絶対に死んではいけないACfa   作:2ndQB

39 / 60
第37話

 

主人公視点

 

 

「ゼン。『新居』の居心地はどうだ?」

 

どうも。おはようございますエドガーさん。

新居、つまり『とても厳重なセキュリティが売りの引っ越し先』の居心地ですか?

 

そうですねぇ……

 

「金庫の中にでも入っている気分だ」

 

これね。もう箱入り娘だとかそんなレベルじゃない。

だってですね。まず俺が居る階(フロア)に入るまでに、クソ厚い扉を3枚位くぐっているから。

しかもそれぞれにナンバーとお目目で認識する虹彩認証?のロックが掛けられていますし。

 

しかもよ。重武装の兵士さんがその3つの扉、それぞれにつき2人づつ配置されているからね。

ってかここどこだよ。毎回専用エレベーターなるものでメッチャ下まで下がってくるんだけど。

行動は制限されていないとか言いつつ、まず普通の階層に行くまでに結構な時間が掛かるんですわ。

 

あと俺の部屋に入るための扉。

入室許可の無い人間がドアノブに触ったら、高圧電流が流れるんだって!超あぶねぇ!

 

「お前さんの居るココは確実に金庫以上の場所だろうが……しかし此方としても驚いた」

「何だエドガー、ここに来るのは初めてだったのか?」

「クック……存在すら知らなかったさ。言っておくがゼン。俺はお前さんが来るまでは一介のMT部隊隊員でしかなかったんだぞ?それがこんな……全く。今や部下や同僚達から質問攻めの毎日だ。まあ、答えられる事などほとんどないがな」

 

まあそうなるか。こんな場所一般的に知られるはずが無いし。

上層部関係者、もしくは選ばれた人間しか入ってこられないんだろうなー……あと答えられないって、これ秘密漏らしたりしたらエドガーさん粛清されちゃう感じなの?

 

俺もエドガーさんの立場を危うくしないように立ち回らなければ。

 

「……そうだ。ゼン。最近、お前さんに関するある噂が立っているんだが」

「具体的には?」

「東棟。30階付近を清掃している清掃員の中に、ゼンに似た男が居る、と。部下達からの情報だ」

「俺だな」

「お前さんか」

 

エドガーさんの、「何やってんだコイツは」みたいな視線が痛い。

おいおい噂が出回るの早いな!俺まだ2回位しかそのアルバイトやってないぞ!

ちなみに週に2回、傭兵稼業の無い日に適当に入れて貰えることになりました。

 

やったぜ。

 

「リンクスが清掃活動か。しかも今話題のお前さんが……世間にその事実が公表されたら、それはそれで大騒ぎになるぞ」

「うむ。次からはもっと顔を隠して行ってくるとしよう」

「そういう問題では無い気もするが……ゴホン。世間話はここまでだ。依頼の説明に入る」

 

来たか。エドガーさんの雰囲気が仕事モードに入る。

俺もそれに応えるかのように、結構真面目な表情に……なれてると良いけど!

さてさて、病み上がり一発目。そしてゼンさん版chapter2の最初の傭兵稼業でもあるその任務は

 

「依頼主はいつものGA。依頼内容は、GA社の誇る『地上最強』。AF『グレートウォール』の防衛だそうだ」

「成る程……」

 

地上最強を『防衛』ね。これはまた、一悶着ありそうなお話で。

 

「理由だが……ロウランド砂漠を横断中のところをインテリオル社に見つかったらしくてな。恐らくは2日後、ネクスト機の襲撃に遭う可能性があるんだと。情報の出処は、毎度のことながらシークレットだそうだが」

「傭兵に対して何でもかんでも話す義理は無い……との考えだろう。まあ、重要なのはそこよりも、『誰』が来るかだ」

「それがな……」

 

そこでエドガーさんの顔が若干渋る。うっわ。結構ヤバい人引いちゃった感じ?

大体今までネクスト機が出てくるのって乱入ばっかりだったしな。事前に情報が入ってくるなんてワンダフルボディ戦以来だし……大分怖いなー。頼む!上位ランカーだけは来ないで……!

 

「ネクストは『二機』。『レイテルパラッシュ』に『マイブリス』の可能性大だ」

 

ラスボス戦かよ。

いやそもそも二機とか詰んでない?俺普通の状態だと上位ランカーに1対1で超苦戦するレベルよ。

でも、超機動なんかそうそう使えないから。何回でも言うけど、直ぐ廃人になるからね。何たって昨日の今日だし。

 

うわーやべーよ。今回も例に漏れず大分やべぇ。

 

「しかしだゼン。今回はそれを見越して、GA社も僚機を用意したらしい」

「ほう」

「まあ、お前さんの負担も幾分かマシにはなるだろう」

 

いやエドガーさん、俺が依頼遂行する事前提に話し過ぎぃ!

