インフィニット・ストラトス ~とある青年の夢~ 作:filidh
とりあえずリハビリ作品でもあるのでお手柔らかにお願いします。
少年/青年の夢
おそらくフランスのとある町。人が多く集まる広場の噴水。
笑顔で多くの人が歩いていく中、その噴水のふちに腰をかける一人の少年がいた。
見た目はどう見ても日系、しかし身なりは少し汚らしくそれでいて悩んでいるように見えた。
(………どうしてこうなった)
彼はただわけのわからぬ現状にため息をつかざるを得なかった。
この少年、普通ではない。
っといっても『超能力を使える』や『空を飛べる』といった意味では無い。
言うなれば別の世界の記憶を断片的に持っている、いや覚えているのである。
少年はその世界ではどこまでも普通の生活をおくっていて年齢はすでに20代後半。
少年どころか青年、むしろ大人といわれる部類であった。
そんな青年は特に特別なことをするわけでもなく、いつものようにベッドに入り
明日のことを考えながら眠りについたとき『彼』が夢に現れた。
~青年の回想~
夢の中で青年は何も無い真っ白い空間で少し豪華な椅子に腰掛けていた。目の前にはギターのような楽器を持つピエロのような格好をした男性。おそらく吟遊詩人といわれるものでないだろうか?と言うことはアレはリュートか?いや、両方見たことがあるわけではないがなんとなくそう思ってしまっただけですが…。
彼はよくわからない曲をリュートで奏でながら、ふとこちらに目を向ける。
「ようこそ、扉の世界へ」
…自分はそれほど厨二病では無いと思っていたが。病状は深刻だったようだ……
夢とはいえこんなメルヘンと言うか…こんな夢を見るとは思ってもいなかった。
彼はこちらをじっと見ている。顔には目のあたりを隠すようにマスクをしており頬にはなにやら
「え~っと……ハジメマシテ?」
「はじめまして。ではこの夢の世界で『何を』見たいですか?」
……ああこの夢は、日ごろ夢の中ですら都合のいいものを見られなかった、俺の『自身にとって都合のいい夢が見たい』という欲求のせいでできた夢なのか。ははっ、なら、適当に『都合のいいハッピーエンドの夢』を頼もうか?いや待てよ、ここは『ヒーローが活躍する夢』などもありかも知れん。それとも『ほのぼのとしたラブコメ』もありかも知れん。
うむ~いざ選ぶとなると迷う。ここは夢の中、時間をかければこの考える夢だけで終わって目が覚めてしまうやもしれない。そう考えるとハッと良いことを思いつく。
ここは夢の中。適当に言っても勝手に見たいものが見られるだろう。それに先がわかってしまう物語ほど退屈なものはない。って言っても王道展開はそれはそれで好きなんだけどね。
「よし、お任せで、『いい夢』を見させてくれ。」
「ええ……ではあちらの扉をどうぞ。」
そう言われて手を向けられたほうを見ると先ほどまでは無かった扉がそこにあった。
(まあ夢の中だから何でもありなんだろう。)
そう考え椅子から立ち扉のほうへ歩き出す。
扉に手をかけようとしたとき、突然リュートの音が止まり彼が声をかけてきた。
「そこの中に行く前にひとつだけ教えてもらえませんか?」
「うん?なんだい?」
「あなたにとっての英雄を一人だけ教えてもらいたい。」
英雄?ヒーローか……一人だけなら彼しかいないだろう。
とても強く、やさしく、何よりもカッコイイ。
赤いコートを身にまとい砂漠の星を歩き続けたガンマン。
誰よりも人を傷つけることを恐れ、人を助けるためなら自身の身をも省みない。
ヒューマノイド・タイフーン、600億$$の男、
「ヴァッシュ・ザ・スタンピードかな?漫画のヒーローだけど。」
「……ありがとう。止めてしまって悪かった。ではよい旅を。」
「?ああ、ありがとう?」
こんなとき歴史の偉人を上げられないということはやはり厨二病なのだろうか・・・まあこんな夢を見てるところで大差はない。
夢の中でお礼を言い合うという貴重な経験をしつつ扉を開ける。
さぁ、目が覚める前にできるだけこの夢を楽しもうじゃないか。
目が覚めたら覚えてはいないだろうがそれでもいい夢を見たら目覚めはいいはずだ。
そう考え扉をくぐり先に進む。光に包まれたと思った瞬間。
自分の目の前には見たことも無い景色が広がっていた。
~現在~
(そこから少しまでだったな……楽しかったの…)
彼は深くため息をつきながら思わずに入られなかった。
その後少しの間いろいろと見て回るまではよかった。のどかな町並み、活気にあふれた市場、見たこともない建物。本当に海外旅行に来た気分だった。
しかし、現地の言葉(おそらくフランス語)はわからない、自身の体はとても幼くなっているため、色々な人からご両親はどこかな?と聞かれそのたびに言い訳をする、荷物はかばんの中にあるものだけ、しかもどう見ても危険物あり。となるとだんだんつまらなくなってくる(正確には夢の中でおまわりさんの世話に遭うのは勘弁したかった)。
もういいか、と思い夢の中で昼寝をすることにした。昼寝でもすれば目が覚めるかと思ったのだ。
そして目が覚めればもう次の日の朝になっていた……『夢の世界の』である。
それから何度もいろいろなことを試してみたが元の世界に帰ることはできず、解ったことは次のことくらいである。
・寝ている間は襲われない(すでに1週間ほど野宿しているが一度も襲われていない)
・手荷物にはお金もそれなりにある。通帳もあるが文字化けしており使えるかどうか解らない。
・さらに自己防衛のためだろうか、型は詳しく解らないが銃も持っている。
・『風音』という苗字か名前かわからないものが自身の名につくこと。
・現実世界の記憶が断片的であること。
(ヤバイなぁ~何より身分証明できるものを持っていないのがヤバイ。その上銃を持ってるとか夢の世界でもポリスメン呼ばれたら一発だぞ…っていうか夢の世界じゃないよなぁ…ここ。来た当初に馬鹿なことをしなかったことを幸運に思おう、うん。それにお金もこれだけあればまぁ……しばらくは困らないだろう…しばらくは……)
と現状の不幸を少しでも和らげようとするがどう考えても泣きたくなるのであった。
(まぁいざとなったら日本大使館に行こう。って言っても俺戸籍自体あるのかなぁ?……はぁ、こんなことになるならあの時よく考えて夢の世界で発言すればよかった。たとえば自由に寝続ける夢とか、ハーレムでムッハムッハとか、漫画の世界に……ってのは勘弁だな、どうなるかわからん、あとは腹いっぱい飯を食べられるとか・・・)
ギュルルルルル~~~~~
自身がどうしようもない現状の前で泣き出す前に、腹の虫が鳴き出した。
(……腹が減った…まぁお金は幸いまだあるし、いざとなったら文字化けした通帳を使って見よう。どうしてもだめだったらその時は……そのときになったら考えよう。
とりあえずどこかの店で旅行客の振りをして買い物をしよう。“お使いできたの~”みたいにすればたぶんいける。きっと……)
我ながら情けない……そう考えながら噴水のふちから立ち上がりどこかにいい店は無いかと捜し歩き始めたのであった。
~扉の世界~
一人しかいない白い空間でリュートを奏でながら
吟遊詩人の男は誰も座っていない椅子に話しかけた。
「ではよき旅をおくりください……いざ
1つのドアが閉まれば、もう1つのドアが必ず開きます。
それはバランスをとるための、自然の法則なのだ。
~ブライアン・アダムス~