絶対に死んではいけないACfa   作:2ndQB

43 / 60
第41話

エドガー・アルベルト視点

 

 

《まずは自己紹介といこう。私はORCA旅団副団長―――メルツェルだ》

 

端末越しに室内に響く男の声。エドガーの思う第一印象は、『冷静沈着』であった。

ORCA旅団………アブ・マーシュの言っていたAF襲撃犯の犯人。

最近の噂では例のミラージュもそのAF狩りを行っていたと見られている事から、ともすればこの旅団の一味の可能性が高いのではないか。そう、エドガーは睨んでいたのだが。

 

「メルツェル、か」

《その声は……》

「ネームレスのリンクスだ。今、俺の向かいに居るのが」

「エドガー・アルベルト。ネームレスのオペレーターを務めている者です」

 

ゼンに促されるように軽く自己紹介をする。さて、問題はこれから……

 

《成る程……まあ、概要は先の手紙の通りだ。その点に関しての質問があるのなら受け付けよう》

「では私から。我々の抱える問題解決に向けての手段。それは何をもってして―――」

 

フィオナが聞こうとしている事。それはエドガー自身最も気がかりな事でもあった。

そうだ。この手段……このラインアークの爆発的な人口増加を賄えるほどの圧倒的な電力供給源。

そんなものを一体どこから持ってくると言うのか。まずはそれについての確認を取らなければ取引にもならない。

 

しかし、フィオナがその発言を終える前に……男は声を被せた。そしてその言葉は

 

 

《―――『アルテリア施設』》

 

 

室内の者に大きな衝撃を与える事となる。

 

「……ああ、成る程。そうなるか」

 

唯一、ゼンだけは妙に『納得』しているかの様子だったが。

 

「……それ、は」

《そうだな……我々の目的はさておき、その方法だけは話しておこう。我々ORCA旅団は近々、世界各地のアルテリア施設にネクスト機による同時襲撃を行う予定だ。君達に提供するのはこの内の幾つかと言う事になる》

 

エドガーには一瞬、この男の言っている意味が理解出来なかった。

アルテリア施設を襲撃するだと……? どう考えても、ありえない。

アルテリアはクレイドルの生命線だ。アレが止まると言う事はつまり、無垢な空の人々がこの汚染された大地に突き落とされると言う事。

 

クレイドルには一機につき2千万もの人々が住んで居る訳で……

 

「……正気ですか?」

《君は……アルベルト、だったか。君の、いや、君達の考えている事は良く理解できる。確かにこれは現状『テロ』に分類されるであろう行為だ。当然我々とて、クレイドルの民から出るであろう犠牲者数についても勘定に……》

「では……!」

《これは決定事項だ。我々は『人類』を救う。その為に『人』の犠牲は避けては通れないのだよ》

 

駄目だ。理解出来ない。あまりにも、このメルツェルと言う男の言葉が足りなさすぎる。

いや、どちらかと言うとあえて説明を省いているのか。恐らくこの室内の中でそれについて理解出来ているのは……

 

「メルツェル。詳しく話せない理由は分かる。ラインアークが敵に回る可能性も考慮しての事だろう。事前に情報を敵か味方かも分からない相手に伝えると言うのは中々のリスクだ。正直俺としては、良くその『アルテリア襲撃』までの情報を伝えたものだと感心している。そこでだ、イェルネフェルト、エドガー」

 

ゼン位だろう。この男は恐らくすべてを見通している。

 

「今、決めるべきだ」

《ほう……》

 

……今、決めるべきとは一体。

 

「俺が言うのも何だがな。時間が無いはずだ。そうだろう、メルツェル」

《ああ。ネームレスのリンクス。君の言う通り、オーメル主導のラインアーク本格攻撃までの時間はあまり残って無い。我々の計画を進めるには、そのタイミングでの協力がベストだ》

 

ラインアーク本格攻撃。その時に一体何を協力する必要があるのか。

しかしながら、恐らくそれは聞いても答えてくれはしないだろう。まだエドガー達はORCA旅団に協力するとは一言も言ってはいないのだから。

 

しかし、それに協力すると言う事は……

 

「そのテロの片棒を担げ、と?」

《何、君たちは片棒を『一瞬担ぐ』程度の話だ。大層な協力は願わない。その後、我々が君たちに何かしらの迷惑をかける事も無い。我々の計画が成功した暁には、君たちには秘密裏に、タダ同然で莫大な利益が入る……悪い話では無いと思うがね》

 

……仮に男の言う通り、簡単に事を運ぶことが出来たのなら、確かに悪い話ではない。

現状のラインアークからすれば、電力供給問題を一気に解決に導くことが可能かもしれないチャンスでもあるのだから。

 

