インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~   作:filidh

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第十七話 学園最強

楯無を部屋に入れとりあえずお茶を出す。

さて俺が聞きたいのは彼女の事についてだ。

現在わかってるのは現実世界の記憶の『かなり強い人』と『悪い人ではない』いうことと

こちらの世界の『簪の姉』『厄介でその上何らかの立場に居る』と言う事ぐらいだ。

どこまで話を聞きだせるか解らないが聞き出してみますか。

 

「粗茶ですがどうぞ。」

「あらありがと。それで私を自分の部屋にまで入れて何をする気?」

「そうですね……ちょっとした質問してもよろしいですか?」

「スリーサイズなら教えてあげるわよ。」

「わぉ、魅力的。最初の質問ですけど妹さんと仲悪い?」

「!!…いきなり突っ込んでくるわね…」

 

と言いながら苦虫を噛んだような顔をしている。

まぁあまり時間をかけるつもりもないし、ちゃっちゃといこう。

 

「なんでそう思ったか聞いてもいい?」

「たいしたことじゃないんですよ。ただ簪ちゃんが僕の説得の中、一番気にしたのがあなたが関わっているかどうかだったってことです。そして僕にニックネームで呼ばれると嫌がり、名前で呼んで欲しいと言ってました。普通恥ずかしがるなら苗字とかで呼んで欲しいもんじゃないか、と感じたのもあり二つのことと勘から、もしかしてあなたと喧嘩をしている、もしくは根本的に仲が悪いと考えただけです。」

「そう……次の質問の後に答えてもいい?」

「了解です。次はたいしたこと無いですよ。あなたの役職って言うか正体ですね。それなりのところに居ますよね。」

 

と言うと今度はにやっとした顔になる。

この人コロコロと表情変わるな…

 

「それもどうしてか聞いてもいい?」

「僕の試験はもう終わったんじゃ?」

「じゃあ追試と言う事でどう?」

「了解しました。単純な話、僕が射撃の練習をしている時に近くにいたのはセシリアくらい。ということはあなたが確証を持って確認するためにはどうするか。」

「どうしたんでしょう。」

「監視カメラでも見たのでは?」

「正解。それでどうして役職についてるって考えたの?」

「それはカメラを見て動いたという前提の元の話ですが、仮に一般生徒がそんな事をする事を許さない人を知っているもので。」

「……織斑先生ね。」

「その通りです。そしてそれが許されているって事はそれなりの立場なんじゃないかなって思っただけですよ。」

 

そういうと楯無はさらに面白そうにわらう。

そしていたずらをするような顔で俺に話しかける。

 

「じゃあ問題、私の役職はなんでしょう?」

「え……そこは解りませんよ。」

「ヒントは学園最強。」

「え!?まさか……」

「ふふふ、その想像通りよ。」

「この学園にはチャンピオンって役職もあるの!?」

 

というとガクッと肩を落とした。

やっぱりこの人面白いな。まぁ遊びすぎると怒られそうだからそろそろ止めよう。

 

「冗談ですよ、スイマセンが解りません。」

「学園最強って言っても?」

「それが何を意味するのかさえわかりません。」

「もう少し学園の事に興味を持ちなさいよ。」

「気が向いたらそうします。」

 

今度は頬を膨らましている。

この人簪と顔とかの雰囲気は似てるけど全然違うタイプだな。

その後楯無は説明をするかのように話し始めた。

 

「この学校で最強を意味するのは生徒会長よ。いわば学生の長。」

「へーそうなんですか。」

「……それだけ?」

「え?………オサ スゴイ! オサ サイキョウ! イダイナセンシ!!……こんな感じでいいでしょうか?」

「何それ。どこの原住民族よ。」

 

と言いながら笑い出す。

これは自然な笑顔っぽいな。

一通り笑ったあとふぅとため息を付いた後話し始める。

 

