近い友達が一人いるだけで結構違うのだろうか…

さてこの後は俺の部屋で作戦会議になるのかな…

と思いこの場を離れるととラウラがこちらに向って歩いてくる。

ふむ……今は何もせずにすれ違うとするか…

しかし向こうの方から話しかけてきた。

 

「おい、織斑一夏に伝えろ、『お前は必ず私が倒す』とな。」

「…うん?僕に言ってるの?」

「貴様以外に誰が居る。」

 

なんというコミュニケーションのとり方だろう。

俺は苦笑しながら話す。

 

「じゃあせめて名前を呼んでから話してよ、誰に話してるか解らないからさ。あと挨拶をすればなおの事いいね。さらに言えばいきなり本題に入らずにちょっと世間話からとかさ。」

「……必要性を感じない。第一、貴様は私の一番の敵だ。」

「一夏は?」

「あれは私の獲物だ…それと親しげに話しかけるな。」

「あ~確かにあれだけ喧嘩したしね…僕も言いすぎたと思うよ、ごめんなさい。」

 

と俺はラウラに謝り頭を下げる。

一方ラウラは、訳がわからないという顔をしている。

あれだけ俺は怒ったようにしゃべっていたんだ。

数日後にすぐ謝るとは思っていなかったんだろう。

それに親しげに話すなといっているのにこの対応だ。

そういや俺を倒して謝らせるって言ってたような気が……まぁ良いか。

だが彼女の疑問はそこではなかったらしい。

 

「うん?どうしたのボーデヴィッヒさん。」

「なぜ貴様は(テキ)に謝っている……」

「なぜって……敵だとおもってないから。」

「どういう意味だ…始めから貴様はおかしい。」

「おかしいって……どういう意味さ。」

「馬鹿にされてもまったく反応がない、実力が無いためかと思えばあれほどの実力を見せる。腰抜けかと思ったが対面してみればそれとも違う。だが敵に平然と頭を下げる…いったいなんなんだ貴様は?何を考えている。」

 

ああ、ラウラなりに一応俺の事は気にかけていたのか。

俺はラウラに笑顔を向けた話しだす。

 

「なんなんだって言われてもなぁ…それは僕が一番わからないや。」

「貴様…またも私を馬鹿に――」

「違う違う!単に僕自身、昔に記憶が無いからさ。なんなんだって言われてもはっきりと答えられないだけだよ。」

「……」

 

この答えではラウラは納得できないようで俺をまだにらんでいる。

俺は少し考えた後にラウラに話しかける。

 

「う~ん……どうしてそういう行動をしてるのかって言われれば、みんなで仲良くしたいからかな。」

「……どういう意味だ。」

「誰だって痛いのはいやだろ?それにできるだけみんなで笑顔でいたいじゃないか。」

 

俺の尊敬する、俺の目標はそういう人だったのだ。

そういうとラウラは俺のことを鼻で笑った後に話す。

 

「はっ、そんな事は無理に決まっている。」

「そうかな…全世界がそうできるとは言わないけど、身近なところはできると思うんだけどね。」

「不可能だ…貴様は人間の汚さを知らない。」

 

そう言って俺のことをにらむラウラ。

この子はその汚さを間近で見ているからこういうのだろう。

ラウラは言葉を続ける。

 

「……今まで自身の味方だと言っていた相手から突然役立たずといわれ廃棄するといわれた事が貴様にあるか?今までの仲間から蔑まれた目線で見下された事は貴様はあるのか!?」

「………そういう経験はないかな?」

「ほら見ろ、そういうことを知らないから――」

「でも見知らぬ相手から突然笑われながら銃で撃たれた事はあるかな。」

「……」

 

ラウラは俺の言葉を聞くと表情を変え俺を見る。

今までは興味の無いものと話す感じだったのに今始めて俺に興味を持ったようだ。

周りは誰も俺たちの会話を聞いてないようだ…もう少し話してもいいな。

俺はいつもどおりの笑顔を変えないで話す。

 

「これでも一応幼い頃は一人で生きてきたからね、頼み込んで働いたあげく給料も無くただ働きに終わったこともあるし、荷物を奪おうと集団で追われたり、ただそこにいるのが気に食わないから警察に通報された事もある。突然わけもわからず誰かに殴られたこともあったな。」

「……ならば解るだろう、人間はそういう生き物だ。」

「でも、そんな僕のことを助けようとしてくれた人もいた。僕が逃げている時に庇ってくれる人もいたし身元もわからない僕を三年間育ててくれた人もいた。」

「何が言いたい。」

「確かに人間は汚いよ、自分のために誰かを平然と傷つける。でも同時に誰かを助けるのもまた人間なんじゃないかな。僕はそう思うよ?」

「それは詭弁だ!!」

 

