インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~   作:filidh

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フランスでの出会い③

「……ごめんなさい…」

 

こちらに目を背けながら顔を赤くしながら少女は謝る。体つきからおそらく同年代。服装は紺色のロングスカートに上は……詳しいことはわからんが薄いクリーム色?の薄手の長袖を着ている。

髪の色はブロンドで顔つきはとてもかわいらしいのだが、先ほどの事件のせいで複雑な顔をしながら焚き火のそばに座っている。

一方俺はと言うと、ビンタのせいで右頬を赤くしながらとりあえずお茶を入れている。当たり前だが既に服は着ている。

いや~命の危険を感じていたからなんとも思わなかったが、今考えると裸の男に銃を向けられるとか下手なトラウマになってもおかしくないなぁ…

そう考えるとこちらもなんだか申し訳なくなりとりあえず謝ろうと思う。

 

「あ~うん、僕の方もごめん。あわててたとはいえ…ひどいことを・・・」

 

さすがに自分の体を『ひどいものを見せた』と言うのはなんだか嫌なので少し言葉に詰まりながらもこう謝りながら一応お茶を渡す。

少女は少しびくっとしながらも一応お茶を受け取ってくれた。さすがにこのまま変質者扱いは嫌だったのでどう話そうか……いやここは適当に話をした後、このまま別れの挨拶をして切り抜けようか……よしそうしよう。とこちらが口を開く前に少女のほうが口を開く。

 

「あの?こんなところで何をしていているの?」

「あ~……キャンプ?」

「?」

 

さすがに『ぼくはストリートチルドレンで山に水浴びに来ていたのさ。』なんていえない。

言ったらさすがに引かれるだろう。

しかしこちらの自信の無い声に疑問を持ったのか納得してくれた顔では無い。

いかん話を逸らさねば。

 

「そういう君はどうしたんだい?君もキャンプかい?」

 

そうなるべく余裕が有るような声で話しかける。少女は首を横に振った後こちらをようやく見てくれた。

 

「ううん。私は少しはなれたところでお母さんと住んでるんだけど、お母さんが寝た後に森のほうから煙が見えてもしかして山火事かと思って見にきたの。」

 

あ~そうなのか。本当に悪いことをしてしまったな。また少し罪悪感を覚えた後、はにかむように笑いながら声をかける。

 

「それは本当に悪いことをした。うん。でもそういう時は大人と一緒のほうがいいよ?」

 

と一人でこんなところでキャンプをしている小さい子供に言われても説得力は無いだろうが一応言っておく。

すると少女は少し目を伏せ声を弱めて話す。

 

「お母さん…最近具合悪くて…お父さんもいないから…」

 

じ、地雷を踏んでしまった…突然のことでそのまま笑顔が固まる。い、いかん。空気がこのままじゃもっと重くなってしまう。それよりもさっきから俺の罪悪感がたまってしまってこっちの方がもたない。話を変えてさっさと分かれよう。

 

「ご、ごめん。つらいこと言わせちゃって。」

「ううん。大丈夫……」

 

といいつつ顔は暗いまま。話を変えねば。

 

「そういえばお家に帰らなくて大丈夫?お母さん心配するんじゃない?」

「あ、うん。そうだね。じゃあ…バイバイ。」

「バイバイ~。」

 

さらば名も知らぬ少女。もう会う事もあるまい。そう思いとりあえず先に飯にしようとかばんに手を伸ばすが少女は一向に歩き出さない。何かあったのだろうか?

 

「どうしたの?」

「…ライトが…点かないの。」

 

見ると彼女は泣きそうになりながらライトのボタンを押している。

 

「ちょっと貸してもらっていい?」

「うん…」

 

ライトを借りてみると、良く見なくても明かりのところが割れていた。コレ絶対さっきあわてて隠れた時逝っちゃたんだよなぁ…横目で少女のほうを見ると目に涙を浮かべながらこちらを見ている。もう罪悪感がもたなかった。

 

「だ、大丈夫!!僕がライト持ってるからおくってあげるよ!!」

「………本当に?」

 

涙声になりながらも返事をしてくれた。お願いですから泣かないでください。

こっちが罪悪感で泣き出しそうです。本当に。

 

「ホント、ホント。だから安心して。」

「……うん。」

 

流石にまだ泣きそうだが一応は少しは安心してくれたらしい。ふぅ、良かった。

 

「え~っと、自己紹介しようか。僕の名前は奏 風音。ソウでもカザネでも好きなほうで呼んで。」

「……シャルロット・デュノア…」

 

デュノアって言ったら昼間のデュノア社長を思い出すなぁ。まぁこの子とは関係ないだろう多分。

 

「よろしくねシャルロット。じゃあ、準備するからちょっと待っててね。」

「うん…」

 

いまだに不安そうにしている彼女のためにも手早く動かなければ。はじめに広げた荷物を適当にかばんにつめる。その後シャルロットにライトを渡し薪に水をかけさらに砂で埋める。よし。本格的に準備をする前でよかった。って言ってもすべての荷物を広げてもそれほど多くないから、さほど時間は変わらないとは思うけどね。