だが、片棒を一瞬担ぐ程度だったとしても。

その要求を呑むと言う事は、確かにテロ行為にに加担したと言う事実に変わりは無い。

 

《ではフィオナ・イェルネフェルトに問おう。君自身、この話について『受けるべき』だと考えていた。違うか?》

「それは……」

《そもそもだ。何故私が君達に『のみ』この話をするのか。私は、ラインアーク上層部の者達なら確実に我々の提案を受け入れるだろうと判断したのさ。そちらの方は後からでもどうとでもなる……しかし上での判断がどうあれ、実際に戦場でその決定権をを握っているのはリンクス、そしてオペレータに他ならない。つまり、私の考える最大の障害は君達と言う訳だ……だが、》

 

メルツェルは話を続ける。

 

《言ってしまっては何だが、私達は別段、ラインアークへの『絶対的な協力』を求めたいわけではないのだよ》

「……」

《あくまでも『このタイミング』がベストだったに過ぎない。他にやり様はいくらでもあるのさ》

 

……この男。暗に、あくまでもこの交渉を支配しているのは自分達とでも言いたげだ。

いや、事実としてそうなのだろう。要約するとなると

 

『現状、ラインアーク側が電力を欲している事は良く理解出来ている。提供できるのはORCAだが、別に無理して『協力』に付き合う必要はない。自分達からすれば他に方法はあるのだから。まあ、好きにしろ……断ったらお前達のチャンスは潰えるがな』

 

こんなところか。全く、これではもはや……

 

《どうするかね。先程ネームレスのリンクスが言っていた通り、時間は限られている。我々も君達の回答を悠長に待つ訳にはいかない……今、この場で決断してもらおう。フィオナ・イェルネフェルト。まずはそちらの意志から確認したい》

 

回答など決まっている様なものだ。エドガーはフィオナと視線を合わせる。

そして、互いに頷き合った後、メルツェルの問いに答えた。

 

「……分かりました。ORCAとの協力体制、受け入れましょう。ホワイト・グリントのリンクスには後で私から伝えておきます」

《フッ……殊勝な心がけだ。では、エドガー・アルベルト》

「俺に選択権はありません。イェルネフェルト女史の決定に従うまでです」

 

二人は協力体制を受け入れたのだ。

エドガー自身、テロ行為につながる行いに加担したくはない。が……現状、ラインアークを救う事が出来る可能性はこれしかなかった。

私情でどうこうした挙句、このチャンスを潰す訳にもいかない……し、どうこう出来るとも思えなかったから。

 

ただ、問題は……

 

「この俺が、協力体制に賛成すると思っているのか?」

 

そう、この男だ。ネームレスのリンクス……ゼン。

私情でどうこう出来る力を持っているこの男がどう反応するのか。これが問題だった。

 

 

 

*********************

 

主人公視点

 

えーっと。

 

「この俺が、協力体制に賛成すると思っているのか?」

 

オペレーターコンビだけにしか確認取って無いけど、その辺はもう理解してる感じ?

ああいや、当然俺は協力には賛成する派ですよ。たしかにクレイドルの人達は可哀想だけど、こっちには俺のお友達が居るから。そっちを救うのが俺の中では最優先事項な訳でして……ってかさ。

 

どの道メルツェルさんはどうにかするんでしょ?だったら受けた方が良くね。

チャンスは生かそうぜ。

 

《フッ……勿論、君に関してはそう一筋縄では行くとは思っていない》

 

は!?何言ってんだメルツェルさん。

俺に確認取らなかったのは、別に俺が賛成するって知ってたからじゃ……

 

《そうだな……君は現状、ネクスト機の武装に関して何か思うところがあるのではないか?》

「ああ、それはそうだが」

 

武装の弾薬自体は特に問題が無い。

GA陣営が頑張っているのか、『弾薬だけ』ならオーメル社との取引で何とかしてるっぽいし。

まあ俺のネクスト機の武装は世代的に見て大分昔のものばかりだし、珍しいものも特には無い。

故にそこまでGA陣営は睨まれてはいないんだろう。

……仮に俺の武装が最新のものばかりだった場合、弾薬供給は不可能だったかもね。

 

ただ問題はですね。ネクスト機の『武装そのもの』は古い物、最新のもの、どちら問わず他企業から取り寄せる事は限りなく難しいと言う事だ。それこそGA陣営からでさえね。

何でも武装提供は、一目でネームレスに協力したことがバレちゃうのが痛いんだって。

 

企業にも色々事情があるんですねぇ……でもね。俺的にはこのままじゃあ結構マズイ。

ミラージュさんに対抗するには、こっちもそれなりの武装が必要なんですわぁ。

 

サンタさんか誰か、俺にオーメル横散布ミサイルとかハンドレールガンとか送ってくれないかな……

 

《君が我々に協力すると言うのなら、ネクスト、ネームレスの武装。我々が提供しよう》

 

さ、サンタさんッッ!

