Infinite possibility world ~ ver Highschool D×D   作:花極四季

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魂の咆哮から一年と半分越しにアストルフォきゅんがうちのカルデアにお出迎えされた記念に、さっくりと制作。最初からやれ(迫真)
投稿するならFGOの方じゃないかって?……気にするな!

なお、文字通りさっくりなので描写安定してなかったり矛盾あったりするかも。


第三十九話

静謐さの中に渦巻く緊張の波が、三十畳程ある和室内に波及している。

妖怪も、悪魔も、戦乙女も。誰も彼もが、内に緊張感を宿し向かい合っている。

 

狐の少女――九重に言われるがままに付いてきた一誠達は、指定された通り妖怪の本拠地、その離れに案内された。

当然ではあるが、その監視の目足るや針の筵と言うほか無い。

九重曰く、母親を攫ったのが一誠達であるという疑惑もさることながら、不法侵入という余罪も含まれているともなれば、当然の対応である。

 

「……ふむ、なるほどのう」

 

簡易的な高座にて、脇息に肘掛け頬杖を付く九重。

傍らには、刀を畳に置き正座をしているライドウと、その膝にて丸くなっているゴウトがいる。

一誠達は十メートルは離れた距離から九重と対面しており、その中間程の位置、両者の視界に収まらない程度に距離を離してロスヴァイセが座っている。

 

直接この場にはいないが、相変わらず一誠達への監視が途絶える様子はない。

寧ろ一層視線の数が増えたと言っても良い。

必要措置とは言え、一誠達からすれば半分は冤罪であることはハッキリしている以上、その過剰なまでの罪人扱いは不機嫌を煽るだけに留まらない。

この監視は九重の指示によるものではなさそうだが、だからと言ってそれを咎める様子もない九重に罪がないとは言えない。

 

そんな一触即発の空気の中、話し合いは始まった。

 

「して、一誠とやら。お主らが母上を攫っていないという発言、真なるか?」

 

「ああ。そもそも、俺達はお前のカーチャンなんて顔も名前も知らないし、攫う動機がない」

 

「ならば、お主らは何故に京都に訪れた」

 

「……修学旅行だよ。俺達、悪魔やってるけど人間界じゃ一介の高校生だから、行事として行われれば参加するのが普通だろ。このフリーパスが、一応証拠になると思うけど」

 

一誠は自分のフリーパスをポケットから出すと、妖怪の術か何かでフリーパスを手繰り寄せられ、九重の手元へと収まる。

 

「ふむ、偽装の手入れは確認出来んな」

 

「このフリーパスって、正式に認可されることでしか発行されない代物なんだろ?それが本物だって分かれば、少しは疑念は晴れると思うけど」

 

「……そうさな。しかし、主らがこの土地に足を踏み入れたのは何かしらの目的があってのことだろう?そうでなくては、火事場泥棒よろしく裏口からの侵入なんてする理由があるまい」

 

「それは――」

 

「まぁ、理由も大凡理解している。ライドウのことだろう?」

 

その問い掛けに、ライドウの閉じていた瞳がゆっくりと開かれる。

双眸から向けられる視線の色は透明。感情の乗らない、ただ映るだけの硝子玉のように淀み無い視線。

 

有斗零も無表情ではあったが、無感動であるかと言われればそうではない。

分かりにくいなりに、彼には喜怒哀楽が確かに存在していた。

対して、そんな彼と瓜二つなライドウは、まるで此方に対して人間らしい感情を抱く気配が無い。

別人だと言われれば納得してしまう程度には、記憶に残る姿とは程遠く、それが何よりも恐ろしく感じる。

そうか。これが、ミッテルトの抱いていた感情なんだと。

知人に瓜二つの相手から硝子玉のような瞳で見られることが、こんなにも心を掻き乱すなんて思いもよらなかった。

 

本当に別人であれば、それでいい。不安も解消され、憂いなく割り切ることが出来る。

だが、その希望は次の九重の言葉によって容易く断ち切られる。

 

「――まぁ、隠すことでもあるまい」

 

九重は横目にライドウ――いや、ゴウトと呼ばれていた黒猫と視線を重ねる。

ゴウトは小さく頷くと、九重も同じく頷き、一呼吸置いて此方へと視線を元に戻した。

 

「まず、ライドウだが――此奴の素性はハッキリ言ってしまえば、知らん」

 

「……はぁ?」

 

その解答に、思わず素っ頓狂な声を上げる。

後ろに控えている二人も、程度の差こそあれど同じ感想を抱いているだろう。

何せ、側仕えに置いている相手の素性を知らんと切って捨てるなんて、誰が想像できる?

