インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~ 作:filidh
クラス中が先ほどのありえない発言に沸き立つ中、俺は試験日の事を思い出していた。
あの時適当に受けていれば今頃こんな目に遭わなかったんだろうな…と考えながら思い出す。
~半月前~
【IS学園 入学試験控え室】
こう書かれた部屋の中で俺は一夏の試験が終わるのを待っていた。
試験内容に関しては詳しい事はわからないが全力で向かえば合格できると千冬さんも言っていたし、まぁ何とかなるだろう。
そうしていると一夏が部屋に戻ってきた。とりあえず声をかけるか。
「おお、一夏。どうだった?」
「ああ……なんか何もしないうちに終わった。」
「はぁ?」
「いや、詳しい事は口止めされてるからいえないけど、お前なら余裕だと思うぞ?」
「ああ、ありがとう。」
俺はお礼を言いながら首をかしげた。
何もしないうちに終わるってどういう試験なんだ?まぁ受ければわかるか。
俺は係りの人に呼ばれ試験会場へと向かった。
試験会場はアリーナと呼ばれる場所らしく俺は辺りを見渡したかなりの広さだ、こんな中でISを使って戦うのか……と考えていると係りの人と思われる人が話しかけてきた。
「ではそこにあるISを装備してください。その後武器を出そうとすれば出せるはずなのでそれもお願いします。」
「了解しました。」
そう言って目を向けるとそこにあったのは何かと縁があるIS。
千冬さんいわく第2世代IS『打鉄』と言うらしい。
あの一夏誘拐事件時に戦っている時はまさか自分がこれに乗ることになろうとはまったく想像してなかったな……
俺はISを装備し神経を集中する。
またはじめに触れたときと同じように頭に情報が流れてきたが何か違和感があった。
(うん?……俺がこれに慣れないせいか?それともISごとの適性見たいのモノか?問題は無いレベルだが……)
俺はそう考え武器を出すイメージとやらをやってみた。
目の前にあるリストの中から一番小型の銃を選ぶ。
すると右手に自身からすると大きいがISが持っていると小さく見える銃があらわらた。
さて次の指示は何かな?
「終わりました。」
「ハイ、ではアリーナ内まで歩いて行ってみてください。」
「わかりました。」
指示通りにISを動かす…これって飛べるんだよなぁ…なんかコツでもあるんだろうか?
と考えながら歩いていると頭の中に連絡のようなものが聞こえた。
『ではフィールド上に試験官がいるはずですので好きに動いて戦ってみてください。』
突然実戦かよ!?
これか!!一夏の言っていた『何もしないうちに終わった』というのは。
不意打ちなんてなかなか実践的じゃないか、俺はそう思いすかさず身を構えた。
すると向こうから同じように銃を構えたISが低空飛行しながらこちらに向かってくる。おそらくアレが試験官だろう。
向こうからの射撃攻撃、これがハイパーセンサーという奴か、いつもより遅く見えるな。
俺は攻撃を余裕を持って避けようとして
(っ!?反応が鈍い!!)
銃を構え狙いをつけるがやはり遅い。
相手に当てることはできるが、体の動きは遅いのに頭の判断だけ
(クソ!どうする!!何か作戦は…)
俺が頭を悩ませているとISが何か問題があるのかといろいろな情報を提示してくる。
その中で
(さ~て頼むぜ、打鉄ちゃん。)
試験官である山田真耶は先ほどの試験をふまえ考えていた。
『先ほどのわざとバリアーに突っ込むのはやりすぎだ』と周りから注意されていたのだ。
ちなみに彼女自身はわざとやったつもりなど毛頭無い。
(今度はしっかりやらないと。)
手加減もしつつ攻撃を加える、こちらにも攻撃を当ててくるし何とかこちらの攻撃もかわすという事は彼はとても良い線をいっている。
おそらく適正判定は最低でもB、もしかしたらA判定までいくかもしれない。
そう考えそろそろ終わりにしようと手に持つサブマシンガン状の銃の引きがねを引く。
先ほどまでの彼の動きならばこの攻撃は確実にかわせない。
その弾丸が発射された瞬間だった相手の男性が考えられない行動をしたのは。
俺は試験官の攻撃をかわしながら単純に考た。
頭と体の動きをおかしくするくらいなら『こんなものいらないと』。
俺は打鉄にシールドバリアーと右腕部以外の装甲、そして銃以外のもの
その瞬間相手の動きは少し早くなったが同時に俺の動きも元に戻った。相手がこちらにとどめを刺そうとした弾丸もすべて見えている。
(あの程度の弾幕なら簡単にかわせる。)
そう考え一瞬の内に相手に狙いを構え引きがねを連続して引く。
銃の反応が遅く10発程度しか発射されなかったがそれでも十分だろうと考えた後、体捌きのみで相手の弾丸はすべて紙一重でかわした。
そのまま試験官の方を向くとISが解除され呆然としていた。これはどうなるのだろうか?
