インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~   作:filidh

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今回の主人公は一夏で、奏はかなり脇役ですww
ではどうぞ。


第二十五話 VS甲龍

時間は進み試合当日、第二アリーナ。

俺はそのアリーナ内をうろついていた。

一夏と鈴の試合はかなり注目のカードらしく多くの人が集まっている……

しかし今日の試合は途中で終わるのだ、何らかしらのアクシデントのせいで。

しかし俺はそのアクシデントがおきると言う事は解ってもアクシデントの内容がわからない。

タイムリミットも正確にはわからないのだ。

判断できる材料は時間は一夏と鈴の試合の結果が判る前にアクシデントが起きる事とそのアクシデントの後もIS学園は継続されるという事からIS学院側に非がない事態である事。

さらに言うなら恐らく人員的な被害もない。

だがこれはあくまで『俺の世界での物語の中のIS(こちらの世界)だ』今俺のいる、『僕が介入した事によるIS(こちらの世界)』と同じ結果になるわけではないのだ。

最悪の事態を考えると俺は何時でも動けるように準備だけはしてひたすらに問題になるものは無いかを探した。

試合開始直前になるが問題になるものは見つからなかった。ISのセンサーを使いながら探したので問題はないだろう。

となると何が起きるんだ?……考えていても仕方がない。

とりあえず最悪の事態にだけはならないようにして俺はアリーナ脇から試合を観戦する事にした。

 

 

 

 

 

 

一夏はアリーナ内で考えていた。

鈴との約束の事、暴言を言って泣かせた事、周りの歓声、珍しいものを見るかのような目線、自身の友人への態度、そして何よりも親友(ソウ)人を殺せる道具(武器)を突きつけ脅した事。ありとあらゆる事が頭の中に浮かんでいた。

だが今は考えるのはよそう、今はただ目の前にいる相手のことだけを考えよう。

俺のためにいろいろと協力してくれた箒とセシリア、何より自身の目標()に追いつくためにも今はただ目の前の戦いについてだけ考えよう。ただ今は目の前にいる相手を倒すだけ…

それだけを考えよう…

…何時だったか千冬姉が真剣を持たせてくれたな……

アレは本当に重かった…千冬姉はなんていってたっけ………

それが命の重さだったけっかな?…………

アレは本当に必要以上に重く感じてて見た目も鋭くて……

………鋭く………………もっと鋭く集中しろ…………………

自身をただ一振りの刃とするために……………………目の前の相手を切る事…………………………

 

イヤ、コロス(・・・) コトダケ ヲ「一夏!?聞いてるの!?」

 

鈴のかけ声にはっとして気が付く。

自身(オレ)今何を考えていた(・・・・・・・・)?集中しすぎて何を考えていたかも覚えていない(・・・・・・・・・・・・・・・)とは……結構緊張していたようだ。

そんな事も関係無しに鈴はこちらをじっと見てくる、一体なんだろう?

 

「ちょっと!?さっきからボーっとしちゃって!?何かあったの!?」

「いや、ちょっと考えすぎたようだ、問題ない。」

「ふーん……何考えてたの?」

「いや、覚えてない。」

「……あんた本当に大丈夫なの?」

 

そう鈴は心配するように話しかける。

 

「大丈夫だ、問題ないさ。」

「………フン!!、よく逃げずに来たわね。今謝れば少しは痛めつけるレベルを下げてあげるわよ!?」

「手加減なんかいらない。真剣勝負だ……全力で来い!!」

「どうあっても気は変わらないっていう事ね。なら……微塵も容赦はしないわ。この甲龍で叩きのめしててあげるわ!!……あと約束は忘れてないでしょうね……」

「そっちこそ負けても泣くなよ?あと約束はそっちが忘れてなくて安心したぜ!!」

 

そう言って自身に気合をかける。

最早賽は振るわれたのだ、後は勝敗のみが結果だ。

 

『一組、織斑一夏。二組、凰鈴音。両者規定の位置に移動してください』

 

そうだ、今は他の事なんて関係ないんだ。

ただ鈴に勝つ。それだけに集中しろ……

あまり気負う必要はない…ただ目の前で起きた事だけを考えろ。

 

『それでは両者……試合開始!』

 

かけ声と同時に雪片弐型を取り出し鈴の攻撃を受け止める。

近接武器…白式からの情報だと名称は双天牙月(そうてんがげつ)、やはりセシリアが予測したように鈴は近距離で来るようだった。

踏み込みの速さも力強さも箒以上だ。だが受け止めれないほどというほどでもないしかわしきれない訳でもない。

鈴の攻撃を理解しながら鍔迫り合いを続けたのちどちらからというわけでもなく距離をとる。

 

