インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~ 作:filidh
ではどうぞ!!
俺が日本に住むようになってから1年とちょっとが経過した。
元の世界で住んでいた日本とほとんど変わらないためか環境にもすぐ慣れ友人もそれなりに出来た。
生活面も千冬さんからの手助けや一夏と共にバイト、さらには時々送られてくるアストリットの婆さんからの物資。これらにより助けられながらほぼ普通と同じ生活を送っていた。
時々自身についても探しては見たもののやはりどこにも『風音』という名の行方不明者は存在しなかった。まぁ気にしてはいなかったが。
そんなこんなで二月の中旬。俺と一夏は私立藍越(あいえつ)学園の受験をするために雪道を歩いていた。
藍越学園の入試を受けることになったのは2つ理由がある。
1つ目は学費が安く就職率の高いという点である。
金に関しては問題は無いが、実質ほとんどあの通帳は使えなくなってしまった。あまりにも大金を使うと千冬さんに感づかれてしまう事になりかねないからである。
あの人の勘の良さは異常である。俺や一夏の考えが見抜けるのか下手な事を考えようものならきつい視線ともれなく拳がついてくる。まぁお得!!
とまぁ、話はそれたが自由に金が使えない今藍越学園という学校は丁度良かったのである。
さらに卒業後の就職先にはカトリック系の教会に行っている者がいるらしくそこが気になったのも理由と言っちゃ理由ではある。
二つ目は一夏である。
こいつはなんと中学卒業後はすぐさま働きに出ようとしていたらしく、俺の説得と千冬さんの調きょ…説教(肉体言語)によりとりあえずは俺と同じ藍越学園を受けることにしたのである。
その試験会場にむけ俺たちは歩いていたのだが
「寒ぃ……」
「一夏、あと少しだ……」
「……おう、これで何回目のあと少しだ?」
「……まだ十回は言っていない……はず…」
俺たち雪まみれになりながら、まるで遭難者のようになっていた。天候は吹雪、視界は50m先も解りづらい。
こうなったのには理由がある。今日の試験日に記録的な豪雪が重なったのである。
おかげで電車はもちろん交通機関はほぼ麻痺。何とか試験会場がある近くの駅まで付いたがその後は歩いて行くしかなかったのである。
はじめこんな状況なんだ、試験日だって延期されるだろうと思い連絡をしてみるが雪のせいか、つながらずとりあえず会場に向かおうと言う事にしたのだが…
「……雪を舐めすぎていた…」
「……だな……。…奏」
「……どうした?……」
「………これで試験延期だったら…どうする?」
「…言うな……考えたくも無い…」
げっそりとしながら吹雪の中を進む。
その後10分ほど進むと大きな建物が見えてきた
「一夏……!!多分あれだ・・・!!」
「………早く行こう!!」
最早何でもいいからこの吹雪から開放されたい俺たちはとりあえず中へと駆け込むのであった。
中に入り試験場を探すがなかなか見つからない。というかこの建物まるで迷路なのだ。なぜ普通の建物にここまで行き止まりがあるのだろうか……
さらに途中人とすれ違う事もなく俺たちは行く当ても無く建物の中で迷子になっていた。
時間を確認すると既に試験開始10分を切っていた……
「一夏ぁ~もうこのままダンジョン探索で一日終わらせない?正直この後試験受けてもどうしようもないと思うんだが……」
「そんなことしたら千冬姉に殺されるぞ?」
「……はぁ…でもどうする?最早自分がどこにいるのかもわからないぞ?」
「……良し。次に見つけたドアを開けるぞ俺は。それが多分正解なんだ。」
「何を根拠に?」
「……勘だ。」
もうどうでもいいかと半分やけになっていた俺は一夏に続いた。仮に違ったとしても人がいればその人に場所を聞けばいいし。
一夏は近くにあった扉を開け中に入っていった。
「「失礼します。」」
中を見るとカーテンで半分に区切られた部屋があった。確実にハズレである。
「違うッぽ「だれ?次の子は?早く着替えてね」」
とカーテンの向こうから声がする。
見ると30代くらいの女性影が机に向かいながらこちらに声をかけていた。
影から察するに俺たちの方は一切向いていない
「あ~こんな日に限って大雪なんて……しかも受験者全員がバラバラに来るから休み時間も無いし…」
どう見てもイライラしてらっしゃる。俺は一夏と顔を見合わせるととりあえず彼女に近づくためにカーテンの向こうに行く事にした。
カーテンを潜り抜けるとそこには二体の甲冑が…否、甲冑ではない。俺たちはこれを近くで見た事がある。
(ISか……)
目の前にあるのは一夏を誘拐し俺が戦ったISと良く似たものがそこにあった。
そういやあのスコールとかいうお姉さんどうなったんだろ?一応ドイツ軍にも伝えてたけどつかまったんだろうか?