オイオイオイ。こんなところにサンタさんが存在するんですけど。

元々協力するつもりだったのに、何を勘違いしたか幸運が舞い込んで来たんだけど。

 

で、でもなぁ。これに食いついたら何か、がめつい男だと思われそうじゃない?

よ、よし、ここは……

 

「いや。そうだな……俺が困った時。そちらの力を一度借りたい。それでどうだ」

《ほう……》

「武装の案は魅力的ではあるがな。まあ、後に俺が武装提供を求めればそれはそれで変わらん」

《……。成る程。承知した》

 

これでどうよ?ほんとはメッチャ欲しいんだけど、これで何と言うか『別に俺は興味ないんですけど?』的な人間を演出できたのではないだろうか。……女の子にモテない男の子かよ。

やっぱ普通におなしゃす!って頼んどけば良かったわ……

 

《では、そちら側は全員が協力体制に賛成したとして話を進める。これから君達に話すのは、我々とどの様な協力体制を取るのかについて、だ》

 

うっし本題来たな。いやまぁ、ぶっちゃけ何するのかは大体想像が付きますけど。

 

《近々起こるであろうオーメル主導の『ラインアーク本格攻撃』時に……君達には『演技』に協力してもらいたい》

「演技……」

「とは…?」

 

うっわぁ出たよコレ~。エドガーさん達はかなり意味不明って感じなんだろう。

でもむしろ今、俺は全てのピースが揃ったと言っても良い程に納得していた。

まさかあの事件が『こういう事』だったとはね……ようやく理解することが出来たよ。

 

《ああ。その際、君達の敵としてランク1……オッツダルヴァが出てくるだろう。その彼を無傷でネクスト機ごと『水没』させてもらいたいのさ。あの男の救出に関しては我々がラインアーク上層部と連絡を取り合う。そこを気にかける必要は……》

「す、少し待ってください。『演技』……オッツダルヴァを救出?話が見えません」

《ふむ……君たちの了承も得られたことだ。この際、話しておく必要もあるだろう。あの男……オッツダルヴァは、我々ORCA旅団の団長なのだよ》

 

知ってた。驚愕に目を見開く皆さんには申し訳ないけど、超知ってた。

 

「なに……」

《我々の計画にはあの男の存在が必要不可欠だ。だが、彼は滅多な事では動く事が出来ない……要するに、『あの男が敗れても仕方の無い状況』。そこでオーメル社から離脱させることがベストなのさ。加え、協力者が居るのなら尚更良し……》

「……質問させて下さい。そもそも……何故オーメル社は、今ラインアークを攻撃する必要があるので?」

 

これはエドガーさんの質問。

 

あーそれは確かに。今、俺は企業からすればかなりの脅威として見られているんだっけ?

だったら今企業側がラインアークを本格攻撃する理由があんまりわからない。

そもそも、俺はミラージュの対抗策としても見られている訳だし、俺の事倒しちゃっても良いの?ってなるよね。

 

《それについては順を追って説明しよう》

 

説明お願いします!

 

《ネームレスとミラージュの戦闘記録が出回った後、体制・反体制問わず、恐らくは全ての軍事関係組織が君達に関する会議を行った事だろう。当然、各企業を企業連本部へと集めた「総会議」も行われた訳だが……》

 

訳だが?

 

《「荒れた」。まずその会議で話題に挙がったのが、この両名の身体能力面についてだ。戦闘記録から、二人の身体機能が異常な程に発達「させられている」ことは誰の目に見ても明らかだ。それは言うまでもなく、彼等の属している・あるいは属していた組織によるものだろう……が、ここで一つの問題が発生した》

 

ふむふむ……

 

《協力者の存在。つまり彼等の「組織」に協力している企業が居るだろう、と口に出した者が居たらしい。優れた「企業外組織」があったとして、常識的に考え、どこの企業にも見付からないと言うのは無理がある、と。更に言うのならば、「身体強化」には莫大な資金や様々な意味での人材・機材が必要だ。それに加え、リンクスなどと言う存在が付随するなら尚更に……》

 

……おいおい。こりゃ……

 

