インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~ 作:filidh
千冬さんと別れた後すぐさま飯を食うために一夏と合流する事になる。
一夏からの連絡だと今日は屋上で食うそうだ。
昨日の夜からいろいろとあり今日は弁当だ。
と言っても量が量なので3段の30sm四方の三段の重箱に紙袋につめたサンドイッチだが。
屋上のに到着し扉を開けて目に入ったものは
…いろんな意味ですごい雰囲気だった。
怒りのオーラが見える箒。
『出し抜けると思っていたのか?』と言いたげに笑うセシリアと鈴。
訳も解らずおびえるシャ……デュノア。
どうしてこうなったか解らない一夏。
……よし、別のところで食べよう、そう思い扉を閉めようとすると一夏に気がつかれた。
逃げる前にこちらに走って来た一夏に捉えられた、離せ。
「そ、奏!!よくきたな。」
「チガイマス、別人デス。」
「それでいいから一緒に食うぞ。」
「勘弁シテ下ダサイ。」
「お~い、奏も来たしそろそろ飯食おうぜ。」
こいつごり押ししやがった。
引っ張られながら俺は放り込まれた。
さてまずこの雰囲気におびえてるのから何とかするか。
「えっと、一夏。既にデュノアの自己紹介は終わったのか。」
「え!?ああ、まだだったな。」
「じゃあまずそれから行こう、うん。だからまず一時休戦。」
そこで初めて一旦険悪な雰囲気は収まる。
しかし箒の機嫌は悪いままだ。
まぁ大体理由はわかるけどな。
恐らく朝間に考えていたのは一夏を昼食に誘うかどうか。
だがこいつはそれを『みんなで』屋上で食べようという風に勝手に解釈して全員を誘ったんだろう。
しかし自己紹介もまだの内にあの空間に放り込まれたのか……控えめに言ってひどいな。
そんなことを考えているときにデュノアが微笑みながら口を開いた。
「じゃあ改めて、僕の名前はシャルル・デュノア。フランスの代表候補生でデュノア社のテストパイロットもやってたんだ。」
「あれ?シャルル・デュノアの名前とデュノア社ってことは…」
とそこに気がつく一夏。
一方俺はやはりそうか…と思ったが顔に出さないでいた。
しかしだとしたら…いや、詳しい話は本人から聞いたほうが良いだろう。
「そう、僕の父がデュノア社の社長なんだ。」
「へー、でもフランスか……奏、お前も行った事あるんだよな。」
「むしろ2年弱ほど住んでたな、家は無かったが。」
「え?どういうこと?」
と反応するデュノア。
あれ?全世界的に公開されてたけど知らなかったのか?
まぁ立場って言うか役つくりとして聞いているのかな。
「うん?ああ、僕、子供の時に記憶無いままフランスの町に放置されててね。それからしばらくホームレスだったんだ。まぁ4年程度だけどね。」
「え?……でも…」
と不思議そうな顔をしているデュノア。
頼むからぼろを出すなよ。と思っていると一夏が話始めた。
「4年程度って言っても…人生の1/4はそうだったてことだろ?その上さらに7歳ぐらいまでは記憶が無いから……」
「奏さんって、今何歳くらいでしたっけ?」
とセシリアにふと聞かれる。
「うん?設定上15歳ほど。」
「設定上って…奏、あんた何言ってるのよ。」
とあきれる鈴。
そういわれてもこれには理由があるのだ。
「だって本当の年齢、何歳かわからないんだもん。だから一夏と同い年ってことにしてたんだ。」
「ということは記憶のある限りだと約半分はホームレスか。」
とつぶやく箒。
なんというか雰囲気が暗くなる。
とりあえず雰囲気を変えるため俺は笑顔で話し出す。
「いや、楽しい話じゃないけど気にしなくていいよ。なんたって本人が気にして無いんだし。それにそのおかげでここにこれたって感じだしね。」
「……お気楽ね、あんた。」
「そういう性分なんで。まぁともかく昼食にしようよ。」
そう言って飯を食べるように促す。
しかし鈴に『お気楽』と言われたがそういうわけでもない。
ただ単にその時期は現実感が無かっただけなのである。
突然自分が寝ている間に別世界に来たといわれて納得できる奴などいるのだろうか…
それに今も現実感があるかといわれるとそれほどあるわけではないのだ。
何時布団に入って起きたら元の世界に戻るかもしれない期待と不安がいまだに胸の中にある。
ただそれを考えても仕方が無いから気にしないようにしているだけなのだ。こんな事誰にも話すことはできないが。
そして自身が目指すあの
まぁ深く考えても仕方ない、この事は俺がどんなにがんばろうとなるようにしかならないんだからな。
俺が頭の中で結論付けている最中に事態は動いた。
恐らく購買からパンでも買ってきたんだろう、一夏がパンを取り出したときにふと箒の方を見る。
「あれ?箒どうして弁当箱二つなんだ?」
「……これはお前の分だ。」
「俺に!?ありがとな箒!!」
そう言って笑顔で弁当箱を受け取る一夏。
一方箒は顔を赤くして顔を背ける。
「あ、ああ。…気にするな。」
と言いながら嬉しそうにしている。
だが弁当を持ってきたのは箒だけではないのだった。
「き、奇遇ね!!私も一夏に作ってあげたわ!!はいこれ、一夏が食べたがってた酢豚よ!」
「私も今朝は早くに目が覚めましたので。一夏さんに手料理を作ってきましたわ!!」
セシリアはわかっていたが鈴もか…
何でこいつら今日箒が一夏を誘おうとしていたこと知ってたんだ?