「普通そこは『すごい』とか『まさかあなたが』と言った反応するんだけどね。まぁ君にそういった反応は気にしてなかったけど。」

「ご期待にこたえられたようで幸いです。」

「じゃあ最初の質問の答えだけど……今は仲が悪いわ。」

今は(・・)…ですか。まぁ解りました。」

 

と答えると楯無はへーっと言った反応をした。

 

「詳しく聞かないんだ。」

「残念、好感度が足りません。」

「あら、それは私が言うべき台詞じゃない?」

「そう言われればそうですね。言ってみます。」

「そーね……言ってもいいわよ?理由。」

「あまり興味ないんでいいです。」

「へ?じゃあなんで聞いたの?」

「いや、仲悪いなら『姉妹あるあるネタ』はあまり言わない方がいいかな~って。仮に知りたくなったとしても詳しくは簪ちゃんと仲良くなってその後、彼女が言いたいって言ったら聞きます。」

 

と言うと彼女はおもいっきり笑い出した。さっきよりも自然な顔だ。

まぁ笑わせようと思ってやってるんだこれくらい笑ってもらわなきゃ。

しばらく笑った後ひーひー言いながら話し始めた。

 

「何、そんな事のために聞いたの?本当に?」

「当たり前です。それ以外に何の理由があるって言うんですか?」

「………私たちを仲直りさせるため。ってのはどう?」

 

そう言って楯無は真面目な顔をした。

さっきまでの笑顔はここで終わりか。

 

「……仲直り難しいんですか?」

「……結構長い事この状態でね。誰でもいいから仲直りさせて欲しいって思うことはあるわ。」

「おっさん…倉持技研の栗城 修って人にも頼んだ?」

「いえ、でもあの人のほうから仲をとりもってくれるって言ってくれたわ。失敗しちゃったらしいけど。」

 

確定。おっさんここまで俺に任せやがったな。

あのおっさん何がちょっと面倒だ、めちゃくちゃ面倒じゃねぇか。

 

「解った、でも僕はなんで仲が悪いかとかは簪ちゃんのほうから聞けたら、それから行動する。それでもいい?」

「ええ、十分よ。でもどうして?突然、さっきまで乗り気じゃなさそうだったじゃない。」

「こういうのはよほど憎しみあってるわけじゃなきゃ、第三者が動くとろくなことにならない事が多いからね。」

「………ええ、そうね。よほどの事じゃなければね。」

「まぁ気長に待ってよ。悪いようにはしないと思うし。」

「ありがとう、じゃあ私はここら辺で帰らせてもらうわ。」

「じゃあおやすみなさいたっちゃん生徒会長。」

「今度は生徒会長をはずしてくれればうれしいわ。今度生徒会室に来たらおいしい紅茶ご馳走してあげる。」

 

そう言って彼女は俺の部屋を出て行った。

あ~クソ。何が少し面倒だ。姉妹喧嘩の仲裁なんてやったことなんて無いぞ?

 

 

 

 

 

 

「おっさん、適当言ったな?」

『悪いが使えるものは使う人間でな。』

 

楯無が居なくなった後俺はすぐさまおっさんに連絡を取った。

電話をするとすぐさま『成功したか?』と言ったので確信犯だと言う事が発覚した。

 

「おい、せめて簪ちゃんに連絡くらいはしろよ。」

『俺が言うとな、彼女は楯無が何とかしたんじゃないかって考えるんでな。多分今も考えているだろうよ。』

「はぁ……これ別口で貸し一な。つうかおっさんはなんで失敗したんだ。」

『どんどんお前に貸しが増えていくな。失敗した理由は多分俺は簪にじゃなくて楯無のために動いちまったって思われちまったからだ。』

「そりゃ、失敗するわ。……どれくらい喧嘩してるかは解る?」

『詳しくは知らんがかなり長いらしい。』

「左様で…」

 

ということはこれは本当に気長にやらないといけないな。

 

