インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~   作:filidh

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第二話投稿させてもらいます。


第二話 IS学園

ISを動かしてからIS学園に入学するまでの一ヶ月間、俺はいろいろな目に遭った。

まずありえない数のマスメディアである。

よほど俺の過去が面白いのか連日わざわざ俺の家の前に張り込むためランニングすら出来ない。まぁこれは政府の方で何とかしてくれたらしく半月ほどすると収まった。

ただしテレビで連日面白おかしく放送されたため、多くの人に顔と名前を覚えられたのではないだろうか……それに俺がISを動かせたからと言って過去も関係ないような……まぁ外国でも放送されていたためか俺の姿を久しぶりに見れたと婆さんが心配しながらも喜んでいたからそれは良しとしよう。

これでようやく元の生活に戻れたかと思った……

がそれは違った。今度は各国と各企業の勧誘争いである。

それもマスメディアが居なくなった後連日押しかけてくるのだ。いろいろとご機嫌窺いにおみあげと称してプレゼントを置いていくところもあれば、家に押しかけて説得しようとするところもある。こういうところならまだ良いが、まるで金魚の糞みたく俺のやる事すべてについて来るのにはほとほとまいった。

俺は『IS学園に入学するまでだ…』と我慢していたのだが、俺の我慢の限界の前に2~3日で元世界最強の女(オリムラ チフユ)が切れた。

俺を突然に織斑家に泊まらせ、どこかの国のお偉いさんが来ようものなら問答無用で追い払ってくれた。

お礼を言うと

 

「私はお前のお婆様から、お前を預かっているんだ。あんな状況にお前をおいて置けるはずが無いだろう。」

 

流石千冬さん、イケメンである。

さらに話を聞くと織斑家には元々マスコミや勧誘などそういう奴らが来るのが禁止されているらしく、IS学園に入学するまでここに泊まるように言われた。

なるほど、だから連日テレビで出てくる名前が俺だけで一夏の名前がほとんど出てこないわけだ。

ならば俺のときにもそういう風に規制してもらいたかったんだが、まあ今となっては後の祭りである。

そんなこんなでIS学園に入学する試験でも一悶着あったが、俺と一夏は無事にIS学園に入学する事ができたのである。

 

 

 

 

(そんな風に考えていた時期が俺にもありました…)

 

俺と一夏は入学式終了後完全に教室の自身の席に座りながらダウンしていた。

席は先生方が気を使ったのか俺と一夏は隣同士にされていた。

しかし、どこを見ても女性!!女性!!!女性!!!! 女 性 !!!!!

他の男性にとっては楽園かもしれないが正直俺には嬉しくないのだ。

相手に必要以上に気を使わないといけないし、先ほどから俺と一夏を見ながら何かを話している。おそらく2~3年生の生徒と思われる人も見えるし……

完全に上野動物園のパンダの扱いである。そういやこの世界にも上野動物園にパンダって居るのだろうか…まぁどうでもいいが。

あのマスメディアたちを経験した俺からすればまだ何とかなるレベルだが一夏は大丈夫だろうか?

横へ首だけ動かして一夏に話しかける。一夏も一夏でこちらをゆっくりと向く。

 

「(おい、一夏!?無事か!?)」

「(………早く家に帰りたい…)」

 

完全にグロッキーだった。

 

「(…同意…でも耐えないと始まらないぞ。極端な事を言えば3年間こうなるわけだから。)」

「(……………)」

 

言葉無く一夏は机に顔を伏せた。一夏……生きろ。

と言っても俺も平気なわけではない。さっきから視線は気になるし俺の名前が時々聞こえる。もし現実世界に戻れたら何があろうと有名人の追っかけや野次馬は止めよう。覚えている限りは。

と考えていると生徒たちが引いていく、先生が来たのか?……確かあの人は入学試験のときも会ったな。名前はえ~っと……だめだ思い出せない。

 

「初めまして。私がこのクラスの副担任をされる『山田真耶』といいます。よろしくお願いします。」

 

ああ、そうだ。山田真耶先生だ。やっと思い出した。……射撃がすごい、元日本代表候補だっけ?

