Infinite possibility world ~ ver Highschool D×D   作:花極四季

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正直設定に迷っていたのもあるけど、DIABLOIIIとwarframeとギルティギアXrdが全部いけないんだ。

正直最近グダってきたのもあるから、またゼロ使の方に力を入れてこっちは設定考える方向で軌道修正しようかとも思ってる。話数も並んだしね


第十七話

いやぁ……コカビエルは強敵でした。

ケルベロスとかキチロールプレイヤーっぽいフリード、あと知らない爺さんとかが居た気がするけど、まぁそれはあまり重要なことじゃない。

オカ研メンバーの助けがあったお陰で何とか倒すことが出来たけど、正直申し訳ないと思う。

だって、僕すぐにやられたし。そんで復活したらトドメ刺すとか、酷すぎるだろ。もっと働けよ。

みんなのボロボロ具合からしてだいぶ頑張っていたのは明白だし、そのくせ自分はワンパンでダウンとか、何なの?紙なの?シッショーなの?

火力だけあって柔らかいって意味では、田植え拳王とか柔らか聖帝のが近いのか?あんなマッチョじゃないけど。

 

コカビーがイッセーのライバルっぽい存在に連れ去られた後、みんなから色々と追求されたんだよ。

特に聖剣なんで使えるの?って部分。ぶっちゃけ使える条件があるとか知らなかったから、なんで使えたのとか言われても困る。

取り敢えず使えたんだから仕方ない的なことを言ったら、巫山戯るなとリアスにばっさり斬られた。ひどい。

それ以上言及されなかったけど、そんなに変なことだったのかな。

まぁ、仕様を無視しているんだから当然と言われればそれまでだけど、もしかしたら僕にもその因子があったのかもしれないじゃん?確かめる術が無い以上なんとも言えないけど。

 

まぁ、そんなことはどうでもいいんだ。重要な事じゃない。今重要なのは――

 

「……で、なんでアンタがここにいるのよ」

 

頬杖をついて僕の疑問を代弁してくれるミッテルト。

我が家のテーブルを介して座っているのは、まさかのゼノヴィアだったりする。

一度ぐらいしか明確な接点はない筈なのに、どうして彼女はウチにいるんですかねぇ……。

 

「神が存在しないと知った今、私の居場所は最早教会にはない。神の不在がコカビエルの口から語られた時、精神的に自暴自棄になっていた私を救ってくれたのは、貴方の教えだった」

 

「教えって、ファミレスでの奴?」

 

「ああ。盲目的に何かを信ずるのではなく、自らの目と耳で見識を拡げ、そして判断すること。自分が信じたいものを信じれば、それは自分にとっての神にだってなるのだということ。そして、昨日の天使も神も世界の歯車でしかないと言った貴方の言葉で、私の心は決まったよ」

 

「決まったって、何がさ」

 

「神が不在と知った今、形骸化した神を信仰する理由はない。だからといって悪魔に墜ちる理由もない。貴方の言葉がなければそういう未来も有り得たかもしれないが、貴方の説教によって現教会に対して良い感情を抱かなくなったが、それもひとつの信仰の形なのだと割り切った考えが出来たお陰で、安易な選択に走ることはなかったよ。今の私は、言うなればはぐれエクソシストという奴だ」

 

「はぐれって……教会を抜けてきたの?」

 

「そういうことだ。聖剣使いとして尊敬の目で見ていた奴らが、一転して見下すような目で見るようになったのを見て、逆におかしくなってしまったよ。そんな二枚舌の組織をずっと正義だと信じていた自分と、そんな考えを頑なに貫いている教会の者共に対してな」

 

「あと、もう一人ツインテールの方がいたけど、あっちはどうしたのよ」

 

「イリナは神の不在を知らないままだから、教会に帰ったよ。とはいえ、彼女もまた貴方に感化された身。私が教会を抜けることを説明した際も、事情は聞かずに私が教会を抜ける程の事情があることを汲んでくれた。貴方の説教がなければ、仲違いによる別れとなっていたかもしれない。感謝している」

 

そう言って深々と頭を下げるゼノヴィア。

……良く分かんないけど、つまりは教会を抜けて、フリーになったってことでいいのかな。

というか、あの時の説教がまさかここまで彼女に影響を与えていたなんて思わなかった。

 

「でも、教会を抜けた事とアンタがここにいる事は一切関連性がないじゃない」

 