《さて、後は簡単に想像が付くだろう。所謂、犯人捜しの始まりだ。身体強化と言う禁じられた行為を行う「組織」に手を貸し、果てに生み出された怪物達を全く秘密裏に手中に納めんとする……他企業を出し抜かんとする企業の存在。当然、犯人以外の企業からすれば許しがたいだろう》

 

やばい変な笑い出てきそう。

何やってんだ企業の人達は……もう色々突っ込みたいけど、それは最後にする。

 

《そこでだ。どの企業が一番疑わしいしいのか……結論は早かった。「オーメル社」。理由はこうだ。現存する企業中、総合的に見て彼等が最も「怪しかった」から。彼等の傘下にあるアスピナ機関はAMS開発のプロフェッショナルだ。ネームレスやミラージュ。君達の人外機動を支えているAMS適性数値は恐らく計り知れないモノがあるだろうが、それにアスピナが関わっている可能性は極めて高いと考えられた。言うまでもなく、資金面での提供はオーメル社が、とな》

 

おっほ。おっほっほー。

 

《しかし、決定打となった理由は……ネームレスの機体構成だ。そもそも、ステイシスの専用スタビライザーや、アスピナが開発元の……この世に二つと存在しないはずの試験ジェネレータ使用の事実。これが余りにも怪しすぎる。武装やフレームに関してならまだ言い訳も可能だろうが、こればかりはどうしても説明が付かない。まあ実際、我々ORCA旅団から見てもこの二点に関してを『どうやって揃えたのか』は皆目見当もつかないがね》

 

……ここまで聞いた俺は、首を上に向けるようにして部屋の虚空に視線をさ迷わせた。

もう突っ込みせざるを得ない。

 

ヤ、ヤメロォー!もうやめてくれェ~!

 

勘違いが酷すぎる。もう余りにも酷すぎて、この人達勝手に疑心暗鬼なった挙げ句に自爆コースに突っ走りつつある。 「組織」って何だよ「組織」ってよォ!

そんなんこの世界に存在して無ぇからァ!見えない何かの存在がクソでかくなってんだけど!

どうすんだコレもぉ~!

 

それに無実の罪で疑われてるオーメル社が可哀想すぎてヤバい。

 

なまじ優秀な製品ばっかりなせいだ。プレイヤー視点だとほぼ絶対にオーメル社製品は使うし……

ステイシスのスタビライザーについてはゴメンナサイ。完全に俺の趣味です。

 

「全く……」

 

思わずして呟く俺氏。一体どうなるんだコレから……

…………

……

 

……聞き終わりました。以下、内容の略です。

 

 

『疑われたオーメル社は何とかして身の潔白を証明したい!でも実際それは大分厳しい!じゃあどうしよう!』

                      ↓

 

『仕方がないから、「名無し」の存在により白紙になりかけてた『ラインアーク襲撃』をオーメル主導で行う予定!勝てる見込みはほぼ無い……ってか、「名無し」は「ミラージュ」への対抗策だし、万一にも勝つ訳にいけないんだけどね!でも要は「名無し」と敵対している姿勢を見せれれば良いんだよ!ついでに大事な大事なランク1を起用して「そんだけの覚悟」があるとこも示しちゃうよ!』

                      ↓

 

『その際あわよくば、ホワイト・グリントだけでも撃破出来れば良いかな!正直途中で撤退させればランク1さんも無事かもしれないし!ってかネームレスって今までネクスト機にとどめ刺したことないらしいし、普通にいイケるっぽくねこれ!』

 

らしい。オーメル社に俺の行動パターンバレバレだった件。

そもそもオーメル社の行動がORCA旅団につつ抜けな件。 さすがにその辺りは抜け目無いっすね。

 

……しっかし気になるのが、会議中に「組織に協力している企業が居るだろ」って発言した人。

この人絶対ORCA関係者でしょ。この状況を作り出して、ランク1=テルミドール団長の帰還に相応しい舞台を整えましたって感じか。

 

……ちょっとメルツェルさんに聞きたい事あんだけど、良い?

 

「メルツェル。会議中に「組織への協力者が居る可能性」を発言した者が居たと言ったな。あれはそちらの指示か」

《どうだろうな。ただ、私は目的の為には面倒を惜しまない》

 

うわ~!絶対そうだよ~。この人ならそれ位見越して、ちょちょいのチョイだよ~。

そう考えると先の手紙自体、実際にはメルツェルさんが書いた臭いよね。

だって今、テルミドールさんは自由に動ける様な状況じゃないでしょ。

 

「クック……」

 

しかし、白紙になりかけてた作戦を無理矢理もってくるとは……

そうそう。その他に、何か同グループ内の企業からも、『明らかに大量に死人が出る前提の身体強化施術(人体実験)に手を貸すのはNG』みたいな態度取られているってな事も言ってた。

 

ま、まあ実際ならネクスト機(AMS)の開発段階よりも遥かに死人出そうな感はあるよ。

 

実際にあればな!今んとこ神様(仮)しか出来ないけどな!

