インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~   作:filidh

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第十八話 授業

数日後の授業中。うちのクラスはISの実習をやっていた。

クラスの大半はISに触れることを喜び流石に皆浮き足立っていた。

しばらくすると白いジャージを着た千冬さんと紺色がかったジャージ姿の山田先生がやってきた。

 

「静かにしろ貴様ら。これより授業を開始する。」

 

Sir, yes, sir!!と言いたくなる様な千冬さんの声で授業が開始した。

さてどう進めてくのかな…と考えていると千冬さんがこちらを向く。

 

「まず専用機持ち、今すぐISを展開してみろ。」

「解りましたわ。」

「来い、『赤銅』」

「了解しました。」

 

千冬さんの命令でISを展開する。

やはり慣れからか一番早いのがセシリア。続いて掛け声を出した俺。

一夏は少し手間取ったようだが掛け声無しで呼び出した。

 

「早く展開できるようになれ。熟練したIS操縦者は展開まで一秒とかからないぞ。後風音、発動時は機体名を出さないで済むようにしろ。」

 

早い所慣れろ、目標は1秒。そういうことですか。

千冬さんの言葉の意味を把握しながら考える。

言葉遣いはきついが明確な目標を出してくれる分やりやすいな。

そしてこれが一夏のIS、白式か。その名のとおり白い装甲に左右のスラスターが特徴的だな。

一夏も俺のISをじっと見ている。まぁ似たような事考えてるだろうな。

すると千冬さんが次の命令を出す。

 

「では飛べ。」

「どこまででしょう?」

「とりあえずアリーナの上に向え。」

 

その掛け声で俺たちは飛び出す。

やはり順番はセシリア、俺、一夏だ。

ただ一夏のISのスピードが遅い、どうしたんだ?

 

『何をやっている。スペック上の出力では白式がトップだぞ。』

 

無線で一夏を叱る千冬さん。

相変わらず一夏にはきついっすね。その分甘いところもあるけど。

多分弟に早く強くなってもらいたい姉の気遣いって感じかな?

 

『……風音、お前失礼な事考えてないか?』

「はい?何の事でしょう。」

 

白を切るが恐らくばれたな。

何を命令される事やら……しばらくすると一夏が俺たちと同じ高さまで到達する。

 

「一夏どうした調子悪いのか?」

「いやなんていうか『自分の前方に角錐を展開させるイメージ』で行うようにって言われても、全然感覚が掴めなくって……」

「戦闘中はどう動いてたんだ?」

「夢中で覚えてない。」

 

さいですか、まあ次第に慣れていくもんなんじゃないのか?

そう考えるとセシリアが話す。

 

「一夏さん、イメージは所詮イメージ。自分がやりやすい方法でやったほうがうまくいきますわよ。」

「そう言われてもなぁ。大体、空を飛ぶ感覚自体がまだあやふやなんだよ。なんで浮いてるんだ、これ。」

「説明しても構いませんが、長いですわよ? 反重力力翼と流動波干渉の話になりますもの。」

 

一夏が自分の2対のスラスターを見るとセシリアが笑顔で話しかける。

さすがセシリア、それ全部覚えているんですね。

一夏は即座に声を返す。

 

「わかった。説明はしてくれなくていい。」

「それは残念ですわ。」

 

そう言いながら笑うセシリア。

彼女も拒否されるってわかって言ってるな。

しかし彼女も良い笑顔で笑うようになったな。純粋に楽しんでいる顔だ。

そう考えていると一夏がこっちに話をふる。

 

「ちなみに奏はどんなイメージ。」

「なんだろ……飛ぶイメージって言うか風に乗るイメージ?」

「どういう意味ですの?」

「ほらよく、『風と一体化した感覚』とかあるじゃん。それ。」

「……自分が風になった感じってことか?」

「あ~それ近いかも。」

 

ふーんと納得する二人。

しかし一夏はまだ自身のイメージを掴みきれてないのか考える。

 

「一夏さん、よろしければまた放課後に指導してさしあげますわ。そのときはふたりきりで――」

 

ここでセシリアが誰も居ない空中で一夏に手を出した。

これは通りそうだな…と思うとしたから声がする。

 

「一夏っ! いつまでそんなところにいる! 早く降りてこい!」

 

おっと!?箒がまさかのディフェンス。

箒は山田先生から無線を奪ったようだ。

しかしなぜ解ったんだ?あいつIS展開してないからコアネットワークわからんのに。

……まさか勘か!?勘で今のに反応したのか?