『……無理だったらやめてもいいぞ。もとは俺がやるって言っただけだしな。』

「もう楯無生徒会長とも接触した後でそれは無理でしょ。」

『本当にすまないな。』

「そこは終わった後でありがとうございました、でお願い。」

『ふ、カッコイイなお前。』

「格好つけてるだけだよ。」

『様になってりゃ問題ないだろ。じゃあ頼んだぞ?』

「おまかせあれ…と。」

 

こう言って電話を切る。

さて何をするにも俺がまず簪と仲良くならなければ。

途中で嫌われでもしたらゲームオーバー、楯無からの命令と思われてもゲームオーバー

さてまぁしばらくは牛歩のごとくだしほどほどにがんばろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、言う事で一夏。クラスの事は任せたぞ。」

「お前、何をやってるかと思えば……」

 

と食堂で一夏と話す。現在箒とセシリアは昼食を取りに行っていていない。

とりあえずしばらく俺はそっちの方にかかりっきりになりかねんし、一夏には説明しといた方がいいだろう。そう考え翌日にタイミングを図って説明したのである。

一夏は少し考えた後話を続ける。

 

「……お前が俺にそう言うって事は俺も何か手伝った方が?」

「いや、今のところは大丈夫。ただ後で少し力借りるかも。」

「了解。しかしお前は相変わらず首突っ込んでるな…」

「今回は僕の意志じゃなくておっさんにだまされただけだよ。」

「お前の事だ、頼まれなくてもやっただろ。」

「黙秘権を使わせてもらいます。」

 

と笑いながら飯を食べる。しばらくするとセシリアと箒が来た。

箒は相変わらず和食、セシリアはサンドイッチかな。

席に座って食べ始めると一夏が何か考えているのにセシリアが気が付いた。

 

「あら?一夏さんどうされましたの?」

「いや、ちょっと考え事。」

「何をだ?」

「僕が一夏に頼み事をしただけ。それより一夏のIS修行の調子はどう?」

 

結構露骨に方向転換したが一夏ネタにこの二人が食いついてこないわけがない。

案の状待ってましたとばかりにセシリアが口を開く。

 

「ISアリーナの使用許可がもう少しでおりますの。そうしたらわたくし(・・・・)が一夏さんに付きっ切りで教えて差し上げますわ。」

「結構だ。一夏の修行は私が(・・)依頼されたものだ。」

「あら?一夏さんの剣術に関してならまだしもISに関してならわたくしの方が適任では?」

「結構だと言っている。私が頼まれた事だからな。」

 

普段仲がいいけどこういう時すぐさま臨戦態勢に入れるお二人はすごく優秀ですね。

それぞれ自身がやると言うところを強調して笑顔で話している。

だがこれだと対一夏には逆効果だ。

 

「一夏、飲み物なんか買ってきて、3分な。」

「おい、俺パシリじゃないぞ?後で金渡せよ?」

「了解、何でもいいから、って言ってもあまりにもひどいのは勘弁な。」

 

そう言って一夏を席からはずさせる。一夏もこれ幸いと言った風に逃げ出した。

それじゃあとりあえず説得するか。

二人も一夏が席をはずすと俺が何か言おうとしているのを察したかこちらを見る。

 

「……箒、セシリア。それだと一夏には逆効果だぞ?」

「「な、なぜ!?」」

「簡単だ、あいつの事だ、今頃『喧嘩されるくらいなら二人に頼まないほうがよかったかな……』なんて考えてるぞ。」

「で、ですがIS関連の修行をするなら誰かに師事を仰ぐべきでは?」

「そ、その通りだ。」

「お前たちは大切な事を忘れている。互いにしか目がいってなくて一番の強敵を見失っている。」

「だ、誰のことですの!?」

「まだ一夏を狙っている奴が居たのか!?」

 

二人は強敵という人物に心当たりが無いのかうろたえている。

 

