絶対に死んではいけないACfa   作:2ndQB

22 / 60
ちょっとバレンタイン襲撃してくる。



第21話

主人公視点

 

 

 

あれから一週間程が経過しました。皆に心配された片頭痛も今では影をひそめており、僕はすこぶる元気に過ごしています。

 

自室のベッドに横になりながら、以前の出来事を思い出す……実はあの後、睡眠を取ったけどすぐに起こされたんだ。ん?誰に起こされたのかだって? そんなの決まってるじゃないですかー

 

マーシュさんです。

 

荷物は後で運んでおくよ!って言ってたにも関わらず即行で俺の部屋に来てた。

曰く、怒り狂ったフィオナちゃんから逃げて来たとか何とか。

怒らせた理由については聞かなかったけどね。まあ、次の日にマーシュさんが食堂に居た事から大体想像はついたし。

 

あの人の所属ってアスピナ機関で合ってますよね?

 

…いや、もうそれについては深く考えない方が良いな。だってマーシュさんだし。あの人なら何やっても不思議じゃない。

 

と、言う訳でそれについては一旦置いておきましょう。そう、それは良いんだけど…実は今ちょっと不安な事がありましてな。それが一体何なのかと言うと

 

 

依 頼 が 来 な い 

 

 

もしも働き者の多い日本の皆さんがその事を知ったら、「1週間も働かない者。秩序を破壊する者……プログラム(※社会的)には、不要だ」何て言われそうなものだけど、まさしくその通りなんじゃないかな。

 

俺の立ち位置ってアレですよ、一応ラインアーク所属のリンクスなんですよ?

それなのに傭兵もしないで一日中部屋に籠りっぱなし。本を読んだり送られてきた知恵の輪をひたすら分解して組み立てて、疲れたら眠って、起きたらご飯食べて……

 

お、おおお、おまっ!お前これ完全に……に、NEETやないかい! 英語表記で誤魔化してるけど、『働かざる者』やないかい!!

 

これについて二日前、フィオナちゃんに色々と聞いたら「貴方は特殊なケースですから……企業も警戒しているのでしょう」って返されました。

 

警戒って、実力的な意味でですか。つまりはコイツに頼むよりかはホワイト・グリントさんとか他の傭兵の方に頼んだ方が良くね?って思われてるんですね分かります。

まあ確かに実績なんて無いし。信用出来る訳無いよねー。

 

ぶっちゃけ自分も雇う立場なら俺よりかは他の人を選びます。ええ。

 

昔、偉い人は言いました「働かざる者食うべからず」と。

…ど、どうしよう。フィオナちゃんに頼んでラインアーク内での働き口でも探してもらおうかな。清掃員的な職業ならなんとかいけるか…!? となれば早速連絡を――――――

 

 

―――――(コンコン)

 

 

これは…ノック音だ! 

 

来客に備え上体を起こしつつ、その人物について思案する…俺の部屋に来る人は限られているし、一体誰なんだろう。

 

「ゼン、俺だ。入っても良いか?」

「ああ」

 

ドアを叩いたのはエドガーさんだった。てっきりマーシュさんかとも思ったけど。

昼食のお誘いかな? あれから何度か一緒にしてるけど。でもまだそんな時間じゃないし…

 

ガチャリ。とドアノブを回して部屋の中に入ってくる。エドガーさんの手には紙の束…資料?のような物が見える。こ、これはもしや

 

「クク……ゼン、顔に出てるぞ。お前さんお待ちかねの〝依頼〟だ」

「来たか…」

 

ガタッという擬音が付きそうな勢いでベッドから立ち上がる。どちらかと言うとギシッだけど。

 

ふむふむ、以前はフィオナちゃんが依頼について話してくれたけど、今回はエドガーさんか。いや、『今回から』かな? 正式に俺のオペレータを務めてくれる事が決定した訳だし、一緒に依頼の確認する必要もあるんだろうな。