などと懐かしい人を思い出しながら一夏を見ると一夏は嫌なものを見たような顔をしている。
まぁ、千冬さんが棄権した原因であるISと同じものが目の前になるんだ。仕方ない事と言えばそうなのかもしれない。
などと考えているときつめの大声がかかった。
「何してんの!?着替えたならさっさとそれに触れなさい!?時間は無いのよ!!」
「「は、はい!!」」
「………はい?……男?」
と言いながら振り向くよりも早く俺たちは声に押されて同時にISに触れた。
とたんに頭の中にさまざまな情報が流れてくる。基本動作、操縦方法、機体性能、機体の特性……
ハッとして手をはなす。一夏のほうを見ると俺と同じようにしていた。お互いに目を合わせ沈黙する。
一夏は再びISに手を当てると今度はISの手が動いた
「……なぁ…奏…今俺…ISを動かしてなかったか?」
「……ああ。……お前…女だったのか?」
「そんなはず無いだろ……」
互いにボケと突っ込みにハリが無い。ためしに俺も再び触れて動くように念じるとISが動き出した。
「……俺も動かせると言う事は…これ新型のISとかなんじゃね?」
「……そうなのかな…」
「ち、違いますよ……」
「「え?」」
「それは訓練用のISで…て言うよりなんでISを男の人が!?そんな事より早く連絡しな…そういえば今携帯通じないんだった!!ど、どうしましょう!?!?」
と言いながら慌てて部屋から出て行く女性。
俺たちは放置か……仕方ないか。今思い出した。これ原作での一番最初のとこ『世界で唯一ISを動かせる男』が見つかったシーンだわ。そりゃ誰だって焦るわな。
……あれ、俺も動かしてね?……これヤバイんじゃないか?これ否応無しに
そんな事を考え、うつむきながら青くなりそうな俺に対して、一夏はISをじっと見つめ何かを考えていた。
その後は大変だった。
世界初の男性のIS操縦者が二人も、それに日本に同時に現れたのである。
世界に衝撃が走った…というより全世界で男性に対するIS適正の調査が行なわれる事になった。
しかしその後の調査でも男性のIS操縦者は見つからず。結局『世界に二人しか居ない男性IS操縦者』に俺たちはなったのである。
しかしそのとき問題が発生した。
一夏はまぁ生まれも育ちも日本人だからそのまま日本所属で収まった。だが問題は俺の方だ。元無国籍の現日本国籍の男、その国籍を争ってさまざまな対立が起きたらしい。
日本は『今も昔も彼は日本人だし彼もそれを望んで日本にいる』と言い、
ドイツは『彼の一番長く居る国はわが国である。よってわが国がその国籍を主張する』と言った。
フランスも負けじと『最初の記憶があるのはわが国でありおそらく彼はわが国の国民である』とも言っており、そうすると他の国も勝手にいろいろと言っていた。一番遠い国だとブラジルとかもなんか言っていたらしい。
まぁつまり俺は世界各国から取り合いになっていた。どこの国も簡単に言うと
『世界に二人しか居ない男性操縦者が両方日本に居るなんてズルイ!!』
と言うことだろう。
結果的に俺は日本国籍を奪われ暫定的に日本に住んでいる無国籍扱いになった。………これ人権侵害とかに当たらないの?と言ってもどこの国もならばうちに来いと言うだろう。
そして結果的にというか、やはりというか、俺も一夏と一緒にあの学園に送り込まれる事になった。そう『IS学園』にである。
誰の人生にも雨は降る、暗く悲しい日がある。
~ロングフェロー~
ということで第一話終了です。しばらくはそれなりのペースで掲載できると思います。
では次回もお楽しみくださ~い。
今回も読んでいただきありがとうございました。