と声を大きくするラウラ。

これがラウラの根底にあるものだろう…

人間は怖い。何時裏切られるかわからず味方なんていない。

ただ自身を救い上げてくれた千冬さんのことを尊敬しているが仲間なんて一切いない。

これが彼女に見えるこの世界なんだろう。

ラウラの声に流石に回りも気がつきこちらに注目し始めたかそろそろ話を閉じよう。

俺は笑顔を崩さず話し続ける。

 

「でも誰だってきれいごとのほうがいいでしょ?だから僕はそれを目指しているだけ。」

「………」

「納得できないなら試合で僕に勝ったらもう少し詳しく話してあげるよ。そっちの方が君も解りやすいでしょ?」

「……」

 

そういうと返事もなくラウラは俺に背を向けて去って行った。

始めからこんな感じでやることができればなぁ……まぁ言っても仕方がないか。

自身の未熟を感じながら俺は自分の部屋に急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋に入ると既にシャルロットと一夏が部屋の中で何か話していた。

二人とも俺に気がつくとあわてて話すのをやめた。

 

「お、お帰りソウ。遅かったね。」

「おう!!邪魔してるぜ奏。」

「………なんかあからさまに怪しいけどあえて聞かないでおいてやる。」

 

この二人の話しの内容は気になるが聞いてもこの二人は絶対に教えてくれないのだ。

まぁ……大体何聞いてるかは予想つくけど。

 

「とりあえず一回戦目から相手はボーデヴィッヒさんに簪ちゃんに箒だ。このうち箒以外は専用機もちだ。そして箒も最近の訓練でめきめき力を増している。油断はできない相手だ。」

「どうやって戦うつもりなんだ?」

 

一夏が俺に聞いてくる。

そういわれてもなぁ…正直俺は自身の戦いに関しては鍛え上げれても集団戦とかやったこと無いし……

そう考えているとシャルロットが声を上げた。

 

「まず方法としては先にラウラを倒してしまうか、他の二人を倒すのが安全だと思う。正直聞くだけでもラウラのあの能力は一対一で圧倒的に有利に立てる。だから先に三人がかりでラウラを落とすか、その前に二人を倒した後にラウラを三人がかりで倒す方がいいと思うよ。戦う最中にもラウラの能力の射程等を図ってそれを全体で把握。……ねぇ一夏。ラウラの囮は君に任せてもいい?」

「え、お、おう。」

「なら多分ラウラと戦う時も、近接で強力な一撃を持つ一夏が攻めれば多分彼女はすぐにあの能力を使うと思う。その時に一人が二人の牽制、もう一人がラウラへの攻撃をすればある程度安全に戦う事はできると思う。でも簪の専用機のことを考えると……ソウ。」

「あ、はい。」

「ソウのやって見せた銃弾で射線をずらすのってどんな時でもできる。」

「え、あ、ああ。ある程度弾が届く範囲ならいくらでも……」

「じゃあソウが二人の足を止めている間に僕がラウラを攻めるって感じが一番良いかな……」

「「………」」

「?どうしたの二人とも。」

「いや、あまりにも…」

「シャルロットの作戦がね……びっくりしただけ。」

 

突然真面目な目であそこまでてきぱきと作戦を立て始めたのだ。

しかも反論するべきところも見当たらないし……全部シャルロットに任せてしまおうか…

そっちの方が良いような気がしてきた。

だがまぁ……そうも言ってられないから意見は出そう。

 

「ならその作戦でさ、僕が二人を押さえ込んでる間にシャルロットと一夏の二人でラウラを落とすのは可能?」

「………一夏が僕を信じてラウラに攻めつづけてくれればいけると思う。」

「どうだ一夏いけそうか?」

「いやむしろお前二人相手にして戦えるのか?」

「多分いける。いやむしろやってみせるって言った感じかな。」

「……解った。じゃあソウは箒と簪の相手で僕たちでラウラを倒そう。」

「ああ解った。」

 

そう言ってある程度の作戦は決まった。

俺は作戦内容よりも一つだけ気になっていた事があった。

シャルロットは普段俺の前だと一人称は『私』だったはずだ。

だがこいつが今話す限り一人称はすべて『僕』だった……

わざとやっているとは思えないし…ある種の自己防衛なのかな…

戦いについて詳しく知っているのは自分()ではなく誰か()だと…

……これは考えすぎか。まぁ癖になっているだけかもしれないし。

俺がそんなことを真面目に考えているとシャルロットが不安そうな顔でこちらを見てくる。

 

