絶対に死んではいけないACfa   作:2ndQB

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新年あけましておめでとうございます。(今更)




第17話

主人公視点

 

 

 

俺の機体って超カッコよくね?

 

レイヴンやリンクス、はたまたミグラントの皆さんなら誰でもそう思っている節はあるだろう。更にはガレージに籠りっぱなしで、自機を見てひたすらにやにやするという…もはや傭兵しに来てるのか機体見に来てるんだか分からない状態になる方も多いはずだ。

 

だがその一方で

 

――――はぁ、俺の機体の背部兵装のレーザーキャノン〝EC-O300〟。あれ2門乗っけてるとカッコ良いんだけど、ぶっちゃけあんまり使わないんだよなぁ…ワンダフルボディ戦の時は相手のEN防御の低さから、危ないと思って封印してたし。

 

そうで無くともリロード時間が遅くてのぉ。1対1だと開幕に1発ずつ撃って即パージが普通だったな。だけど、この世界じゃそう簡単に『撃ち捨て』も出来ない。弾代だけならともかく、武器本体まで捨てちゃうとその値段まで請求しなきゃならないし。てかそもそも武装が届くかどうかも分からないし、本当やんなっちゃうぜ――――

 

…などなど、この様に自分の愛機に対してネガティブな思考を持つ場合もまた皆さんあるかと思います。そこで、とある魔法の呪文をお教えしましょう。この呪文を使えばどんな欠点もたちまち愛おしく、更に機体への愛情が湧く事でしょう。

 

では皆さんご一緒に。

 

「だが、それが良い」

 

え? 何だって? 聞こえない! キコエナイよ!? さあもっと熱く!!!

 

「「 だが、それが良い! 」」

 

良くできました。皆さんの声が私の心の奥底まで届いてきましたよ。それでは皆さん、自分の愛機の欠点を思い起こしこの魔法の呪文を付け足してみて下さい。

 

「二脚に折り畳みグレネードはカッコ良いんだけど強化人間じゃないと実用性がな――――」

「タンクはマシ+ショットガンの『重量機に親を殺されたマン』に瞬殺されるのがな――――」

「オーバードウェポンは実質ネタ武器だしな――――(※マルチプルパルスは絶許)」

 

だ が そ れ が 良 い

 

うっひょおお!!テンション上がってきた。

そうそう。自分の機体の欠点が頭の中を駆け巡る時は、こうして洗脳…ああ、いや、言い聞かせるのが一番だよねー。だがそれが良い…ダガソレガイイ…ナニカサレ…

 

……ハップァ!!

 

あ、危ない所だった。もうすぐ闇に堕ちるところたった。何の「闇」なのかは自分でも良く分かって無いけども…ってさっきから何考えてんだ自分は! 落ち着け、大丈夫だ。顔を初めて合わせるってだけで、何度もお話ししているじゃないか。

 

壁に掛けられている時計をチラリと見る…もうすぐだ。そう、もうすぐあの方が来てしまうのだ。

 

――――エドガーさんが。

 

昨日の戦闘が終わった後、エドガーさんが俺に会う為に指定した時間は翌日の正午だったはず。今現在の時間は午前11時45分…どどど、どーするよおい!!

あと、あと15分でエドガーさん来ちゃうじゃん!!

 

やっぱり最初の挨拶はオーソドックスに「今日は良い天気ですね」が良いかな…

 

いや、駄目だ。まず今日は部屋から一歩も出て無いし。もしも雨なんか降っていた日には目も当てられない事態に陥ってしまう。

 

それにだ、それは会話の出だしとしては最もグレードの低い位置にある…!もっとオシャレで気の利いた挨拶があるはずだ。焦るな落ち着け考えろ。まだ時間はあるんだ、エドガーさんが来るまでにはまだ時間が――――

 

――――(コンコン)

 

…なっなな 何ィ!!??