 

「依頼主はGA社だが……そうだな、細かい点についてはこれを見てくれ」

 

そう言って俺に資料を手渡してくるエドガーさん。

 

えーと何々、出撃先は…『旧チャイニーズ上海海域』か!それを何枚かめくると、海面が上昇した事により水没しているビル群の画像があった。

おー、ゲーム中では四角いビルばっかりだったけど、やっぱり本物は形のバリエージョンが豊富だな。

 

しかし…

 

「依頼内容が『AFの護衛』か。これはまた何とも…」

「不満か?」

 

「いや、面白いと思ってな」

 

ここでGA社の巨大兵器〝ギガベース〟が出てくるのは知ってたんだけど、まさか撃破では無く護衛する事になるとは。原作ではオーメル社からの依頼しか無いから、撃破するしか無いんだよね。

 

「マシントラブルにて上海海域に停泊予定…か。おいおい、大丈夫なのか」

 

「何でも、電子制御での主砲のロックが合わないらしい。ま、幸いなことに弾丸は問題なく出るし、手動で標準を合わせる事も可能らしいが……『ロック』が出来ない状態ではな」

 

「ロック不可。つまり、今現在の主砲はただの『超高威力ロケット』に過ぎないと言う訳か。このタイミングにネクスト機に襲撃されでもしたら事だな」

 

「つまりはそう言う訳だろう。VOBは愚か、通常推力でも接近されかねんからな。まあトラブルが起きたのはつい先程で、今のところ情報漏れの心配は無いとの事だが」

 

なるほどなるほど。ここでVOBを使わなくても接近可能だったのはこんな裏話があったのか。

むむむ、思い起こせば主砲の精度も悪かった気がしてきたぞ!

 

資料によると、護衛は『簡易的な復旧作業が終わるまで』らしい……どうにも、こういったトラブルに慣れてますよ感がすごいな。さては何度か同じような目に遭いましたね?

そういや『AFカブラカン撃破』のハードモードではGA社のマシントラブルでスミちゃんが激おこだったな…

 

よし!

 

 

「出撃する」

「ククク…一応『受けない』事も可能だが。お前さんには意味の無い選択肢だったな」

 

ミッションを成功させれば報酬も入ってラインアークに貢献できるし、雇い主であるGA社の評価が上がれば次の依頼も来るかもしれない。

何より、この俺をご指名なんですぜ!他に信用できる傭兵の方々が一杯いるのにだよ!?

 

てな訳でこいつはいっちょ頑張らせてもらうぜ!

 

「ああ、もう輸送機とネクスト機の配備は済んでいる。後はお前さん待ちだ」

「……さすがだな」

 

あ、相変わらず用意周到ですね!

 

 

**************************

 

 

 

はいっ!って事でやって参りました『旧チャイニーズ上海海域』!

 

海良いよねー海。君は海好き?

 

俺は大好きだ。釣りに潮干狩り、晴れた日の海水浴なんて最高だと思うよ。水着姿のチャンネー(死語)達が居ればなおの事良し!

 

だけども海には危険が一杯なんだ……毒を持っているクラゲやカサゴなどの生物、そうでなくとも浅瀬に居るウニやガンガゼと言ったトゲトゲしい奴には注意が必要だ。

潮干狩りの時は出来るだけ履物を履いた方が良いかもね。

 

準備運動も忘れずに行おう。それを怠ったばかりに足をつり溺れた、なんて事例もよくあるからさ。良く聞いてねチビッ子の皆! 準備運動をしないと、おサメのジョースに丸かじりにされちゃうかもしれないぞ!

 

がおー。

 

 

――――――ガゴンッ!!ガゴンッ!!

