Infinite possibility world ~ ver Highschool D×D   作:花極四季

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二年振りだけど、細々と期待された感想が送られていたので投稿。
ぶっちゃけ内容の整合性がどこまで取れているかわかんないけど、精査し過ぎたらまた時間かかりそうだったから、ガバがあっても許して……。


第四十四話

 飄々とした調子と態度に反し、内から漏れる覇気は人間とは思えない程に力強く――邪悪さで満たされていた。

 

「葛葉――キョウジ」

 

「応。お前さんは確か――なんだっけな。小物の名前までいちいち把握なんて出来るかっての」

 

 葛葉の姓を名乗ったこの男。それが偽名でないのであれば、奴は妖怪陣営と深い関わりがある。

 偶然の産物と言うのも否定しきれないが、ここにきてそれはあまりにも歪曲した判断に過ぎる。

 葛葉という姓は、八坂様にとっても特別な意味を持っていることは疑いようもない。

 そんな姓を持つ男が、八坂様の誘拐に加担した一味に居る事実は、今回の事件がかなり根深い問題であることが伺える。

 

「お生憎様、こっちもアンタに名乗る名前なんてないわよ」

 

 負けじと軽口で言い返すが、正直なところ今すぐにでも逃げ出したい。

 相対しているだけでハッキリとわかる実力差。弱者であるが故にその辺りには非常に敏感であり、それが処世術になっていた。

 幾度となくそれに助けられてきた訳だけど、それがこんなにも忌々しいと思ったのは初めてだ。

 多少は強くなることが出来た今でもその感性は大いに役に立つものではあるが、こんな逃げられない状況下で本能が警鐘を鳴らしたところで、悪戯に身体を鈍らせる効果しかない。

 

「……どうして葛葉の姓を持つ者が、八坂様を誘拐なんてしたの?」

 

「はん、時間稼ぎかい?」

 

「そうよ、悪い?」

 

 一瞬、キョウジは目を丸くする。

 

「――ダッ、ハハハハハハハァ!!」

 

 そして、唐突に爆笑を始めた。

 あまりにも唐突で理解の及ばない反応に、軽く思考が停止する。

 今のどこに笑う要素があったのか。何が奴の琴線に触れたのかがまるで理解できない。

 今までに相手にしたことのタイプ。理屈や道理が通用しない、型に嵌らないタイプ。――私が最も苦手なタイプ。

 

「いやぁ、まさかそこまで潔いとは思わなんだ。キッチリ怯えて、それを必死に隠そうとしているようでそうでもない。普通は虚勢を貫くとか、煙に巻くもんだぜ?」

 

「そんなことに意味なんてないもの」

 

 実際、この男に対して如何に舌戦を繰り広げようとも、次の瞬間には一刀に伏せられるぐらいには隔絶した実力差の相手には大して意味などない。

 ましてや、この男に真っ当な道理が通用するとは思えない。何を言ったところで思い通りにならないなら、ノーガード上等で攻めた方がいい。死中に活を求めるという奴だ。

 

「なるほど、面白いお嬢ちゃんだ。その天然の話術の才、人間に生まれていればデビルサマナーの才能があったやもな」

 

「デビル、サマナー?」

 

 聞き慣れない用語に首を傾げる。

 しかし、額面通りに受け取るなら、その言葉の意味はひとつしかない。

 

「知らないか、無理もねぇ。とうに廃れた上にお前達からすれば色々不都合がある存在だからな。その辺りは、名前で察するものがあるだろう?」

 

 デビルサマナー――悪魔召喚師。

 古来より悪魔は、契約によって召喚されることでそれを叶えた代償に魂を奪うとされている。

 近代化に伴い魂以外を代償とするようになりはしたが、根幹にあるのは上位者特有の搾取。代価が釣り合うかどうかの判断は、悪魔側の気持ちひとつでどうとでも変えられる程度のものでしかない。

 デビルサマナーと言う名の通り、それが意味するのは召喚するという行為そのものが役割であるということ。

 従来の悪魔との契約とは決定的に違う何かが、デビルサマナーの召喚にはある。そして、それがキョウジの言う不都合な存在に繋がる。

 だが、これだけではまだ推測に推測を重ねた域を出ない。

 

「知りたいか?随分と顔に出ているぞ」

 

