インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~   作:filidh

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番外編第2回目。
今回は亡国機業のエロいお姉さんスコール・ミューゼルについての話です。
前回と同じく本編進行上読まなくても大丈夫な話ですが。読んでいただければ幸いです。


番外編 雨雲のその後

第2世代IS『打鉄』で空を飛びながら彼女は考えていた。

 

(結局あの勝負には負けてしまった。)

 

実際のところ本気で戦えば1分もかからずしとめる事はできたであろう。しかしあれは『戦い』ではなく『勝負』だったのだ。

最初のルールでは『三分間逃げ切れば勝ち』、つまりISが生身の人間に負けたといっても過言ではないと彼女は考えたのだ。

そのとき自身のISからエネルギーが切れ掛かっているという知らせが来た。

この第2世代IS『打鉄』。量産型のいわば型遅れのような機体だがひとつだけ普通の打鉄と違うところがあった。

この打鉄にはおそらくどこかの国で開発されたのであろうほぼ完璧なステルス処理がされていた。

ただ欠点としてIS自体の性能、武器の搭載量共に低下する上、ステルスを使用しての戦闘は全力でやろうものなら10分と持たないほど燃費も悪いという未完成品であった。

そのため使用する機会は緊急時の脱出時などに限られており今回のミッションでも戦闘は想定されていなかったためこのISが渡された。

彼女は自身のISのエネルギー切れが間近なのを確認すると森の中へと降りていった。

 

 

 

 

「~~~~~~にて救助を待つ。」

「了解。至急そちらに迎えを出す。」

 

森に降り立った後すぐにそこから離れあらかじめ決められていたポイントに付くと仲間に連絡をいれ救助を待った。

おそらく迎えが来るのは1時間ほどかかるであろう、それまで何をしていようか。とスコールは考えていた。

まず始めに浮かんだのは今回のミッションについてだった。

内容は簡単だ、『ブリュンヒルデを大会から棄権させる』ことである。そのために彼女の弟、『織斑一夏』を誘拐しあえて決勝戦ギリギリにドイツ軍に情報を流す、途中までは計画通りうまくいっていたのだ。

だが彼のせいでそのすべては滅茶苦茶になった。

街中の目撃者の一人だったはずの彼はなぜか織斑一夏の救出をし、その後私たちの前に立ちはだかった。

最初に私はどこかの国の諜報員か何かだと考え声をかけた。しかし彼は私に対して愉快な会話をして来るではないか。IS(こんなもの)が開発されてからひどい目を見ているのは何も男だけでは無い。女でも被害にあっている人はいるのだ。自身がそうであるとは言わないがそれでも何かと面白くない事が増えた事には変わりなかった。

特に男たちの変わりようは彼女にとって面白いものではなかった、話しかけてくる男は何かと下手に媚を売るような話かたの男が大半であった。

ところが彼はそんな事まるで気にしていないどころか一昔前の映画の中に出てくるような男性のように私に話しかけてきたのだ。私もそれが面白く調子に乗って話していたが『仕事』はしなければいけなかった。

ミッションは織斑一夏が逃げ出した時には最早達成されていたが、彼が計画の邪魔をしようとしていたことには変わりなかった。しかも私たちの顔を見られているため消し去るしかなかったのだ。

このとき私は最後の瞬間までこの面白い彼から目を離さないでいようと微笑みながら始末をつけるよう命令を下した。

次の瞬間目に映ったものは本物の映画のヒーローであった。

まるで西部劇のワンシーンを見ているかのような早業。そして私に銃を向け「動くな・・・」と声をかける。周りを見ると部下たちは全員手を撃たれているだけで致命傷は受けていなかった。彼の後ろにいた(・・・・・・・)男も含めてである。

彼は自身の目に映っていない男の腕ですら正確に撃ち抜いていた、つまりその気になればあの瞬間全員の頭を撃ち抜いて終わらせる事もできたのである。

彼の顔を再び見ると私の顔を真面目な顔で見ながらもどこかいやな事をしているかのように感じられた。

ここまで来ると最早本当に映画の中のカウボーイである。

 

(この坊やが欲しい)

 

私はそう考え彼に無理やり勝負を持ちかけた。絶対に不可能で不平等な勝負であった。それを受け入れた彼は本気でその勝負に挑むのかのように距離をとりこちらを見た。その目にはまるで諦めの色など浮かんではおらず目を逸らすことなくこちらを見ていた。そして『踊りましょう?』私のその合図で勝負は始まった。

勝負の最中も彼は私を驚かせそして楽しませてくれた。

まさか予想できる人がいただろうか?IS相手に生身で互角に勝負を出来る相手がいるなんて。

戦っている最中にも彼の顔を見るとどこまで追い込まれてもその瞳の色は変わる事はなかった。ISという巨大な力を前にしても諦めてすらいないのである。

たまらない、未だかつてここまでISという存在に挑んだ男はいるだろうか?否いるとは到底思えなかった。

まぁISを受け入れるのでもなく拒否するのでもなく、自身の技量で挑むなど考える方がおかしいが。

それでも彼は諦めることなく挑みそして私に勝ったのである。

それでも私は彼を諦めきれず勝負を反故にした。

もちろん彼は納得できなかったが口で打ち負かすとなぜかとても悔しそうな顔をしていた。それを見ると先ほどの勝負に負けたことがどうでもいいように感じてしまったほどだ。

そして彼を連れて行こうと声をかけるが彼はここまで来てもまだ諦めていなかった。体は打鉄によって傷だらけで体力も限界なんだろう、呼吸も速くなっていた。

試しに諦めて見る様に声をかけてみるが全然そんなつもりは無いようだった。

ならば最後まで付き合ってあげよう。おそらく彼は最後の最後まで諦める事は無いのだから。

しかしそんな時に乱入してきた織斑一夏によって状況は一変する。彼に呼ばれたブリュンヒルデによって私は撤退せざるをえなかったし、何より私が彼をいじめて喜んでいるといわれた。私が笑顔だったのはすばらしいものを見つけそれが自身の手に入りそうだったからであってその行為自体を楽しんでいたわけではない。

彼女は一夏の言葉を思い出しまた少しイライラし始めていた。

 

 

 

 

そこまで思い出してふと気が付く。

任務について振り返ろうと思っていたのに自分がいつの間にか彼の事しか考えていない事に。

その有様に苦笑する。この私がまさかあんな年下の男にここまで心奪われるとは。

だがそれも仕方ない事かもしれない。彼は今までであったすべての人の中で一番好い人(いいひと)に思えて仕方なかったのだ。

 

(平和の狩人さんにしとめられてしまったのかもね。)

 

そう考えながら彼女は笑う。次にあったら絶対に彼を手に入れてみせると考えると同時にあの子(・・・)にやきもちを妬かれそうと考えながら自身への迎えを待ったのであった。

 

 

 

 

恋は目で見ず、心で見るのだわ。

                           ~ウィリアム・シェイクスピア~




ということでスコールさんのお話でした。
始めそこまで書く気じゃなかったんだけどなぁ……ww
今回も読んでいただきありがとうございました。

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