 

 

………。

 

 

《聞こえているか?此方AFギガベース。あんたが護衛のネクスト機だな。ま、暇な任務になるかも知れないがよろしく頼むぜ》

 

《…ああ》

 

いや、あのちょっと

 

《『旧チャイニーズ上海海域』か。ノーマル部隊の配置、または遮蔽物としても利用可能な建造物もある。実際に見るに、停泊するには中々良い場所か? しかしゼン。これはアチラの言う通り〝暇〟な任務になる可能性大だな》

 

《…ああ》

 

可能性が大きい、そうか大きいのか…〝大きい〟…

 

目の前の『コレ』大きくない?

 

 

――――――GA社製の拠点移動型AF『ギガベース』。タンカー二機を繋いだ双胴船の様な外見をしており、海上で使用される大型実体弾砲は非常に精度が高く、並のネクスト機ではまず接近する事すらままならないだろう。

 

更に「海上で」と前述されている事からも想像が付くだろうが、ギガベースは底面に無限軌道を備え持っている為、陸上での運用も可能だ。

陸上に居る際の主兵装は海上とは異なり、船体下部に折りたたまれている全長約500メートルの『超大型レールガン』が姿を現す。

 

敵に接近された時の対策としては以下の通り

 

・速射野砲×8

・多連装ミサイルランチャー×12

・近距離防御用砲×12

・近距離防御用マシンガン×2

 

と言った様々な兵装を備え持っている。

 

これ程の武装をしている訳であるから当然、それに比例する様に本体も大きくなるのだが、この『ギガベース』の全高がどれ程の物なのかと言うと――――――

 

 

《それにしても〝全高400m〟か。お前さんの視界を通して此方にも見えるが、これは……》

 

《《デカいな》》

 

エドガーさんと声がハモる。

 

本当、少なくとも想像してたのよりかは遥かに大きいッス。えっと全高400メートルって、身近で想像しやすいのだと東京タワーかな?いやいやあれは確か333mだから……

 

東京タワーより、ずっとでかい!!

 

少し見ない間に大きくなったねって会話はよくあるけど、そんなレベルじゃない。夏休み終わったら友人の身長が『数倍』伸びてましたたみないな?まさにそんな衝撃を今俺は感じている。

 

更には周りには小規模ながら、BFF第八艦隊の護衛。海面から飛び出たビル群の屋上にはガトリング砲を備え持った半砲台型のノーマルも配置されている……こんなんジョーズも食べた人間を吐き出して、アフターケアまで付けるレベルですわ。

 

はっはっは!いやー海には危険が一杯ですn(ガゴンッ!!ガゴンッ!!

 

さっきからガコガコ大きい音が鳴っているのはギガベースが主砲を上下左右に忙しく動かしているから。ちょいちょいコッチにその主砲が向くからビクってなる。

多分そうやって狙いを定めるのも復旧作業の一つなんだろうけど……ふふふ……怖いな。

 

まあ今は味方だし心配無いけどね。敵さんが来る気配も無さそうだし、せっかくの機会だから色々と観察させてもらおう。

 

俺は機体の位置をギガベースの前面から側面へと移動させる。中には200機のノーマルを収容出来る奴もあるらしいけど、コイツはどうなんだろう。

ざっと見た感じだと全長600~700mはあるぞ。

 

……しかしなぁ。やっぱり何というか、明らかな弱点があるよな。ほら、ギガベースの形状って分かりやすく言うと『H』型なんだ。双胴船をつなぐ真ん中の部分を狙われるとかなりツラいだろう。

 

そうやてギガベースの周りをぐるりと一周し終えると、エドガーさんから通信が入った。

 

《クク…『敵情視察』か?》

 

《どちらかと言えば『味方』だがな。やはり、ギガベースは敵機等に懐に入り込まれると厳しいものがある》

 

いくら何でも、ネクスト級の火力で一気に弱点を攻められでもしたらね…いや、まあそんな如何にも「俺、分かってますよ」的なコメントをしている自分ですが?

