絶対に死んではいけないACfa   作:2ndQB

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第44話

主人公視点

 

えーと、何?

 

《ここでくたばんな!》

 

会話から察するに、テレジアさんはこの人……『ネオニダス(銀翁)』さんと知り合いなの?

 

ネオニダス……銀翁さんについて説明すると、彼はORCA旅団所属で乗機ネクストは『月輪 』。

旅団内でのネクストランクは堂々の2位。確か素性の解説ではAMS適性も極めて高いと言われており……

一説では原作中最強クラスのAMS適性なのでは、ともプレイヤーに噂されている。

 

つまり、かなーり強い人のはずだ。実際ゲーム中でも強かったしね。

 

で。俺はつい先程まで、そんな人の突然の来訪に超びっくりしていたんだけど……

何があったのか、テレジアさんがいきなり怒りして、全開火力で月輪に攻撃し始めたのだ。

ちょいちょいちょい。色々起こりすぎて訳分からんくなってきてんぞ俺は!

 

とりあえずテレジアさん!

 

《あ〜……知り合いに対していきなりソレはキツいんじゃないか?》

 

この人マジで銀翁さんの声聞いた瞬間に重火器ぶっぱなしてっから!!

 

《落ち着けテレジア!私にも目的があ……待て待てそれは洒落にならんだろうにっ》

《何避けてんだい!そのでかい図体で……そう言うところも腹が立つね!!》

 

いや全く聞いてねぇわ!何故か俺の周囲で重ネクスト二機が戦闘始めてるわ!

 

いやまぁ月輪の方は防戦一方、そもそもテレジアさんに手を出す気がないんだろうけど。

ちなみに今俺はテレジアさんの動きに合わせて機体を移動させてる。だってその場に留まってたら危ないし。彼女のネクスト、カリオンは高火力武器満載で、流れ弾とか当たったら大変だし!

 

つーかコジマミサイルとか普通に撃ってっけどヤバくね。

 

いやでも月輪がミサイル撃ち落としてるわ!ちょっ、すげぇ!何か楽しいなオイ!

強者二機の動きを間近で見れるとか最高なんだけど!コイツは特等席だぜフハハハ!

 

《ネームレスの!テレジアを何とかしとくれんか!私の言葉には耳を傾けん!》

 

いや銀翁さん俺ですか!?この人俺の言う事にも全くの無反応でしたよ!

フィオナちゃんとかも見てて思うんだけど、女の人って怒ると本当手をつけられないよね……

 

あ~でも何とかしないと。

 

《テレジア!!さっきの話!!銀翁から何か聞けるやも知れんぞ!!》

《!!》

《殺してはそちらの欲しいの貴重な情報が一つ、失われる事になる可能性がある!!》

 

銀翁さんごめんなさい。本当は依頼主がORCA旅団の事とか色々黙っておきたかったんだけど。

今の彼女を大人しくさせるには、先程の話し合いの事をダシに使うのが一番効果的なんです。

銀翁さんもテレジアさんに手を出したく無いみたいだし……

 

とにもかくにも仕方が無かったんです(言い訳)。

 

《―――チッ。残念だが、アンタを殺すのは後になりそうだね》

《………ふー。お前は昔からそうだ。一度怒り出すと手に負えんよ、全く》

 

よ、ようやく止まった……テレジアさんこえぇ。

 

《アンタには聞きたい事が山ほどあるが……そうさね。まず何故、今ここに、アンタが居る?》

《……メルツェルの小僧めが。全く面倒な事を……》

《聞いているのかい!?》

《聞いとる聞いとる。ああ……まぁ単刀直入に言うと、お前を誘いに来たのだよ》

 

おぉ?銀翁さんがテレジアさんを『誘い』に?ちょっとちょっと。面白そうな話だよこれは。

自分が中心になっていない、こういうお話とか大好き。

少し黙って成り行きを見守ってみようぜ……エドガーさんもさっきから黙ったまんまだし。

 

《……どう言う事だい》

《ふー、それは……そうだな。まずネームレスのリンクス。君は、どこまで我々の事を知っているいる?》

 