 

ドアがノックされた、だと。

時計は…11時50分を回ったところだ。まだ時間は10分近く残っているんだぞ! そんな、どうして。いや、ドアの向こうに居るのはエドガーさんではないという可能性も無きにしも非z

 

「俺だ、約束通り迎えに来たぞ?」

 

とか思ったら、めっちゃエドガーさんっぽい声と発言なんですけど。でもね、まだ分からないよ。声だけが一卵性双生児並に似ている人なのかもしれない。

「約束」とか言っているけど、自分でも知らない間に、エドガーさんと瓜二つの誰かと何かを約束したのかもしれない。

 

取りあえずドア越しに会話を試みてみよう。

 

「まだ少し早いんじゃないか?」

「待ち合わせの10分前には目的地に着いておくタチでな」

 

あ、このイケメン発言は間違いなくエドガーさんですね~。…疑っちゃってすみませんっした! 

本当、この言葉を全国の遅刻民に聞かせてあげたいわ。特に、遅れたのに半笑いで謝る奴とかね。コジマキャノンをぶっ放したくなるから。

 

「素晴らしい心がけだな…今開ける」

 

そうしてドアノブに手をかける。ちなみに今手汗すっごい出てるから。もう出すぎてドアノブつるっつるになってるから。

 

…緊張しましぁ! さて、オープンッ!!

 

「…」

「…」

 

こ、これは…鋭い眼光だッ! 体も筋肉質で、着ている服が盛り上がってる事からもそれが見て取れる。身長に至っては…もうこれ190センチ位あるんじゃね? あっ、お顔は想像通りのIKEMENでした。さすが我らがエドガーさん。

 

総評:強そう

 

小学生の日記か!って思うかもしれないけど、マジでそうなんです。カツアゲとかされたら光の速さでの『お財布献上』必至って感じなんです。

こ、怖い…だけどいくら見た目が怖いからと言っても目を逸らしたりしてはいけない。初対面で目を逸らしながら会話とか失礼にも程がある…

 

というか何でだんまりなの? じっと俺の顔見て固まってるんですけど…き、気まずい! ただっ広い草原で寝そべってたら突然女子高生に隣に座られるレベルで気まずいよ! ここは自分から話しかけるべきなのだろうか…

 

よ、よし。勇気を持って攻めてるんだ俺!

 

 

「良いヘッドパーツだ」

 

 

いきなり何言ってんだ俺はあぁぁあ!!

 

違うんだよ。自分が言いたかった事はそういうんじゃないんだ。いや、そういう事なんだけど。つまりはね? 「カッコ良いですね」って言おうとしたの。でも何か、緊張のあまり意味不明な言葉が口から飛び出てしまった。

 

これやばない? 初対面の一言目にこんな事言う奴やばない?

 

少なくとも俺の人生において、こんな言動する奴は居なかった。そしてこれからも出会う事は無いだろう。万一こんなの出会ったとしても即『イレギュラー認定』する自信がある。こ、このままでは記念すべき初顔合わせが台無しになってしまう…!

 

 

修正が必要だ。

 

 

「それよりどうした、人の顔をジロジロと…何か付いているのか?」

 

ここでラインアーク移住作戦の時と同じく、さいげなく話題転換するぜ戦法を実施。

さて、その効力やいかに!?

 

「ああ、気分を悪くしてしまったか。…すまない、気にしないでくれ」

 

効果は抜群だぁ!

 

やはりな。移住作戦でも上手くいってたし、不安は無かった(大嘘)。いやー、しかしあえて一言目のアレに触れない辺りにエドガーさんの優しさを感じるわー。まるで最初から耳に入って無かったかのごとき反応…スルースキルもパネェぜ!

 

「おっと、挨拶が遅れたな。今更ながらだが――――エドガー・アルベルトだ。ここ、ラインアーク第一MT部隊の指揮を執ってている。これからもよろしく頼む」

 

そう言って右手を差し出してくるエドガーさん。…はは、まあ確かに『今更』だったかもな。考えてみれば、この世界に来てからというもの一番会話している人だろうし。緊張するだけ損だったかも。

 

「フッ…まあ、確かにそちらの言う通りだな。〝ゼン〟…これでも一応リンクスだ。先日は世話になったな。こちらこそよろしく頼んだ」

 

