インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~   作:filidh

47 / 120
第三十話 五反田家

しばらく時間が経ち五月の下旬の休日。

俺と一夏は一夏と俺の共通の友人五反田 弾(ごたんだ だん)の家に遊びに行っていた。

五反田 弾。

こいつは俺は中三の一年間、一夏にとっては中学時代からの悪友である。

実家が五反田食堂という食堂で時々三人で食べに来たりもした。

少し調子がいい奴ではあるが気の良い奴で俺たち三人組の被害者担当である。

現在弾と一夏はテレビゲームをやっている。俺はこの手のテレビゲームがめっぽう弱く参加してもすぐに負ける。

なので雑誌を読みながら見学中だ。

雑談をしながらしばらくそうしていると弾がふと思い出したように話始めた。

 

「一夏、奏。そういやIS学園にかわいい子いた?」

「え!?……どうだろ奏。」

「お前が僕に聞くのかよ!?……まぁかなりいるって言うか基本皆かわいいぞ?」

「マジかよ!?うわぁ~良いな!?俺も入れないかなぁ……」

「だが基本的に扱いは珍獣の域を出ないぞ?本当に上野動物園のパンダのほうがまだ楽そうなぐらいだ。なぁ一夏。」

「パンダはともかくかなりきついぞ……先生は千冬姉だし…」

「うぇ…何、もてたりしないの?」

 

そう言って弾は顔をしかめながら話す。

とりあえず話の方向性を変えるか。

 

「弾隊長!!一夏は既にフラグを大量に立てておりそのうち三つはすごい争いをしているであります!!」

「はぁ!?何言ってるんだ奏?」

「一夏、お前は黙れ。本当か?奏。相手は?」

 

驚く一夏とそれを無理やり止める弾。

俺はそのまま話続ける。

 

「一人は黒髪のスタイルの良い幼馴染。もう一人はブロンドの髪のイギリスのお嬢様風であります。」

「ほう…で風音三等兵、最後の一人は?」

「『おおとりすずね』………弾!!テメェ一夏と一緒になって僕の事だましやがったな!!恥かいたじゃないか!!」

 

弾は一瞬誰?って顔をした後あっ…という顔をして笑い始めた。

 

「鈴の事か!!あいつ日本に帰ってきてたのか!!ってマジでお前鈴にそれ言ったの!?」

「おう!!『何言ってんの?こいつ?』って顔されたわ!!」

「一夏、本当かよ!?」

「ああ、初対面でいきなりな。」

 

そういうと弾と一夏は一緒になって笑い始めた。

恐らく一夏もそのときの事を思い出して笑っているのだろう。

弾はヒーヒー言いながら話し始めた。

 

「いや、奏。すまんかった。まさかそんなタイミングで出会うとは思わなかったんだ。」

「まったくお前らと来たら。」

「いや、本当に悪かったって。でも鈴か、かれこれ一年以上経つのか…一夏、今度一緒に遊ぼうって伝えといてくれよ。」

「おう、伝えとく。」

 

とけらけら笑いながら話していると

 

<―ドンッ―>

 

という扉を蹴る音と共に弾の妹、五反田 蘭(ごたんだ らん)が現れた

 

「お兄!!さっきからお昼出来たっていってるで……」

「よ、久しぶり蘭。」

「おひさ~相変わらずだね~」

「一夏さんに奏さん!!なんでこんなところに!?」

 

と驚く蘭。

彼女は五反田 蘭、弾の妹で絶賛一夏に恋する乙女だ。

ちなみに弾は彼女に弱く、いつも尻にしかれている。

まぁここに一夏がいるってことがわかった今、彼女の狙いは既に一夏だろう。

 

「あのっ、き、来てたんですか……? 全寮制の学園に通っているって聞いてましたけど…。」

「ああ、今日は外出許可が取れたから家に一回帰った後、暇だったから丁度良いし、奏と一緒に弾と遊ぼうってことになってさ。」

「……お兄…私知らない。」

「い、いや…俺も突然だったから伝える時間無くってさ…」

 

妹ににらまれてちっちゃくなる弾。

少し助けてやるか。

 

「そういうこと今度から一夏、お前も蘭ちゃんに連絡してやれよ。」

「え?なんで?」

「仲間はずれみたいだろ?俺蘭ちゃんのアド知らないし。」

「じゃあ教えよっか?」

 

なんでこういうときだけしつこいんだよ!?