静かにしてたらこれだよ。早速話題振られてきたよ。

 

《君は先程、私の事を『銀翁』と呼んだな。あれは旅団内部の者の私の通称だ。つまり君がその事知っているのは少し妙だと言う事になる。咄嗟の事で頭が回らなかったのか、それともワザとそう呼んだのかは知らんがね……まぁ。そもそも、私の存在について知っている時点でほぼ『アウト』だとは思っているが……実際、どうなのかね?》

《……計画については、何を使い、何をしたいのか。そしてそれに至るまでの大まかな筋道。それらを把握している》

《旅団?計画?アンタら一体何を言ってるんだい?》

 

テレジアさんは分からないか。つか、咄嗟に銀翁さんの名前出したのミスったかな。

いやでも、だから何なんだって感じもするけど。どうせこの人らに今は協力している訳だし、目をつけられたりはしないと思……わない?いや既につけられてんのかなこれ。

 

《そうか……テレジア》

《何だい》

《トーラス社が作っていた、新技術のAF。あれについて何か知っているか?》

《あの『とんでもない奴』かい。そうさね。確か……ウチのバカ共が「宇宙に行く前準備」とか何とか言っていたね。まぁ、そんな事が出来るハズが無いが。何せ空にはアサルトセル共がわんさか……》

 

そこまで言って、テレジアさんは口を閉じた。まるで何かを予期したかの様子だ。

 

《……まさか、アンタ》

《そうだテレジア。我々は、『宙』を手に入れる。トーラス本社で開発していた新技術のAF。あれは別に予め兵器としての運用を目的として作られてはいない。どちらかと言うと、新技術の研究成果としての副産物に過ぎないのだよ》

《あー……横からすまない。俺から質問だが、その新技術のAFと言うのは……『ソルディオス・オービット』の事か?》

《……その通り、正解だ》

 

いやそうだったの!?!?

 

あの空飛ぶ変態玉って、宇宙を手に入れた際の事を視野に入れで開発されてたの!?

道理で……いやアイツさー。動きがおかしかったんだよ。通常ブースターとか見当たらないのにプカプカ浮いてたしよ。しかもどこに付いてんのかQBとかもしやがるから。

 

いやいや待て待て。ってつまり、トーラス本社の上層部はORCA旅団と繋がってたのか?

考えてみれば銀翁さんの機体、月輪って、トーラス社で秘匿開発された実験機だったっけ。

そう考えると、そんなモノを手に入れる事が出来た理由の謎が解けるな……

 

《はっ……何を世迷い事を。あのアサルトセル共を一体どうするつもりだい?》

《衛星軌道掃射砲―――『エーレンベルク』を使う》

《!! バカな。あれはもう無い……アナトリアの傭兵が破壊したはずだろう》

《無ければ作れば良いだけの事。電力に関してはやや不安も残るが、私達ならやれる》

 

エーレンベルク……そういや気になって設定をちょっと調べた事あるけど、その砲身周辺には防衛機構としてアクアビット製のプラズマキャノンやパルスキャノンが設けられているって説明されていたな。

言うまでも無くアクアビットは今のトーラス社の前身だ。つまり旅団の保有する『ACfa版エーレンベルク』建設に、トーラスが今回協力していたと言う可能性もあると……

 

ほっほ!おいおい盛り上がって来たな。謎が解けて超楽しいぜ俺は!

 

いやでも気になる事があるわ。

 

《銀翁。その電力の件。トーラス上層部は『色々と』把握しているんだろうな》

《当然だ。老人共やその家族、関係者の安全については配慮されている》

 

うっわー。マジかよ。衛星軌道掃射砲使ったらクレイドル墜落するじゃん?