「そうでもないさ」

 

そう短く答えると、ゼノヴィアは身体を僕の方へと正面に向ける。

 

「私の人生は神と共にあった。だが、神の不在を知った今、私の人生は破綻したに等しい。だから、私の事を導いてくれた貴方についていこうと思う」

 

「いや、その理屈はおかしい」

 

思わず突っ込んでしまった。

でも、仕方ないよね?超展開というか、あまりにも飛躍した結論なんだもん。

 

「そ、そうよ!だいたいついていくって、具体的にどうするつもりなのよ。教会と違って、レイはどの組織にも所属していない、全くのフリーな存在なのよ?」

 

そうだそうだ!言ってやれミッテルト!

 

「リアス・グレモリーから聞いたが、オカルト研究部に仮所属しているらしいじゃないか。それはフリーとは言わないのではないんじゃないか?」

 

「ぬぐっ」

 

「それに、私は彼が組織だって行動しているからその傘下に加わりたいと思ったのではない。しがらみから解放された私個人の意思で、有斗零という青年を好ましく思っているから、共に居たいと思ったんだ」

 

「なっ――――」

 

ミッテルトが口を開けてあんぐりとしている。

いや、僕も驚いているよ。まさかこんなこっぱずかしい事を素面で言うなんて思わなかったんだもん。

深い意図がないことは分かっているとはいえ、何か恥ずかしい。

 

「で、どうだ?」

 

「……まぁ、別に問題はないが」

 

「レイ!?」

 

露骨に驚くミッテルト。

だって、こっちとしては別に断る理由がないんだもん。なのに断るとか悪い奴みたいじゃん。

 

「ありがとう。いやあ、これで断られていたら再びあの寂れた教会で、今度は一人寂しく貧しい生活を強いられていたところだったよ」

 

平然と凄惨な未来図を口にするゼノヴィア。

その遠回しに精神的に攻めるの、やめてさしあげろ。

 

「じゃあ早速荷物を纏めて再び戻ってくるから、その間に私の部屋の検討をしておいてくれ」

 

そう言って荷物を取りに家を出て行くゼノヴィア。

何て言うか、自由な人だなぁ。

 

「ねぇ、そんな安請け合いしちゃっていいの?」

 

「安請け合いも何も、断る理由がないだろう」

 

「はぐれエクソシストってだけで充分断る理由になるわよ。協会側からすれば厄介者なんだし、面倒事を運んでくる未来しか見えないわ」

 

「その辺りはリアスがどうにかしてくれるだろう。まさか彼女が恩人を蔑ろにするとは思えないし、私からも頼み込むつもりだし問題はないだろう」

 

「楽観的過ぎるわよ……」

 

呆れた様子でテーブルに顎を乗せてぐったりとする。

言いたいことは分かるけど、今更言葉は引っ込められないし、ね?

 

「……私も、ただの厄介者よね」

 

テーブルに伏せながら、そう呟くミッテルト。

 

「結局コカビエルとの戦いだって、私は居ても居なくても一緒だった。そりゃあ、私なんかがあの戦いでまともな活躍出来るなんて最初から思ってなかったけど、それでも、何も出来なかったことが悔しくなくなる道理はないわよ」

 

「だが、君は私をフォローしてくれたじゃないか」

 

「そんなもの、私じゃなくても誰かがしてくれてたわよ。少なくとも、身体能力、肉体能力合わせて私以上のメンバーが集まっていたんだもの。別段不思議なことじゃないわ」

 

そうでもないと思うけどなぁ。

朱乃を落下から助けるには、あれ以上の遅延要素があってはいけなかった。

 

あの状況で一番近くいたのはミッテルトだし、彼女が間違いなく僕の助けになったのは事実だ。

だけど、そうじゃないんだろうなぁ。

以前にもこういう悩みを持つ人と接してきたことがあるから分かるけど、ミッテルトはほぼ間違いなく《特別》を望んでいる。

自分にしか出来ない、自分自身の存在価値を証明出来る何かが欲しいと。

だから、僕が今ミッテルトの言葉を否定したところで、所詮は先延ばしでしかなくなる。

彼女が満足する結果を出せない限り、彼女はずっと苦悩し続ける。

だけど、《特別》なんてそう簡単に手に入るものではない。

僕にとって悪魔も天使も堕天使も一種の《特別》だし、《神器》も然りだ。

《特別》だって個人の解釈に委ねられる以上、どれが正解の選択かなんて分かる筈もない。

だからといって、彼女がこのまま悩んでいるのを黙っていられる程薄情ではない。

 

