インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~   作:filidh

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今回からやっと原作キャラクターと絡みます(少ないけど)。
お楽しみくだされば幸いです。ではどうぞ。


第二回モンド・グロッソ開催

さて俺がアストリットの婆さんに拾われてから3年が経過した。

コレくらい時期が経つともう互いにそれほど気を使うわけでもなく、居候としてではなくある程度家族として生活をおくっていた。婆さんには流石に俺の身の上をすべてではないがある程度のことを教えている。7歳までの記憶が無いこと、今まで旅をしながら記憶を探していたこと、自身のことでわかるのは《風音》という文字だけで、おそらくこの文字から自身は日本人だと考えており、いつか日本に行って自身について調べたいということ。婆さんに本当の事を言えないのはなんだか少し心苦しいが『布団で寝てたと思ったらいつの間にか別世界に来てました』なんて言ったら確実におかしくなったと思われるだろう。

婆さんは周りの人に俺を孫として紹介してくれたおかげかご近所さんも俺と言う人間を受け入れてくれていた。俺もこの世界でできた俺だけの空間を大切にし人助けや婆さんの教会での手伝いなどを通してさらに絆を深めていた。

そんな時ドイツでついに2回目のモンド・グロッソが開幕したらしい。当然開催国であるドイツではかなり話盛り上がり、自国の選手を応援しようと多くの観光客が訪れていた。

ただ俺はこの頃にはもう婆さんの後を継いで牧師か神父になるのも良いかなぁ~とも考えていた。ただ俺自身『神様なんて信じない。居たとしたら一発殴る。』そういう考えなのであまり人に神の教えをいえるような人間ではないので悩んでいたのであった。そうなると正直ISだろうがSFだろうがどうでも良く、正直勝手にやっててください。と言った感じだった。

しかし近所の方々はそういうわけでなくISの試合を見に行きたい!!と言った人が多かった。ただ自国とはいえチケットは馬鹿みたいに高い。そんなのが手に入るわけも無く皆テレビに噛り付くように見続けるのであった。婆さんもその一人だったのだが家のテレビはお世辞にもいいものとは言えず、見ている途中に電源がおちることもあるくらいだった。そんなテレビで楽しみにしている試合を見続けるのも、何かかわいそうでせめて決勝戦くらいは良いテレビで見させてやろうと思い婆さんに

 

「ちょっとISの試合場のある町まで行って来る。お土産に期待して。」

 

といい小さな町からIS開催地の都市まで小さな旅行に出かけたのである。都市についてからすぐに大型テレビを購入し婆さんの家に設置コミでお願いした。コレなら後2日後の決勝戦には余裕で間に合うだろう。金に関してももともとバイトなどもしていたため買うことができてもおかしくない……と思ってくれればいいんだが。

そんなこんなでモンド・グロッソ決勝戦の開催地で、話の種になるだろうと決勝終了まで宿泊しようと思っていたのだが甘かった……なんと綺麗にすべてのホテルが満室、さらにテントで泊り込みをしている観客まで居るのだ。おそらく今この町は世界一人口密度が高いのでは?とそんなことを考えてしまうほど人にあふれかえっていた。

仕方ないから家に帰ろうにも帰りのチケットは既に買ってしまい払い戻しもできなかったのであきらめた。俺は仕方なく昔を懐かしむように野宿することにし、この都市の郊外にある廃墟でとりあえず泊まらせてもらうことにした。

その後は残りの2日間、都市内を観光して周回ることにした。初日にIS関連のおみあげを買い後はまぁ、帰りのバスの時間まで待つだけだ。そんなことを考えながら町を歩くがおそらく現在ISの試合がおこなわれているのだろう。あれだけいた人が一切見えない。あれだけの人数が入るアリーナってどれだけでかいんだよ……とそんなことを考えていると目の前を一人の少年が歩いてきた。

その少年はどう見ても日系、しかもイケメン。おそらく日本人だろう。試合時間中にこんなところを歩いているとはおそらくISにではなくドイツに興味があって来たのかな?

と自分以外の日本人を久しぶりに生で見ていると突然目の前に車が走ってきた。それは少年の前で止まったかと思うと降りてきた数人の男性により少年は拘束、車に引っ張りこまれた。途中「たすっ!!!!」って声がしたなー

…………どう見ても誘拐だ!?しかも途中少年と目があっちまったよ!!こっちに助けを求めるように見ていたが、などと考えている間に車が発進した。

ええい!!仕方ない!!俺は路肩に止めてあった自転車を勝手に借り車を追った。後ろから男性の声がしたが、緊急事態だということで勘弁してもらいたい。

 

 

 

 

自転車を走られること10分。付いたと思われる場所は俺の2日間の宿泊場所、あの廃墟であった。辺りを見渡すと視界の影になるように男たちの車を発見した。良く見てみるが中には誰も居ず既に全員建物の中に入ったのだろう。

俺はタイヤに穴を開けた後二日間のうちに見つけた侵入可能な場所の内一番目立たない小さな窓から侵入した。

中に入り静かに屋根裏を這って行くと男が三人、女性が一人何か話している。隠れながら聞き耳を立てていると何を話しているか解らないがおそらく話し方から女性がボスなのだろう。こんなとこまで女尊男卑か?いや、この考え方は男女差別だな、イカン、イカン。