幾分じゃないよ。死ぬほど助かるよ俺からしたら!

 

僚機……いやー良かった良かった。

 

よくよく考えてみれば、原作HARDモードで有澤重工の『雷電』さん居たじゃん。あの「正面から撃ち負けはしない」と豪語するスーパータンクが居れば、かなり良い感じなのでは?

 

でもそういやEN防御が絶望的だった!やっぱ相性的に厳しいか!?

 

「僚機は『ストレイド』。あの黒いレイレナード製のネクスト機だ」

 

sっしゃああああああああ!来た!メイン主人公来た!!でも何で!?

 

「『雷電』はどうした?」

「おいおい。お前さん、何故その情報を……そうだな。有澤重工、『雷電』は今、武装のOIGAMIが不調なんだと。本来ならあの男がパートナーの予定だったらしいが……。代わりとして今回は、非常に優秀な戦績を残している新人を充てたらしい。まあ、お前さんの陰に隠れがちではあるがな」

 

その新人イレギュラーやぞ。

しかもネクスト機とか言う戦力込みで言ったら、歴代最強かもしれん男やぞ。

どうすんだコレ。もうちょっと企業の皆さんとか、『首輪付き』君に焦点を当てた方が良いって。

 

あれ本物だから!静観してて良い人間じゃないから!

 

「そうか……期待しておくとしよう」

「一人が良かったか?」

「やめてくれ。『楽』なことに越したことは無い」

「……クック。今回も期待しているぞ?」

 

毎度報告ご苦労様です。ご期待に添えられる様頑張りますとも。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

『グレートウォール』。

 

GA社が『地上最強』と謳う列車型AFで、その全長は7kmに及び……

極めて強固な装甲と並外れた積載量を持ち、多数のノーマルを搭載する母艦としての機能を持つ。

また、本体も超大型のガトリング砲や大量のミサイルを用いた攻撃能力を有する。

 

特徴は列車型と言われる通り、車両の組換を行う事で編成を自在に変更が可能であり、車両の種別としては

 

•動力車×2

•武装車輌/ グレネードガトリング×4

•武装車輌/ミサイルコンテナ×4

•貨物運搬用車輌×複数

 

の通りである。因みにだが、全車両連結時には全長最大14kmにもなると言う。

 

後は……

 

《1車輌に搭載出来るノーマルは、最大121機。と》

 

 

――――――ゴゴゴゴゴゴゴッッッ!!!!

 

 

……ああ。今ぼく、砂漠地帯を爆走するグレートウォール車輛の屋根に乗っかってます。

いやでけぇよ。俺達の居る場所は、前から数えて一車輛目と2車輛との繋ぎ目の方なんだけど、反対側の端っこの方とか見えなくなってんじゃんコレ。

原作中より断然デカい。ゲーム中の車輛内部はネクスト一機が入っても狭そうだったけど、これ内部でも機動戦がそれなりに出来そうなくらいの横幅もあるぞ。

 

あと、グレネードガトリングが凄いカッコ良い。

そもそもガトリングでグレネードを撃ち出そうとかいう考えがもうカッコ良い。

むしろバカじゃね?こんなん誰が近付けるんだよ。普通に接敵できるのってイレギュラーの皆様方くらいじゃね。

 

ねぇ?

 

《地上最強と言われるだけのことはあるな?》

 

そう思うよね!首輪付き君もっ!

 

《…………》

《……チッ!》

 

し、静かだぁ!周りはうるさいけど、首輪付き君は静かなんだねぇ!

あ、あとぉ、スミちゃん!舌打ちはやめようね!ゼンさん的には精神的にクルから!

ところで何で首輪付き君の機体……ストレイドはずっと後ろから俺の事見てるんだろうね。

 

怖いね。

 

《おっと、そう言えばそのストレイドの……『腕』。面白い事をしているようだな》

 

とりあえず話題を振る。振りまくるよ俺は。無視されても諦めないから。

だってその『腕』が気になっていることも事実ですし。いや、これは凄い変わってるよ。

 

だって、ストレイドの右肘部分からもう一本『腕』みたいなものが生えてるんだもの。

マジでなんだこれ……腕の先はマシンガンにくっ付く様にして取りついてはいるけど……

 

 

【挿絵表示】

 

 

見た目的には、マシンガンを二本の手で支えているかのようにも見えるな。

 