無い知恵絞ってどうにか出来ないかと悩んでいると、ふとイゴールの言葉を思い出す。

もしかして、どうにかなるんじゃないだろうか。ぶっちゃけ、イゴールなら出来かねない。

えっと、確か手を握るんだっけ。

 

「ひゃっ、な、何?」

 

ミッテルトの驚きを無視し、目を閉じ頭の中でベルベットルームを思い浮かべる。

 

「えっ、ここどこ?何なの一体!?」

 

ミッテルトの戸惑う声色に誘われる形で目を開くと、慣れ親しんだベルベットルームが視界いっぱいに拡がった。

 

「どうやら、連れてきてくれたようですね」

 

「だ、誰よアンタ!?」

 

イゴールの不適な笑みに怯えるミッテルト。

まぁ、人間の顔じゃないからね、アレ。

 

「私はイゴールと申します。ここ、ベルベットルームの管理人のようなものをしています」

 

「あ、どうもご丁寧に……じゃなくて!ベルベットルームって言われても分からないし、結局何なのここは!!」

 

ナイスノリツッコミ。って言う暇があったら現状説明しないと、流石にキレるんじゃないだろうか。

 

「ここは夢と現実、精神と物質の狭間にある空間。そして有斗零様は、この部屋のお客人であらせられます」

 

「お客人、って……本当?」

 

ミッテルトの問いかけに、無言で頷く。

 

「でも、一体こんな所にレイが何の用があるっていうのよ」

 

「貴方も恐らくは一度は見たことがあるのではないでしょうか?彼のペルソナ能力を。私は彼のサポートをさせていただいています」

 

「サポート……?訳が分からないわ。そもそもペルソナ能力はアンタがレイに与えたものなの?そうじゃないとしても、何でレイがここの客人となって、アンタのサポートなんかを貰えるのさ」

 

「それは彼が《特別》だからでございます。ベルベットルームは誰も彼もが入れるような場所ではございませぬ。人の心は本来ひとつの形しか持たぬもの。しかし彼はその理に縛られない、希有な力を持っている。そう、まるで数字のゼロ、或いはどの札の役割をも果たすワイルドカードのようなものです」

 

「そのワイルドカードのような《特別》な力のせいで、レイはアンタに選ばれたって訳ね。じゃあ、レイの《神器》もアンタの差し金って訳?」

 

「《神器》?……ああ、成る程。いえ、そうではありませぬ。彼の《神器》は先天的なもので、私はその才能を後押しする役割を担っているに過ぎませぬ」

 

「そこが解せないのよね。先天的とか言うけど、そもそもレイのような力を持つなんて他にもいるの?」

 

「現在彼を含め、七人程確認しております。とはいえ、今は彼以外はこの場どころか、この世界にさえ存在しておりませぬが」

 

「えっ、それって――」

 

「イゴール。そろそろ本題に入らないか?」

 

このままだと延々と話してそうだから、そろそろ本題に入るよう切り出す。

ぶっちゃけ、手持ち無沙汰で暇だったからなんだけど、決してミッテルトの為にならない訳じゃないから許される筈。

 

「そうでございますな。では、改めて――ミッテルト様、貴方にはここベルベットルームにおいて、私の補佐を務めさせていただきたいのです」

 

「は?補佐?……ちょっと、どういう事なのレイ」

 

ジト目で睨むミッテルト。

いや、説明しないで連れてきたのは申し訳ないとは思うけど、あの状況じゃまともな説明したって意味なかっただろうし、間を置くほどミッテルトが苦しくなるだけだし、仕方なかったんや!

