Infinite possibility world ~ ver Highschool D×D   作:花極四季

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評価が7代から落ちて結構凹んでるなう。


第二十話

僕――いや、僕達は現在、大変な問題に直面している。

はっきり言って、自分達の力ではどうにもならない程、追い詰められていると言っても良い。

眼前の資料に向けて視線を落とし、その内容を一字一句見逃す読み返す。

そこに、原因は綴られていた。

 

「参観日、か――」

 

親が子供の授業風景を眺め、教師との交流を図る名目で執り行われる、学校行事のひとつである。

それが、明日行われようとしている。

そう、親である。

当たり前だが、僕には親はいない。いや、設定上はいるんだけど、この場に居ないのであれば似たようなものだ。

そして、それはミッテルトにゼノヴィアも然りだ。

何でこんな無駄にリアルなことしてるの?と思わなくもないが、逆にリアルさを追求するなら至極当然な流れとも言える。

親が居ないなら居ないでいいんじゃないの?と思わなくもないけど、ならば連絡のひとつでもしないといけない訳で。

連絡さえつかないともなれば、それはそれで問題だ。色々と追求されたら対処できない。

 

「いっそのこと開き直ればいいんじゃない?別に親が参加出来ないからって死ぬ訳じゃないんだし」

 

「まぁ、そうかもしれんが……」

 

「こういった催しでは、親の参加は義務ではないのだろう?気にするようなことではないと思うが」

 

ミッテルトとゼノヴィアの意見も尤もだ。

だけど、こういうのって真面目に考えちゃう性質なんだよねぇ……。

とはいえ、僕以外にもそういう立場の人も普通にいるだろうし、深く考える必要はないのかもしれない。そう結論づけようとした時、渋みのある男の声が部屋の中を木霊した。

 

「その悩み、俺が解決してやってもいいぜ?」

 

「誰だ!!」

 

ゼノヴィアが身構える。

対して、ミッテルトは何処か信じられないといった表情で虚空を見上げる。

 

「そう警戒すんな。別に怪しいもんじゃねぇよ」

 

そんな言葉と共に、声の主は姿を現した。

無精髭の似合うニヒルガイな風貌を持ち、格好も何処かホストを想起させる。

はっきり言おう。僕が理想とするダンディなイケメンがそこにはいた。

 

「初めましてだな。俺はアザゼル。堕天使で《神の子を見張る者》の総督なんてもんをやらされている」

 

気さくに挨拶をするアザゼルを名乗るダンディ。

おいおい、アザゼルって言ったらルシファーレベルのお偉いさんじゃないか。

 

「アザゼル――様」

 

興味深げにアザゼルの姿を眺めていると、震えた声でミッテルトが彼の名を呼ぶ。

心なしか、身体さえも震えているような気がする。

リアスから聞いたことがあるが、確かアザゼルは堕天使のトップらしく、それならば彼女が負い目か何かを感じるのも無理はない。

ゼノヴィアも、襲いかかろうとはせずとも、訝しげな視線を向けることを止めない。

しかし、それとは対照的に、アザゼルの様子は気さくなままだ。

 

「よう。っつっても、俺はお前のことはあんまり知らないんだがな」

 

「そ、それは当たり前です。私のような末端の者が、アザゼル様に覚えてもらうなど、畏れ多いことです」

 

「おいおい、様付けなんてよしてくれよ。今じゃ俺とお前は上司と部下の関係でもないんだからよ」

 

後頭部を掻き、バツの悪そうにそう答える。

 

「し、しかし――」

 

「いいんだよ。堕天使なんざ欲望の為に堕ちた存在なんだから、やりたいことやろうが俺が咎める理由にはなんねぇよ。まぁ、レイナーレの奴はちぃとやり過ぎたがな」

 

アザゼルの言葉に、ミッテルトは押し黙る。

お偉方が彼女を咎めないと言うのであれば、僕達がどうこう言う余地はない。

 