「ある意味箒より一夏の剣について詳しく教えられ、セシリアよりISについても教えられる。そして誰よりも一夏に近い。」

「一体…」

「誰ですの?」

「いや、ここまで言ったら流石に気が付けよ。織斑千冬大先生しかいないだろ。」

「「………あ。」」

「千冬さんも何だかんだで一夏には厳しくも甘いからな。多分頼まれたらそれなりに稽古をつけて練習のプランも立てるだろう。」

「た、確かに。」

「言われてみれば。」

「さらに一夏はかなりシスコンだ。千冬さんから言われた練習を愚直にこなすだろう。そうするとセシリアのいうIS訓練ばかりか箒との鍛錬も無くなる可能性もある。」

「そんな……」

「まさか、そこまで…」

 

そんなすべてが終わったような顔をするなよ。可能性の話しか、してないだろうが。

 

「解ったらあまりこういうことで喧嘩はしないほうがいいぞ。僕もあいつが何時そう思って千冬さんのほうにいくかは見当つかないし。」

「わかりましたわ。では箒さん、剣道の鍛錬であなたは二人っきりですからせめてISの訓練は私メインでよろしいでしょうか?」

「う、うむ。仕方ないな。そうなってしまったらもうどうしようもないからな。」

 

と話が付いたとき丁度一夏が戻ってきた。

手には何かホットものの缶を持っている。

 

「奏、買って来たぞ。後で120円。」

「お、一夏サンキュー。何買ってきた。」

「おしるこ。あと喧嘩はおわったのか?」

 

一夏のおしるこ発言に女性二人は『なぜおしるこ?』と言った顔をしている。

一夏も自身の分のお茶を飲もうとする。

 

「ありがと。後喧嘩ってほどのもんでもないだろ。お前がいなくなった後すぐに終わったぞ?」

「そうなのか、じゃあ勘違いだったか。……じゃあなんで俺に飲み物買いに行かせたんだ?」

「お前が喧嘩だと思ってそうだったから頼めば行ってくれそうだな、って思ったから。」

「お前…まぁ俺も飲み物買いに行くつもりだったから良いけどさ…」

 

と、何事も無いかのように話を進める男二人。

流石に突っ込もうと考えたのか意を決したように二人が話す。

 

「あ、あの…一夏さんも奏さんも平然と話進めてますけど…」

「一夏…なぜおしるこなんだ?」

「うん?ああ、こいつ結構甘党でな。こういう甘いものでも平然と飲むんだ。」

「結構うまいぞ?一回飲んでみろよ。」

 

という単純な理由だった。

別に一夏が嫌がらせをしたわけではないのだ。

ただ俺がこういう飲み物が嫌いじゃないだけで。

 

「……よくそこまで知ってるな。」

「いや、一年近く友達やってればそれくらいすぐわかるだろ。」

「……そういえばお二人はよく一緒に行動してますわよね。」

「そりゃ、学園内の唯一と言っていい男同士なんだ。一緒に行動くらいするでしょ?」

「「…………」」

 

一体どうしたと言うんだ二人とも?

二人とも何かを疑うような目でこちらを見ている。

まさかだが……ボソッと二人につぶやく。

 

「(……僕に嫉妬するとか勘弁しろよ?)」

「「!?ま、まさか(ですわ)!!!」」

「うおっ、一体どうしたんだ突然。」

 

と突然叫ぶ彼女たちに驚く一夏。

アホかお前ら。男に嫉妬してどうするんだ。

こんなんだと横から一夏が連れてかれちまうぞ。

疑問に思った一夏の追求を逃れるように言い訳をする二人を見ながら俺はおしるこ缶をすすった。

 

 

 

 

 

「真面目になる」ということは、

しばしば「憂鬱になる」ということの外の、何のいい意味でもありはしない。

                                  ~萩原朔太郎~




ということで十七話終了です。
おしるこ缶ですが作者は時々飲みたくなりますが
買って飲んでる最中に後悔するタイプです。
よんでいただきありがとうございました。

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