 

「彼には、先程の頼みを受けてくれる相手を探してもらうという依頼を受けてもらっていたのです。とはいえ、長期的な拘束をする訳でもありませんし、当然この依頼を受けて貰った暁には、相応の報酬を与えようと考えております」

 

「報酬って、何があるのよ」

 

「貴方が望む、大抵のことならば何でもです。とはいえ、程度に関しましてはこちらで裁量を決めさせていただく故、ご了承ください」

 

「何でも……?」

 

何でも、という言葉に食いつくミッテルト。

まぁ、胡散臭いとはいえそんな甘い言葉に反応しない人はいないわな。

でも改めて思うと、これって一種の宗教勧誘っぽい構図だよなぁ……。

 

「……話を聞かせてもらおうじゃない」

 

おい、連れてきた僕が言うのもなんだけど、二つ返事でそれはどうなのかと。

ミッテルトは間違いなく悪徳商法に騙されるお方やでぇ……。

 

「レイ。悪いけど、イゴールと二人きりにさせて頂戴」

 

「私は構わんが、ならばその間どうすればいい?」

 

「ご安心ください。お客人がこの場を立ち去っても、彼女は責任を持ってお返しさせていただきます」

 

イゴールなら万が一にもミッテルトに粗相をするなんて有り得ないだろうけど、それにしたってその認識は僕だけのものであり、初対面では胡散臭さフルマックスな外見をしているイゴールと一対一になるなんて、勇気有りすぎだろ。

まぁ、ミッテルトがそれで良いって言うならいいんだけどさ。

 

取り敢えず頷いてベルベットルームから立ち去る。

因みに帰るときは普通にドアがあったからそこから出たよ。

 

 

 

 

 

「さて、どうやらお客人は帰られたご様子。して、私と二人きりで何をお聞きになられたいので?」

 

イゴールとか言う長鼻の老人が、不適な笑みで問いかける。

レイが客として通っている例がある以上、コイツは悪い奴ではないんだろうけど、やはり不安は拭えない。

とはいえ、私にはそんなものを押し退けてでも、成就させたい願いがある。

コイツがそれを叶えてくれるというのなら、安っぽいプライドなんか幾らでも捨てられる。

 

「……今一度聞くけど、余程の無茶な願いじゃなければ、何でも叶えられるのよね?」

 

「左様でございます」

 

「そんな大盤振る舞いな願い事の割に、ここでの手伝いだけってあまりにも代価が安すぎないかしら」

 

「そうでございますな。しかしこちらとしても人材不足なのは否めない部分もございますし、それなりの代価をご用意させて頂いてでも、サポートをしてくれる人材が欲しかったのですよ。それに、何も誰でも良いという訳ではございませぬ。彼が自らの秘密を共有しても良いと思える程の絆を秘めた関係を結んだ相手なればこそ、この仕事を任せられるのですから」

 

「……そのサポートって、アンタのじゃないの?」

 

「私の、ではありますが正確に言えば彼の、ですね。私の仕事はあくまで彼のサポートであり、それを補佐するのであれば、必然的に貴方の仕事も彼のサポートに繋がる。違いますか?」

 

確かに、その通りではある。

逆に言えば、この展開もイゴールの思惑通りのものなのだろう、とも思う。

レイは何の説明もなしにここに連れてきたけど、レイがイゴールから条件を事細かに伝えていたのであれば、そんな浅慮なことはしない筈だ。

イゴールとしては、そんな条件をつけずとも彼なら自分の理想の相手を見繕ってくれると判断したのだろう。

実際、その通りの結果になったのだから、その判断は正しいと言えよう。

しかし、この老人の掌の上で踊っているという事実が、妙に苛ついた。

私がではなく、レイがその立場に置かれているということが、である。

 

「……やはり、彼の目に狂いはなかったご様子。貴方ならば、彼の支えとなるに相応しい」

 

「何一人で納得してるのよ」

 

「いえいえ、お気になさらず。して、貴方は私の頼みを聞くと解釈して宜しいのでしょうか?」

 

「――ええ、やってやろうじゃない。でも、私の条件が呑めたらだからね」

 

「その望みとは?」

 

「――力よ。護りたいと思った人をすべからく護れる程の力を、私は望むわ」

 

以前から思い続けていた、夢物語に等しい理想を吐き出す。

下級天使風情が持つには、あまりにも高尚すぎる理想。身の丈に合わない願望。

しかし、手が届かないからこそ、人はよりその泡沫に焦がれる。

物事に下限はあれど、上限は存在しない。ひとつ手に入れることが出来れば、またひとつ望む。

理想は常に自分の頭ひとつ上に存在し続ける、決して手の届かない幻影に過ぎない。

理想が現実となれば、それは最早理想に非ず。次の瞬間には、新たな理想の定義が構築されている。

故に、終わりがない。そして、欲望に際限がないと言われる所以でもある。

 