そしてがっしりと握手。…ちょっと感動。こうやって人の輪が広がっていくんやな…

あと、一つばかり質問なんですけど。

 

「いきなりで悪いがエドガー。握力はいくつだ」

「?…確か、90キロ程だったと思うが」

 

「…やるな」

 

アンタ何者なんすか。

90キロって…そのまま力込めれられたらもう右手粉砕されてしまうやないかーい! …エドガーさん怒らすのはやめよう。元からそんな気は微塵も無かったけれど。

 

ま、まあ何はともあれ顔合わせは無事終了したな。さてさて、お次は

 

「では、早速だが〝アイツら〟のところへ案内するとしよう。ゼン、付いて来てくれ」

「ああ」

 

MT部隊の皆さんだ!

 

 

------------------------------------------------------

 

「着いたぞ」

「…ここは?」

 

エドガーさんの後を付いて行ってしばらく、到着したのは何やら中からわいわい話し声が聞こえる扉の前。…結構人が居そうな感じだな。

 

「ここは…そうだな、ラインアークの防衛部隊が利用する食堂だ。それこそ私達の様なMT部隊の他、ノーマル部隊の者達など多くの者が利用するが」

 

ほほう、そんな所があったとは…こちとらほぼ部屋に籠りっぱなしだからな。特に部屋の外に出るなって言われた訳では無いけども、出てもする事ないですしおすし。

 

「なるほど、今の時間を指定したのはこの為か。皆に会うのには都合の良い時間と場所だな」

「そう言う事だ。じゃ、入るぞ」

 

し、失礼しまーす…

 

構造は…白い長方形の机がいくつも並んでて、それを囲む様な椅子の配置。あと、前の方には料理と取り皿、トレイが並んだ机がある。

…大体想像してた通りの作りだなぁ。何っていうか、軍事映画で出てくる食堂をそのままデカくした感じ。まあ、キョロキョロするのもアレなんで一応視線は真っ直ぐにしている。

 

それにしても

 

「見ない顔だな」

「黒髪黒目…となると」

「東洋辺りの者か」

 

「見た目二十代って所だが…新入りか? いや、しかし」

「…それは無いだろう。見た目こそ若いが、見てみろ。あの落ち着きぶりは―――」

 

周りの方々の視線が非常に痛い…! 今までの人生において注目されるなんて事はほぼ無かったからな。何とも言えない気恥ずかしさがある。

 

ちなみに一番注目を浴びた時は何時だったか、学校の先生に向かって「母さん!」って言った時。しかも何故か男の先生に。あの時は穴があったらそれごと爆殺して欲しいレベルだったわー。

 

そんな黒歴史を振り返っているといつの間にか、談笑している一つのグループの前に到着した。

 

おお、珍しく女の人が居る。

 

茶色の髪を後ろで1つに括った、パッチリお目目の可愛らしい人だ。 あとの男の方たちは…エドガーさんよろしく筋肉モリモリのマッチョさんばっかりです。

自分もそれなりに筋トレとかしてるけど、この人達のは遠く及ばない。まあ、この世界で言う軍人さんみたいなものだろうし、比べるのがそもそも間違っているか…

 

「お前達、遅れてすまない」

 

「あ、戻ってきたぞ」

「ご苦労様です。一体どこに行ってたんです?」

「そうですよ。『少し寄る所がある』って言ったきり突然居なくなったりして…おや?」

「あの隊長、そちらは…」

 

エドガーさんがその一団に挨拶をすると何とも親しげな返事が返ってきた。こ、この聞き覚えのある声は…ッ!! この人達がエドガーさん率いるMT部隊の皆さんか。

 

と言うか、エドガーさん今日俺が来る事の説明して無かったんかい! てっきり昨日の時点で話しているかと…

 

「…この男か?」

「はい、見かけない顔ですが…?」

 

お、説明してくれそうな流れだ。となると自分が何か言う必要は無いかな。

 

「「「………」」」

 

…え?

 

周りの話声が一瞬にして消えた。何でじゃ! 少し前まで皆で楽しくおしゃべりしていたやろ! 