 

実はギガベースに何回撃破されたか分かりません。

 

多分この世界だと初撃破までに、少なくとも10回は人生やり直すハメになってる。

思い出すと泣けてくるぜ! 第八艦隊とか観察して気をまぎらわそう……

 

そうやって暫く時間が経過した頃、何とも嬉しい一報が耳に入った。

 

《此方ギガベースよりネクスト機へ。朗報だ、復旧作業は思ったより早く終わりそうだ》

 

本当に!?

 

今回はもしかしてラッキーパターンか?このままただ付き添うだけで任務が完了しそうだぞ。

いや、今までが多少不運だったのか……こういう感じで何事も無く終わるミッションとかも案外多いのかもしれないぞ。

 

理由は何であろうと、戦わないに越した事は無い。

 

ふふふ…ふははは!サイコ―だ! 戦ったりしてないから当然被弾や弾薬の消費はしてない。本来その分で掛かってたはずの費用はラインアークに貢献できるし、GA社にも自分の依頼に対する姿勢は伝わったはず…働いてるからご飯もおいしい!!

 

はーはっは!何と素晴らしい世界なんだー!最高ッ!最高ッ!さいk

 

 

《……! ゼン!遠距離からそちらに向かい高速で近づいてくる反応がある。この速度…かなりのものだ。まずネクスト機で間違いは無いだろう》

 

 

はい。

 

喜びを露わにした途端のこの仕打ち……う~ん。素晴らしいSYSTEMだね。

そうだ!これを『ぬか喜びSYSTEM』と名付けよう。我ながら素晴らしいネーミングセンスだ。

まあ、正直絶対このまま終わるとは思ってなかったからね…本当だから。別に泣いてないから。

 

……はぁ。高速接近中のネクスト機…一体何者なんだ。確かここで襲撃側に回った際、僚機として雇えるのは

 

・カラードランク22、ネクスト『サベージビースト』

・カラードランク11、ネクスト『トラセンド』

 

そして『あと一機』から選べたんだけど…いやー思い出せないわー。本当、確か青くて素早くて超高ランクのネクスト機だった気がするんだけど思い出せないわー。

 

ま、思い出せないのは仕方がないよね!

 

でもトラセンドはちょっとな…リンクスの『ダリオ・エンピオ』さん怖いし。

出来たら「やっぱり俺が 最強かぁ~(´・ω・`)」で有名なサベージビーストのリンクス、『カニス』さんが良いな!優しそうだしね!

 

いやいや待てよ、ゲーム中の立場から察するに来るのは首輪付き君の可能性も…

 

そんな事を考えている内に、自機のレーダーもその存在を感知する。それに従い、感知した方向へと機体を向けると…まだ細かい形状を確認するには至らないが、確かに水飛沫を上げこちらへと近づいてくる物があった。

 

そして徐々にそのシルエットが鮮明になってゆき……その機体は一つのビルの上へと機体を停止させる。

 

《おいおい、こいつは…ゼン、AMSに信号を流す。それとも自分でやるか?》

 

その正体を見たエドガーさんはどうやら驚いている様子だ。…今回は戦闘が無さそうだったからAMSに電気信号は流して無かったんだけど

 

《いや、頼む》

 

こいつはちょっとマズイ。エドガーさんお願いします!

 

結論から言うと、現れたネクスト機は俺の心配していた『トラセンド』では無かった。ラッキーと思います?それがね、そいつはカニスさんの『サベージビースト』でも首輪付き君の操る『ストレイド』でも無いんですわ。

 

つまりは、『青くて素早くて超高ランクのネクスト機』がやってきた。

 

 

《フン、下らない敵ばかりかと思えば…例の『名無し』だな、貴様? よりにもよってラインアークに与するなど……》

 

 

その正体は―――――

 

 

《貴様には水底が似合いだ》

 

 

―――――カラードランク【1】 ネクスト、『ステイシス』。

 

 

 

 

 

 




※誤字指摘有難うございます。数ヶ所修正致しました。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。