「私のようなちっぽけな存在じゃあ、生半可な力を手に入れた所でたかが知れている。そんなこと、誰かに言われなくたって嫌でも理解してる。代価に見合わないというのなら、例え代償を上乗せしてでも、手に入れるわ」

 

イゴールの眼前で拳を強く握り締め、宣言する。

それを見てイゴールは、目を伏せ笑った。

 

「貴方の護りたい者とは、やはり彼――有斗零様のことであらせますか?」

 

「――ええ、そうよ。私は彼に救われた。でも、未だにその恩を返せないでいる。だから、争いに身を投じることを辞さない彼の支えになる為に、私もまた彼と同じぐらいの力を得る必要があるのよ!」

 

最早ここまでくればやぶれかぶれだ。

出会ったばかりの相手に何を言っているんだと自分でも思うけど、ここで答えをぼかしてイゴールの機嫌を損ねるような真似はしたくない。

だったら、赤裸々エピソードでも何でも語ってやる。それで力が手にはいるのなら、という前提が付きまとうけど。

 

「貴方の彼に対する強い想い、しかと聞き届けましたぞ。――これをお受け取り下され」

 

イゴールは初めて優しい笑みで私を迎える。

そして、イゴールはどこからともなく広辞苑レベルの厚さを誇る本を取り出した。

表紙には六芒星の魔法陣が描かれており、その形はレイが強力なペルソナを召喚する際に出るものと全く同じだった。

イゴールの言われるがままにそれを手に取る。

見た目通り、ずしりと重い。そして、持っていると不思議な感覚が身体に走る。

まるで、レイの身体に触れているときと同じ暖かさを、この本が発しているような――

 

「これは?」

 

「この本の中には、有斗零様のペルソナが記されております。それこそ、貴方も見たことがなければ、彼自身もその存在に気付いていないものまで、余すところなく」

 

「この中に、レイのペルソナが……?」

 

適当に捲ってみると、私でも聞いたことがあるような有名どころの名前と絵が記入されていた。

後半のごく一部だけ白紙になっていた部分があったけど、これがイゴールの言っていたレイ自身も気付いていないペルソナってことなのだろうか。

 

「このペルソナ全書を使えば、彼の持つペルソナを貴方も扱えるようになります。当然、制約がありますがね」

 

「私が、レイのペルソナを――」

 

無意識に、ペルソナ全書を強く胸の中で抱く。

いつだったかレイが言っていたけど、ペルソナというのは、内に隠れたもう一つの自分を具現化させたものらしい。

つまり、レイのペルソナとは即ちレイ自身と言い換えても何ら問題にはならない。

そんなレイのペルソナを、私が扱う。なんというか、解釈次第では何とも背徳的な響きに聞こえる。

かく言う私は、攻めるより攻められた――じゃない!!

 

「如何なされました?」

 

「な、何でもないわ。説明続けて」

 

不埒な思考を振り払い、気を取り直す。

 

「では、失礼して。先程申し上げた制約に関しましては、あまり難しいことではありません。要は貴方の実力不相応なペルソナは召喚出来ませんし、あくまで有斗零様のペルソナを間借りする立場である以上、召喚行為そのものに相応の魔力を支払わなければなりません。更にペルソナのスキルを使用する際にも魔力を使用しますので、使用するペルソナ、スキルは考えてお使いになられた方がよろしいでしょう」

 

「……何それ、制約だらけじゃないの。そんなんで大丈夫なの?」

 

「どんなに優れた力でも、扱う者次第では刃にもなまくらにも成り得ます。一足飛びに事を為し得ようとすれば、急ぎ足になるあまり蹴躓いて転んでしまいますよ?」

 

……その通りだ。

レイと同質の力を得られたという事実ばかり先走り、大事なことを見落としていた。

自分自身でも戒めていたばかりなのに、下らない間違いを犯すところだった。

力を手に入れて終わりじゃない。そこから始まるのだ。

そんな下らない理由で足止めなんてまっぴら御免である。

 

「それに、制約ばかり説明しましたが、何も不利な条件ばかりではありませぬ。ペルソナを間借りするからこそ為せる、貴方だけのペルソナの扱い方が出来ます」

 

「それって?」

 

「ペルソナでありながら、独立した存在として扱えるという特性を活かすのです。精神体であるペルソナには、状態異常が効きませぬ。しかし、ペルソナを介して所有者にダメージが通りますし、所有者が掛かった状態異常はペルソナにも反映されます。ですが、完全に切り離された状態で扱う貴方の場合、そのどちらにも当てはまらないのです」