「ソウ…今の作戦に問題あった?」

「?いや、まさか。僕が考えてたのは別の事さ。」

「うん?もしかしてシャルロットについて考えてたのか?」

 

と俺に聞いてくる一夏。

こういうときだけこいつ勘が良いんだよな…

俺はなんでもないように話す。

 

「まぁ…そんなとこだな。今頃どういう風に動いてるかなぁ…って。」

「どういう風にって……どういうことだ?」

「あれ?一夏には……そういえば言ってなかったな。ほとんどシャルロットの問題はほぼ解決したも同然なんだわ。」

「……はぁぁぁぁぁぁああああ!?」

 

と叫ぶ一夏、正直うるさい。

一夏はそのまま俺に叫ぶ。

 

「俺聞いて無いぞ!?そんなこと!!」

「僕言って無いからね、そんなこと。」

「言えよ!!俺だって本当に心配してたんだからさぁ!?」

「だから今言っただろ?解ったの今朝のことなんだよ。」

「そういうことじゃなくてだなぁ!?……はぁ…そういえばこんな奴だったなお前。最近は真面目なとこしか見てなかったからそれに慣れてたけどさ……」

「お前のこういうときの理解力がよくて僕はうれしいよ一夏。」

 

と俺がからかうように言うと一夏は俺をにらんでいる。

よし、これで話しの流れは変えられたかな?

そろそろ真面目に話そう。

 

「さて、冗談はここまでにして真面目に話すとしよう。シャルロットにも詳しくは説明していないしな。」

「始めからそうしてくれれば助かったんだけどよ…」

「……私も今朝になってからある程度大丈夫といわれても納得できないんだけど。」

 

と不満そうに俺を見る二人。

 

「まずシャルロット、落ち着いて聞けよ。」

「……わかった。」

「数日前にデュノア社長と直接交渉をした。」

「っ!?」

「え?デュノア社長ってことは…シャルロットの父親か。」

「ああ、それである程度の事情は把握した……一夏すまないがこれに関してはお前に話すことは難しい。」

「……どういうことだ?」

「そのまんまの意味だ。俺自身どこまで話していいか判断がつかない。」

「……わかった。結果だけ頼む。」

「結果としてデュノア社と倉持技研との共同開発による俺の専用機の開発、さらに俺のデータ公開、秘密裏に簪のISのパーツ造り。最後にシャルロットを開放するための下地が完成する。」

「……研究が成功すればの話か?」

「失敗しても俺の専用機について以外はほぼ解決している。」

「そっか…わかった。とりあえずしばらくは大丈夫ってことだな。」

「ああ。」

 

俺が一夏と離している間もシャルロットの反応は無い。

すこしだけ下を向くように考えている。

俺が社長と話したということがそこまでショックだったのだろうか…

 

「………シャルロット。今言ったように俺はお前とデュノア社長の互いの考え、行動をすべて知っている。」

「……あの人の考えって…」

「それはお前がデュノア社長に聞きたいというなら俺が必ず話させる。俺から聞きたいというのならいくらでも俺が話してやる。」

「……」

「知りたくないというのならそれでもいい。ただ一言だけ俺の考えを言わせてもらうと、俺は最初から最後までお前の味方だ。聞きたくないって言うんだったら俺はそれで言い。そう言っても良いほどのことをお前はされたんだからな。」

「……ごめん、もう少し考えてからでいい?」

「全然。むしろ何時でも良いからな。」

 

そう言うとうつむきながらもコクンと頭を下げる。

俺は笑いかけながら返事をする。

するとシャルロットは思い出したようにして話を変えた。

多分こいつなりに気を使ったんだろう。

 

「ねぇ、ソウはまだラウラのこと……」

「うん?怒ってないよ。あ、一夏、ボーデヴィッヒさんから伝言『お前は必ず私が倒す』だって。さっき言われたわ。」

「……そうか…お前は何か言われたか?」

「理解不能だって。ただ謝っただけなのに。」

「それは仕方ない。むしろそればかりはラウラと同意見だ。」

「そんな、ひどい!!」

 

と泣くような真似をする。

一夏は笑っているがシャルロットはいまだに聞きたいことがあるようだった。

 

「シャルロットどうした?」

「……ソウ、ラウラのことで何か隠してる事ある?」

「どうして?」

「……この前ソウの顔がすごい不安そうにしてたから…。私の事はもう解決してるって言ってるのに未だに何か不安そうだったからさ…それに今ラウラのこと話題に出したら雰囲気が変ったし…」

 

