インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~ 作:filidh
今回も本編を読む上で飛ばしてもかまわない話ではありますが読んでいただければ幸いです。
あとこの話は決してシャルロットへのテコ入れではありません。ありません。
奏が病院退院まで数日前の話である。
このとき彼はとてつもなく暇であった。傷はほぼ完治したというのに5日間目を覚まさなかったせいか安静にしているように医師には言われるし、軍の方では一応重要参考人なのか常に一人の護衛が付いていた。
ちなみのこの護衛、俺の身の上話を聞いて泣いていた軍人さんでここ数日でかなり仲良くなったが、そのせいか余計に外に出してもらえなかった。
織斑姉弟は既に日本に帰国していたし、婆さんも一度見舞に来た後に既に帰ってしまった。
俺は部屋の中で何をするわけでもなくボーっと横になって気が向いたら眠る。このサイクルをかれこれ1週間続けている。
(体がなまってしまいそうだ……早くもっと強くならないといけないのに……)
あのISとの戦闘を思い出し、俺は自分の無力を実感していた。
攻撃さえ通じれば何とかなる、そう考えていたが結果は攻撃すら満足にかわせず弄ばれていただけであった。
こんな事ではあの
そんなこんなで体を動かす事も出来ず俺はベットの上で眠ることにした……
夢を見た。
髪が短く身長も小さい。おそらくこれは…シャルロットの家に泊まらせてもらった時の記憶だろう。あそこでの一週間は本当にすばらしかった。現在の生活と同じくらいに俺はあの生活に安息を感じていた。まぁそれでも俺はあそこに居られなかったんだけどね。
ここはおそらくシャルロットの家の前だろう…何をしていたんだっけ・・・
と過去のことを夢の中で考えていると俺は勝手に口を動かしていた
「シャルロット~買い物行くんじゃね~の~。俺、先に行っちまうぞ?」
完全に素の口調である。
このころはまだあまり意識していなかった頃だから仕方が無いだろう。
今は現実世界の『俺』とこの世界の『僕』で一人称を使い分けるよう意識している。そうしないと元の世界に戻れない気がしてしまうのである……それでも時々素は出てしまうが。
そう昔の自分の発言を聞いていると家の中からシャルロットが走ってきた。
「待ってよ!!ソウ!!」
「置いて行かんから走るな、転ぶぞ?」
「転ばないよ~っだ」
と言いながら俺に舌を出すシャルロット。
夢の中の俺は笑いながらシャルロットと共に町に向かって歩いていった。
何か話しているが夢だからだろうか、良く聞こえないし自分が何を行っているのかも解らない。
しかし本当にシャルロット、久しぶりに見たな~今頃何してるんだろ?まぁ、おばさんと仲良くやってるだろ多分。
おばさんに少しは似てきただろうか、だとしたら良いんだが。あいつ何だかんだでおてんばだったしなぁ……
などと妹を心配する兄の気持ちになりながらシャルロットについて考えていた。
その後はそのまま買い物を続け、シャルロットにプレゼントを渡し何かを話していた。何を話したんだったかなぁ……
お、だんだんなんか聞こえてきたぞ?
「~~~~って~し~?~~少し家で暮せばいいじゃない?」
「う~ん………」
ああ、この会話か。
なら忘れられるはずも無い、俺があの家を離れなきゃ行けない理由を何とか説明しようとしていた時なんだから。
俺があの家を離れなければ行けない理由、それは『あの家の安全のため』であった。
この町に着いて、すぐにあったあのひったくり犯。あいつらはここらへんでは有名な犯罪グループらしくひどい時には暴力事件なども起こしているらしい。
そんな奴らに俺は狙われていた。あの財布をスッたのが俺とばれたのかどうかはわからないが俺を探している事とだった。
俺も対策として伸ばしたい放題の髪をおばさんに短く切ってもらい服装も出来るだけ清潔にして一見解らないようにはしていた。だが突然シャルロットの近くに現れた少年に犯罪者共が気が付く可能性が無いわけじゃない。
襲われる時俺だけなら当時もなんとかなるが、仮にシャルロットやおばさんにその手が伸びたとしたら……考えるだけで恐ろしくてたまらなかった。自分があの家族をさらに不幸にする存在に思えてならなかったのである。
しかしそんな事を二人に話すわけでもなく俺は『家に帰るため』という理由でこの家を出ることにしたのである。
「だめなの?」
「……父さんと母さんもそろそろ心配するだろうし。」
「……そっか…」
そういうとあからさまに気を落とし顔をふせるシャルロット、どうしようもないが何とかせねば……確かそう考えて必死に頭を使ってたんだよな。懐かしい…
「まあ、またいつかこっちに来る事があったら、そのとき必ず寄るよ。」
「……うん…」
「指きりやってもいいよ?」
「ユビキリ?何それ?」
「日本の約束する時のおまじないさ。」
「……やってみる。」
興味を持ったのかシャルロットはこちらを向いた、うん少しは元気になってるな。
「じゃあやるからこう小指を出して」
「……こう?」
「そう。んで『指きりげんまん嘘ついたら「~カ~~ザネ!!~~カザネ!!」」
指きりの最中に聞こえた、ごっついおっさんの呼び声によって俺は夢の世界から目覚めた
寝起きで目に入ったおっさんの顔。
先ほどまで美少女と言っても過言ではない相手の夢を見ていたのに……
そういやあの後シャルロットと続けて何か指切りしたんだよな……なんだったけな?と考えていると、おっさんは俺がまだ寝ぼけていると思ったのか声をかける。
「カザネ!!起きろ!!」
「~~ぁあん?……なんだよ軍人のおっさん……」
「おっさんじゃない。お兄さんと呼べ。」
「んでおっさん。僕を起こしてどうしたの?」
あくまでもおっさんと呼ぶ俺に少ししょんぼりするおっさん。どうでもいいや。
すぐに持ち直した後におっさんは話す。
「……お前の日本の国籍が認められたらしく係りの者がこちらに来るらしい。」
「お?本当に?何時ごろ日本にいけるの?」
「そこらへんの詳しい話もするらしい。目を覚ましておいて着替えておけ。」
「了解~。ハァ~~」
返事をした後、大きくあくびをし準備を始める。
夢見も良かったしこの後もうまく行きそうだ。そう能天気に考えながら俺は準備を始めた。
過去が現在に影響を与えるように、未来も現在に影響を与える。
~ニーチェ~
ということでこれで番外編は終了です。
本来は外国語で話していますがそれだとニュアンスが通わら無いためこのように表現させてもらっています。
次回一度本編開始時の主人公『奏』のプロフィールを流した後、本編開始とさせていただきます。
しかしあまり関係ない話ですが、これを読んでいる友人Aから
「ヒロイン、シャルじゃなくてスコールじゃね?」
と言われた……き、気のせいです(目線逸らし)なぁ!!友人B!!
「……アストリットさんのほうがヒロインだろ。年齢が若ければ問題ないぞ?」
………そ、そんな事ありませんよwwwww……ね?