「ええ、是非ともご教授願いたいわ」

 

 キョウジは不敵に笑い、刀をその場に突き立ててそれを背中に預けるようにして座り込む。

 

「――いいだろう、久々に笑わせてもらった礼だ。興が乗っている間はお嬢ちゃんの口車に乗ってやろうじゃないか」

 

 時間稼ぎに付き合うという宣言通り、キョウジはゆっくりと間延びした口調で語り始めた。

 

「デビルサマナーってのは、悪魔と契約して使役する人間のことでな。悪魔と呼んではいるが、そのカテゴリーは天使や妖怪と多岐に渡る。悪魔=自然界の法則に囚われない生物の総称と考えるのがわかりやすいだろう。無論、お嬢ちゃんも俺様に言わせれば悪魔よ。デビルサマナーと契約した悪魔の関係は色々あるが、不文律としてそこには人間側が上位というものがある。どれだけ対等を装うとも、高圧的な態度を崩さなくとも、デビルサマナーとの契約は従来のソレとは決定的に違う要素があるが故に成り立つのさ」

 

「その違いとは、何?」

 

「簡単な話よ。――力さ」

 

「力?」

 

「この世の真理は弱肉強食。人間よりも悪魔側の方がその法則に理解があるんじゃねぇか?召喚者が弱ければ、契約が果たされた瞬間に頭と胴体が二分されていても不思議じゃない。悪魔にとって人間は一種の餌でしかなく、実際にそういったケースは枚挙に暇がない。お嬢ちゃんも聞いたことぐらいはあるだろうよ」

 

 キョウジの言う通り、所謂はぐれ悪魔と呼ばれる奴らはまさにそれに該当する。

 もらうものもらってはいさよならなんて、不義理ではあるが実際自分が上位者であるという自負があるからこそできることであって、それができてしまう時点で契約とは名ばかりであることも納得がいく。

 流石にそれがまかり通ってしまえば、各陣営にとっても不都合な要素だったり風評被害が出てきたりとがある為、指名手配して積極的に討伐と言う名の粛清を行っている訳だが、下級悪魔からすれば悪魔という強者でありながら弱者である人間にこびへつらうような関係が気にくわないと考える者も一定数いるだろうし、近代化してなお弱肉強食という理が成立しているというのも事実である。

 

「聖書の神が消えたことで、それこそ多少は人間側に寄り添うようなスタンスを取り始めたかのように見えるが、根っこは何も変わっちゃあいねぇ。その最たる要素が転生システムよ。悪魔どもが勝手にやり始めた戦争で数が減りました、だから無関係で才能が有りそうな人間を悪魔に転生させて数を増やしましょうってことだぜ?まさしく悪魔に相応しい所業だと思わねぇか?」

 

 キョウジの言葉に、私は何も言い返せなかった。

 しがない下級堕天使でしかない私には、お上の事情なんてハッキリ言って知ったことではない。

 そもそも堕天使陣営は転生システムを採用してはおらず、人間と同様の交わりと天使の墜天によって細々と幹を太くしているという点では、一番人間寄りと言っても過言ではない。

 だけど、零に出逢うまでそのような事実を鑑みることなく人間を等しく下に見ていたことは事実で、だからこそ安易に同調することも出来ない。

 

「結局、奴らは人間のことなんざどうとも思っちゃいねぇのさ。そのロジックの根幹にあるのが、自らが絶対強者であるという立場にこそある。ここまで言えば、デビルサマナーがどれだけ奴らにとって許されない存在ががわかるだろう?」

 

 つい最近、私はそれに類似した答えを聞いていた。

 ルイ・サイファー。あの謎の女が語ったそれと同じ視点をキョウジは持っている。

 しかし、決定的に違うのは彼が紛れもない人間であるということ。

 むしろそれが自然であり、人外側であろうルイ・サイファーが同等の目線で語っていたことこそが、ある意味では異常なのだ。

 