「シェムハザの前でそんなこと言ったら小言言われちまうが、堕天使っつったって個々の性質は違う十把一絡げな、いたって普通の生物だ。堕天したってことは規律やしがらみから解放されたいと強く願って、行動したからだろ?俺だって似たようなクチだからな。だから俺はお前が好きに生きたいならそれを追うことはしねぇし、引き留めるつもりもねぇ。だから、うじうじするな」

 

がしがし、とミッテルトの頭を強く撫でるアザゼル。

その構図は、まるで一方的に父親との距離を測りかねている娘とのやり取りのようで、少しほっこりした。

 

「――で、堕天使の総督ともあろう位の高い者が、何故ここに?」

 

空気が読めてるんだかそうでないんだか、ゼノヴィアがアザゼルへとそう切り出す。

 

「あーそうだな、その辺りの事情はとっくにサーゼクスの野郎から聞いていると思ってたんだが。俺に限った話じゃなくて、悪魔、天使、堕天使のトップがもうすぐ駒王学園に集まるんだよ」

 

「なっ――ということは、ミカエル様も」

 

「そういうこった。お前達が神の不在を知っていることは、ヴァーリから聞いているから、面倒が無くて助かるぜ」

 

「ヴァーリ?」

 

「アイツ名乗ってないのか……。アレだ、白龍皇だ。今頃は赤龍帝に顔出しでもしている頃だろうさ」

 

あの人、ヴァーリっていうのか。

兵藤のライバルって認識しかしてなかった。

 

「奴か……。それに兵藤と接触するだと?再び争いでも起こすつもりか?」

 

「んなことしねーよ。むしろその逆だ。俺がここに来た理由も、そのついでみたいなもんだ」

 

「ついで、か。では、そのついでの内容を聞かせてもらおうか」

 

そろそろ本題に入ってもらわないと困るので、会話に割って入って本題を催促する。

 

「やっと喋ったな色男。んじゃあ話すが、お前駒王学園の参観日に親が不在って事実が気にくわないんだろう?だから、俺が保護者代理人として立候補してやっても良いってことさ」

 

「……何のために?」

 

「何となくだよ。っつっても納得しちゃくれないだろうから、俺にとってもそれが必要だからってことにしとけ」

 

僕はともかく、ゼノヴィアはその答えに猜疑心を抱いている様子。

まぁ、ぽっと出の凄い人がいきなりそんなちゃちなことの為に出張ってくれるだなんて、裏があると勘ぐっても不思議じゃない。

 

「だいたい、お前らを姦計に掛けたいって言うなら、もっと疑われないようにやる。そもそも恒久的和平を結ぶ為の会談だってのに、事前にそんなことすれば真っ先に疑われる立場になるってのに、そんなことするかよ」

 

「確かに、そうかもしれんが……」

 

「別にいいんじゃないか。怪しいと思う気持ちは分かるが、私には彼から邪気を感じられない」

 

純粋な好意から来るものかはともかく、こっちの悪いようにはならないと直感が告げていた。

 

「そうだぜ~もっと信用してくれよ~」

 

アザゼルはそう言って肩をすくめる。

おどけた風に言うものだから、ゼノヴィアの瞳がより鋭くなっていく。

 

「……まぁいい。零がそう言うのであれば、これ以上とやかく言うのはやめてやる」

 

「ソイツはありがたいね」

 

まだギクシャクしているけど、何とか場は収まったようだ。

 

「それよりも、アザゼルはこちらのことをある程度把握している口ぶりだったが、それも白龍皇の入れ知恵か?」

 

「ちげーよ。レイナーレの件から、ずっとお前らの情報は逐一耳に入れていた。何せ人間が堕天使と駆け落ちするだけに留まらず、その人間の方が数々の功績を挙げてきたんだぜ?注目しない方が無理ってもんさ」

 

「駆け落っ……!!」

 

ミッテルトがアザゼルの例えに顔を手で覆い隠し悶えている。純情ですね。

 

「私は大したことをしたつもりはない」

 

「そうは言うがな?人間が堕天使の幹部を一方的にボコるなんざ、前例のない偉業だ。注目するなって言う方が無茶ってもんだ」

 

「その偉業とやらも、リアス達の助けがあってこそだ」

 

「謙虚だねぇ。ま、別にお前の解釈はどうでもいいがな。ともかく、何にしたって成し遂げたことに変わりはねぇ以上、世界はお前を放っておかねぇ。イヤでも注目されるだろうよ」

 

え、何それは……ドン引きです。

凄いってのは薄々気付いていたよ?でも、そんな大事になるほど?