まあ結果的には一夏は悩んでいたため先ほどの話には反応できず『なに?』っと言った顔をしている。

箒さんの見事なディフェンスが輝く結果に終わった。

しかしISってのはよく見えるな。ここから地面まで百数メートルはあるはずなのに箒の怒った顔がしっかり見える。

一夏も同じことを考えていたのか口に出ていた。

 

「すごいな……ここからでも箒たちの顔が良く見える…」

「ちなみに、これでも機能制限がかかっているのでしてよ。元々ISは宇宙空間での稼動を想定したもの。何万キロと離れた星の光で自分の位置を把握するためですから、この程度の距離は見えて当たり前ですわ。」

「「へーー」」

 

と納得する俺たち。

やはりこういう基本的な知識だとセシリアのほうがかなり上だな…テスト前には頼らせてもらおう。

しばらく上空で待機していると再び千冬さんから連絡が入った。

 

『急下降と完全停止をやって見せろ。目標は地表から10cmだ。』

「解りましたわ。ではお先に。」

 

そう言ってセシリアが先に下へ向っていく。

見ていると見事地上10cm上で停止したようだ。

 

「うまいもんだな~」

「そうだな。次どっちが行く?」

「僕先に行ってもいい?」

「どうぞ。」

 

と言われ下に向かって加速する。

僕の場合機体反応がそれほど良くないから早めにブレーキをかけるつもりで行こう。

そう考えギリギリ手前辺りでエアブレーキをかけたつもりが勢いが足りず地上30cmほどのところで止まった。

 

「あらら、失敗してしまいました。」

「風音、お前の場合自身の機体に関しての理解が少ない。もっと自身の手足のように使えるようになるまでISに乗るんだな。」

「了解しました。」

 

あら?以外にもお叱りの言葉はなかった。

先ほどの事で嫌味の一つか二つ言われそうだな…と考えていたのだが。

そして一夏がこちらに向ってくる……あいつ勢いつきすぎじゃないか?っていうかそろそろ止まらないと危ないような……こいつはやばそうだ。

 

「先生ちょっと下がりますか?」

「その方がよさそうだな。」

 

そのままそこを離れると

 

<―ズドォォンッ!!!―>

 

という音と共に一夏は地面に不時着した。

あ~なんかドラゴ●ボール思い出すな~サ●ヤ人襲来の辺り。

土煙が収まるとグランドには大きなクレーターが出来ていた。

 

「馬鹿者。誰が地上に激突しろと言った。グラウンドに穴を開けてどうする」

「いてて…スイマセンでした。」

 

と言いながら立ち上がる一夏。

クラスメイトたちのくすくすとした笑い声が起きる。

しかし痛いと言いながら白式と一夏に傷は見えない。これがISの防御力か……

そう考えていると一夏に駆け寄る二人、箒とセシリアだ。

 

「大丈夫か?一夏。」

「一夏さん、無事ですか?」

 

と同時に一夏に駆け寄る二人。

そしてお互いににらみ合う。あんまりやると千冬さん(レフリー)からレッドカードが出ますよ。

すると

 

「おい、馬鹿者ども。邪魔だ。端っこでやっていろ。」

 

千冬さん(レフリー)はレッドカードの前に警告を出した。

こえ~、まぁ授業中にやることではないから仕方が無いか。

その後グランドの穴はそのままにまた少しずれた別の場所で授業が続いた。

 

「続いて武装を展開しろ。織斑お前からだ。それくらいは自在にできるようになっただろう。」

「は、はい。」

 

そう言って構えを取るようにして武器を出す。

光が流れるように形を作り一振りのブレードが握られていた。

近接ブレードか……アレが噂のエネルギー無効武器かな?赤銅の情報では『雪片弐型』、それが名称か。

それなりに早く出せてたと思うが千冬さんの顔は険しい。

 

「まだ遅い。0.5秒で出せるようになれ。」

 

流石に厳しすぎじゃありません?

まぁそれだけ早く強くなって欲しいって事だとは思いますけど。

まぁ千冬さんのことだ後で何かかしらの手段で一夏のやる気を出すだろう。

 

「続いてオルコット、武装を展開しろ。」

「はい。」

 

そういうとセシリアは左手を肩の辺りの高さまで上げ、真横に腕を突き出す。

次の瞬間光があふれあのビームライフルが現れた。

赤銅の情報を見るに『スターライトmkⅢ』って言うのか。

……しかし銃口がこちらに向けられているのはなぜ?