やはり現実世界の記憶はだんだん思い出しにくくなっている。……仕方ないことかもしれないな。

かれこれ7年近くこっちの世界に居るんだ。実際七年前に読んだ小説を正確に思い出せるかといわれたら自信は無い。

と周りの自己紹介を聞きながら考えていると一夏の自己紹介になった

 

「……お、織斑一夏くんっ」

「は、はい!?」

「ご、ごめんね。で、でもね、出席番号順に自己紹介をしていって、「あ」から、今は「お」なんだよね。それで織斑君の番だから自己紹介をやってくれるかな。だめかな?」

「………え?」

「あっ、あの、お、大声出しちゃってごめんなさい。お、怒ってる? 怒ってるかな? え~と――」

 

お、やっと気が付いたか一夏。先生もびっくりしているがなぜあそこまで低姿勢なのか。

それに……あいつ別の事考えて聞いて無かったな。

 

「い、いえ!?大丈夫です!!自己紹介しますから、先生落ち着いてください。」

「ほ、本当に? や、約束ですよ! ありがとう織斑君!」

「え、えぇと…織斑一夏です。よろしくお願いします。」

「「「「「…………」」」」」

「……以上です。」

(((((ガタッ)))))

 

クラスの大半がずっこけた。まぁあれだけ引っ張って落ちが無ければこうなるか。

……助け舟くらい出してやるか。

 

「えっ!?お、俺何か悪いこと言った!?なぁ!?奏。」

「一夏~おまえ、小学生の自己紹介ですらもう少し話すぞ?」

「って言われてもなぁ……」

「じゃあ一夏君、質問です。あなたの趣味は?」

「えっと……カメラかな?」

「へ~それはなぜ?」

「癖になっちゃてるのもあるけど出来るだけ覚えておきたい事は写真で撮ることにしてるんだ。」

 

良し、乗ってきたな。

 

「じゃああなたの特技は?」

「特技!?……家事?」

「料理ですか?」

「いや、家事一般はとりあえず全部こなせる。」

「へ~まるで主夫ですね。」

「う、うるさいな。別にいいだろ?」

 

良し良し、いつもの感じに戻ってきたな。

じゃあ仕上げに行くか。

 

「最後に好みの女性のタイプは!?」

「え~っとな……」

((((((((ガタッ))))))))

 

クラス中の女子が身を構えた。って言うか山田先生、なぜあなたも身を構えてるんですか?

 

「…って奏!?これ自己紹介と関係ないだろ!?」

「っち、だまされなかったか…」

 

あからさまにクラスの女子たちも残念そうにしていた。

…山田先生も残念そうにしないでくださいよ。

って言うかこの人、本当に先生なのか?実は同級生でした!!って言われても納得できるぞ。まぁISの戦闘技術を除けばな。

俺と一夏はその後もコントのように掛け合いを続けてもう少しで切り上げようとしていたが。

ゴンッ!!という鈍い音と共に俺と一夏の頭に拳骨が落ちた。

頭を抑えながら後ろを見ると千冬さんがそこに居た。

 

「千冬姉!?なんでここに!?」

「ここでは織斑先生だ。それとあまり馬鹿なことをしているんじゃない。」

 

と言いさらに頭を叩いた。

 

「あっ、織斑先生。もう会議は終わったのですか?」

「あぁ。任せてすまなかったな、山田先生」

 

と山田先生と話し、教壇の前に立つ。

 

「諸君。私がこのクラスの担任の織斑千冬だ。お前たち新人を一年で使い物にするのが私の役目だ。私の言うことをよく聴き、理解しろ。できない者はできるまで指導してやる。いいな」

 

おお、まるでどっかの軍隊の教官みたいだな。っていうか教官やってたな、千冬さん。

すると突然教室が黄色い悲鳴に包まれた。

 

「「「キャァァァァァァァァァ!!!!!!」」」

「千冬様、本物の千冬様よ!!」

「ずっとファンでした!!」

「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しくも本望です!」

 

耳が痛てぇ…まぁ先ほどの拳骨で頭のほうが痛いけどな。

 

「……はぁっ。毎年毎年、よくもこれだけ馬鹿者共がたくさん集まるものだ。ある意味感心させられる。それとも何か? 私のクラスにだけ馬鹿者だけを集中させるように仕組んでいるのか?」

 

おそらくそういう人たちだけ集まっているのではないかと。あと千冬さん本気で頭抱えてるなぁ……あれ。

 

「きゃあああああっ! お姉様! もっと叱って! 鞭で叩きながら罵って!」

「でも時には優しい笑顔を見せて!」

「そしてつけあがらない程度に躾して!!」

 

ええい、この教室にはマゾしかおらんのか!?

いや、待てよ?確実に千冬さんはSだからある意味問題ないのか?

