絶対に死んではいけないACfa   作:2ndQB

47 / 60


とある地にある、とある施設……

 

の、とある一室。

 

そこに、とある技術者然とした人間が一人、携帯端末を耳に当て立っていた。

相手からの緊急の連絡だ。電話口から聞こえるその声から、何やら向こうは少々焦っているかの様な印象を覚える。

 

「……もう少し様子見をすると思っていたのだけれど。早かったわね……ええ、分かったわ」

 

手短に話をし終えたらしい。

通話終了のボタンを押した技術者……彼女は、すぐ隣にあるベッドに横たわっている『男』を見下ろしながら話しかけた。

 

「ごめんなさい。一機、無駄になってしまったわ……でも安心して。本命の方は無事よ」

 

その問いかけに、男は何も答えない……寝ているのか。

こうしていると彼女には見分けがつかない……殆どの時間において目を瞑っているこの男が、今起きているのか、眠っているのか。

 

彼女は男のベッドの横に置かれたPC端末のモニター目を通す……なる程、脳波を見る限り寝ているらしい。ちなみにだが……そのPC端末から伸びる一本のケーブルは、ベッドに横たわっている男の『首筋』に繋がっている。

 

それに頼る事で、男はどうにか施設の者とコミュニケーションを取ることが出来ているのだ。

 

これは喋れない……いや、身体機能に様々な難のある男を憂いた技術者達が、有り合わせの材料で作った物の内の一つである。それでもしっかりと稼働している事から、この施設の者達の技術力の高さが伺える。

 

「……」

 

彼女は考える。恐らく、そろそろ潮時だ。もうこの男が世間の目から逃れる事は厳しいはずだ。

彼自身、その事を理解しているし……この時に備え、僅かとは言え種を巻いてある。

 

彼女達は、これまで彼への協力を惜しまなかった。

 

「ねぇ……」

 

彼女は、優しく男に語りかける。

 

「……『空』の人を、助けてあげて」

 

例え『本社』の、上層部の方針だとしても。それを彼女達は認めない。

 

クレイドルは、絶対に堕とさせない。

 

これまでの彼女達なら、権力と言う名の巨大な力の前に、指を咥えて見ているしかなかった。

でも今は違う。今の彼女達には、それに対抗しうるだけの圧倒的な『力』がある。

 

「!」

 

その時、ベッドに横たわっていた男が目を開いた。どうや、眠りから覚めたらしい。

するとすぐ脇のPC端末に何かしらの反応が……彼女はそれを確認する為に、モニターに目を通す。反応のあったページは……ここだ。

 

彼女がそのページを開くと、そこにはとある言葉が書かれていた。それは……

 

 

 

『―――――オモテニデル』

 

 

 

簡単な文字だけで構成された、無機質な言葉。それを目の当たりにした彼女は、笑顔で答えた。

 

「おはようございます。そうですね、では―――――」

 

 

 

 

―――――出るとしましょう。『ミラージュ』。

 

 

 

 

 

 




ここだけの話ですが、こんな続くとは思ってもみませんでした。
亀更新にもめげずに見に来て下さる方々の応援のお陰です。これからも頑張ります。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。