その事についてはやっぱ考えてんのか……多分何らかの手段で、トーラス上層部の関係者……ってか、企業の老人達の内でもORCAに手を貸している『一部』の人か。

彼らは堕ちるクレイドルから逃れる事が出来るんだろう。

 

そう。本当に限られた人間のみが、ね。

 

新技術の開発は、宇宙が解放された後にトーラス社が他企業より1歩、いや、数歩のアドバンテージを産む為にやっている事ってか……うわー。何か考える事がえげつないわー。

 

マジ黒いっすねこの世界。良い感じに『アーマード・コア』してるわ。

 

《どうだテレジア。『知らないまま』だと何かと不便だろう。私達、ORCA旅団の一員にならないか?》

《……アンタは、この計画の為に姿をくらましたのかい?》

《ああ。『とある男』に口説かれてな》

《男に口説かれて喜ぶなんざ……》

《熱い男だ。会えはお前もきっと気に入る……まず、驚くだろうがな》

 

うーむ。銀翁さんはメルツェル……違うか。熱い男だから多分、初めに旅団長についていったんだろう。どのタイミングでテレジアさんの前から……トーラス社を抜けたのかは分からないけども。

そもそも設立前、アクアビット社が壊滅した時が怪しいか……?

 

あくまでも予測の域を出ねぇ。この人らの関係も気になるのに〜!

 

《……その答えはまた後でだ。次の質問に移るが、今回の一件。ネームレスに依頼をしたのはアンタ達『旅団』だね?》

《ああ》

《アンタら、ウチの上層部……全員かどうかは分からないが、とにかく繋がっているんだろう。なら何故、このタイミングで動いた?トーラスの考えとしては、本来なら、もう少し情報を集めてからB7に突入する算段だった事を知っているはずだ》

《……そうだな》

 

ふむふむ……いやそうだったんだね。

 

《アンタらがわざわざネームレスに依頼した理由も解せない。それに加え、アタシに依頼をくれた上層部のソイツは……ネームレスの襲撃について直前まで知らなかったとも言っていたね。旅団とトーラスが繋がっているなら、何故その様な真似をする必要があった》

 

話を聞く限り、テレジアさんの依頼主は俺の襲撃については知らぬ存ぜず、と。

トーラス社と旅団が繋がっているとして、今回、旅団側の独断専行とも取れる『未認兵器破壊』の理由が謎だって言いたいのか。

 

《まず、このタイミングで私達が動いた理由についてだが。恐らく既にB7連中は、トーラス上層部に怪しまれている事に気付いとった。つまり悠長に情報収集なんぞしとる時間は無かったのだよ……私達ORCAでさえ、その事実に気が付いたのはごく最近の事だった》

《……つまり、そいつらが未確認兵器に関する証拠をごっそり消しちまう前に、緊急でネームレスに依頼をした……と。ああなるほど。あまりに急ぎだったんで、その直前までトーラス上層部への連絡を怠ったって訳か》

《そうなる。ネームレスの起用については、今回の『奴』については情報が無さすぎたからだな。トーラス社、B7内部で実験が行われているモノ……大いに危険が予測されるだろう。この実験場の戦闘痕を見ても分かる。恐らくだが実際、ネームレスは何かしらの脅威と戦闘をこなしたはずだろうし……当たっとるかね?ネームレスのリンクス》

《そうだな。奴は非常に危険だった》

 

いやーあれはキツイっす。チーズみてーにスライスされるところだったから。

 

《……まさかここまで跡形も残さず消しちまうとは、私としては予想外だったがね》

《全くだ。これじゃあ、アタシらの技術者とは言え復元にはかなり時間がかかっちまうよ》

 

だからアイツが勝手に自爆したんだって!後で俺の戦闘記録でも見て下さいよ!?

 

《しかしなるほど……あの時、依頼主は「何も知らない」と言っていたが。裏ではバッチリ、アンタら旅団からの連絡が入っていたんだねぇ》

《まぁ、上層部の者がそう言うのも仕方があるまい。……社内のお抱えリンクスとは言え、私達の関係性についてはそうそう話す事は出来ない》

 

テレジアさんが旅団について知らされてなかったのは、リンクスだからこそってのも有りそう。

ORCA旅団のやろうとしている事は、多くの人にとっては理解が得られにくいものだ。

リンクスである彼女は力を持っているし、トーラス社に反旗を翻されたりしたらマズイしなぁ……

 

とか俺は考えてるけど、実際どうなのかは相変わらず分からないっすハイ!