 もしも、人間と私達の地位が逆転ないしは均衡するようになったとして。

 利用される側がされる側に。搾取する側がされる側に。

 立場の逆転と共に、裏に潜んでいた人外達が露出することになれば、密かに行ってきた人間側にとっては悪行と言っても差し支えない数々の行いも露呈することになるだろう。

 その先に待つのは、地獄そのもの。

 下を見れば人間が隷属関係の逆転による暴虐の限りを尽くし、上を見れば互いの種族の存亡を掛けた生存競争に発展することは想像に難くない。

 そこに平和や安定というものは存在せず、どちらかが破滅するまで止まらないだろう。

 人間も人外も、一皮剥けば欲望を肉の塊で包んだだけの同レベルでしかなく、それ故に対立は避けられない。

 最悪の未来を前提としてはいるが、差異はあれども軟着陸するような問題ではないのは疑いようもない。

 

 ――ふと、そこまで想像して。

 そんな事態になってしまった時、私はどの陣営に味方して――零は、誰の為に戦ってくれるのかと。

 過程の未来を想像し、現状妖怪陣営に属している零を――葛葉ライドウを見て、心臓が締め付けられる感覚に襲われた。

 

「もしかすると、デビルサマナーという職業が人間側に広く認知され、個人規模に留まらず種族規模で関係性がひっくり返る未来もあったかもしれないが、もう過ぎたことよ」

 

「……なんで、デビルサマナーは衰退したの?」

 

「その辺りはまぁ、政治的な思惑だったり存在が不都合な奴らによる暗躍だったりと、流石にそれを語るには時間が掛かり過ぎる。ぶっちゃけ面倒だから、想像するなり誰かに聞けばいい。――ああ、それに詳しそうな奴はこっちで攫ってたんだったな」

 

「そう、そうよ!それが気になっていたの。その言葉通りなら、アンタは間違いなく禍の団の一員で、八坂様を攫った関係者ってことよね。なんでそんなことをしたの?」

 

 現状、八坂様の誘拐はあまりにも突飛な出来事でその背景がまるでわからない。

 俗な誘拐目的なら、金銭のような物品的な要求にあたって人質として利用する為と言うのが非常に分かりやすくあるが、果たしてそんな単純な理由の為に陣営のトップを真っ向から誘拐出来る人員を揃えられるだろうか。

 

「そうさなぁ、禍の団とやらには籍を置いてはいるが別に仲間意識がある訳でもなし。全部ゲロっちまってもいいんだが……それもつまらん」

 

 キョウジはおもむろに立ち上がると、刀の切っ先を此方へと突き付けてくる。

 

「一撃だ。一撃耐える度に答えてやる」

 

「――ご褒美タイムは終わりってことかしら?」

 

「これまでがサービスし過ぎなぐらいだからな、趣向を変えるぐらいは良いだろう?」

 

「無論、拒否権は――」

 

「あるぜ。ただ、それはそれとして斬るがな」

 

 そんなの、無いと言っているようなものだ。

 しかし、それも必然。我を通せるほどに彼我の実力差は歴然ともなれば、チャンスがあるだけでも有情と言える。

 私に出来るのは、キョウジの一撃をどう耐え凌ぐかと、奴が気紛れを起こして約束を反故にしないことを祈ることのみ。

 

「安心しろや、手加減はしてやる」

 

 そう宣言した瞬間、密室に向かい風が吹いた。

 反射的にその衝撃をいなすようによろめく。

 それ以外は何も変化していない。――その筈なのに、私の呼吸は徐々に荒くなり、倦怠感が加速度的に押し寄せてくるのだろうか。

 

「紙一重、という奴か。しかし無意識と見える」

 

「なにを、言ってる……の」

 

「無意識とは、自身の危機にさえも鈍感になる。それは慈悲か、或いは欠陥か。どちらにせよままならんものよな」

 

 キョウジの独白を尻目に、私はとうとう膝から崩れ落ちる。

 その衝撃を切っ掛けに、左腕から灼熱の如き痛みが表層化する。

 それ故に、その原因を探るべく視界を左腕に向けるのは当然のこと。

 

「あ、あ、あ――」

 

 口から洩れる単音、そして規則的かつ連続性のある水滴音が左腕の先から聞こえてくる。

 その光景を目の当たりにしたことで、絶望が訪れた。

 

 肘を起点として、私の腕が切断されていた。

 その切断面はあまりにも綺麗で、現象も相まって現実感を喪失させるには充分な光景だった。

 しかし、本能は全力で警鐘を鳴らす。現実逃避の先に待つのは、更なる地獄だと知っているから。

 

「ペルソナァァァアアアアアアアーー!!」

 