「ふうん……初撃を防ぐなんてやるじゃない。」

「そいつはどうも。」

「と、そうそう。あんたの試合映像、見させてもらったわよ。確かに雪片のバリアー無効化攻撃は厄介だわ。」

「そうか…」

「でもね、雪片じゃなくても攻撃の高いISなら絶対防御を突破して本体に直接ダメージは与えられるのよ。……勿論この甲龍もね。」

「………」

「なに?一夏怖気づいた?」

「……御託はいいからかかって来いよ。」

 

カチンと来たような顔をしながら再びこちらに向ってくる鈴。

まずは相手の攻撃を良く見ろ。今の鈴は怒りでパターンが単調だ。

箒や奏にも認められた俺の最大の武器、『眼』で相手の動きに集中するんだ。

鈴の攻撃を捌きながら観察する。

10撃目辺りまでは雪片で受け止めその後は受け流すように剣先で攻撃を逸らす……

数分ただ攻撃を受け止め続ける…大体パターンは覚えられたかな?

そう考えていると攻撃の手を止めた鈴が再び叫ぶ。

 

「なに!?一夏。さっきから防ぐので精一杯!?」

「……いやそろそろ攻めようかと考えていたところだ。」

「…何言ってるの!?虚勢を張っても…無駄よ!!!」

 

叫びながら鈴が突っ込んでくる。だがどう動くかは丸見えだ…

これなら雪片を使うまでもない。俺は鈴のブレードをかわす。

再び鈴は猛攻を開始するがどれもこれもすべて見える(・・・・・・)

回避で距離をとらずに近距離で体裁きだけで何とかかわす。

鈴も当たらない攻撃に焦ったようで大きな隙が出来た。

その隙を雪片で切りつける。

驚いた顔をしながら鈴は俺から距離をとった。

そんな驚いた顔をするなよ鈴。勝負はまだこれからなんだからさ。

俺はそう考えながら白式の単一仕様能力、零落白夜を起動した。

 

 

 

 

 

 

一方その頃管制室では千冬と山田先生、そして特別に許可をもらった箒とセシリアがいた。

そして全員試合を見ながら唖然とした。

千冬は理解できなかった。

いくらなんでも一夏が強すぎるのだ(・・・・・・)

現在一見すれば一夏は何とか攻撃をしのいでいるように見えるが、良く見ると一夏は余裕を持って対処をしているのだ、まるで鈴がつぎになにをするのかが判るように。

一夏がどれほど特訓をしたとはいえ、たかが一ヶ月程度の訓練しかしていないのだ。

そんなペーペーが仮にも国家代表候補生をここまで圧倒するなど誰も予想できないだろう。

そして一緒に訓練をしていたという横の二人を見ても彼女たちは驚いていた。

彼女たちも恐らく今一夏の強さに驚いているのだろう。

 

「……オルコット、篠ノ之。あいつは訓練中もあんな動きをしていたのか?」

「…いえ…私と箒さんの二人がかりの攻撃を何とか裁ききれるようにはなりましたが……」

「…一夏は練習でもアレほどの動きは……」

 

二人とも呆然としながら試合を見ていた。

そしてセシリアがはっとして連絡を取ろうとISを少しだけ起動する、恐らく今彼女は私と山田先生と同じことを考えているのだろう。

『あの動きはあの風音奏(もうひとり)と同じ感覚がする』と、

実際比べると風音の回避の方がかなり上だろう。

しかし一夏がこんな事をできる原因などあの男以外には考えられなかったのである。

 

「奏さん!!でてください!!」

『……セシリア!?何か問題が起きたか!?』

 

とこちらに凄まじい勢いで聞く奏。

セシリアもびっくりして声を弱める。

 

「い、いえ。問題は起きていませんわ…」

『そうか、すまん大きな声を出して。』

「いえ、そ、そんなことより…」

『ああ、見てるさ。一夏の動きだろ?セシリアよく教えたな。僕の動きにそっくりだな。』

 

と笑いながら話す奏。

セシリアは声を大きくして話す。

 

「何を言ってるの!?あなたが一夏さんに教えたんでしょうに!!箒さんから聞きましたわよあなたが一夏さんに何か言っていた事は!!」

『………はぁ?僕あいつに言ったのって、お前の機体って千冬さんのと戦い方が似てるから千冬さんの戦い方を参考にしてみたらどうだって事だけだぞ。』

「え?」

『……第一口で言っただけであの動きは出来ないだろ。よほど練習でもしない限り。』

「確かにそうですが……」

『……今近くに千冬さん、いや織斑先生は?』

 

奏はこちらに何か聞きたいことがあるようだ。

私は無線を使い会話に入る。

 