ソロでどうにかしたとかならいざ知らず、僕なんて漁夫の利を得ただけに過ぎない。

誇張されて情報が行き届いているのは確定的に明らかだった。

 

「俺としては結構感謝してるんだぜ?ヴァーリの奴が最終的にはどうにかしただろうが、結果論に過ぎない。お前がやってくれたなら、お前に感謝するのは当然だ。そうだ、その恩返しも兼ねての同伴ってことでいいんじゃねぇか?」

 

「そこまで念押しせずとも、嫌とは一言も言っていない」

 

「それもそうだな」

 

確かにここまで善意を強要するとなると、疑ってしまうのも無理はない。普通なら引き下がる頃合いだしね。

まぁ、その辺りの理由は彼が底抜けの善人だから、と言う理由で納得しようじゃないか。

 

「んじゃ、今日は顔見せ程度に来ただけだから、そろそろ帰らせてもらうわ」

 

「そうか……では、明日また」

 

一言挨拶を済ませ、アザゼルは退散した。

嵐のような人だったなぁ。

 

「…………」

 

ふと、影の差した表情で下を向くミッテルトが目に入る。

 

「どうした?」

 

「あ、いや、何でもないわ」

 

取り繕うように両手をばたばたさせる。

怪しい、と思う反面、あまり追求しても可哀想だという倫理観が揺さぶられる。

 

「……零、あまりあの男に心を許さない方がいい。何を考えているのか分からん」

 

「そうだな……」

 

ゼノヴィアの進言に、頷きで肯定する。

お堅い性格の彼女だから、否定から会話を始めても意見の押し付け合いにしかならないだろう。

だから、適当に煙に巻いておかないと、いつまでもこの話題で語り合う羽目になってしまう。

とはいえ、彼女の言葉を全面的に否定している訳ではない。

権力者の腹の底が見えないなんて、良くある話だ。

何を目的に接触してきたかは定かではないけど、現状敵ではないことは確かだし、和平会談が真実ならば、これからも敵には成り得ないだろう。

 

「和平会談、か――」

 

「何か思うところでもあるのか?」

 

「いや、そう簡単に事が運ぶとはどうしても思えなくてな」

 

こういう時、全く異なる勢力が妨害を始めるなんて展開は良くある話だ。

ましてやこういう世界だ。リアル以上にその辺りの流れはシビアになっていると考えていいだろう。

ふと、窓を介して塀の上に座る黒猫の姿が目に入る。

その瞬間、黒猫はどこともなく去っていった。

あの猫、前に見たのとそっくりだった。もしかして同じ奴かな。

 

「それは彼らも予想していることだろう。私達が気にしたところで詮無きことだ」

 

「そうかもしれんが、そうなった場合駒王学園が襲撃される形になるのは想像に難くない。お偉方のやることに口を挟めるほど権力のない私達は、せいぜいその可能性に備えることしか出来んよ」

 

「……まぁ、リアス達もいることだし、その辺りの気配りはどうとでもなるんじゃない?」

 

「取り敢えず、話だけでも通しておくか。まぁ、私に言われるまでもなく、彼女達なら分かりきっているだろうが」

 

こうして、この場はひとまずこの話題は終了となった。

 

 

 

 

 

次の日、参観日の当日。

ぶっちゃけた話、過程は保護者の存在が代わり映えしなかったので割愛させてもらったよ。

唯一の気になる要素は、保護者代理人となったアザゼルが、参観日に参加していた奥様方にナンパ紛いなことをしていたことぐらいか。彼は本当に保護者役をする気があるのだろうか。

