インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~   作:filidh

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第二十三話 赤銅改造計画

鈴と一夏の喧嘩の後から数日後、二人の喧嘩の状況はまったく変わっていなかった。

一夏から聞く所によると鈴が一夏のことを避けているらしい。

一夏としてはすぐに謝って怒っている理由を聞きたいそうなのだが、鈴が逃げ回っているらしく、なかなか会話が出来ないらしい。

まぁ喧嘩した後すぐに仲直りできるとは思っていないし仕方ないんだろう。

鈴が何を考えているかはわからないが恐らく自身との折り合いがまだ付いていないのだろう……たぶん。

喧嘩についてはセシリアにも伝えられた。

彼女は一夏が取られなかったことを喜べば良いのかそれとも一夏が鈍感すぎるのを怒ればいいのかわからないような顔をしていた。

結局一夏に対して一言

『一夏さん…それはあんまりですわ…』

と悲しげに言うだけに終わった。

対してこちらの『打鉄弐式』の開発の方はと言うと、ある意味いろいろと変化があった。

一つ目に俺と簪とおっさんの表向きの関係だ。

俺は『弐式のデータを利用して自身のISを強化するために簪を利用している。』

簪は『俺を利用して打鉄弐式の開発をしている。』

おっさんは『俺の顔色を伺って、俺を倉持技研引き込もうとしている。』

ということに表向き(・・・)はそういう風に口裏を合わせている。

もちろん本当の目的は『打鉄弐式』の完成であり俺に関してはほとんどメリットはない。

さらにこの場合、おっさんが両方に利用されている様に見えるが、技術者側にはすでにおっさんによる根回しが通っており実際のところは主犯である。

二つ目に俺が簪からISの整備や開発についての知識を教えてもらっているところだ。

俺のこの前の言い訳を信用しているためだろう。

だが実際のところ俺は将来ISにかかわる仕事をするつもりはない。神父か牧師になるつもりなのだ。それに戦うのは嫌だから整備の方に進みたいのは本音だが、実際のところ数少ないどころか二人しか居ない男性操縦者なのだ。データ収集からの側面から見て整備科のほうに進むのは無理だろう。

だがまぁ、簪と仲良くはなれるから問題はないのだが……勉強量が増えたのが問題っちゃ問題だ。

三つ目に俺の『赤銅』の改造、および強化についてだ。

俺の『赤銅』の改造、改修および新兵器のテストで今日の放課後におこなわれる予定だ……

という名目になってはいるが実際は『打鉄弐式』の組み立てである。

計画としては以下のとおりだ。

俺は『赤銅』の改造パーツや強化パーツをテストするが技術的にも操作性的にも俺には使えないパーツで残念ながら(・・・・・)廃棄される事になってしまう。しかしそれを簪の『打鉄弐式』に組み込んでみたところ偶然にも(・・・・)開発に使用できたため廃棄されるべきパーツが横流しされてしまうのである。こういう風に既にプランが立っている(・・・・・・・・・・・・・・・・・)らしい。

以上の名目で『打鉄弐式』が組み立てられるらしい。

だがまだ武装面は『背中に搭載された2門の連射型荷電粒子砲【春雷(しゅんらい)】』と『マルチロックオン・システムの48発ミサイル【山嵐(やまあらし)】』は完成していない。

現在何とか形になっているのは『対複合装甲用の超振動薙刀【夢現(ゆめうつつ)】』のみらしい。

この夢現もおっさんが急ピッチで仕上げたもので実際結構無茶をしたらしい。

実際、他にも俺用にいろいろなパーツを作りながら『打鉄弐式』の開発をやっているのだ、本当に頭が下がると簪は言っていた。

そういうことで今日の放課後アリーナで失敗が決定しているテストする事になっている。

まぁ適当にがんばろう、本番は簪の方なのだから。

 

 

 

 

 

 

その日の放課後、クラス対抗戦の一回戦の相手が提示された。

 

 1-1    1-2

織斑一夏 ‐ 凰鈴音

 

わぁお、タイミングが良いんだか悪いんだか。期日は3日後か…

しかし俺の現実世界の記憶ではこの試合はアクシデントが起きてつぶれるのだ。

となると簪は戦うことなく終わるのか……簪の『打鉄弐式』のテストが出来ないなぁ…

そこらへんはどうしよう。まぁおっさんと相談するか。

一夏を探してみると俺と同じように一回戦の相手をじっと見ていた。

 

「一夏、どうするよ。」

「ああ、まぁがんばるさ。」

「……このあいだ言った事は試してみたか?」

「ああ結構良いアドバイスをもらえて今それの練習中だ。」

「そっか…ま、がんばれ。僕たちのデザートのために。」

「…そういわれるとやる気がなくなるな…まぁ今日の訓練でも試してみるよ。奏は参加するか?」

「いや?僕は今日はISのテストおこなう予定だから多分間に合わない。」

「そっか。まぁ気が向いたら来てくれよ。」

 

俺はそこで一夏と別れ別行動をする事にした。

 

 

 

 

 

 

アリーナの控え、そこに向うとおっさんと簪が既にいた。

まぁ本来はそちらの方がメインなのだ、前座はさっさと引っ込もう。

 

