インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~   作:filidh

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第二十八話 協力要請

無人IS乱入事件から数日後、とりあえず生活は元にもどった。

IS学園側はこの事件を調査中として公開するつもりは無いようだった。

まぁ、妥当な判断だろう。さらに今後このようなハッキングがあった時のためにその手のシステムを強化するつもりらしい。

だが相手が篠ノ之束という天災科学者だったとしたらあまり期待できないだろう。

そして案の定クラス対抗試合は取り止められた。

デザート食べ放題はなくなったがまぁ…被害がでなかっただけ良しとしよう。

だが問題がいくつか起こった。

一つは鈴とセシリアについてである。

この二人未だにどちらが強いかで張り合っている。

まぁ張り合うだけなら良いが今度はどちらが一夏にIS訓練をつけるかで争っているのだ。

その結果戦って勝ったほうが一夏に稽古をつけるということで戦うらしい。

二つ目に箒である。

本当に千冬さんに絞られたらしく二人の争いにも参加せずしょんぼりしている。

反省しているから仕方ないっちゃ仕方ないがルームメートの一夏が落ち着かないのである。

事あることに

『なぁ…奏どうしよう…』

と聞いてくる一夏…正直一夏の方がうっとうしい。

三つ目に簪の打鉄弐式についてである。

簪自身の開発したデータを俺の手によっておっさんに送ってはいるが、データが足りずなかなかうまくいっていないらしい。

そのため近接戦闘のデータを取りたいらしいのだがあいにく俺は近接武器は使えない。

よってデータが取れないのである。

『弐式』VS『赤銅』でデータ取りをするのは流石に協力している事がばれてしまう。

最後は俺自身。

問題と言っては何だが、今後こういうことがあることを考えると『赤銅』では戦いきれない。

このままでは助けるどころか足を引っ張りかねないのだ。

おっさんにもその事を伝えてはいるのだが、企業間の取り決めで『1企業による風音奏(・・・)への専用機の開発』は禁止されているのだ。

ぶっちゃけ『赤銅』ですらレッドラインギリギリらしい。

おっさんも何とかするとは言っているが正直どうしようもないだろう。

しかしどうしようか…と食堂で一組メンバー+鈴で昼食を食いながら考えているのだが…

 

「ふん!!あんたしっかり首を洗って待ってなさいよ!!」

「こっちの台詞ですわよ!?泣いた後に涙を拭くハンカチでも準備してなさい!!」

「なんですって!?」

「そっちこそ!?」

「…………はぁ……」

「なぁなぁ…奏……やっぱり箒何とかできないか?」

 

………………

 

「第一あなたは二組でしょう!?一組の事は関係ないじゃないの!!」

「私は一夏の関係者!!あんたこそクラスでやってるんだったら必要ないでしょ!!」

「…………はぁぁぁ………」

「奏…俺何か出来る事は無いか?」

 

…………考え事が出来る雰囲気ではない。

言い争うセシリアと鈴、ネガティブオーラを出し続ける箒、言い争いの原因で箒が気になる一夏。

ここの空間だけで既にとんでもない騒ぎになっている。

頼むから俺をそこに巻き込むな…

言い争いは一夏が止めれば止まるのだろうが一夏は箒のことが心配でそれどころじゃない。

箒は一夏に心配されると自身がやってしまったことを思い出し、ただ『……大丈夫だ』といってさらに暗くなる。

どうしろって言うんですか!?

こっちは簪の近接戦闘データも集めなければいけないって言うのに…

………まてよ?この状況はあわせれば使えるかもしれん。

そう考え俺はこの惨状を放置して行動を開始した。

一夏が何か言っていたがとりあえず無視した。

 

 

 

 

 

俺はあまり人が居ない影で簪に電話をする。

 

「~ということで簪ちゃん。今日放課後あいてる?」

『………でも…彼も居るんですよね?』

「ああ、一夏も居るよ。」

『………』

「簪ちゃん。ちょっときつい事かもしれないけど言わせてもらうよ。【弐式の開発停止は一夏のせいじゃない】。」

『!?…でも!?』

「白式を優先するって決めたのは企業であって一夏の意思じゃない。それに確かに一夏が現れなければって思うかも知れないけどそんな事言ったってどうしようもないんだ。今大切なのは弐式のデータ集め。違うかい?」

『……そのとおりです…』

「まぁすぐに仲良し子良しになれって言ってるわけじゃないしデータを取りに来ているってくらいに考えてもらえないかな?」

『……とりあえず今日行ってみます。』

 