よくよく考えると千冬さんという一人の『どS』に対してこの教室のMたちだと、どれほど集めれば間に合うのだろうか…

と考えていると千冬さんがこちらをにらんだ。

 

「風音、お前失礼な事を考えてはいないか?」

「いえ、滅相もございません。」

「………二度目は無いぞ。」

 

……こえぇ!!なんで頭の中で考えてる事がわかるんだよ!?それも悪口限定で!?奴隷にだって頭の中で舌を出す権利ぐらいは与えられてるって言うのに。

これ以上考えたらまた千冬さんにやられそうだからここら辺でやめておこう。

 

「っち、たく。それにお前らはまともに挨拶位して見せろ。」

「わかりました。千…織斑先生。」

「はい先生。」

「じゃあ次風音奏君、お願いするね?」

「え?あ、ハイ。」

 

と山田先生に言われ気の抜けた返事をしてしまった。どうやらこの時間の進行は山田先生が続けるようだ。

 

「え~っと先ほどはいきなり馬鹿なことをしてすみませんでした。僕の名前は風音奏。日本語で風の音を奏でると書いてその漢字をそのまま抜き出して書きます。趣味は旅行と音楽鑑賞ですね、基本なんでも聞きます。ISに関してはそれほど詳しいわけではないですがよろしくお願いします。あとさっき話してた隣の織斑一夏とは中学時代からの友達です。……後の詳しい話は学校生活で話しましょう。以上です。」

 

と一応、一夏との関係も話しながら無難な自己紹介をおこなった。

その後は特に問題なく自己紹介はそのまま一時限目までつづいた。

 

 

 

 

「俺……もう無理……」

「しっかりしろ一夏……まだ一時限目が終わっただけだぞ…」

 

俺たちは机に伏せながら話す。

一時限目が終わった後も続々と人が集まってきており、廊下には俺たちを見るために二年生、三年生の先輩たちまでもやってきており、廊下はぎゅうぎゅう詰め状態だ。

これだけ人が来るのなら見物料でもとれば大儲けできるのではないだろうか?課金制とかにして一番お金を入れてくれた人には一夏のサインつきツーショット写真プレゼントとかすれば。

そう考えていると回りがザワっとざわめいた。俺は顔を上げて見ると一人の女子生徒が一夏に向かって歩いてきていた。

確か彼女は篠ノ之 箒。一夏の幼馴染で剣術娘。一夏のことが好きな娘……だったはず。記憶が正しければの話だが。

彼女が近寄ってきているのに一夏は机に伏せたままである。

 

「一夏~お前にお客さん。」

「っつ!?」

 

と一夏に声をかけるとなぜか少しうろたえる箒。

 

「あれ?違った?」

「い、いや。……ちょっといいか。」

「……箒?」

 

一夏は顔をあげ箒の方を向く。少したじろいだ後まっすぐに一夏を見つめ返す。

 

「………………」

「………………」

「……いや、なんか話せよ。」

「……あ、ああ。何の用だ?」

 

一夏、お前……

いつもの事とはいえ、そこは『久しぶり』とか『おお!?箒か!!変わりすぎて一瞬わからなかったぞ!?』とか言えよ……

『何の用だ?』は無いだろ、流石に……

しかし箒の方は気にする様子も無く話を続ける。流石一夏の幼馴染、そこら辺は解っているのか?

 

「廊下でいいか?」

「あ、ああ。」

「早くしろ。」

 

と言い、先に廊下に出て行く。話方を聞く限り結構似たもの同士なのか?

一夏はというと立ち上がるまでは良かったが俺の方をチラッと見てくる。俺は付いていかんぞ?

 

「ほら、さっさと行ってこい色男。」

「ち、違うって!?あいつはだな!!」

「後で聞くから。女の子を待たせない。」

「あ~…後でちゃんと聞けよ!?」

「わかったから、さっさと行った行った。」

 

といい一夏を手で追い払うように送り出す。

そうすりゃ女子生徒たちもお前を追って行ってくれるはず………なぜ誰も付いていかないの?

…みんな空気が読める子なのね。じゃあ俺から発せられるこの嫌がってる空気読んでくれないかな?無理ですか、そうですか。

頭の中でそう思っても女子生徒が少なくなる事はなかった。

 

 

 

苦しい時には、自分よりもっと不幸な男がいたことを考えよ。

                            ~ポール・ゴーギャン~




ということで第二話でした。
リアルの都合上、一週間に3話~4話くらいのペースならいけそうかな?
そこら辺は現在調整中なのでしばらく投稿ペースがめちゃくちゃです。

それはともかく今回も読んでいただき本当にありがとうございまーっす。
次回、少しだけですがメシマズ代表…失礼イギリス代表候補生の登場です。

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