 

《……なぁアンタ。じゃあ、私がここに来た必要性ってのはつまり》

《ネームレスが未確認兵器を仕損じた場合の予備。それには私も含まれているな。ふむ……まぁ、この怪物が殺られる事はあり得ないと思うがね》

《仮に私がネームレスと会った時、攻撃を仕掛けてたらどうすんだい。その逆パターンは……》

《それは無い。お前さんは戦闘狂ではないからの。勝てる見込みの無い者に攻撃を仕掛けたりはせんだろうに。ネームレスに関しては……まぁ、団長・副団長曰く『分かる男』との事だ。あの両名がそう言うのなら心配する必要はあるまい》

 

分かる男って。原作知識しかないから。背後の関係性とかクソ程も分かってねぇから。

確かに、出会う奴皆殺しだぜぇ!みたいな頭のキレた奴ではないけどさ。旅団のトップ2が中々に買い被ってるぜぇどうしよ!

 

《まぁ、メインは私がこうしてお前に会う事にあった》

《!》

《テレジア。お前と直接会って話をしたかったのだよ》

《……フッ。何だい、そりゃ。アンタみたいなんと会っても何も嬉しくはないね》

 

いやちょっとうれしそおおおああぁぁ!!

 

テレジアさん声のトーンちょっと上がってますよ。

ンだよー。この二人何か良い感じじゃねぇかよー。あーつまんねーな!(本当は楽しい)

 

《はぁ……じゃあ最後の質問さね。アンタ……アンタ達旅団は、ここにあった『何か』はつまり、ミラージュとは関係性があると思っているのかい?》

《恐らくな……今回のネームレスによる「未確認兵器破壊」と言うアクション。これによるトーラス内部の、細部に至るまでの反応を観察する。もしミラージュがこれに関わっているとするのならば……》

《ともすれば、奴の方から直接的な反応が見れるやも知れん……と。そう言う事だな、銀翁》

 

しっかしミラージュさんがこれに関わっているとか……嫌な予感が胸を過ぎるんだけど。

冷静になれねーよ。ミ・アミーゴ。

 

《おい、御両名》

《む?》

《何だい》

《俺が今回戦闘を行ったアレ。仮にミラージュが使ったとしたら……負けるつもりは無いが、しかし正直、大分厳しいものがあるぞ》

 

そんな俺の言葉を聞いた二人は、何やら驚愕している様子だ。

 

《君をして、それ程言わすのかね》

《戦闘記録を見れば分かる。いや、まぁ。あくまでも『そのままの性能』だった場合だが。とにかく、反則じみた相手だった》

《アンタが言うんじゃないよ。アンタが》

 

テレジアさん貴方ね。あのエイリアン無敵とか使ってたんだから。

俺は素早く動けるけど弾当たったら普通に削れますからね。実質制限ありですし。

身体中に後遺症が出まくって死ぬまでの運命だからね。回復とかしないし、俺はあのエイリアンに比べたら随分と良心的ですって。

 

《あー……何だ。テレジア。俺はもう、帰っても良いのか》

《……好きにしな。聞きたい事はある程度コイツから聞けたしねぇ。まぁ、アタシはもう少しコイツと話があるから……》

《全く、突然仕掛けてきおって。その野蛮なところを何とかすれば大分マ……》

《何か言ったかい?》

《……言っとらん》

 

仲良いっすね。二人共結構なご高齢だと噂されてるけど、メッチャ元気。

銀翁さんの本編とは違う一面も見れて僕的には大満足でした……この人テレジアさん苦手なのかなぁ。

 

《と、言う事だ。エドガー?》

《ああ。聞いているぞ》

《やけに静かだったから心配したぞ。今からそちらに戻る》

《クク……了解。ラインアークに戻ったら、お前さんに色々聞きたい事もある。早めに頼むぞ》

 

ああ〜疲れたんじゃ。未確認兵器、ネクスト、ネクストと……

ネクスト二機とは戦わなかったけど、今日はいつにも増して精神的に参ったぜ。

初見一発で未確認兵器倒したの、ACシリーズやってて初めてだったなぁ……

 

やっぱ今日奇跡起こってたわ。

 

 


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