インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~   作:filidh

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第六話 プライドの問題

二日目もとりあえずは普通に授業は進んで行った。

昨日と違うところを強いて言うのなら山田先生が俺と一夏に気を使ってか、専門用語も簡単に説明してくれる上に詳しい説明が書いてある教科書とそのページ数までしっかりと教えてくれたことだろうか。

本当に頭が下がるな…後でとりあえずお礼だけは言っておこう。

そうして時間は5時限目まで過ぎていった。

 

 

 

 

この時間は確か千冬さんの実習に向けた説明だったはず。

とりあえずあんな危険な兵器に乗るのだ、一字一句聞き漏らさないようにしなければ。

失敗して自分が怪我をするだけなら別にかまわない、だがここは学校で周りには多くの人がいるのだ。最悪周りを傷つける可能性もある。

自分が危険なものを手にしようとしている。自覚を持ち続けろ、忘れるな。

そう考えながら必死に授業に取り組む気合を入れていた。

 

「さて、今日は実習についての説明をするが……と、その前に再来週のクラス対抗戦に出る代表者を決めなければならないな」

 

と千冬さんが思い出したかのように話し始めた。

 

「クラス代表者は対抗戦だけでなく生徒会の会議や委員会の出席など・・・・まあクラス長と考えてもらえばいい。自薦他薦は問わない。誰かいないか?」

 

と言われましても昨日の今日でクラスメイトの事もほとんどわからない状況でそんな事を言ったら、

 

「はい!織斑くんがいいと思います!」

「はいはい!私は風音君を推薦します。」

「私は織斑くん!!」

「風音君」

「え、えぇぇぇ!?」

 

こうなりますよね。

一夏、変な声を上げるな。

こんな状況になったらクラスで目立っている男の、俺かお前になるに決まってるだろうが。

さて逃げ道を探すとするか。

 

「一応言っておくが、他薦されたものに拒否権はない。選ばれたからには覚悟を決めろ。」

 

うわぁーい、千冬さんが先に逃げ道塞いじゃったよ。

やばいぞ、あまり面倒な事や争うのはやりたくないんだ…それに原作だと一夏のイベントのはずで、これが原因で面倒ごとに巻き込まれてくんだ。なんとしてでも逃げねば。

って言うかこの時点でも巻き込まれるはず……

 

「納得いきませんわ!そのような選出は認められません!男がクラス代表だなんて・・・・・いい恥さらしですわ!このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

そうだここでセシリアが切れるんだよなぁ~

多分、実力もなにも関係無しに決められるこの環境と、ただ男であると言う事で選ばれると言う状況が我慢できないんだろう。

 

「大体!文化としても後進的な国に暮らさなくてはならないこと自体が私にとって耐え難い苦痛で・・・・」

「まぁまぁオルコットさんも落ち着いて、まだ決まって無い話なんだしね。それに国の事に関してはあまり関係ないしね?ね!?」

 

セシリアさんそれはちょっといけない発言だわ。回りもあまりいい顔をしていない、このままじゃまずいなぁ…早い所話しをそらそう。頭が冷えれば多分発言を取り消すぐらいするだろうし。

俺はセシリアの方を向きながらおちつかせるように笑顔で話した。

と思ったら今度は俺の隣の男が切れた。

 

「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ。」

 

い、一夏さーん!!気持ちはわかるけど落ち着いて!?ここで喧嘩しても何の意味も無いか、ら?……いやここは誘導すれば……よしやってみよう。

 

「なんですって!?」

「まぁまぁ一夏も落ち着けよ。」

「でも!?」

「聞けって。日本もイギリスもいいところだ。それは両方に行って住んだ事がある僕が保障する。それにイギリスの料理も悪くないんだぜ?」

「へ~例えば?」

「向こうで食ったピザは本当にうまかったな。あとポトフとかテリーヌも美味かった。でも僕も日本人だから普段食べるなら和食だけどね。」

「「「「「「へ~~~~」」」」」」

 

クラスのみんなもイギリス=メシマズだと考えていたんだろう、俺の言葉に感心する。

よしこれでお互いのメンツは保てただろうし足りないようならどっちかをほめてやればいい。

その後に『お互いそれでも我慢できないなら戦って決めればいいんじゃないか?ISで。』とでも言えば本編と同じ展開になるはず。

セシリアの方は自分の国の名誉が回復された事で少しは落ち着いたようだ。

しかしさっきから一夏は何か考えている…どうしたんだ?