いや、他にもあったな。リアスの父親と思わしきダンディズムと鉢合わせした時、表面上は友好的だったけど、少しピリピリした空気が拡がっていたのを覚えている。

 

そして放課後、保護者の影がまばらになった頃、リアスと姫島が話しかけてくる。

 

「ちょっと、零!アレ、どういうことなの!?」

 

「アレ、とは?」

 

「お父様から聞いたわ。貴方の保護者代理人、あのアザゼルらしいじゃない!」

 

「ああ、そうだな」

 

「そうだな、って――何で堕天使の総督が貴方の保護者なんかやってるのよ!最初からおかしいとは思ってたけど、下手な事を本人の前では言えないし、今の今まで気が気じゃなかったのよ!?」

 

「部長、落ち着いて下さい」

 

「オカルト研究部でならともかく、ここは一介の教室だぞ。そんなことを大声で口にするものじゃない」

 

「ぐっ……」

 

姫島と僕の諭す言葉に、リアスが口ごもる。

 

「……取り乱したわね。でも、それぐらい驚いたのも事実よ。で、貴方とアザゼルはどういう関係なの?」

 

冷静さを取り戻したリアスに、昨日の顛末を語る。

 

「……一体何を考えているのかしら。総督自らが貴方に接触するなんて、普通じゃないわ」

 

「彼の真意は分かりませんが、ひとつ言えることは、彼は零君に関心を抱いているということですわ」

 

「そうね。《神器》に造詣の深いことで有名な彼が零に執着する理由なんて、それぐらいしか思いつかないわ」

 

神器コレクターって奴か。

本人の望んだことではないにしろ、僕の《神器》が抜き取られそうになった事件も、その性質が大きく関わっているのは容易に想像出来た。

 

「ミッテルトの保護者ということでもあったから、二年の教室を訪れた際にイッセーが気付いたらしくて、いきなり伝えられたときは何事かと思ったわよ」

 

「そうか」

 

僕のそっけない対応に、リアスは溜息を吐く。

 

「……せめて事情は伝えて欲しかったわ。折角の連絡先交換もこれじゃまるで意味がないじゃない」

 

「私達が信用出来ませんか?」

 

「そう言うわけではない、が……すまなかった」

 

これは素直に僕が悪い。

どんなにアザゼルが悪い奴ではないとこっちが結論づけたところで、それは所詮僕の主観による出来事でしかない。

悪魔側からしても、堕天使という他勢力の長が干渉してきたとなれば、アザゼルという男の人格を知らない以上、どうしても穿った視点で観測してしまうのは仕方のないこと。

彼女達を心配させたのも、その可能性を考慮しなかった自分の責任だ。

 

「もう……本当に気をつけなさいよね」

 

「これを期にもう少し警戒心を持ってくださればいいのですけれど」

 

姫島の駄目出しが心に刺さる。

言いたいことが納得できる内容だけに、反論も出来ない。

 

「取り敢えず、みんなと合流しましょう。アザゼルのことも含めて、色々話したいしね」

 

そんなリアスの言葉を皮切りに、僕達は廊下を歩き出す。

渡り廊下の付近に辿り着いた時、露骨に喧噪が拡がっていくのが分かる。

 

「何かあったのかしら……」

 

「体育館の方向ですわね」

 

自然と僕達の足も、体育館へと向かう。

体育館の中に入ると、既にイッセー、アーシア、二人がそこにいた。

 

「これはどういうこと?」

 

「部長、アレですよ」

 

イッセーが指さした先にいたのは、魔法少女ミルキーの格好を全力で着こなしていた美少女だった。

ミルキーは壇上で何かポーズのようなものを取っており、その下に群がるカメラ小僧にサービスをしまくっている。

 

「あれって、もしかして……」

 

「知っているのか?リアス」

 

「あれは――」

 

リアスが僕の問いかけに答えようとした時、匙?だったか、支取の眷属の一人がカメラ小僧を散らせていく。

そして、それに続くように支取が体育館に現れる。

 