 落ちた腕を間髪入れずに拾い上げ、断面図と繋ぎ合わせた状態でパンドラを発現させて『ディアラマ』を唱える。

 しかし、その結果は遅々としたもので、本来の回復速度よりも明らかに劣化している。

 理解不能な現象を前に、混乱は加速する。

 

「ディアラマ、ディアラマッ!なんで、なんで治らないのよっ!!」

 

「そりゃあ、この剣の力だぜ」

 

 こちらの狼狽を尻目に、キョウジは自らの太刀を見せびらかすように此方へと向ける。

 

「この七星剣は、所謂反魔の力を宿していてな。人間相手にはちょっとした剣に過ぎないが、悪魔どもにとってはこれ以上とない猛毒になる。超然とした奴らを下等な人間と同じ領域に叩き落とせる、愉快極まりない剣って訳だ」

 

 激痛と焦燥で解説に思考を裂く余裕がない。

 例えそれが事実であっても、ここで諦められる訳もなく、馬鹿の一つ覚えのように回復呪文を唱え続ける。

 その成果は徐々に表れ、切断面の止血には成功した。だが、結合には至らず私の左腕はただの肉の塊となってしまった。

 魔力の枯渇、出血による体力の減退、肉体の欠損という喪失の三重苦は、しがない下級堕天使でしかない私の心を折るには充分過ぎた。

 

「――随分とあっさり折れたな。俺様の勘も鈍ったか?だがあれは……」

 

 キョウジがぶつぶつと独り言を呟いているが、それに意識を割く余裕はない。

 今の私は、ただ漫然と事態が進むことを待つだけの空虚な塊でしかない。

 恐らく、この結果によってキョウジの私への関心は消えただろう。そうなれば、いつトドメを刺されてもおかしくはない状態だ。

 だけど、私は逃げない。無様な逃走がカッコ悪いとか、そんな安いプライドの問題ではない。

 単純に抵抗は無意味だと嫌でも理解してしまったが故の境地。

 死を間近にしてより洗練されていく思考を以てしても、得られる解答はひとつのみ。

 兵藤一誠ぐらいの馬鹿になれれば、こんな簡単に諦めるようなことはなかったのだろう。

 でも、私は私。アイツが単純馬鹿で今までやってこられたように、私の今はこの小賢しい頭脳によって成り立っているに過ぎない。

 使えるものはすべて使い、弱者なりに小賢しく立ち回ることが処世術。野生のカラスのように残飯漁りで細々と生を繋ぐのが賢明だと、私自身がなによりも理解していた。

 ――零と一緒にいるようになる前までは。

 

 零に命を救われ、同棲するようになって、同じく事件に巻き込まれるようになって、その流れで力を得て――きっと、そこで綻びが生まれたんだと思う。あるいは、最初からか。

 今の私は、徹頭徹尾が有斗零という個人によって成り立っている腰巾着でしかない。

 命も、境遇も、力もなにもかもが、彼によって与えられたものに過ぎないのに。

 どんなに自制していたつもりでも、順応と共に心は緩んでいく。

 特別が日常になってしまった時点で、この末路は必然だったんだ。

 

「……お得意の意地っ張りもどうやらここまでのようだな。それじゃあ、幕といこうか」

 

 鋭敏になった聴覚が、七星剣を振り上げる音を拾い上げる。

 さながら断頭台の如きそれを、後悔と共に両断される瞬間を待つ。

 一秒か、一分か、あるいは一時間か。永遠にも等しい須臾に終止符が打たれる。

 

 まず破壊音が聞こえた。

 静寂を瞬く間に塗り替えた乾いた轟音と同時に、それを突き破るように鋭くけたたましい音が私のすぐ傍を通り抜け、断頭台を諸共に吹き飛ばした。

 

「――なん、で」

 

 それは、何に対しての疑問だったのか。

 この突拍子もない展開に対してか、それとも――それを引き起こした張本人がこの場に居る理由に対してか。

 だってそうだろう。彼は私達を見て、再会を喜ぶ訳でもなければ再び肩を並べる道を選ぶことはなかった。

 記憶喪失なのか、果たして本当にただの別人なのか。どちらにせよ、彼の立場と目的達成の条件を思えば、彼がこの場に現れる理由などある筈がないのだ。

 だからこそ出た疑問。初めから切り捨てていた選択肢が文字通り背後から現れた現実は、理屈や道理を主体とした思考では理解の及ばないものであった。

 