 

「~ス~まだ~~軍~」

「~やく~~!!~~こ~~時間~!!」

「~しま~……~織斑~~」

「~部屋~~閉じ込め~~~~~…」

「~~~」

「~~~~~~~~~」

「「「了解しました」」」

 

おっと?何か行動を開始するのか?とりあえずしっかりと聞こえた単語は『軍』『時間』『織斑』『部屋』『閉じ込め』か……

『軍』『時間』に関してはよくわからないが『織斑』『部屋』『閉じ込め』は、隙間から話してる所を見ている限り、しきりに鎖で閉められている扉を見ていた。おそらくあそこに部屋に『織斑』少年が閉じ込められているのだろう。

……『織斑』?どっかで聞いたことがあるな、しかもかなり昔に……『織斑』『おりむら』『オリムラ』……!!!!そうだ!!原作主人公だ!!って事はあいつが『織斑一夏(しゅじんこう)』か。って待てよ?……確か原作だとこの後何もしなくても姉の織斑千冬(おりむらちふゆ)に助けられるはず……でも助け出すのに早い方がいいことには変わりないよなぁ、失敗しても後があるし。んじゃあ、がんばりますかとまた天井裏を一夏少年のいる部屋に向けて這っていった。

一夏少年のいる部屋の上の辺りに行くと一箇所だけ中が覗けそうな亀裂があった。俺がそこを覗くと拘束されながら息を切らしている一夏少年の姿が見えた。息を切らしてるところを見ると逃げ出そうと抵抗してたんだろうなぁ、中学生であの人数相手に抵抗するとかガッツあるなぁ……と流石物語の主人公と考えていると「クソ、なんでこんな目に!!」と悪態をつく一夏。悪態をついた後足を思いっきり踏み鳴らした瞬間に俺は亀裂を殴って大きくした。コレで顔を余裕で出せる程度には大きくなった。そこから顔と手を覗かせると一夏は目を丸くして口をパクパクさせていた。何か言われる前に俺は自身の口の前に人差し指を立てながら『しーーーーーー!!』と音を出した。一夏もそれを察してくれたのか口を閉じる。その後顔を引っ込めた後亀裂に手をかけ少しずつ上に削っていく。ボロボロの廃墟でよかった。そう考えているともう人一人なら出られる位に亀裂は広がりもはや穴になっていた。降りるかと考えると扉のほうで音がした

 

「おい!!ガキ!音がしねぇがいきてんのか!!」

「っつ…うるせぇ!!こっから出せよ!!」

 

誘拐犯からの言葉に対しここでもまだ強気。いや~すごいなぁ……

と感心しながら一夏がまた暴れだしたのでそれをみて天井裏から下に降りる。一夏の激しく暴れる音でおそらく外の誘拐犯には気が付かれて無いだろう。

一夏のそばにいくと乱暴に鎖で手が柱に拘束されており、暴れたせいか血がかなり服ににじんでいた。

とりあえずどう話そうか……一応頭で考える時使うのは日本語だが、実際に日本語を使うのは本当に久しぶりだ。うまく話せるだろうか……

 

「うわぁ…痛そ~…」

「……第一声がそれかよ…」

「Oh、うん……大丈夫か!?助けに来たぞ!!(キリッ)」

「色々と台無しだよ!!」

 

と小さい声で話しか、少しでも場を明るくして元気つけようとしたがまだ全然元気だった。さてどうやってこの鎖をはずしたものか。一応南京錠で止めてあるが鎖自体は結構新しい……うん?一箇所だけなんか歪になってるぞ…これ一夏がやったのか?だとしたら恐ろしいな……これが主人公のスペックだというものなのか。

 

「オイ……はずせそうか?」

「……たぶんいける。ちょっと音がするからまた大声で暴れてくれない?」

「わかった」

 

と言うと一夏は大声で「ここから出せよ!!」などと叫びながら足をばたつかせる。俺もできるだけ静かにだが急いでゆがんだ鎖を石で殴った。5分ほどそれをやると鎖に少し隙間ができたのでそれを思いっきり左右に引っ張ると隙間がかなり広がった。

 

「よし、もう暴れなくていいよ。」

「畜生!!……外れたのか!?」

「ちょっと待って……良し。」

 

ジャラジャラと音を立て鎖が外れた良し良し後は逃げるだけだ。

 

「助けてくれてありがとう。俺の名前は織斑一夏、日本人だ。」

「僕は風音奏。詳しい話は後にしてまずは逃げよう。」

「どうやって?ここは窓も無いぞ?」

「屋根裏があるじゃないか」

「そういやそうだったな」

 

できるだけ音を立てず穴を開けた場所に向かう。一夏に先に上がってもらい俺が後から続く。

二人とも何とか屋根裏に入る。そして俺が先頭に立ちながら後ろから一夏についてきてもらい出口から出る。

さて、後はばれる前に逃げるだけだ。二人で廃墟から離れる。すると中から男の声がした。

 

「ガキが逃げたぞ!!」

 

………主よ、こういうときくらい簡単に終わらせてくれてもいいでは無いでしょうか?

 

 

神は、その人が耐えることのできない試練を与えない。

                       「新約聖書」-コリント人への手紙Ⅰ 10-13




次回ようやく戦闘描写入れられるかな?
読んでいただきありがとうございました。

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