「ソーナちゃん見~つけた!」

 

そしてミルキーは徐に支取に向けて手を振り出す。

その姿を見た支取は、見たこともない驚き様を晒す。

 

「姉、さん――」

 

「どうしたの?元気ないよ~?折角のお姉様との再会なんだから、もっと喜んでくれてもいいのに~」

 

しつこいと思わせるほどに大きな身振り手振りで、支取に迫るミルキー。

それにしても、姉、だと……?まるで性格が逆じゃないか。

あ、もしかして姉があんなだから妹が自然と堅物になったパターンだったり?

 

「彼女は、セラフォルー・レヴィアタン様よ。現四大魔王の一人で、先程の通り蒼那の姉でもあるわ」

 

「魔王、ね。堕天使の総督に、魔王二人がこの街にいるとは、とんでもないな」

 

「それだけ重要な会合が近いうちにあるって意味でもあるんでしょうけれど……あの方の場合、そういうの関係なさそうだけど」

 

あの方、とは間違いなくセラフォルーさんのことだろう。

あの奇抜な格好に態度を見れば、そう思うのも無理はないだろう。

 

「取り敢えず、蒼那も戸惑っているようだし、挨拶も兼ねて干渉してくるわ」

 

リアスがそう言って、支取達に近づいていく。

支取は何だか苦手意識を持っている風だけど、悪い人ではないのは一目で分かる。

でも、何だろう。この違和感。

 

「――――っと、そっちの子が赤龍帝君で、もう一人の子が今回のMVPの子かな?」

 

突然、話題が僕達に振られる。

 

「初めまして!リアス部長の――いや、リアス・グレモリー様の《兵士》を勤めさせてもらっています!」

 

腰を低く、一礼するイッセー。

まぁ、下級兵士のイッセーからすれば、あんなとはいえ魔王の前だ。こうなるのも無理はない、のか?

 

「有斗零だ」

 

対して僕はこんなそっけない態度。自分でも思うけど、これはひどい。

 

「初めまして、魔王のセラフォルー・レヴィアタンだよ!レヴィアたんって呼んでねっ」

 

きゃぴるん、なんて効果音が鳴りそうなウィンクで迎えられる。

何だろう、今この瞬間、真面目に悩んでいた自分が馬鹿らしくなった。

 

「お姉様、私はこの学園の生徒会長を任されている身です。それなのに身内が学園の風紀を乱すような行動をしてもらっては困ります。迷惑です!」

 

「ぶ~ぶ~、堅いよソーナちゃん。それに、お姉ちゃんが魔法少女に憧れているの知ってるでしょ?その発言は無体にも程があるよぅ!」

 

いや、アンタは充分に魔法少女だよ。僕が保証する。

 

「……なんか、会長がレヴィアタン様をコカビエルの時に呼ぶのを渋った理由が分かった気がする」

 

「険悪な仲ではなく、溺愛し過ぎているが故に収集がつかなくなってしまうのでしょう」

 

魔王なんて言うぐらいだから、半端無いスペックの持ち主なんだろうな。あんなでも。

妹が怪我した→おのれコカビエル、ゆ゛る゛さ゛ん゛!! →即戦争。の流れが容易に想像出来た。

 

「あ、待ってよソーナちゃ~ん!」

 

すると、耐えられなくなったのか支取が涙目で体育館を去っていき、それをセラフォルーさんが追いかけていった。

途端に静かになる体育館。

 

「嵐が去ったか……」

 

「凄いんですね、レヴィアタン様って」

 

それはどういう意味でのかな?アーシアさん。

 

「まさか会長にあんな姉がいたなんて思わなかったですよ」

 

「苦手意識があったこともあって、好き好んで言いふらすような真似はしなかったのが大きいわね」

 

そんな感じの会話を歩きながらしていると、リアス父と知らない夫妻が楽しげに会話をしている姿を遠目から発見する。

 

「父さんに母さん!」

 