セシリアなんて昨日わざわざ俺の所にまで来て作り方を聞きに来たんだぞ!?
これが乙女の勘という奴なのか……
と考えているとデュノアが俺の服を引っ張りひそひそと話し始めた。
「(ねぇ、そ…風音君。)」
「(奏でいい。言いづらいだろ。)」
「(うん、わかった。あの三人ってもしかして…)」
「(そっ、一夏のことが好き。しかもその事に一夏はまったく気がついていません。)」
「(ああ…だからあんな雰囲気だったのか…)」
と納得するデュノア。
一方、一夏は食べる準備を終えまずは箒の弁当を手に取った。
「鈴もセシリアもありがとな。それじゃあまずは箒の弁当から……」
一夏はから揚げを箸で取り口に含んだ。
そしてその後目を見開いて驚いたように話す。
「うまい!!箒、本当にうまいぞこれ。」
「そうか美味しいか。それは良かった」
と言ってさらにから揚げを口にする一夏。
それを見て箒はほっとしたように自身の弁当のふたを開けた。
それを見た一夏がふと気がついたように話す。
「あれ?箒の方にはから揚げ入って無いのか?」
「え?あ、いやそれは……うまくできたのはそれだけだから…」
と最後の方は小さな声で話す。
しかし一夏には聞こえていなかったらしく首をかしげている。
箒もなんと説明するべきか考え、ひらめいたように口に出す。
「わ、私はダイエット中なんだ!だから一品減らしただけだ。」
「え?何でダイエットなんてしてるんだ?」
ときょとんとした顔をしながら箒を見る一夏。
まぁ普通に考えても箒は痩せている方だ。むしろこれ以上痩せたら病気を疑う。
だが女性からしてみればそれくらいは普通なのか?
言い訳として通用するのか俺が悩んでいると箒が顔を赤くして叫ぶ。
「一夏!!お前どこを見ている!!」
「どこって…体?」
まあお前からしたら『見た目は別に太っては無いよな?』
と言った疑問を覚えたからそう言ったんだろうがそれ完全にセクハラ発言だぞ?