と確証は無いのだろうがぼそぼそと話すシャルロット。

そこら辺は確かに俺は一番不安に思っている。いわばラウラに関しては策はまったく無くその場で自身の実力で倒さなければいけない。しかも使える武器はISという満足に扱いきれない武器を使って助けなければいけないのだ……

緊張しているというより不安に押しつぶされそうなのとそれ以上にこんな状況にしてしまった自身を情けなく思う感情が入り混じった状態なのだ。顔から出ていたのだろうか…。

しかし一夏は気がついていなかったようで俺の顔をじっと見ている。

 

「いや、そんなことは無いよ?」

「………本当に?」

「いや、まぁ…」

「………本当か?」

「一夏まで…そんなに不安そうな顔してる?」

「いや、俺にはわからない。」

「顔じゃなくって雰囲気の方…」

 

ふ、雰囲気か…そこはどう隠せばいいんだろうか…

しかしなぜシャルロットが気がついたか?なんてことは聞かないが…どうしようか。

このまま事情を説明しても良いんだがそれだと下手な話、それを気にしすぎて一夏がラウラに落とされるかもしれん、それだとラウラを救出する時問題だ…

だけど今この雰囲気で挑んでもいろいろ影響ありそうだなぁ…

詳しく話さないけどある程度覚悟させておいた方が良いかな…

でも俺の現世の記憶でも戦闘内容詳しくおぼえて無いんだよな…確か一夏が助けてフラグを立てるんだったはず…

と思い二人を見るとじーっとこっちを見ている。

まぁ適当に話すか。

 

「まぁ…白状するとちょっと悪い予感がしてね。それも特大の厄ネタを感じた時みたいな。」

「……どれくらいの?」

「……無人ISが現れた時も同じ感覚がした…」

「うわぁ…お前へんなこと言うなよ…」

 

と嫌そうな顔をする一夏。

一方シャルロットはまだ俺のことを疑っている。

 

「本当に?」

「本当に。しかも俺の予感って悪い方は本当によく当たるからさ…この間の喧嘩もあってなおの事不安になってさ。」

 

といつも以上の笑顔で返す。

しかしこいつはまったく笑わない……いったいどこでばれたんだろうか…

何とか話をそらすしかないようだな。

 

「まぁ僕だって不安になる事くらいあるってこと。それにこの間少し怒っただけで一夏なんて変なものを見るような目で見るし…いったい僕のことをなんだと思っているんだ?」

「い、いや。だってお前口調まで変ってた…そういえば奏。前から少し気になってた事あるんだけど聞いていいか?」

「うん?なにさ。」

 

丁度よく一夏が話を変えてくれた。

この際何でも良いから話を変えよう。

 

「いや。お前普通自分のことを『僕』って言ってるじゃないか。」

「まぁ…そのとおりだね。」

「何でシャルロットと話すときとか怒ったときは『俺』なんだ?」

 

そこか…怒ったときはともかくシャルロットの方はな…

 

「素が出てるっていう感じかなぁ…もともと僕育ちがあれじゃん。」

「…え?もしかして重い話し?」

 

と焦る一夏。

お前こういうときの気の使い方はいいのに女性の行為に関しては駄目なんだよ。

絶対わざとやってるだろ。

俺は笑いながら話を続ける。

 

「いや?全然。んでその後教会で世話してもらった事はしってるだろ。」

「ああ、しってる。」

「そこで暮してるガキが教会に来る人に凄まじく口悪く話してたら格好がつかないだろ?だから自分で治したんだ。その時に日本語の方の一人称もちょっと乱暴な感じのする『俺』から『僕』に治したのさ。まぁ…今思うとそこまで口が悪かったとは思わないんだけどそういうことを気にした時期があるって事。」

「じゃあ私と話すときは…」

「ちょっと昔が懐かしくて少し戻っちゃうだけ。気になるんなら直そうか?」

「え!?だ、大丈夫だよ!!」

「そっか。あと怒った時はまったく意識して無いから昔の言葉使いになるって感じかな?意識して無いし。」

「そうだったのか……」

 

と納得する一夏。

シャルロットの方もいつもの顔に戻っている。

恐らく俺が放す気が無いということを察してくれたんだろう。

 

「それと明日の戦いに話を戻すけど―――」

 

とちょっとだけ自身の目的のために作戦に細工をしておく。

その後も、ただ適当な話をしながら次の日に備えた。

さて……一応ラウラの対策も話しているし、今の作戦だと恐らくVTシステムは作動しないはずだ。

後はいもしない神様にでも祈るとしますか…

 

 

 

 

欠陥の多い人間は、特徴も多い人間だ。

                              ~本田宗一郎~




ということで次回対ラウラ戦ですね。

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