荷物を背負いシャルロットの横に行き笑顔で声をかける。

 

「よし、じゃあ行こうか。シャルロット。」

 

彼女は何も言わずに小さく頭を下げた。

 

 

 

 

 

「……~~~でさぁ。荷物を取られたのを何とか野犬から取り返しただけど中に入れてた服は全滅。参ったよアレには。」

「へぇー。ソウはそのあとどうしたの?」

 

と明かりを持つシャルロットの横に立ち、話しながら森を歩く。

初めの内はお互いに黙って歩いていたが俺の方が沈黙に耐えられなかった。

はじめはお互い他愛の無いことを話して言ったのだがだんだん口が乗っていき、今は旅をしている時のアクシデントを話している。こうなるとシャルロットは聞き手に回ってしまうが彼女は何も気にせずに聞いてくれていた。

 

「どうしようもないよ。泣く泣くその服はあきらめて使えるものだけ拾って逃げたよ。今頃彼らが着てるんじゃないかな?穴だらけの服を。」

「あはは、犬は服を着ないよ。多分寝床に使われてるんじゃないかな。」

「そうだろうね~。お、あそこから明かりが見える」

 

かれこれ15分ほど話ながら歩いていたが、ようやく彼女の家の近くについたのであろう。そこまでボロ屋と言うわけではないが、年季の入った家に見えた。

コレを見るにおそらくデュノア社長とは何も関係の無い人たちなのだろう。まぁ関係有ったら何か有るのか?といったら何も無いのだが。

そのまま歩くとすぐに家のそばについた。よし、ここまで送れば後は良いか。と思いライトを受け取り分かれようとすると家の中から女性が出てきた。

 

「シャル?どこに行っていたの?」

「あ…お母さん。」

 

シャルロットにお母さんと呼ばれた女性はシャルロットをそのまま成長させたような印象を受けた。ただしその見た目はシャルロットから感じたかわいいというものではなく、美人。それもそこらへんの女性など歯牙にもかけないレベルの美人であった。コレだけ美人だと森の中で遭遇したら女神やエルフと勘違いするのでは無いだろうか?それは無いか。

頭の中でそんなことを考えていると目の前でシャルロットとその母親が話をしていた。美女の登場で話に聞き耳を立ててすらいなかったがおそらく何が有ったのかを説明しているのだろう。終わり次第ライトを返してもらって歩くとしよう。いやその前にいい加減腹も減った。何か食べ歩きできるもの買っていただろうか?

そんなことを考えているとシャルロットの母親が声をかけてきた。

 

「えっと…カザネ君?迷惑をかけてしまったみたいね。」

 

おお、シャルロットと話していたときには気がつかなかったが声もとてもきれいな人だ。これは旦那さんがうらやましい。っていないんだっけ。また地雷に触れるのはごめんだ。

 

「いいえ、たいした事じゃないですよ。じゃあこれで。」

 

とシャルロットからライトを受け取り去ろうとした。がここでシャルロットの母親が引きとめた。

 

「もしよければ泊っていかない?ベットはひとつ余ってるから大丈夫よ。」

 

!?べ、ベットだと!?かれこれ三年間ホテルなどにもろくに泊まれず温かいベットなど夢のまた夢だったのだが……

い、いかん。動揺するな……なんでも無い様な感じで断るんだ……

 

「いえ~遠慮しておきますよ。」

「でもこんな時間にまたキャンプの準備をするのは酷でしょう?時間もじかんだし。」

 

まぁここで慣れてるといっても信用してもらえるとは思えないし、押し切ろう。

 

「いえいえ、大丈夫ですよ。」

「じゃあせめてお風呂だけでも入っていかない?水浴びしようとしていたんでしょ?

それにご飯もご馳走するわよ?」

「!?」

 

…シャルロット、君はそこまで話したのかい?…目線をシャルロットに向けるとまた赤くなっていた。おそらく思い出したんだろう。勘弁してくれ。

しかし風呂……温かいお湯…温かいご飯……イカンかなり心がゆれてるぞ。落ち着け、落ち着いて考えるんだ……

あれ?そこまで拒否する理由が無いぞ?

別に目立つ行動してるわけでも無いし。何よりこちらのデメリットがほとんど無い。それよりも何よりも温かい飯、風呂、布団。

もう完全にそれら温かい三つのものに俺の心奪われていた。

 

「……すみません。では泊まらせてもらってもいいでしょうか…」

「ええ、こちらこそ喜んで。」

 

こうして俺はシャルロットの家にお邪魔することになった。

その後何だかんだで一週間ほど泊めさせてもらうがそれはまた別の話。

 

 

 

 

「運」ってやつは、たえず変わる。

いま後頭部にがんと一撃くらわせたかと思うと、次の瞬間には砂糖をほおばらせてくれたりする。

問題はただひとつ、へこたれてしまわないことだ。

 

                                      A・シリトー




と言うことであと少しでフランス編終了です。
一応フランスでの出来事の内細かいところは後に番外編として書かせてもらうつもりなのでよろしくお願いします。

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