 

「つまり、私が仮に毒を受けたとしてもペルソナは毒にならないし、ペルソナが攻撃されても私にフィードバックはされないってことでいいのかしら」

 

「その通りでございます」

 

これは良いことを聞いた。

レイはコカビエルの攻撃をペルソナが喰らったことで気絶する程のダメージを受けていた。

だけど私がペルソナを使えば、その枠には当てはまらない。つまり、ペルソナを盾にレイを護ることが容易となるのだ。

 

「でも、レイのペルソナを使っているからダメージを受けないのは分かったけど、それだとレイにダメージが行きそうなものだけど」

 

「その辺りは問題ありませぬ。先程間借りしていると申しましたが、有斗零様が装備しているペルソナではないので、彼のペルソナとはいえ分離しているも同然。心配なさる必要はありませんよ」

 

「そうなの、それは良かった。だけど、それだと私がペルソナを使う時は、装備って解釈にはならないってこと?」

 

「左様でございます。どちらかといえば、召喚したペルソナを使役すると考えた方が分かり易いでしょう。そうなると、これは最早ペルソナ全書と呼ぶよりも、悪魔全書と呼ぶ方が良いかもしれませんな」

 

「悪魔全書って……いきなり物々しい名前になったわね。それに、この中には天使とかも記されていたのに、悪魔全書って言うのは間違いなんじゃない?」

 

自分でも尤もだと思った意見をイゴールに投げかける。

しかしイゴールは気にした素振りもなく、真理を告げた。

 

「――悪魔が人間を惑わし堕落させる存在ならば、甘言を囁き人間の人生を狂わせる天使や神もまた、悪魔と呼ぶに相応しいと思うのですが」

 

「――――ハハッ、確かにその通りね」

 

イゴールから告げられた真理は、これ以上とない程に私の納得を刺激した。

言われて初めて気付く、相反すると思っていた二種族を結びつける要因。

善と悪なんて区別されてはいるけど、本質は限りなく同一。

救済も堕落も、人生観を変えるという意味ではどちらも似たようなもの。

そんな簡単なことに今まで気付かなかったなんて、自分が如何に固定概念に囚われていたのかが分かる。

 

「ともかく、その新・ペルソナ全書をお譲りいたします。これからは彼の傍でその力を振るい、助けとなってあげて下さればこちらとしては満足ですな」

 

話は終わったと言わんばかりに言葉を切ったイゴールに、声を掛ける。

 

「……ねぇ、聞きたいことがあるんだけど」

 

「何でしょう?」

 

「何でイゴールはレイに関心を持ったの?《特別》だから?」

 

イゴールは僅かに考える素振りを見せ、答える。

 

「確かにそれも含まれておりますが、私が彼に助力するのは、彼がどのような未来を紡ぐのか、それが見たいからでございます。貴方もご存じの通り、彼はとても数奇な運命と共にあります。ひとつ道を違えれば、それだけで世界が大きく変わってしまう程に、彼は不安定な立場にあります。しかし、その不安定さが故に、一歩間違えれば運命そのものが途絶えてしまう可能性さえあります。だから、そうならないようにする為にも、貴方のような協力者が必要だったということです」

 

イゴールはタロットカードを取り出したかと思うと、一枚山札から引き、それをテーブルに置く。

それには方位磁針のようなものが中心に描かれており、下の方にXと数字が強調されて記されていた。

 

「貴方の未来を示すのは、運命の正位置。過去の自分からは一転して大きな事象に身を委ねることになるでしょう。それにより貴方は今まで以上の困難に立ち向かわなければならなくなります。しかし、それに気が付いた頃には最早後戻りは出来ない領域まで足を踏み込んでいるかもしれませぬ。今この場で選ぶ選択こそ、貴方の安全を保証する最後の砦となるやもしれませぬぞ?」

 

「――愚問よ、イゴール」

 

私の命も人生も、最早レイが隣にいてこそ成り立つ脆く儚いものでしかない。

ならばここで足を止め振り返ったところで、何も変わりはしない。

その運命によって死ぬとしても、彼と離ればなれになって孤独に死ぬよりは何億倍もマシだ。

 

「そうでございましたな。――そういえば、もうひとつ渡し忘れていた物がありました」

 