「おーっす、おっさん。僕の機体は?」

「一応いろいろ組み込んでみたんだが半分近くはお前の『赤銅』には組み込めんな。」

「そうか。じゃあ武装面は?」

「一応容量ギリギリで作ったつもりなんだが搭載できないのもいくつかあるな。」

「じゃあそれはどうするの。(棒)」

「はいきするしかないんじゃないか?(棒)」

「うわーもったいない、かんざしちゃんつかう?(棒)」

「え!?えっと……」

「テメェ、そこで嬢ちゃんに振るんじゃねぇよ。困ってるじゃねぇか、馬鹿野郎。」

「うわ、僕に対する扱いひどくない?」

「いや普通だ。」

 

そういうと周りの整備の方々もしっかりとうなずいている。

畜生、ここには敵しか居ないようだ。

 

「まぁいいや、んで僕は何すれば良いの?」

「一応武器はともかく装甲を使えるのいくつかと新型脚部ブースターのデータだけでも欲しい。周りにお前のために作ったって言う証拠が必要なんでな。」

「了解。まぁ簪ちゃんのほうメインでがんばってよ。」

「当たり前だ、ここに居る奴全員そのつもりだ。」

 

そう言っておっさんは作業にもどって行った。

さて暇つぶしでもするかそう考えていると簪がこちらに話しかけてきた。

 

「…あの…ありがとうございました。」

「え!?僕もうクビ!?」

「へ?…あ!ち、違います!?えっとそういうことじゃなくて。奏さんのおかげで何とか形にする事は出来ました、本当にありがとうございます。」

「いいって、こっちも利用してるようなもんだし。それにまだ形が出来ただけでここから本番なんでしょ?がんばって。」

「はい!!」

 

というと簪が整備班から呼ばれる。こっからの設定は簪がおこなうらしく真剣な顔でISに向っている。

10分ほどするとおっさんがこちらに来て話し始めた。

 

「どうよ、『打鉄弐式』。」

「外見は打鉄とまったく違うね。」

「まぁな。コプセントからしてまったく違うからな。どちらかといったら『赤銅』の方が近いくらいだ。」

「まぁ『赤銅』よりはまともなんでしょ。」

「当たり前だ。目標の完成形は従来の第三世代よりかなり優秀だ。」

「白式より?」

「理論上はな。だがあっちは既に存在しているのに対しこっちはやっと形になった程度だ…」

 

だからそっちのデータ取りが優先でしたと。

簪からすればたまったものじゃないな。

 

「……僕はこれからおっさんに何を要求すれば良いの?」

「俺のシナリオ上、お前は今回のテストで機体強化は諦め、強力な武器を求める…てことになってる。」

「そうだな~僕ちん~、荷電粒子砲とか~欲しいな~。…こういえば良いの?」

「おう、馬鹿っぽくてすげぇ似合ってる。」

「アリガトウゴザイマス……実際どこまで協力できるのさ。おっさんの方は。」

「……荷電粒子砲に関してはお前が何も考えずに『打鉄弐式』のデータを流用したってことにすれば何とかなる。だが山嵐に関しては第三世代の技術だからな…正直俺が手伝うと簪のことがばれかねない。」

「形を作る分には問題ないの?」

「……正直それも難しい。」

「OK、こっちでもなんか考えるからそっちも勝手に動くの無しね。」

「お前が何をするって言うんだよ。」

「最悪生徒会長さんの名前を使ってでも良いだろ?」

 

俺がそういうとおっさんは頭をかきながらつぶやく。

 

「……残念だがそれは簪が望まないんだ…」

「……例の喧嘩?」

「そういうことだ。」

 

はぁ…じゃあ別のアプローチも考えないといけないのか……

なんか面倒ごとばかり増えていくな。

 

「こちらでも嬢ちゃんの協力を出来るように努力はする。」

「解った。こっちでも簪に注意だけはしておくよ。」

「よし、話したいのは以上だ。次はお前のISのテストだ。」

「立派に仕上がった?」

「それはお前次第だろ。」

「了解。」

 

そう言って俺のテストが始まった。

 

 

 

 

 

結果から言えば俺のテストは20分ほどで終わった。

武器の大半が使いづらい、もしくは今の方がマシ。残りもどちらかと言えば現在の銃が良い。

装甲については機動性がバイクから自転車並みに下がるのに装甲は紙からダンボールと言った感じだ。

ただ唯一脚部ブースターだけは『打鉄弐式』のデータを流用しているためかなり良い仕上がりでこれだけは組み込むことになった。

俺がピットにもどるとおっさんが声をかけてきた。

 

「どうだ?脚部ブースターは。」

「防御力アップで機動性、最高速度は変わらずだからね文句なし。」

「まぁそれは嬢ちゃんの研究の結晶でもあるからな。」

「……本当に僕のISに組みこんでも良いの?」

「嬢ちゃんがそうしてくれって言ってるんだ、ありがたく受け取りな。」

「了解。」

 

まぁそれならそれで仕方ないか。

俺の方は文句があるわけでもないし。

簪の方を見ていると未だに真剣な顔で何かを打ち込んでいる。

 

「おっさん。僕後、邪魔みたいだから帰るわ。」

「…そうか。じゃあまた後で俺に意見を送ってくれよ。」

「荷電粒子砲の開発は頼むよ。」

「そっちも頼むぞ。」

「了解。」

 

最後のは山嵐についてじゃなくて仲直りについてだな。

まぁどちらも受け持ったからには最後までやらせていただきますよ。

そう考えて俺は控え室を後にした。

 

 

 

 

 

中途半端にやると他人のマネになる。

とことんやると他人がマネできないものになる。

                              ~著者不明~




ということで打鉄弐式の本体は完成しました。
武装面は薙刀だけですがこれからどうなっていくかは作者次第です。
ということで読んでいただきありがとうございますwww

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