「あのー……これって僕の勝ちで合格なんでしょうか?」
と試験官のほうに声をかけるとはっとしたようにこちらを向いた。
「あ、あの、少し待ってください!?一度先ほどのアリーナ控え室まで戻っててください。」
「はぁ……」
俺は言われたまま元の場所へと腕にだけISを展開させたまま戻っていった。
「D判定ですか!?あの動きで!?」
「機材の方ではそう判断しているんだ…だがあれを見たあとでは…」
「何かのミスでは無いのかね?」
「いえ、機材の方は最初から一貫してD判定であると提示しています。仮にどこかおかしいのなら先ほどの織斑一夏の方もBでなくDになるのでは……」
試験を行なっていた教師たちは頭を抱えていた。
それも仕方が無いだろう。最低レベルの動かす事もやっとのようなIS適正の持ち主が、あろうことか今までの生徒たちの中で一番良い動きをしているのだ。
そんな相手に『君は最低ランクのIS適正だ』ともいえるはずも無くどうしようかほとほと困っていたのである。
「山田先生、本当に手を抜いていたわけで無いんですよね?」
「当たり前ですよ!!むしろ織斑君の時よりしっかりとやっていた自信があります。」
「そうよね……どうします。もう一度機材を変えた後に試験を受けてもらいますか?」
「それがいいでしょう。山田先生。」
「はい。」
「今度はかなり本気を出してもらってもいいでしょうか?もちろん試験としてですが。」
「わかりました。」
こうして完全なイレギュラーである風音奏の再試験が決定したのである。
待合室で奏は説明を受けていた。
「再試験……ですか?」
「はい。と言ってもあなたの合格は既に決定しています。しかしこちら側の手違いでデータの記録がうまく取れていなかったためこのような事になってしまいました。申し訳ありませんがお願いできますか。」
「い、いえ。大丈夫です。ただ…ひとつだけお願いできませんか?」
「……なんでしょうか?」
「このまま戦ってもいいかということと、銃なんですがもう少し精度がいいのってありません?」
「はぁ?」
「さっきの戦いで無茶しちゃったらしくこの通り、引きがねがおかしくなっちゃってるんですよ。」
現在唯一展開されている腕部を見ると引きがねがカチャカチャ音を鳴らしている銃があった。
試験担当の先生がたは、頭を悩ませながら打鉄の整備とできる限り壊れにくく高性能な小型の銃を渡し、彼をアリーナへと送り出した。
アリーナに付くと先ほどとは違い既に同じ試験官がフィールドに立っていた。違うところは先ほどまではこちらと同じ打鉄だったのに対し今回は緑色のISに変更されているくらいだ。
相手のISを観察しているとアリーナ内に声が響いた
『今回の試験は相手に20発攻撃を当てた方が勝ちと前もって宣言させていただきます。』
「わかりました。」
「こちらも了解しております。」
先ほどとはルールが違うと言う連絡を受け互いに了解し、開始の合図を待った。
山田真耶、彼女の今回の状態はほぼ本気と言っても過言ではなかった。
装備こそ相手を考慮して単発式の銃に変えているがこのデュノア社製の第2世代型量産機、「ラファール・リヴァイヴ」自身が乗りなれた機体だ。
開始と同時に先ほどまでとは違う、と動きで見せて彼の実力を測ろう。
そう彼女は考えあえて戦意を隠そうともせずに発した。
対する風音奏、彼は楽しくなって仕方が無かった。
一年ほど前、弄ばれ完敗したIS相手に勝ったばかりか今度はもっと強そうな物まで出てきたのだ。試験と言う事で手加減はされているだろうがそれでも前に戦ったスコールの打鉄よりは今回の相手は明らかにいい動きをしていた。
さらにこれは命のとりあいではなく競技だ。ならば全力で向っても問題ないだろう。
自身は今、どこまで彼に近づいているのかがわかる。そう考えワクワクしていた。
『開始3,2,1……開始!!』
声がかかると同時に彼女は相手に突撃しながら銃を手早く彼に向けて唖然とした。
既に目の前には30発以上の弾幕が迫りきっていたのである。
(かわせない!?)
そう考えながらも回避行動を取った彼女だがあえなく20発以上の弾丸をくらい試験は1秒ほどで終了した。
(おお、この銃すげぇ!!弾のリロードしなくていいからどんどん撃てるし何よりさっきの奴と反応がダンチだ!!ただ、弾のブレがひどいな……)
彼は目の前の結果を理解するよりも銃の性能にはしゃいだ。
モニタールームでは教員たちは開いた口がふさがらなかった。
なぜなら彼はISの機能のうちほとんどを封印しており、まともに機能しているのはコア・ネットワークとシールドバリアー、あと強いて言うなら腕部装甲位だ。
それに対して山田教諭のISは制限があるとしてもそれ以外は普通に動いているのだ。
いわばスパコン並みの処理速度を持っても見切ることの出来ない速さで彼は動いているのだ。
「なんなんですか……彼…」
「……IS適正はどうなっている」
「試合中の記録と言えるほどのものを出す前に試験が終了していますが現在も常にD判定の範囲内です」
「「「「…………」」」」
最早どうしようもなかった。
正確な試験結果を出そうとした結果、さらに理解できない現象を目撃してしまったのである。
全員声を出せずにいると一人の女性が動き出した。
「私が試験をしよう。」
「織斑先生……」
「最早それしか無いでしょう。それにこのままじゃこの試験の意味すらなくなってしまう。」
「……ではお願いしましょう。ISの方は打鉄で大丈夫ですか?」
「問題ない、では行ってくる。」
彼女がそう言うと部屋を出て行った。
ではこちらの方はもう一度あのイレギュラーにお願いをするとするか。
教員たちは最早半笑いになりながらアリーナに放送を流した。
不可能なんてありえない。
~モハメド・アリ~
ということでVS山田先生でした。
主人公強すぎじゃない!?って思ったあなた。
原作のヴァッシュならこの程度朝飯前です。実際戦ったら相手に気づかれる前に終わらせる事が可能でしょう。
ということで次回こそ本当にVS千冬さんです。
読んでいただきありがとうございました。