思惑あってのことなのかもしれないが、九重が相当な傾奇者であることは間違いないだろう。

 

「何から話せば良いか、ライドウとゴウトと会ったのは一ヶ月程前のことだ。余は本家の庭先を散歩していた所で、日課でやっている鯉の餌やりにでも勤しもうと向かった先に、その池に浸かっていたライドウを発見したのじゃ。ゴウトはそんなライドウを必死に岸に上げようと、その小さな口で引っ張り上げようとしていたな」

 

「小さな姿でって……姉さん?」

 

小猫の小さな呟きに、ゴウトは僅かに耳を反応させるも、それ以上の動きはない。

 

ゴウトの正体を確信している小猫にとって、彼女の行動は不自然極まりなかった。

何故、人型にならずに救助しようとしていたのか。

今もそうだ。一向に猫の状態から姿を変えようとしない。

自分の前で姿を晒したくないのならば、それもいいだろう。

だけど、彼を助けようとしたにも関わらず不利な姿を維持していた理由は何なのか。

聞いている通りならば、ちぐはぐにも程がある行動。何か理由があるとしか考えられない。

 

「余は誰の応援も呼ばず、自力でライドウを引っ張り上げ、あろうことか秘密裏に使われていない納屋に匿った。……自分でも、何故そのような愚行を起こしたのか分からぬ。それでも、それが間違いで無かったことは今の姿が証明しておる」

 

改めて、九重とライドウを観察する。

一ヶ月という僅かな期間。その間にどれだけ密な関わりがあったのかは定かではないが、それでもやんごとなき身分の側仕えとなるなんて、普通じゃ考えられない。

だが、遠巻きに眺めているだけで分かる、二人の間を繋ぐ信頼が、それを成し遂げたのだと言うことだけは、ハッキリと伝わった。

 

……ミッテルトがこの場に居なくてよかったと、心から思う。

こんな――まるで生まれた時からずっと共に過ごしてきたかのように自然体な在り方を見せつけられてしまえば、どうなってしまうのか。

唯でさえ不安定な精神が、いつ決壊しても不思議ではない。

 

「三日。余は見回りの者や母上の目を掻い潜って、ライドウの看病をした。酷くうなされ、三日の間一度とて目を覚ます様子はなかった。看病とて、そんな事をした経験は一度もなく、だからとて誰かに聞けばそこから端を発して不審を持たれる可能性があった故、兎に角手探りだったのう。汗を拭くぐらいならどうにでもなったが、流石に濡れた服を着替えさせるのは骨だった」

 

「……ん?」

 

一誠は首を捻る。

ちょっと待って欲しい。今、着替えさせたと申したか。

見た目幼女な子供が、身の丈二倍近くある男を。

装飾を抜いて言えば、女が男の裸を見た、と。

 

「なんじゃ、赤龍帝。間抜け面なんかしてからに」

 

「いや……つまり、貴方はせんぱ――ライドウさんの裸を見た、と」

 

「如何にもその通りじゃが、何か問題が?」

 

「いや、医療措置だからやましいことは無かったのは分かるんだけど、本人がいるのにそういうこと言うのは……」

 

恐る恐る、ライドウを横目に見やる。

しかし、ライドウは一切の動揺を見せることなく正座を維持している。

こういうことで一切動揺しないのは、零先輩と似ているようでやはり違う。

部長や姫島先輩にからかわれている姿を見たことがあるが、感情の起伏は少ないながらも、多少の動揺はあった。

とは言え、そのやり取りは部長達に依存し、先輩自身に変化があった訳ではない。部長達がボディランゲージで先輩を誘惑するとかいうマジで羨ましい状況ではあったが、先輩はそれをあしらうだけ。

同じセクハラされる、という状況でも反応は大分違う。真面目な場だから、という可能性もあるから、一概に別人と決めつけることは出来ないが、判断材料にはなる。

 