イッセーが叫ぶ。

ということは、あの夫妻がイッセーの家族ということか。

母親はともかく、父親には確かに面影がある気がする。

 

「おお、一誠。ちょうどリアスさんのお父さんと話していたところだ」

 

「一誠君、こうして直接会話をするのは初めてだったな。リアスが世話になっているよ」

 

「ちょっと、お父様!」

 

「いえいえ!むしろこっちが部長の迷惑になってばかりで……」

 

「そんなことないわ、貴方には助けられてばかりだもの」

 

「部長……」

 

「はっはっは、仲良きことは美しきかな。――それと、零君、だったかな」

 

リアス父の興味が、僕へと移る。

正直、彼に対して僕は負い目を感じている。いや、負い目、と言うよりも苦手意識か。

何せリアスの結婚を引っかき回して、新婦を攫った張本人が、その結婚に賛成した父親と対面しているのだ。ぎくしゃくしない訳がない。

 

「……少し、二人きりで話がしたい」

 

「お父様、何を――」

 

「分かった」

 

リアス父の提案を呑み、近くの人通りの少ない廊下まで移動する。

 

「零君。こうして話すのも、直に対面するのも初めてになるな」

 

「そうですね」

 

「……フェニックスの倅との結婚を妨害したのは、どうしてか聞かせてもらえるかな?」

 

「それを彼女が望まなかったからだ」

 

「格式のある家系に生まれれば、あのような結婚の形も必要と迫られればしなければならない。それが特別を持って生まれた者の義務であり、運命だ」

 

「親も子も、生まれや子供を選ぶことは出来ない。だというのに、その後の人生まで縛るなど、正気の沙汰ではない。ましてや、本人が拒否しているのを強行するのであれば、それは最早親子の関係ではなく、買い手と奴隷のそれだ。まさか、それを是としていると言うつもりはないだろうな」

 

「そんなわけがあるか。私は私なりに、リアスの幸せを願って行動したのだ」

 

「貴方の理想はリアスの理想ではない。もし仮に貴方の望む理想がリアスにとって最も理想であるものだったとしても、そんなもの所詮は結果論だ。その域に辿り着かなければ認識出来ない事象に対し、辿り着けば後戻りは不可能な状況に達している。そんな博打をするぐらいならば、自分の信じる道を進むのが当たり前ではないか?」

 

「…………」

 

「幸も不幸も、全て引っくるめて人生というものだ。リアスの意思を尊重せず、ただ自分の願望を押しつけて、もし不幸な結果になったら責任が取れるのか?いや、有限で替えの利かない時間や人間関係の代替なんて有り得ない。リアスの人生は、そんな安っぽいものではない」

 

「――それは、私達の家系が築いてきた歴史よりも、価値があるものか?」

 

「あるな。血族とはいえ、他人の人生だ。立派だし誉められるべきことではあるだろうが、それを強要した時点で陳腐に成り下がってしまう。嫌々な気持ちで培った歴史ならば、路頭の石の方がまだ重厚な歴史を辿っているだろうさ」

 

……ここまで言って、アレ?と思った。

何でこんな喧嘩腰に会話してるの?自分。馬鹿なの?死ぬの?

ただでさえ良い評価を得られてない自信しかないのに、部外者風情が他人の家柄の問題をこき下ろすなんて、文字通り馬鹿の所業だ。

リアスの身になって考えていたら、つい口が滑りまくってドリフもびっくりな状態に陥ってしまっていた。

ほら、なんか肩振るわせているし。怒ってるよ絶対。

 

「くっ――――はははは!!」

 

内心ハラハラを隠せないでいると、突然大笑いを始めたリアス父。

その予想外の反応に、思わずきょとんとしてしまう。

 

「成る程成る程、確かにこれはなかなかどうして」

 

そう言ってバンバンと肩を叩いてくる。

要領を得ない会話の流れに、思考は止まったままだ。

 

「済まない、試すようなことをしてしまって。――あの結婚式が流れたのを切っ掛けに、私も色々考えるようになったんだ。同時に、その流れを生み出した君にも注目していた。平凡な人間がフェニックスを下したという事実よりも、私は君とリアスの関係に強く注目していた」