「どうした風音。」

『始めから聞いてましたか……先生、一夏のあの動きに心当たりは?』

「…強いて言うならお前の動きだ。」

『先生が教えたって事は?』

「…一切ない。私が教えたのは瞬間加速(イグニッション・ブースト)だけだ。他は一切教えてはいない。」

『……本当ですか?』

「本当だ、むしろお前の方はどうなんだ?」

『…口だけであそこまで教えられるなら今すぐISの教師を目指しますよ。』

「そうか…」

 

風音の言う事は本当だろう、風音自身ISの操縦はそこまでうまい訳ではない。

そしてオルコットや篠ノ之がここまで一夏にあの動きを教えられるとは思えなかった。

 

「一体どうやってあそこまで……」

 

篠ノ之が口からこぼす、ここにいる全員それを考えていた。

 

 

 

 

 

 

(おかしい!?いくらなんでもおかしすぎる!?)

 

一夏から何とか距離をとろうと鈴は双天牙月を振るう、既に両手に持ちながら攻めるが一夏はそれがすべて見えるかのようにかわす。

何とか一夏の攻撃を喰らわないように距離をとりたかったが一夏はこちらの攻撃など関係ないように前に進んでくる。

こんな事態になる事は鈴は一切考えていなかった。

映像で見た一夏は確かに一週間しか訓練していないIS乗りとしては異常なほど強かった。

だが自身の実力と比べると確実に劣っているように見えたし一ヶ月程度の訓練では追いつける差では無かったはずなのである。

だが現在、試合をやってみるとどうだ?

圧倒的と言ってもいいほどの回避力。先ほどから何とか相手に攻撃を当てようとするが掠る程度でまったく当たらない。

 

「っつ!!喰らえ!!」

 

鈴は叫びながら自身の切り札(龍咆(りゅうほう))を使用する。

流石にこれはかわしきれずダメージを与えられた。

鈴はそのまま攻撃をしながら距離をとる。

一夏も回避を続けるが、この龍咆は見えない砲弾(・・・・・・)だ。

空間自体に圧力をかけ砲身を作り、衝撃を砲弾として打ち出す衝撃砲、それがこの龍咆である。

いくらISが優秀だといってもパイロットに見えなければかわせまい。

そう考えひたすらに一夏を近づけまいと龍咆を撃ち続けるのだった。

 

 

 

 

 

一夏は何発か攻撃をくらったがかわしながら考えた。

見えない砲弾。これが恐らく鈴の武器で切り札だろう。

何とか移動してかわしているがこのままかわし続ける自信はない。

 

(どうする!?…何か打開する手段は!?)

 

顔に出さないように焦る。

……いや、焦るな。俺の武器はこの『眼』なんだ。

砲弾が見えなくても他のところを見ろ。

そして何も見えないようならその時に焦れば良い…

今すべき事はかわしながらの観察だ。

鈴も俺に当てられる武器を見つけてそれを使い続けている。

観察するのには十分だろう。

 

(……一発正面から喰らってみるか。)

 

俺は回避を止め鈴を正面にする。

すかさず鈴は俺に見えない砲弾を撃つ。

……当たる。再び距離をとり自身の見たものを回避をしながら考える。

今ので残りS.E(シールドエネルギー)は半分になった。

だがそれでも突破口は見つかった。

まず見えない砲弾は完全に見えないわけではない。

しっかりと砲弾のあるところはゆがんで見えた。まるで蜃気楼のように。

続いて鈴の目線だ、あいつはこれを撃つときに当てるところを見る癖がある。

ならばもうかわす方法は解った。

俺は大きく回避するのをやめ、ある程度距離をとった状態で鈴の正面に立つ。

あいつが今見ているのは俺の腹の辺り…難なくかわす。

続いて胸の辺りと右肩……左側にそれるようにかわす。

左右に少しそれたところ……動く必要はない。

…かわす…かわす…かわす…かわす…かわす……

鈴も俺に既に自身の切り札が見切られていることに気が付いたのだろう、かなり焦っている。

ではそろそろ踏み込むか、瞬間加速(イグニッション・ブースト)の準備をして俺は雪片を握る手に力を込める。瞬間、

 

『二人とも!!上だ!!かわせ!!!!』

 

突然の奏からの叫ぶような通信で反射的にかわそうとするが鈴は『え?』と言った風に目線を上に向けている。

すかさず瞬間加速(イグニッション・ブースト)で鈴を抱きかかえその場を離れる。

その瞬間上からアリーナのシールドを突き破るレーザーと共に何かが降りてきたのである。

 

 

 

 

 

すべては、待っている間に頑張った人のもの。

                                 ~トーマス・エジソン~




謎の一夏の強化。
一体何があったんだ!?
次回をお楽しみにwwww

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