「まぁ、無駄な部分ではあったな。しかし、ふんどしを履かせるなど初めての行為故、慣れない体験をさせてもらったという点では感謝だな」

 

「……ぱーどぅん?」

 

「なんじゃその珍妙な言葉は。日本語を話せ日本語を」

 

「だって、ふんどしって、下着……えぇ……」

 

そういうことは、だ。

見た、というのか。アレを。

男の象徴、そして格を決めつける一本の剣を。

そしてその事実を、公衆の面前で告げたというのか。

 

「はうう……」

 

「……」

 

アーシア達も察したのか、顔を真赤にさせている。

 

「初よな、お主らは。別段気にすることもあるまい、なぁ、ライドウよ」

 

「然り。この身は衆目に曝け出すことを憚るような粗削りに非ず。九重が望むのであれば、この衣服の一切を脱ぎ去り、大衆の前にて身ひとつになることも辞さない覚悟」

 

「なっ――」

 

大真面目に、遊びの無いトーンで。ライドウは、言ってのけた。

不覚にも――その良くわからない男らしさに、感動している自分が居た。

 

「そんなことはせぬわ、戯け。……とまぁ、余としても予想外だったのが、この忠誠心よ。確かに看病したりその後の安全の保証から何やらまで色々根回しをしたのは余だが、それにしたって行き過ぎているきらいがある。余としては、もう少し壁のない関係を望んでいるのだがな」

 

「はぁ……。取り敢えず、流れで色々と端折られて説明されたが、つまりは『ある日突然現れた記憶喪失の青年と黒猫をライドウ、ゴウトと名付けなんやかんやあって今に至る』って認識で良いのか?」

 

「そうだ。別段、過程は重要ではない。今重要なのは、お前さんが言う知り合いとライドウが同一人物であるかどうかの確認だろう?」

 

「ああ。それで、どうなんだ?」

 

「どうも何も、余はその件に関しては半ば部外者よ。側仕えに置いてはいるが、邂逅以前の人となりに関しては一切関与していない故な。知りたいというのならば勝手に調べれば良い。ただし――」

 

「ただし?」

 

「許可を取るならば、ゴウトの許可を取れ。奴が良いと言うのであれば、此方としても否とは言わぬ」

 

九重の言葉で、視線が一斉にゴウトへと向けられる。

煩わしそうに毛繕いを軽くこなした後、ゴウトはおもむろに部屋から出ていく。

小猫の横を通り過ぎる瞬間にも、ゴウトは此方に視線を合わせることはなかった。

明確な拒絶の意思。その真意はどこにあるのか。

その後姿に付いていけば、自分達の知らないここで起こった一ヶ月の空白を埋める情報と共に答えは得られるだろう。

 

「……そら、何を呆けておる。話は済んだ。後は当事者で自由にやるがいい。だが、会話は私有地の中でな。目の届かぬ所で身内を害されるなんてあってはならぬからな」

 

「――あの人は、貴方の身内ではありません!!」

 

小猫は、あらん限りの言霊を以て堰き止めていた感情を吐き出した。

しん、と静まり返る空間に、呼吸を微かに荒げた小猫の吐息の音だけが響く。

 

間違える筈もない。この世界で唯一人残された身内。

何年も離れ離れになっていても、ただの一度で正体を看破したのはお互い様である筈なのに。

まるで赤の他人のように振る舞う、ゴウトと呼ばれた姉への感情が、小猫の中に残っていた絆さえ断ち切らんとした一声を以て、遂に爆発したのだ。

 

「……それを言うべきは、余ではなかろう」

 

「――――ッ」

 

「お前達の仲が何なのか詮索するつもりはない。ゴウトも身の上を頑なに話さなかった故、な」

 

「ライドウさんはともかく、そうではない彼女さえも何の制限なく匿い、あまつさえ身内だと言うのですか」

 

「何者かは知らん、が――同じ日の本に生まれた(あやかし)であることは分かる。ならば、同胞(はらから)も同然よ」

 

「……それが、例え悪の道に逸れた者であろうと?」

 

「然り」

 