そう言って電話を切る簪。

さて次は箒だ。

俺は箒を探して歩き始めた。

食堂にもどると案の定まだあの惨状のままだった。

変わった事と言えば一夏がセシリアと鈴の言い争いに巻き込まれているくらいだ。

これはタイミングが良かったと思い席にもどり箒に話しかける。

 

「(箒、まだ立ち直れないか?)」

「(奏……大丈夫だと言っているだろ。)」

「(……自分は一夏の近くにいない方が良い。)」

「(っ!!)」

 

ボソッとそうつぶやくと箒は面白いくらいに反応した。

こいつ本当に隠し事できないのな…

その後平然とした表情にもどったが逆に怪しくなる。

 

「(…何の事だ。)」

「(いや、隠しきれて無いから。ちなみにそんな事考えてるなら僕が怒ります。)」

「(でも……今回の事件で私は邪魔をして一夏を危険な目に…)」

「(その一夏を強くしようとがんばってたのは箒だろ?)」

「(…でも…私のせいで。)」

 

やはり頑固だ。

こうと決めたらよほどの事では変わらない。

そんな箒をここまで弱めるとは……やはり千冬さんは『どS』だな。

そこは今は関係ないか、そのまま話す。

 

「(じゃあ一夏に聞いてみろ。)」

「(……一夏はやさしいから許してくれるだろう…)」

「(良いから聞いてみろって。放課後あいてるだろ?今日の試合の時に来てみろ。)」

「(……)」

「(安心しろ。悪いようにはしない、絶対に。)」

「(……わかった。)」

 

そう言って俺は話すを止め一夏を見る。

完全に両方にもみくちゃにされてぐったりしている。

……放置しよう。

 

 

 

 

 

 

そして放課後。

セシリアと鈴は第一アリーナを貸切にして試合をするらしい。

俺、一夏、箒、簪は観客席だ。

試合が始まりお互いに譲らず戦っている。

 

「さてこの子が俺が前に話してた簪ちゃん。一夏は知ってるだろ。」

「えっと…例のアレか?」

「それ。あ、箒。この事は後で一夏に聞いてくれ。一夏も箒にだけは知らせても良い。」

「………」

 

反応は無し。だが聞いていることを前提で話を進める。

二人の試合はさらに加速している。

現在手数が多いセシリアが現在若干優勢か?

 

「んでこっちが前に話した織斑一夏、そして篠ノ之箒だ。」

「……よろしくお願いします。」

「………」

「おう、よろしく。え~っと前に言ってた協力ってこれか?」

「いや、どちらかと言えば箒に手伝ってもらいたい。」

「……え?」

 

ようやく言葉を発する箒。

首をかしげる一夏と簪。

試合は現在鈴の龍咆により状況は鈴のほうに流れている。

セシリアも一度見ているから予想は出来ていたのだろうがいざ戦ってみると対処に困るようで回避しきれていない。

 

「箒、お前に頼みたいのは簪のISとの近接戦闘の練習だ。やり方を教えるのでも良いし打ち合うのでも良い。」

「だ、だが私は……」

 

箒は完全に一夏との訓練が出来なくなったと思っているのだろう焦っている。

しかし俺の悪くしないという言葉を一応信じてはいるため即答で断る事が出来なかった。

焦りながらも箒が何か言おうとした時に一夏が先に口を開いた。

 

「ちょっと奏、待ってくれ。」

「うん?どうした一夏。」

「それだと俺の方の訓練はどうなるんだ?」

「お前まだ箒との訓練必要?もうやらなくても良いんじゃない?」

「そんな事は無いさ。まだ俺箒に教えてもらわないといけない事たくさんあるんだ。」

「一夏……」

 

そう話す一夏。まぁ多分そういうとは思ってたけどね。

さてこのまま恋する乙女の邪魔をする悪者を続けて終わらせますか。

試合も終盤に差し掛かっている。

セシリアのレーザーとビットにより鈴はかなりけずられているが龍咆でかなり持ち返したらしく現状互角だろう。

 

「それは千冬さんじゃだめなのか?」

「確かに俺の目標は千冬姉だ。でもただ後を追うだけじゃ、千冬姉の真似をするだけじゃ意味が無い。俺は俺として千冬姉を超えないといけないんだ!情けない話だけどそのためには箒の協力が必要なんだ…」