「下がっていろ」

 

 一歩前へ踏み出し、私を庇うように立つ背中。

 見慣れない姿、しかし見慣れた光景。今まで何度もこの背中に私は救われてきた。

 どんなに成長しようとも、未だ私は護られるだけの立場でしかない。その事実に直面し、か細い涙が流れる。

 悔しい。悔しくて悔しくて堪らないのに――心はどうしてこうも歓喜に震えているのか。

 

 絶望の闇に差し込んだ、黒すら白に染めるほどの光。

 それは、納得と諦観という抑揚のない因果関係を紐解いた果ての、抗うことを許さない圧倒的な現実を塗り替えるほどに鮮烈で、だからこそ死に体だった心を蘇生させるには充分すぎるものだった。

 

「レ、イ……」

 

 思わず零れるのは、かつて否定された名。

 それでも、脳裏にフラッシュバックするかつての類似した光景を前にして、呟かずにはいられなかった。

 

「――テメェが八坂が選んだ外様のライドウか」

 

 土煙を巻いて悠然と姿を現すキョウジ。

 あれ程の衝撃を受けて、傷一つついていない事実に戦慄する。

 

「葛葉の名を掘り起こしてまで部外者に襲名させたと聞いた時は、奴らも外聞もなく外道を極めたかと失望したが……なるほど」

 

 値踏みするようにライドウを観察するキョウジ。

 そんな状況を前に、静かに帯刀していた刀を抜くライドウ。

 ライドウは言わずもがな、キョウジも一見して余裕綽々と言った様子だが、その視線からは一切の油断は見られない。

 

「んじゃあ、先輩として名乗っておくか。俺は――」

 

「どうでもいい」

 

 キョウジの言葉を、重みのある一言で切り捨てる。

 

「貴様が何者だろうと、何を目的にしているかなど、一切合切興味がない」

 

 ライドウが左腕を勢いよく振り上げ、マントを翻す。

 露出したマントの下には、無数の試験官のような棒がベルトに差し込まれており、その中の三本を器用に左指で挟みこんで取り出したかと思うと、ゆっくりと試験官の蓋が開き緑色の光が現れる。

 閃光と共に、緑色の光が試験官から飛び出し、ひとつは私の隣に、残りの二つはライドウを左右から護るようにその姿を現す。

 

「スサノオ、フツヌシ、クー・フーリン……!!」

 

 その存在は、ペルソナ全書を見て把握していた。

 召喚は出来ないまでも、レイの持つペルソナは余すところなく記されていた為、その性質や能力は把握していた。

 ペルソナは集合的無意識によってその存在は形作られる。ワイルドのペルソナ使いが使用するペルソナは、自身が持つ唯一のペルソナ以外はその集合的無意識から顕現されるものであり、その姿形が変わることはまず有り得ないと、ペルソナ全書を取得した初期のころにレイから聞いてる。

 ペルソナの召喚方法とは明らかに異なり、しかしライドウが召喚したそれらはペルソナ全書に登録されていたものと全く一緒の姿形をしている。

 確かに、集合的無意識の産物だとすれば、ライドウとレイが同一人物であるという証拠としては決定的なもの足り得ないだろう。

 だけど、使用者が瓜二つどころか紛れもなく同一人物で、同じような能力を行使して、果たしてこれで別人であるなどと言えるのか。

 

「貴様を――斬る」

 

 その言葉と共にライドウから膨れ上がる殺意に等しい圧力。

 それが恐ろしくもあり、その殺意がもしかしたら私を想ってのものだとすれば、それだけで恐怖が喜びへと変わる。

 

「だしゃあ……いい度胸じゃねぇか。いいぜ、来いよ。新参者に格の違いを見せつけてやる」

 

 両者が武器を構え、静寂が場を支配する。

 息遣いさえもハッキリと聞こえるぐらいの静寂の中、二人の呼吸が重なった瞬間――剣戟の音が重なり合うと共に、戦いの火蓋が切って落とされた。

 




バイオミュータントまだかなー。ギルティギアストライヴも楽しみだしで、ウマ娘も楽しいしで、こんなだから小説蔑ろにするんだよなぁ……。分かってても止められない。

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