九重の迷いの無い、澄んだ瞳を前に小猫は気圧される。

自身よりも圧倒的に幼いであろう少女に、心で負けている。

その迷いの無い回答が、まるで自分との差――姉への理解、信頼を決定付けているようで、悔しかった。

千々に乱れていく心を必死に押し留めるばかりで、二の句が告げない。

このままでは、何もかもを失ってしまいそうで。

姉と自分を繋ぐ最後の一線が、侵されてしまいそう、で――

 

「小猫ちゃんっ!!」

 

一誠に乱暴に両肩を掴まれ、その衝撃で視線が合う。

 

「……落ち着くんだ。どんな理由があっても、お姉さんは君を見捨てる訳がない。絶対だ」

 

「……そんな保証なんて」

 

「分かる。だって、姉妹って、家族ってのは、そういうもんだって分かるから」

 

諭すような優しい声色を前に、緊張状態だった小猫の身体が急に弛緩していき、畳に尻餅をついた。

 

「やれやれ、赤の他人である筈の余の言葉に動揺しているようでは、ゴウトがもしとんでもない事を言いだして耐えられるのやら」

 

「そんな言い方――」

 

「やはり、貴様らでは駄目だな。責任者を呼んで来い」

 

「責任者って……」

 

「アザゼル先生のこと、ですよね」

 

「ロスヴァイセ殿は中立を明言している以上、それ以外に頼む他あるまい。少なくとも、偶然居合わせた程度で何も知らない手合に話した所で徒労に終わるだけよ。此方としては、母上誘拐の下手人で無いことさえ分かれば、後は貴様らを相手にする理由など無いからな」

 

どこまでも冷酷に告げられる拒絶の言葉は、刃となって深々と三者へと突き刺さる。

耐えに耐えた一誠だが、そろそろ限界だ。

言っていることは正しいかもしれない。だからといって、ここまでこき下ろされる謂れはない。

アーシアは不安がり、小猫は今にも泣きそうだ。

相手が誰であれ、黙っていられる程一誠は大人ではない。

 

「いい加減に――」

 

咆哮が口火を切ろうとした瞬間、空気を割るような軽快な音が響いた。

気付けば、ライドウの手にはハリセンが握られており、九重の頭上から振り下ろしたような姿勢で固まっていた。

数秒の間を置いて、九重が震え出す。その目尻に涙を添えて。

 

「何をするのじゃ!!」

 

「何とは?」

 

私」()を叩いた理由じゃ!痛かったのじゃ!」

 

「痛くなければ覚えませぬ」

 

九重は先程までの威圧感を放り投げ、見た目相応の全身で表す癇癪でライドウに抗議している。

対して、ライドウはハリセンの扇子部分をポンポンと手の中で遊ばせつつ、悪戯を叱る父親のような視線を九重に向けている。

 

「九重。毎度のことだが、君には大恩がある。しかし、側仕えとなった以上、主の至らぬ点を諌めるのも努め故、心を鬼にした次第」

 

「諌めると言った割に、手加減が無い!このままではいつか禿げてしまうぞ!」

 

「自身の頭皮を心配する前に、言うべきことがあるのではないか?」

 

「な、何じゃ」

 

「言い過ぎた、と思っているんだろう。なら、どうすればいいか分かる筈」

 

「し、しかし!母上の居ない今、そんな情けない姿を晒すなんてあってはならぬ!」

 

……なんとなく、分かってしまった。

母上と呼ばれる人がおらず、立場のある人物が不在となった屋敷で、最も次に権力を持っていたのが、まだ幼い九重だったのだろう。

他に大人は居ないのか、とは思ったが、それぐらい母親の権威が強いのかもしれない。それこそ、この屋敷のトップに留まらないレベルの。

そんな母親が拉致され、自分がこの屋敷を支えるしか無いと使命感に駆られ、幼い体躯に見合わない威厳を乗せていたのではないか。

 

思えば、先程九重は自分の事を「私」と呼んでいた。

それが咄嗟に出てきた彼女の素の反応だと思えば、今の年相応なやり取りにも納得がいく。

それを鑑みれば、先程までの怒りも一気に萎えていくというもの。

 