素直に応じろよ。たく…

 

「女の子のアドレスはしっかりと本人からもらわないとね?な、蘭ちゃん。」

「え?…あ、そ、そうですよ!!」

「ふーん…そういうもんなのか。」

 

そう言って一夏は納得したような顔をした。

話の流れも別の方向に向いたしそのまま良い方向に持っていくように弾にアイコンタクトをする。

弾も気がついたようで話をそのまま流す。

 

「じゃあとりあえず飯食ってけよ。そして家の食堂に金を落とせ。」

「ええ!?そこはおごりじゃないの?」

「馬鹿!!奏、お前みたいなのにおごりしたら俺が爺さんに殺される。」

「そうだぞ奏、ただでさえでも山盛りにしてもらえるだけ良いと思え。」

「わかってますよ、と。じゃあ食べにいこうか。」

 

と言ってその場を何とか収め下へと降りていった。

 

 

 

 

 

 

蘭と別れ下に下りて少し進むと、客足もそれなりの五反田食堂がそこにあった。

一応一番忙しい時間は過ぎたんだろう。

軽く弾の母親の蓮(れん)さんと祖父の厳(げん)さんに挨拶をし席に着く。

とりあえず何を注文しようか、と考えていると蓮さんが話しかけてきた。

 

「奏君、お願いがあるんだけど良い?」

「なんですか?」

「実は今日のお昼のあまりが結構偏っててね、それ食べてもらっても良いかしら?」

「いくらっすか?」

「食べるのは決定してるのかよ…」

 

と呆れ顔の弾。

しかし俺はきりっとした顔で話を進める。

 

「弾、ここの飯は何でもうまい。だったら俺はどれでもしっかり食べられるのを選ぶ。」

「真面目な顔してくだらない事言ってんじゃねぇよ…おふくろ、何余ってるの?」

「うん?週替わり定食なんだけどね、今日はウケが悪かったみたいなのよ。」

 

そう言って考え込むように顔に手を当てため息をつく蓮さん。

一夏もそれを聞いて話す。

 

「じゃあ俺もそれで良いですよ蓮さん。」

「一夏君も本当?じゃあ週替り定食四つね。」

「あ、僕二人分は食べますよ。」

「そこはおまけでご馳走するわよ。足りなかったら何かまた頼んで頂戴。」

「わかりました。」

 

と言って去っていく蓮さん。

すると上のほうから蘭が降りてきた。

さっきまでかなりラフな服装をしていたのに今はしっかりと綺麗に着飾っている。

弾もそれに気がつくとボソッと声に出す。

 

「なに着飾ってるんだか…」

「お兄、何か言った?」

「いえ、なんでもないです。」

 

蘭ににらみつけられるとすぐさま言葉を訂正した。

相変わらず弱いな…弾…

一夏も気がついたように声をかける。

 

「うん?蘭。なんで着替えたんだ?さっきと服装違うよな。なんか用事でもあるのか?」

「え、えぇっとそれは……」

「ああ、もしかして…」

 

いかん、嫌な予感しかしない。

 

「デー「蘭ちゃん、その服似合ってるね!新しく買ったの!?」。」

 

声を重ねて無理やり消す。

厳さんににらまれたが蘭のためと判断されたのかスルーしてもらえた……あぶねぇ。

俺の一言で蘭も何かひらめいたようで言葉を続ける。

 

「そ、そうなんですよ。見てもらって感想もらおうかなって…」

「へー奏、どう思う。」

「僕はさっき言った。今度はお前の番。」

 

どうせお前の事だ、適当に俺の意見から取って話すに違いない。

そんな事はさせん。自分で考えて話せ。

蘭は期待した目でおそるおそる一夏に聞く。一方一夏はう~んと唸り声を上げている。

 

「ど、どうですか?」

「うーん……涼しそうで良いんじゃないか?ただまだその服装は寒くないか?」

 