《……ああ。これは『コイツ』が珍しく頼みごとをしてきたからな。私が古いつてを頼ってこうしてやった訳だ》

《ほぉ~……『複腕』か?》

《【03-AALIYAH 】に元々は想定されていた機構だ。まあ、エネルギー負担と……特に、リンクスの心的負担の大きさから最終的にオミットされた機構だがな。……が、どういう訳か、コイツにはその心的負担が全くないらしい》

《右腕が『二本』か。どういう感覚か非常に気になる所ではあるな……それはやはり、射撃安定性が増したりは》

《当然だ。通常の倍の腕で武装を構えるんだぞ。それ位の恩恵がなければやる価値が無い》

 

す、すげぇ~!今首輪付き君の脳は、腕が左右合計で3本だってことで処理してるんだ……

やっぱりイレギュラーは違うな。

今、ストレイドの左腕武装はブレードだからやる意味あんま無いんだろうけど、多分やろうと思えば左腕にもできるんだろうなー。そしたら合計で四本だ!

 

あれ?でもこれに加えて四脚とかに乗ったらもっと凄くね?

脚四本、腕四本とかリンクスのストレスが半端じゃなさそうではあるけどね。

 

《ククク……俺も腕を六本くらいに増やせれば、更なる安定性が望めるのだがな》

《おいおいゼン。お前さんが言うとシャレにならんぞ……》

《チッ!気色の悪い想像をさせるな!》

《……》

 

エドガーさんとスミちゃんの突っ込み。

いや冗談だからね!?俺の中で人間の腕は二本って常識しか入ってないから!

それと気色悪いって、毒舌すぎではなかろうか。ACプレイヤーじゃない人がその台詞聞いてたらショック受けるよ!あるいはご褒美か……

 

《しかし流石はストレイドだな。感心する》

《……!》

《……コイツの話はもう良いだろう。次は此方の質問に答えろ》

 

うおっ、まさかの相互質問形式……何聞かれるんだろうな。

 

《『お前達』。一体何なんだ?》

《……》

《質問を変える。お前達は『身体』に何かをされているな?》

 

……確証もって言ってるっぽい。まあ、これは別に隠す必要はないか。

 

《ああ。曰く、俺は『ギリギリ人間』だそうだ》

《ミラージュは?》

《分からん。ただ仮に俺と同じ処置だったとして……その場合、アレは相当イカれているな。戦闘記録を見たのだろう?あの機動力での戦闘を最初に仕掛けてきたのは奴だ。しかも全く躊躇なく、な。俺はやむなく対応したに過ぎない》

《……お前と奴、どちらが強い》

 

あんま弱気な事は言いたく無い。エドガーさんの手前もあるし。でも

 

《一対一。砂漠、もしくはあの機動戦が可能なマップだと仮定する。対等条件ではほぼ確実に『勝てない』》

《……》

 

だから考えてる。

 

《だが負けないんだろう?》

《クック……まあな》

 

流石エドガーさん。

そう、どうにか負けない方法を考えてる途中だし、負けるつもりはないよ。

特にミラージュさんには……くっそ!でも超強いんだよねあの人!どうしよう!

 

《……らしいぞ。満足したか?》

《……ん?どうかしたか?》

《『コイツ』がお前に聞け、としつこくてな。全く……》

 

コイツって、首輪付き君が?

ああー。だからさっきからずっと俺の事睨んでたのか。

そのヘッドパーツから放たれる黄色のアイカラーがミステリアスで素敵です。

 

だから怖いって。背後からいきなりぶった斬られたりしないよね?よね?

 

《……》

《……》

 

……お互い特に話すことも無くなってしまった。

ずっと無視されていた訳では無くなったので、俺も話しかけるのを止めにし、グレートウォール上からの景色をゆっくりと眺める事にする。

 

うーん。平和だ。相変わらず周りは騒音だらけではあるけど。

このまま何事もなく終わったりしてくれねーかなー。

 

 

()()()()()()()()()()()()

 

 

エドガーさんとスミちゃんのオペレーターコンビの声が被る。

だよね~!やっぱり来ちゃう感じだよね~!

しかしこの切羽詰まった声は……何となくわかる。少々予想外な出来事に遭遇したんだろう。

 

《敵機はさ……いや、予定通り二機だ!》

 

おいおいどうしたんですか!!何!?やっぱりあのコンビだよね!

あのルートによってはラスボスを張ってのける、凶悪なEN砲使いまくりのインテリオル社……

 

《これは……!》

《VOBかッ!》

 

『VOB(Vanguard Overd Boostヴァンガード オーバード ブースト)』。

機体背部に接続する巨大な追加ブースターで、これを使用することでネクストは時速2000kmにも達するスピードで飛行することが可能になる代物。

 

つーかVOB!?えっ!VOBとか使えるのこのミッション!?