それともう一つ。

ライドウが握っているハリセン。アレは、部長や朱乃さんが有斗先輩をからかったりした時によく使われる道具であると、二人の口から聞いている。

記憶を失っている、失踪中の零先輩と全く同じ顔を持つ青年の、何気ない行動。

余りにも些細で、気に留めるにも状況証拠としても弱い変化。

だけど、どうしてか。ライドウが先輩であるという希望的観測を抜きにしても、それが全くの偶然とは何故か思えなかった。

 

「九重」

 

「うっ……」

 

九重に合わせるようにしゃがみ込み、ジッとその目を見つめるライドウ。

主従という立場を思い起こさせないやり取りも、種族・立場関係なく謙る(へりくだ)ことなく己を貫いた彼の姿を想起させる。

 

「す、済まなかったのじゃ」

 

一誠達と正面に向き合い、深々と一礼する。

堂に入った所作は、本人の誠意を如実に体現している。

 

「小猫ちゃん」

 

「……いえ、私も申し訳ありません。この程度のことで動揺するなんて。戦車にあるまじき所業でした」

 

「それだけお姉さんのことが大事なんだろう?きっと、伝わるさ」

 

「そうですよ。塔城さんがお姉さんがどれだけ好きなのか、如何にお姉さん相手でも否定させません」

 

「ありがとうございます、二人共」

 

励ましを受けた小猫に、笑顔が戻る。

彼女を知らぬ身からすれば僅かな差異でも、艱難辛苦を共にしてきた二人からすれば、その笑顔は今まで見たことの無い程に無邪気で、穏やかだった。

 

「……ゴウトの事は、俺もよく知らない。記憶を失う以前の知り合いであることはなんとなく理解しているが、彼女は自分の事を何も話さない。敢えて、避けている節がある」

 

突如、ライドウが静かに語りだす。

彼と出会い、彼自身の意思で向けられた初めての言葉。

三人は、その言葉を一字一句聞き逃さないよう、静かに耳を傾ける。

 

「だが、これだけは言える。彼女は自己保身の為にそんな事をしている訳ではないと。根拠も何もない、戯言に聞こえるかもしれないが――俺は、そう確信している」

 

「ライドウ、さん……」

 

……やっぱり、そうだ。

零も、こうやって善性を以て誰かの心にするりと入り込んでいく。

信じているんだ。故も知らぬ相手であろうとも、何も語ろうとしない謎の多い相手であろうとも、そこに悪意が無ければ手を取り合えると。

即ち、人と人を結ぶ絆を。

 

「行ってやれ。彼女も君を待っている」

 

「……はい!」

 

ライドウに背中を押され、小猫は一礼して退出していく。

慌ててそれを追い掛けるアーシア。

一誠もそれに続こうと襖の前まで進むが、振り返ってライドウに向かって叫ぶ。

 

「アンタはもしかしたら、俺達の知る大切な人なのかもしれない。今は断言出来ないけど――もしそうだとするなら、これだけは忘れないで欲しい。俺達も、待っているってことを」

 

全てを言い終え、一誠は直ぐ様二人の後を追う。

一誠の言葉を心の中で反芻するライドウと、そんな彼を不安げに見上げる九重。

 

「此度の騒動、短い期間ながらも同じ京都にて活動する間柄故、他人事にはございません。此方も代表であるアザゼル教諭をお連れし、再び会席の場を設けて頂きたいのです」

 

今まで無言で場を見守っていたロスヴァイセが口を開く。

 

「……分かったのじゃ。三陣営による和平成立は聞き及んでおる。その立役者であるアザゼル殿ともなれば、敵ということもあるまい」

 

「柔軟な判断に最大限の礼を。それでは」

 

静かに、彼女もまた退散していく。

残された二人は、音の無い世界で立ち尽くす。

それぞれ、言いようのない焦燥感を胸に秘めながら。

 

 




Q:不審人物平然と匿うとか、お前んち(九重一家)セキュリティガバガバじゃねぇか。
A:そのガバプレイの理由は、語られなかった過程にあるかもしれない。

Q:ライドウがめだかちゃんみたいなこと言ってる……。
A:最近出番のない零君も(他人から見たら)少し天然入ってるから、多少はね?

Q:イッセーのイケメン度の上昇がヤバイ。
A:おっぱい言ってないイッセーはイッセーじゃないけど、熱血系主人公としては評価高いし、素質はあるよ。

Q:アストルフォいいよね……
A:いい……

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