絶対に死んではいけないACfa   作:2ndQB

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第6話

MT部隊隊長視点

 

またしても、ゼンは彼らに勘違いをさせていた。先程ゼンの言った、

「先に言っておくが、俺はやりたくて(PAの展開を)やった訳では無い」という言葉は、彼らに

「先に言っておくが、俺はやりたくて(お前らを助けて)やった訳では無い」と何ともツンデレ風な解釈にされていた。そして、その言葉を聞いた彼の部下達の反応はというと……

 

《俺達は回線聞いてたから全て分かってる!あんたが助けたくて助けた事分かってる……!》

《言いたい。あの人に「分かってるから」って言いたい……!》

《ダメだ!言うな!分かるだろ?あの人は称賛される事を望んでいない!》

《隊長、もうこの人ちょっと良い人すぎますって……》

《もう俺この人の部下になりたい》

 

最後の奴は後でしばく。エドガーは鋼の意思でそう決意した。

しかしそんな彼ではあるものの、自身の頬が緩んでいる事には一切気がつかなかった。

そして彼は、ゼンの発したその台詞に対して。

 

《なるほど、分かった》

 

そう返答する。

まったくもって、この男が何を言うか予想できない。さて、次は何を言ってくれるのか。

半ば期待するような気持ちでリンクスの次の言葉を待つエドガー。

 

かくして、対象の口から次に放たれたの言葉はと言うと。

 

《ところで……ラインアークは空き室はあるか?》

 

……本当に、何を言うか予想出来ない。

このリンクスがそんな事を望んでいるなど、誰が想像できようか。

その台詞に、皆が皆、一瞬黙り込んだ……と思ったのだが。

 

《あ、ああ有ります!!》

 

そう答えたのは、彼の部下の中で唯一の女性MT乗りである『アイラ』だ

 

《アイラ、ちょっと待t》

《隊長!彼は、ゼンさんは私たちを助けてくれたんですよ!?》

《いや、だからちょっと待っt》

《大丈夫です!ゼンさん!私の隣の部屋は空き室です!どうですそこに!?》

 

完全に暴走している。恐らくアイラには今話しかけても無駄だろう。

そこでエドガーは、他の部下達にアイラの暴走を止めるよう頼むのだが……

 

《おい、お前達。何とかアイラを、》

 

《いやー、ゼンさんがラインアークに来てくれたらますます安心だな!》

《そうだな、色々話を聞きたいもんだ》

《俺、リンクスと話するのが夢だったんだよなー。〝ホワイト・グリント〟のリンクスにはまず会わないし》

 

これである。だがこの状況では話が進まない。そう判断したエドガーは大きく声を張り上げた。

 

《お前達、少し落ち着け!これは俺たちの独断でどうこう出来る問題じゃ無い!》

 

さすが隊長と言うべきか、その一声で全員が静まり返る。そして、ゼンに一言告げた。

 

《悪いな、こればっかりは俺たちではどうにも出来ない……上の者達に掛け合ってみないと》

《そうか、やはり》

《で、でも、大丈夫ですよ!ラインアークの基本理念は「来るものは拒まず」ですから》

 

最後にそう言うのはアイラだ。

 

《「普通は」な……だが例外もある 》

《リンクス。それも所属不明ともなると話は別、か》

 

そしてエドガーの言葉の先をゼンが紡ぐ。

 

《話が早くて助かる。すまんな……『ゼン』》

《いや、構わないさ『エドガー』。こちらとしても簡単に事が運ぶとは思って無い》

 

ここで彼らは初めてお互いの名を口にした。

 

 

 

*********************

 

主人公視点

 

 

《「普通は」な……だが例外もある 》

 

そうか!ガッデム!!俺とした事がなんってこったい!!ラインアークなら簡単に移住出来るかと思ってた俺をぶん殴ってやりてえ気分だぜ!!

よくよく考えてみたら『リンクス+ネクスト付属』とか言うの超危険物をラインアークに簡単に置く訳無い……っつーかそれこそ相手に迷惑かけてるじゃん。

 

そんな事してまでラインアークに住む事はできないわ

 

《「普通は」な……だが例外もある 》

《リンクス。それも所属不明ともなると話は別、か》

 

いや謝るのはこっちだよ!なにこの人メチャクチャいい人じゃね?なおさら迷惑かけれねえ……

はあ……残念だけど、別の所探さないとな。とりあえず謝ってからどっか行こう。 

 

《いや、構わないさ『エドガー』、こちらとしても簡単に事が運ぶとは思って無い》

《無理を言ってすまなかった。それでは俺は消えるとす……》

 

 

――――だ   め   で   す   !!!!

 

 

……はい?この声は確か……

 

《ダメ!それはダメです!ゼンさん絶対行っちゃダメです!!》

 

アイラちゃんだったかな?たしか隊長がそう呼んでたけど。いやさ、アイラちゃん。

 

《こちらとしても見ず知らずの者達に、大きな負担をかけるのは》

《見ず知らずじゃないです!さっき助けてくれました!!》

 

……何この子!こんないい子に育てた親の顔が見たい!!

 

《そ、そうです!》

《あなたは俺たちの命の恩人ですよ!》

《せめて直接お礼を言わせてからでも遅くはないでしょう!?》

 

YABEEEEEEEE!!!MT部隊マジいい人ばっかりじゃねえか!!

だがそうであればあるほど俺の決意は固まっていくのだよ諸君。さて、さっさと消え……

 

《……ん?》

 

あれ?レーダーになんかいきなり高エネルギー反応が。それにこっちに向かって超高速で近づいてるんだけど。これもしかして〝アレ〟じゃないよな……

いやいや、まさかそんな訳無いよね。だって今〝アレ〟は居ないはずだし。きっとレーダーの表示ミスだよね?そうに違いない 

 

……うわあ。でもメチャメチャ嫌な予感がす――――

 

《――――そこのネクスト機。あなたはラインアークの主権領域を侵犯しています》

 

そして、唐突に機体内部に響く『女性』の声と『台詞』……うっわっ、これマぁジかよ!!

このすんごい聞き覚えのある内容って、もしかしなくても!

 

 

 

《速やかに退去してください。さもなくば……実力で排除します》

 

 

 

ホワイト・グリントがここで出るなんて聞いてねぇっすよ!!!

ねえ?なんで?なんでなん?俺のラインアーク襲撃だけ難易度EXなんだけど?

 


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