しかもさっきとは比べ物にならない程の食堂中の視線を感じるんですけど。…大丈夫? 俺見られすぎて穴空いて無い?

 

「この男は―――」

 

……。

………エドガーさんメッチャ溜めますね!

 

 

―――〝リンクス〟だ。

 

 

「ぶ ぉ っ ほ ぉ !!」

「なっ!?」

「え、えええ!? つ、つまり」

 

「あの、ぜ…〝ゼン〟さん…? ですか…?」

 

いや自分らちょっとビックリしすぎとちゃいます!? その驚き具合にはこっちがビックリだよ! 驚いてご飯吐く人とか初めて見たわ。

 

「何…ッ!」

「あの噂、まさか本当だったとはな…」

 

「それみろ。只者では無いと言っただろう」

「リンクス…やはり、『強者』独特のオーラとでも言う―――」

「しかし何故…」

 

つーか周りもざわつき過ぎィ! いや、本当自分に驚く要素何も無いから! 今はともかく、向こうの世界じゃお掃除得意な一般ピープルだよ!

それとオーラってなんですかオーラって。そんなの出せる覚え無いし、絶対気のせいだって。少女漫画とかにありがちな『フィルター』かかってますよそれ。

 

「驚きすぎだ。久しぶり…と言う程でも無いか。ゼンだ、ここの…ラインアークの世話になっている。まあ、何だ、これから共同で動く機会もあるだろう…その時はよろしく頼む」

 

「よよよろしくお願いします!」

「そ、そちらから挨拶に来てくれるなんて…」

「本物だ…本物のリンクスだ…」

 

もはや映画スターが来日にた時ばりの反応である。皆さんには一体俺がどう見えてると言うんだ。トム・ク〇ーズさんか? はたまた福〇雅治さんか? 何じゃこりゃ、もう恥ずかしすぎる。趣味はベランダのサボテンに水やりする事ですとか絶対言えない…

 

「人気者だな? ゼン」

「はぁ…やめてくれエドガー。こういうのには慣れてない」

 

本当に慣れていないのでモウヤメルンダ!!

 

「クク…まあ、良いじゃないか。ところでどうだ、我々と昼食を摂らないか?」

 

ううむ。非常に魅力的な提案ではあるんだけど。皆と仲良くなれるチャンスでもあるし。

しかしですねぇ…

 

「いや、話はありがたいが遠慮しておくとしよう。俺が入ってしまうと話がし辛くなるだろう?」

 

あの良くある『知らない奴が友人とかの傍にいると何か話しづらくなーる現象』が起こるのでは無いかと私は危惧しておるのだよ…! ああいう時ってどうするのが正解なんだろうね。下手に話に交じると空気が読めない奴みたいになるし。

 

「そんな事は無いです! いや、むしろ居た方が話が盛り上がりますよ!」

「どうぞこちらへ!」

「そんな遠慮せずに!」

 

「…との事らしいが?」

「いや、しかしだな」

 

やっぱりそう言うのが苦手な方も中には居るでしょうし―――

 

「へぇ。なら、俺たちも混ぜて貰おうか」

「これまでリンクスと話す機会なんて無かったものでな」

「これを機に色々と話を聞かせて貰いたいものだ」

 

な…ッ! どんどん他グループの人達も集まりだして来てるんですけど。なんだこの状況。

ま、マズイ! 完全に周りを囲まれた…!

 

「さあ…どうする?」

 

いやどうするって、もう答えは実質1つしか無いよね。イカツイ男の人達の囲まれているんですよ? そうで無くとも、こんなに人が集まってきてる以上断るという選択肢は取れませんって。

 

「…分かった。昼食はここで摂るとしよう」

 

その言葉に「オオオ!」と歓声を上げるMT部隊とその他の皆さん。中にはハイタッチかましている人も居るし… うん、まあ、個人的には賑やかな食事の方が好きだし。こういうのもアリかな?

 

おっと、となると渡された端末で今日は昼食持ってこなくても良いって連絡しないと―――

 

 

「ああ、お前さんの昼食については既に連絡済だ」

 

 

……エドガーさん、最初からこうなる事を狙ってましたね!?  


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