勝ち目の無い(と思っている)戦いにランク1駆り出すとか、オーメル社も相当今の状況に焦ってんだろうな。自社以外全員敵とかになったら流石に解体不可避だし。

 

《……と、言う訳だ。納得して頂けると良いがね》

 

納得はしたけど、もうマジで酷すぎる。

か、勘違いがVOB並みの速度で加速しまくっている……だれか修正してくれ。

 

「事情は分かりました……では、我々はどのようにしてオッツダルヴァの『水没演技』に協力すれば?」

《その事だが、君達にはステイシスのメインブースタを『作戦領域外』で撃ち抜いてもらいたい》

「メインブースターを?」

《ああ。通常で考えるのなら困難極まりないミッションとなるだろう。が、ラインアークのリンクスは極めて優秀だ。彼等なら造作もない事だろう。水没地点は……我々がそちらの上層部を通して後に伝える》

 

いや無理~!普通に無理~!

その役はホワイト・グリントぐらいしか無理だから!俺に期待はしないで下さい!

 

《ふむ。そうだな……その役はホワイト・グリントに頼みたい》

 

っしゃあ!でも、

 

「何故だ?」

《ネームレスのリンクス。君にはもう一方、そして……『奴』を抑えて貰いたいのさ》

 

『奴』……考えたくないけど。あの人だろうなぁ。

話を聞く限りじゃあオーメル側には就いていないんだろうけど、絶対出てくるでしょ。

あの……

 

「『ミラージュ』か」

《ああ。我々も彼の居場所をまだ特定出来なくてな。だが、恐らく『出て』くる。だろう?》

「これは勘に近い。が、俺もそう思っている。奴なら確実にこの機を狙って来るだろう」

 

うん。絶対出てくるでしょあの人なら。

それにプレイヤーなら、と言うよりミラージュさんの『絶対ネームレス殺すマン』的な行動から、その時に茶々を入れてくる可能性が高い。となると俺は2対1かぁ……マジで死ねるな。

 

オッツダルヴァさんの僚機として首輪付き君が採用された場合は尚更に。まあ……

 

「その時は全開で行く」

《……!》

「初っ端からな。持てる限りの力を尽くそう」

《フフ……頼もしい、な》

 

はっはっは!身体どうなんのかなぁ!でもエドガーさん達の未来に繋がるからいっか!

 

「ゼン……」

「良いんだ。それに、俺は少し楽しみでもある……次に奴と戦うのがな」

 

エドガーさんは相も変わらず俺の心配をしてくれている。全くもって良い人だ。

でも大丈夫。俺は本当に、次の機会が少し楽しみでもあるんだ。

この前は結構してやられたからな。次はある意味リベンジの回でもある……

 

《……今思い出したが、私の仲間は君達の戦闘記録を見てこう言っている者も居た。「ミラージュはあの時、ネームレスを倒したかったな」とね》

「……何?」

《その者は、どうやら戦闘中の他人の感情が見えるらしくてな。君との戦闘時、ミラージュは何かを焦っている様子に見えたらしい》

「ほう……」

《果たして本当かどうかは定かでは無いがね。ただ、もしそれを考えた時最初に思いつくのが……君と似た『武装』問題。ともすればミラージュは、弾薬関係に苦労しているのやもしれない。だからこそ、弾薬に残りがあり、ベストに近いコンディションで戦闘をこなせた『あの時』。君を倒したかったのではないのか、と……》

 

なるへそ……こりゃちょっとは運が此方に傾いてきたか?

まあ、それが本当だとすればの話だけど。大体、俺に運が回ってくる事なんて、逆に死亡フラグな気がしてならないんだけどね。

 

あと感情が見える人って、ORCAナンバー12の『ラスター18』さんっぽくない?

うおー、まだ生き残っているんだ。いやー良かったですね。

 

 

《……それでは、もう少し詳しく計画の概要・そしてORCA旅団についての話をしよう……我々としては―――》

 

 

―――その後、俺達は結構な時間を共同作戦についての話で費やすこととなった。

 

さてさて、俺もラインアークの一員としてこれから更に気合い入れていかないとね。

 

 




今年最後の投稿となります。では皆さん、また来年お会いしましょう~。



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。