 

「…………なぁ…奏…」

「どうした、一夏。」

「それってイギリス料理じゃなく無いか?」

「「「「「「……あ。」」」」」」

 

畜生!!こいつ気が付きやがった!!クラスのみんなもそういえばと言った風だ。

俺もイギリスで食ったイギリス料理はそれほど美味く感じなかった。

まずいわけでは無いのだ、ただ他の料理の方がおいしいと感じるだけで。

そもそもイギリスって国は美食文化って物が無いから自国民ですらそれをジョークにするほどだろうが!?

大体イギリスにいた頃に料理を頼んだら『こんなの食べるのかい?』ってイギリス人にも言われるようなものをどうほめろって言うんだよ?

横目でセシリアを見ると、あら~怒ってらっしゃる。な、何とかせねば。

 

「い、いや。おいしいものはあるって話で。」

「じゃあ、美味かったイギリス料理は?」

「……お茶とお菓子は美味かった記憶はある。」

 

事実上の敗北宣言である。

実際に美味かった料理の名前が出てこないので仕方が無い。

ただメシマズではないのだ、料理に気をかけないお国柄なだけであって。

しかしこれではセシリアも納得できまい。さらに怒りで顔まで真っ赤になっていた。

 

「あ、あなたがた…わたくしの国を侮辱しますの!?」

「い、いや僕はそんなつもりは!?」

「先に侮辱したのはお前だろ!!」

「い、一夏もオルコットさんも落ち着いて話し合おう。それからでも怒るのは遅く無いだろ!?な!?」

「決闘ですわ!」

「ああ、いいぜ。四の五の言うよりわかりやすい。」

「二人とも僕の話しを聞いて!?」

 

最早賽は投げられた状態だった。いかん、お前らが勝手に喧嘩をするんだったら俺も止めない。

しかし代表生徒に立候補させられているのに俺の名前も入っているのだ。

そうなると千冬さんのことだから……

俺は恐る恐る千冬さんのほうを見る。

 

「……わかった、ではお前らで戦って代表を決めろ。試合日は一週間後だ。」

「がんばれよ一夏!!応援してる!!」

「お前もだ風音!!計三名で競い合え。」

「デスヨネー」

 

しかしISに乗ったことも無い生徒が代表候補生相手に一週間で戦えとか千冬さん、いくらなんでも無理がありません?

やっぱり『どS』なの?俺と一夏をいじめて楽しんでるの?

恨めしそうな顔で千冬さんの顔を見る。

 

「何だ文句でもあるのか?」

「メッソウモナイデスー」

 

畜生、あの顔は内心笑ってやがるな。

俺がうじうじしていると一夏はセシリアに対し話しかけた。

 

「ハンデはどのくらいつける?」

「あら、早速お願いかしら?」

「いや、俺がどのくらいハンデつけたらいいのかなーと」

 

流石にクラスに笑いが起きる。

 

「お、織斑くん、それ本気で言ってるの?」

「男が女より強かったのって、大昔の話だよ?」

「織斑くんは、それは確かにISを使えるかも知れないけど、それだけでしょ?」

「やめときなよ。今の女に男が勝てるわけ無いんだから」

 

フム……気持ちいい状況ではないが今の俺たちには実績は無いんだ。

甘んじて受け入れるしかあるまい。

言われるのがいやなら結果を出すしか無いだろう。

しかし予想もしないところから援護射撃が入った。

 

「そういうわけでもありませんよ?」

 

え?山田先生?突然どうしたの?

千冬さんも続くように半分笑いながら話を続ける。あ、なんか嫌な予感…

 

「その通りだな。はじめに言っておくが、このクラスの生徒内で一番強いのは間違いなくそこの男だ。」

「一夏おめでとう、織斑先生にほめられたぞ。」

「いや、確実にお前の事だろ。でも織斑先生どういうことですか?」

 

おい一夏、詳しく聞くな!!

しかし千冬さんも言いふらさないと約束したしな、多分言わないだろ。

あ、山田先生に口止めしてねぇ……

 

「そこにいる風音君は試験官相手に実質IS展開せずに2回勝って、その上そのままIS展開した織斑先生相手に5分間互角に戦ってたんですよ。」

「………え?ISを…使わずに?」

「IS相手に…勝って?」

「織斑先生と……互角に戦ったですって?」

「……千冬姉……本当なの?」

「………ああ、事実だ。」

「「「「「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」」」」」」」」

 

このクラス始まって以来最大級の叫び声が教室中に響いた。

俺はもう好きにしてくれと思いながら明日のジョー見たく燃え尽きていた。

神様、僕に平穏は無いのでしょうか?

 

 

 

Still waters run deep.(静かな川の水は深く流れる)

                           ~著者不明~




ここからある意味風音君にとっての試練が始まります。
彼はどうやってIS相手に勝ったのか?
そしてVSブリュンヒルデ!?
そこら辺は次回の話になります。
では今回も読んでいただきありがとうございました~

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