 

一呼吸置き、リアス父は笑みを浮かべる。

 

「君の人格は大いに認めている。善人であることは疑いようもないし、勇気も買っている。不純な感情を持っている様子もなく、身内や仲間を大事にしているようだ。うんうん、いいじゃないか」

 

いいじゃないか、ってなんぞや。

何か勝手に自己完結しているけど、こっちは困惑してばかりだよ。

 

「……零君。リアスをこれからもよろしく頼むよ」

 

「……ああ、言われるまでもない」

 

取り敢えず、実際言われるまでもないのでそう返しておく。

終始良く分からない雰囲気だったけど、怒られなくて良かったよ……。

いや、こんな若造の戯れ言にいちいち怒っているようでは、年長者としての箔がつかないと分かっているから、感情を呑み込んでいるだけかもしれない。

そう考えると、僕がつくづく子供なんだってこと思い知らされる。

 

「零、お父様と一体何を話したの?」

 

リアス達の元に戻るが否や、リアスに耳元で問いかけられる。

 

「大したことではない」

 

「本当?お父様に何か言われなかった?」

 

「世間話の域を出ないものだったよ」

 

実際は違うんだけどね。

 

「……まぁ、いいわ。取り敢えず、貴方の居ない間にお兄様がこっちに来て、イッセーのお父様と意気投合しちゃって、何かイッセーの家で飲み会をする流れになっちゃったのよ」

 

「それがどうした?」

 

「いえ、これは私の我が儘なんだけど……参加してくれないかしら?」

 

「何故だ?部外者が参加しても居心地が悪いだけだろう」

 

「むしろ貴方がいない方が居心地悪いわよ……。どうせ今日のことを肴に針のむしろになるのは目に見ているんだもの」

 

ああ、そういえばリアス父がビデオカメラでリアスを映していたね。

あの様子を見ると、リアス父自身もリアスを大事に思っているのが分かる。

やっぱり格式や伝統が邪魔をしているというだけで、本心としては娘の幸せを願っているんだろう。

……やっぱり後でもう一度謝ろう。

一方的な持論を押しつけたのは、僕も同じ。彼を反論する権利は、そもそもないのだから。

 

「つまり、私を逃げの拠り所にしたいのか?」

 

無言で頷くリアス。

まぁ、そんな赤裸々エピソードを嬉々として見届けるなんて、余程のナルシストじゃないと無理だわな。

 

「仕方ないな」

 

「……ありがとう」

 

こうして僕はイッセーの家にお邪魔することになった。

ミッテルト達は魔王がいる家でまともに過ごせる自信がないからって理由で辞退した。

リアスに抜擢されたのも、その辺りの体裁を気にしない僕が適任だったということだろう。良く分かってらっしゃる。

そういえば、宴もたけなわになった頃合いでサーゼクスさんが《僧侶》を解放だとかなんとか言ってたけど、何だったんだろう。

 

 




Q:アザゼルさん何してんですか。
A:呼んでませんよ、アザゼルさん(迫真)

Q:アザゼルって演技でも年寄り扱いされるの嫌いそうだよね。
A:ミッテルトのせいで色々目覚めればいいと思うよ。

Q:セラフォルー様マジ魔法少女。
A:イッセーの反応が原作より薄いのは、無意識に封じ込めたトラウマのせいです。やらかしたな。あ、作者の好きなキャラの上位に食い込んでます、レヴィアたんは。ああいうキャラの裏とか書くのすげー大好き。

Q:リアス父の零への評価高いね。
A:外堀から埋められていくスタイル。何、気にすることはない。

Q:さりげなくギャー君のイベントスルーしてない?
A:主人公にとっては重要なことじゃないからね。仕方ないね。あ、男の娘大好物です。

Q:最近アーシアと小猫の出番がない気がするんだが……。
A:色んなキャラを動かす技量がないんだもん!分不相応の行動をしても、グダるだけだもん!

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