 

「オルコット。確かに貴様の展開が速い。だがそんなポーズで横に向かって銃身を展開させて誰を撃つ気だ。正面に展開できるようにしろ。」

「で、ですがこれはわたくしのイメージをまとめるために必要な「直せ。いいな」……はい。」

 

さすが千冬さん、問答無用である。

セシリアの次は俺かな?と思っているとまだセシリアへの指導は終わってないようだった。

 

「オルコット、近接用の武装を展開しろ」

「えっ。はっ、はいっ」

 

セシリアは『スターライトmkⅢ』をしまうと近接用の武装を展開使用とする。

普通そうだよな。一夏の白式や俺の赤銅みたいに武器が遠距離のみ、近距離のみの機体がそんなにあるはず無いよな。

そんなことを考えているとまだセシリアは武器を出せていないようだった。

 

「ああ、もうっ!『インターセプター』!」

「……何秒かかっている。お前は、実戦でも相手に待ってもらうのか?」

「じ、実戦では近接の間合いに入らせません! ですから、問題ありませんわ!」

 

そりゃいくらなんでも無理でしょ。それに一夏にかなり削られたんじゃないの?キミ。

千冬さんもそこを突っ込む。

 

「ほう、織斑との試合であそこまで削られた後でまだそんな事がいえるのか。」

「それは…その…」

「いいか、自分の得意な状況で戦いたいならどんな時でも何にでも対応できるようにならなければ話にならん。まずは自身のできること苦手な事を把握し弱点を減らせ、自身の弱点をそのまま放置しておけば必ず試合ではそこを突かれるぞ。たとえばオルコット、お前が今の状態で近距離戦闘をされたら確実にお前は対処できないだろう。現にお前は織斑との試合でそこをつけれてあそこまで削られているんだからな。」

「……わかりました。」

 

ここまで言われたら納得せざるを得ないか。

実際間違った事を言ってるわけじゃないしな。もちろんセシリアの言う近接の間合いに入らせないように戦えればそれが一番だ。だがもし入られたときの対策をまったくしないのならそれは単なる弱点だ。

まあ一番は戦わない事だと俺は思うけどね。

 

「では最後に風音、お前の番だ。」

「ハイ。」

 

早撃ちのイメージ……

俺は目を閉じあけると同時に一瞬で武器を展開し構えた。

一瞬の光が収まる頃には俺は既に右手の銃を前に構えていた。

多分この中でも一番早かった自信はある、だが遅い(・・)

これでは自身の実力の4割もだせて無いだろう。

だが千冬さんは俺の展開を見てほめる。

 

「ほう、流石にこの手の技術ではお前が最速か。」

「……本当ですか?」

「ただ私との試合の時の方が早かった気がするが?」

「このIS壊しちゃうと整備のおっさんに怒られちゃうんで。」

 

クラス内にくすくすと笑いが起きる。

俺のISを壊してしまう発言が冗談だと思われたんだろう。

だが千冬さんと山田先生、一夏とセシリアはそれが事実だと恐らく解っているのか笑っていなかった。

箒に関してはこの程度の冗談では笑わないからか、信じているのかもしれないからかは判断できなかった。

 

「まったく、お前という奴は……まあいい、見たとおりISのクラス適正がどれだけ低かろうと練習次第ではこいつのようにしっかりと動く事ができる。今の通りこいつは二人より適正が低い状態で織斑より飛行がうまく二人より早く武器が展開できる。このクラス内にはこいつより適正が低いものはいないからな、自身の適正の低さを言い訳にする事は出来んぞ。」

 

先生、人を落ちこぼれの最低ラインにするのは止めてください。

イジメの原因になりかねませんよ、それ。

まぁ仮にこのクラスでいじめなんて起きようものなら確実にただじゃすまないけどね。

千冬さんはそのまま話を続ける。

 

「自身のIS適正が高いものは油断などするな。お前たちはただスタートラインが一歩先に出ている程度だ。その程度、少しの努力ですぐに追いつかれる程度のものだ。全員油断などせずに精進する事。わかったな。」

「「「「「「「はい!!」」」」」」」

「よろしい、では時間だな。今日の授業はここまでだ。織斑、風音グラウンドを片付けておけよ。」

「はい…」

「はい?先生、なぜ僕も?」

「どうした風音?お前私に対して失礼な事を考えていただろう。これで済ませてやるんだ感謝しろ。」

「わーやさしいなー(棒)。わかりました。」

 

ここでそれが来るか。

一夏てめぇ、にやついてるんじゃねぇよ。

はぁ……しばらく頭の中でも千冬さんをからかうのは止めよう。

 

「さて一夏。さっさと終わらせよう。」

「了解。奏よろしく頼むぞ。」

 

そう二人で話しながら俺たちはISで穴埋めをやっていた。

 

 

 

 

人生で何度も何度も失敗してきた。 だから私は成功した。

                            ~マイケル・ジョーダン~




ということで授業風景でした。
原作だと先生結構ぼろくそに言いますが多分こういうことが言いたかったんだろうと作者は解釈しています。
千冬さんはツンの中にデレを見出せないといけない、どM御用達の人物だと思いますww
では読んでいただきありがとうございますwww

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