「女性の体を凝視するなんて……紳士的じゃありませんわ!!」
「あんた…なに胸ジロジロ見てんのよ!!それにダイエットって言うのは太ってるからやるもんじゃないの!!」
案の定、他の二人から厳しいツッコミが入る。
助けを求めるようにこっちを見るな、まったく。
俺は苦笑いしながらまぁまぁとなだめるように話し始める
「多分一夏は箒にそんなことする必要は無いって事と、本当においしいから食べれないのはもったいないって思ったんだよ。」
「そ、そう。そういうことが言いたかったんだ。」
と言ってうなずく一夏。
そうして一夏は自身の箸でから揚げをつまむと箒に突き出す。
「ほら、あーん。」
「「「「!?」」」」
「え!?一夏!?」
「いや、おいしいから自分でも食べてみろって。あーん。」
驚く俺、セシリア、鈴、シャルロット…あ、シャルルだった。
セシリアと鈴は一夏をにらんでいる。
デュノアは顔を真っ赤にしながらその光景を見ている。
俺は驚いた顔をしながらも一夏を尊敬していた、普通自然に出来るもんじゃないぞ?これ。
一方箒の方は本当に食べてもいいのか恐る恐るそして少し恥ずかしそうにだか一夏の差し出すから揚げに口を近づけ……食べた。
一夏は笑いながらから揚げの味を聞く。
「どうだ!?」
「……いいものだな…」
「な、すげーうまいよな!!」
「そういう意味じゃないが…ああ、そうだな…」
箒は完全に顔がにやけて緩みきっていた。
それを見てデュノアは顔を赤くしながら、
「まるでカップルみたい…」
と小さな声でボソっとつぶやく。
しかしそれは怒れる二人の乙女には聞こえているようだった。
「ちょっと!!二人のどこがカップルみたいですって!?」
「適当なこと言ってんじゃないわよ!!」
「え、あ、ごめんなさい…」
と勢いに押されて謝るデュノア。
間に入るようにおれは笑いながら両手で『どうどう』と落ち着かせるようにやる。
その勢いのまま二人は一夏に突っ込む。
「一夏さん!!私のサンドイッチもぜひ!!」
「一夏!!私の酢豚も食べなさいよ!!」
と言ってセシリアは昨日の内に俺に作り方を聞いたサンドイッチを、鈴は自身の酢豚を箸でそれぞれ一夏に向けて突き出した。
なぜ二人がここまでするかわからずあわてる一夏。
見ていて楽しいがこっちも飯を食べるとしよう。
俺は重箱を広げた。
適当に冷蔵庫の中にあるもので作ったおかずだ。
豚肉はこんがりとオーブンで焼き上げた後に薄く切り極薄のスライスオニオンと共にマスタードと白ワインビネグレットであえてさっぱりと仕上げている。
魚はスライスしたアーモンドを衣にまぶしてこんがりと揚げ、さらに自家製のタルタルを添えている。
野菜類は一度軽く茹でた後にゴマドレッシングで軽く味付けをしそれを生春巻きの皮で包む。
後は適当なあまりものの野菜をトマトソースで炒めたものを生パスタと絡めた物や、この前に作ったピクルスなど詰め込めるだけ詰め込んでいる。
メインとなる主食の方はセシリアのサンドイッチとはまた一風変ったバケットを利用して作ったサンドイッチだ。
デュノアが目を丸くしてこっちを見る。
「奏…これ全部食べるの?…」
「ああ?そうだけど?」
と平然と食べ始める。
即興で作ったものばかりだが結構いけるな。
それを見て一夏が話し始める。
「なぁ…その豚肉だけでも俺にくれないか?」
「お前は三人からいっぱいもらってるだろ…むしろデュノア、食うか?」
「え?あ、ありがとう…」
そう言って紙袋からラップにくるまれたサンドイッチを取り出し渡す。
長さ5cnほどのそれにはレタスとトリハム、さらにスライスされた茹で卵がはさまれておりマヨネーズで味付けされていた。
さきほどからデュノアを見ると弁当を持っているようにも見えないし少しぐらいあげても問題は無いだろう。
こちらを見ながらそれを食べるとデュノアは驚く。
「おいしい!!これ奏が作ったの!?」
「おう、一応バケットって言うかそのパンのほうも手作りだ。」
そういうとさらにハムッと言った効果音がつきそうな感じでサンドイッチを口にするデュノア。
それを見て鈴が反応した。
「何、あんたパンも焼けるの!?」
「まぁ…種類はそんなに多くないぞ?大体両手で数えられるくらいだし。」
「……あんた料理人にでもなるつもりなの?」
「いや?そんなつもりは無いよ。ただの趣味さ。」
そう言ってさらに食べ続ける。
デュノアは俺のサンドイッチを気に入ってくれたようでニコニコしながらそれを食べる。
他の四人はそれをうらやましそうに見ている。
「はぁ…とりあえず食べてみる?ただし一夏はもらった奴ちゃんと全部食えよ?」
「おう、わかってるって。」
「私この魚もーらい。」
「じゃあパスタを少々いただきますわ。」
「生春巻きもらってもいいだろうか。」
「わかったから一斉に突っつくな。後デュノアも適当に食ってもいいからな。」
そう言って俺は重箱を解放した。
最終的にいろいろと持っていかれて俺の食べる量は減ったが、皆笑いながらうまそうに食べてるから良しとしよう。
そうやって俺たちは談笑しながら昼休みを過していった。
時はその使い方によって金にも鉛にもなる。
~プレヴォ~
ということで少しずつですが物語が動いていきます。
話は変りますが弁当なんて最近って言うか軽く4~5年は作ってないですね……
パンなんかは暇な時焼きますが…夜中に一人生地こねてる時なんか悲しくなってきますねwww
作者はサンドイッチならフランスパン派です。関係ないですねwww