いやいやそれよりどっから来るんだ!?ちょっ、ど、どk

 

《先頭車輛の方角から真っ直ぐ来るぞ!》

《チッ!ガトリングの射角を回避する算段か?備え付けのミサイル共では恐らく追いつけん!》

 

つまりグレートウォール上をなぞる様にぶっ飛んでくるつもりって事かい!

それになんだか「ゴォォォォォオオオッッ!!」って!段々ブースト音みたいなんが聞こえてくるんですけど!しかもその音が大きく……

 

《ネクストのレーダー範囲内に入った!ゼン!見えているな!》

《ああ!これより目視に移る……》

 

………………

…………

 

 

居た。まだ小さい影しか見えない、

 

けどっ、

 

こ、これッ、もの凄い速度でその影がデカくなってきてい――――――

 

―――――――――

―――――

 

―――その二機とすれ違ったのは、一瞬の出来事だった。

 

 

が、不思議とその姿だけは、ハッキリと目に映っていた。

俺たちの待機している丁度真上を、轟音とそれによる『揺れ』と共に通過していった二つの物体。

VOBの装着された、真鍮色の軽量機に、緑のアイカラーが印象的な流線形状の重量機。

 

『レイテルパラッシュ』に『マイブリス』だ。

 

インテリオル社系列のネクスト機における、最強の二機。

そして俺は感覚的に理解した。すれ違う瞬間、この二機と、――――中の者リンクスと目が合った事を。

 

《ゼンッ!》

《クッ!奴らは最後尾からの侵入が目的だ!急いで追えッ!》

 

クッソォ!こんな事なら最初から最後尾の入り口で待機しておくべきだった!

ってかそもそも、本当はそこがストレイドの持ち場じゃなかったっけ!?今更だけど!

 

俺とストレイドはすかさず機体を反転させ、OBを起動。

ほぼ同時に展開したのだろう。

その噴射音が重なり、相手のVOBに勝るとも劣らない程の爆音を発生させる。

……それとこの身体にクる加速感ね。まあ、それでも『この前』に比べるとずっとマシだけど。

 

《流石に速……い、なッ!》

 

ちっくしょう!追撃を開始したのは良いけど、視界から段々遠ざかりやがる!

 

さてここで問題!

 

連結車輛は全部で6。

一車輛につき約1.2㎞の長さだと仮定して、2車輛目から時速約2200㎞/hで飛行する『インテリオル組』と、同じく2車輛目から時速約1600㎞/hでそれを追従する『雇われ組』がそれぞれ最後尾までにかかる時間を述べなさい。

※ただし、雇われ組の内一名はテンションが低いものとする。

 

誰か答え教えて!ってか注釈の意味ねぇ!

 

《敵ネクスト、VOBをパージ!》

 

おっと、その最中にインテリオル組はVOBパージするんだって!じゃあどうなるかな!?

 

どうでも良いか!

 

パージされたVOB片はグレートウォールにぶつかりまくって、ミサイル砲台やガトリング砲台にダメージを与えている。いや、そういう使い方もあるんだね!勉強になります!

でも丁度そこを通過する俺らからしたら、爆風とかのダメージが怖いんでやめて頂きたい!

 

《インテリオル二機、最後尾へと到着した!》

《急げ!速攻でカタを付けられるぞ!》

 

はっえぇ!でも、もうすぐ俺達も……

 

《……よし!》

 

到着した……けど駄目だ。

姿が見当たらないってことはつまり……侵入されたか。今すぐ追わないと大分マズいぞ!

あの二機の事だし、目標は最前方の動力部一本に絞っているハズ。余計な戦闘は避けに掛かるだろうし。

 

俺とストレイドもすかさず最後尾の入り口からグレートウォール内に侵入するよう動くのだが……

 

《……!》

《……》

 

そこから一本の野太い光が射出された。

その青い光は、原作中で良く目の当たりにした……インテリオル社製のレーサー光に酷似しているが……

 

マジか。ここでまさかのパターン。

 

 

 

《―――――悪いね大将。こっから先は通行止めだぜ》

 

 

 

通信機聞こえてきたのは、そんな、掴みどころの無いような男の声。

と同時に、視界には、その入り口を塞ぐようにして一機のネクスト機が待ち構えているのが見えた。

 

……だぁ~!!やられた!『足止め』役か!

 

 

 

《『マイブリス』……!》

 

 

 

どうしよう……!

 

 




挿絵に関しましては、私自身が設定資料集より模写、ペイント機能にて加工してあります。
ACが好きな人ならもっとACが好きになる様に、分からない方も楽しめるようにとの措置ではありますが……問題となりそうならば即座に消去致しますね。




▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。