違う、そういうことじゃない。

蘭が聞きたいのは自身に似合ってるかどうかで服の機能性なんて聞いて無いんだ。

案の定蘭はそのまま凍りつき、弾は『ざまぁ見ろ』と良いたげにニヤついている。

弾、お前後でどうなっても知らないからな。

俺はとりあえず蘭の解凍を始めた。

 

「…一夏。で蘭ちゃんにとって似合ってると思うか?」

「うん?ああ、かなり似合ってると思うぞ。なんていうか蘭らしさがする。」

「ほ、本当ですか。」

「ああ、かわいいと思うぞ。」

「ありがとうございます!!」

 

そういってぱぁっと笑顔になる蘭と『けっ』と言った風にツマランと言った顔の弾。

すると厨房からお玉が飛んで弾の頭にヒット。

スリーアウトだ弾、まだツーアウトのつもりだったんだろうが厳さん(主審)がそう言うんだ。それで確定である。

 

投げられた方を見ると厳さんと蓮さんがお盆を持って来る。

ようやく食べられるようだ。

持ってこられた料理を見ると通常の三倍はありそうな量のものがある。

厳さんは何も言わずにそれを俺の前においた。

俺は笑顔で話しかける。

 

「こんなに良いんですか!?」

「…余ったんだ、食え。」

「ありがとうございます!!」

 

そう言って厳さんはお玉を拾って去って行った。

なぜここまでひいきしてくれるか気になり、前に一度だけ弾に聞いたことがあるのだが

『うちの爺さん、お前の食いっぷりが結構好きらしくて気に入られてるぞ』

とのことらしい。

なんとうれしい言葉だろうか、こっちとしてはうまいものを食っているだけでほめてもらえ量も増えるのだ、本当にありがたい話である。

さて冷める前にいただくとするか。

 

「いただきます」

「いただきます」

「いただきます!!」

「いただきます……」

「おう、食え。」

 

一夏、蘭、俺に続いて頭を抑えながら言う弾。

厳さんの声を聞いて、俺は笑顔でうまそうに食べる、斜め向かいの蘭は俺の食べっぷりを見て呆然としている。

 

「相変わらず奏さん…よく食べますね…」

「おいしいから仕方ないね。この量ならもう一回同じのいける。」

「お前は本当に変らないな。しかも太らないんだから食ったもんはどこに行ってるんだか…」

 

と笑う弾。食事の合間に話しながら食べる。

しばらくすると蘭がふと話し始める。

 

「そういえばIS学園ってどんな感じなんですか?」

「う~ん……女の子しかいない。」

 

という当たり前のことを言う一夏。

まぁ軽く説明するか。

 

「そうだなぁ……基本的にISでの戦い方を学びながら高校卒業資格を手にいられるって感じかな……正直将来IS関係の仕事につく気が無いならお勧めしない。」

「どうしてだ?」

 

と首を傾げる一夏…

お前俺と同じ生活してただろうが……

 

「例えば一夏、お前今の勉強状況で資格を取る勉強しろって言ったら出来るか?」

「ああ、無理だ。」

「ということだ。何か明確な目的が無い限りお勧めできないね。」

「ふーんそうなんですか……」

 

……蘭のこの顔を見るに何か考えているな……

悪い方向に向わなきゃ良いけど…

そう考えながら俺はさらに飯を食べ続けるのだった。

仮に蘭がIS学園に行くというならそれはそれでいいだろう。

だがあそこで学べる事はISでの戦い方。

言い方を変えれば効率的な人殺しの仕方を覚悟なしに学ばせる場だ。

そう考えるとそんなところに知り合いを送りたくは無いが……

これは俺が別世界の人間だからこう考えてしまうのだろうか。

一応後で弾にちょっとだけ注意をしておこう。

飯を食いながら俺は考えた。

その後、食事を終え五反田食堂を出たあと俺たち三人は遊び歩くのであった。

 

 

 

 

 

時間の価値を知れ。

あらゆる瞬間をつかまえて享受せよ。

今日出来る事を明日まで延ばすな。

                                ~チェスターフィールド~




という風にここから二巻が始まります。
今回以降五反田一家がどういう風に関わってくるか?
そこもお楽しみにww
ということで読んでいただきありがとうございます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。