「って言ってもそれは箒次第じゃないか?どうだい箒、どっちにする。」

「……すまない、奏。悪いが私は一夏の鍛錬の方に行かせてもらう。」

「ありりゃ、そりゃ残念。」

 

箒の表情は一夏に再度必要にされているといわれてかなり良くなった。

後は自身の考え方次第だろう。

丁度試合のほうも終わった……ダブルノックダウンって…

この後考えていたプランが台無しだ…まぁ良いかむしろ良いほうに進んでいる。

一夏と箒は二人で何か話している、恐らく先ほどの必要云々についてだろう。

一方簪は何かにショックを受けている。

恐らく一夏の姉に対する考え方にショックを受けたんだろう。

……ちょっと揺さぶるか。

 

「一夏が千冬さんを目指してるって聞いてびっくりした?」

「……はい、本当に目指してるんですか?」

「いや、超えてみせるって言ってるよ。」

「超える…ですか。」

「あいつの事全部わかるとは言わないけど結構友達長くやってるからね。本気だってことくらいは解るよ。」

「……強いんですか?織斑君。」

 

この話を聞くって事は恐らく一夏の試合は見て無いんだな。

まぁ興味が無いって言うより自身のISの方が大事ってだけだろうけど。

 

「強いって言ってもまだまだ。千冬さんを超えるなんていったら指を指されて笑われるレベル。適正もBランクって感じでそれほど高いわけじゃない。それでもこいつは挑むんだって。」

「……どうしてですか?」

「自分の姉をバカにさせないためだと。詳しくは知らない。でもそれだけ知ってればあいつがどんだけ馬鹿かわかるだろ。」

「……馬鹿ですか?」

「うん。見てて気持ちよくなる馬鹿。だからこそ応援してやりたい。」

 

そう言うと簪は何かを考えていた。

一方一夏は何かを思い出したようにこっちに声をかけてきた。

 

「なぁ、奏。」

「何だ、馬鹿。」

「馬鹿って!?まぁいいや。その簪さんのテストって俺たちと一緒の訓練の中で出来ないのか?」

「いや、出来るよ。」

「じゃあ一緒にやろうぜ、簪さん。俺も出来る限りなら協力するし。」

 

ちょっとムッとする箒。恐らく一夏が彼女に近づくのが面白くないんだろう。

だが何かを思い出したかのような顔をした後こちらに来る。

 

「一夏、頼まれたのは私だ。お前は自分のことをしろ。」

「え?でも一人より二人の方が……」

「……いえ、出来れば篠ノ之さんにお願いしてもらっても良いでしょうか…」

「だってさ、一夏。今のお前の相手は後ろの二人だ。」

「え?奏、二人って?」

 

そう言って後ろを見ると鈴とセシリアがこちらに走ってくる。

 

「「一夏(さん)!!先に攻撃を当てたのは私よね(わたくしですわよね)!!」」

「え!?……えぇ!?」

 

アレを見るに一夏、試合をろくに見てなかったな。

今回は一夏を使ったところもあったし助け舟を出すか。

 

「いや、同時だったよな、一夏。」

「!?あ、ああ。俺たちも見ていたときも同時だと思ったんだ。」

「…本当ですの…」

「…ちゃんと見てたんでしょうね?」

 

疑いの目を一夏に向ける二人。

こちらに目を向ける一夏、だが無視をする。

助け舟はだしたんだ、後は自分で何とかしろ。

そうしていると一夏も諦めたようで自身で説得を始めた。

箒と簪のほうを見るとなにやら話している。

 

「うん?どうしたの箒に簪ちゃん。」

「いや、一夏がいつもどおりだと思ってな。あとなんで簪だけちゃん付けなんだ?」

「女の子らしいから。」

「………私たちは違うと?」

「だったらもう少し一夏に素直になりましょう。まぁそれは冗談だとしても慣れちゃったのもあるかな。簪ちゃんはどうする?呼び捨てが良い?」

「あ……どっちでも大丈夫です。」

「そ、じゃ簪ちゃんで行こう。」

 

話しているとある程度箒とは仲良くなったみたいだ。

じゃあ一夏のほうがまとまり次第訓練をするか。

………ISが無い俺は参加できないが。

としまらない事を考えながら空を眺めるのだった。

 

 

 

 

 

天才になるのに遅すぎるということはない

                                     ~作者不詳~




ということで訓練に時々簪が加わります。
なぜかと言うとそれは秘密ですww(オイッ)
一応言うと作者の趣味ではありません。理由はあります。

読んでいただきありがとうございます。

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