踵を返し、ドアに向けて歩き出そうとした時、イゴールに引き留められる。

その時渡されたものは――

 

 

 

 

 

自宅に戻ってから十秒も掛からない間に、ミッテルトも意識を取り戻した。

どういう仕組みなんだか知らないけど、あそことここでは時間の流れが違うみたいなご都合主義が展開されているんだろう。

 

「おかえり、ミッテルト」

 

「ただいま」

 

第三者からすれば意味不明な挨拶を済ませると、ミッテルトがおもむろに立ち上がる。

 

「どうした?」

 

「ちょっと洗面所借りるわ。レイは大人しく待ってて」

 

僕の答えを聞くまでもなく、宣言通り洗面所に姿を消すミッテルト。

訳が分からないけど、取り敢えず言われた通り大人しく待つ。

数分後、おもむろに洗面所の方面からミッテルトが姿を現す。

その姿を見た瞬間、僕は驚きを隠せないでいた。

 

「ど、どうかな……?」

 

ミッテルトの恰好は、原作のエリザベスが着ていたようなノースリーブ服をよりゴスロリ調に変え、頭にはフリルのついたヘッドドレス、腕の部分にはマリーのように独立して新たにフリルの付いた袖が掛けてあるという、ミッテルトらしさを崩さずマッチさせたものだった。

 

「な、何とか言ってよ。仮とはいえベルベットルームの管理者の一人となったからには、これをつける義務があるって言われたから貰ったんだけど……」

 

ミッテルトの恥ずかしそうに意見を求める様子に促される形で、ボーっとしていた思考が活動を再開させる。

 

「……ああ、とても似合っているよ」

 

陳腐にも程がある感想だと自分でも思う。

でも、嘘偽りのない本心でもある。

 

「そ、そう?えへへ……」

 

そんなテンプレのような回答でも、ミッテルトははにかむように微笑んでくれる。ミッテルトマジ堕天使。

 

「この服、何か凄いらしいわよ。生半可な衝撃じゃ傷一つつかないどころか、この服自体に魔力の潜在値を底上げする力もあれば、魔力回復を促す効能まで付与されているって話よ。胡散臭いけど、この服から感じる魔力を見れば、嘘じゃないってなんとなくわかるのよね。本当、イゴールって何者なのかしら」

 

「さぁな。そこのところは私にもよくわからん」

 

実際はフィレモンに創られた存在ってことらしいけど、それを伝えたところで余計に話をこじらせるだけだろうし、黙っておく。

 

「あ、あとこんなの貰っちゃったの」

 

突如ミッテルトの手のひらの上に現れたのは、ベージュ色のハードカバーに覆われた辞書サイズの本。

その外装に、僕は見覚えがあった。

というか、どこからどう見てもペルソナ全書なんですが、それは……。

いや、エリザベスとかマーガレットとかも戦闘の際に使ってたから

 

「これがあると、レイのようにペルソナが使えるらしいわ。と言っても、レイぐらい強いのは出せないっぽいけど」

 

「そうか……それは頼もしいな」

 

いや、マジで頼もしいです。

正直、堕天使のミッテルトがペルソナ使えるとか僕いらなくね?ってレベルだし。

今は発展途上でも、いずれ僕なんか軽く追い越すだろう。

 

「これなら一緒に強くなれる練習も出来るし、使い方もレイから教われるし、良い所だらけよね!」

 

るんるんと喜びのダンスを踊るミッテルト。そしてそれを微笑ましく見守る僕。

 

「今戻ったぞ」

 

そして、何とも間の悪いタイミングで戻ってきたゼノヴィア。

二人は互いを視界に入れ、硬直する。

ミッテルトは事情を知らなければただの頭が春な雰囲気を出しており、ゼノヴィアはその事情を知らないが故に必然的に等身大のミッテルトと今のミッテルトを比較して状況を整理しようと試みる。

その結果、どうなったかというと。

 

「――すまない、邪魔をしたようだ」

 

どこか遠い目でミッテルトを一瞥したゼノヴィアは、再び茶の間のドアを閉める。

 

「ま、待ちなさい!これは誤解、そう、誤解なの!!」

 

「いやいや、気にすることはないぞ。君とて堕天使である以前に一人の女だ。そのような気分になる時があっても別段不思議ではないぞ、うん」

 

ぎゃーぎゃーと廊下から響く声が遠ざかっていく。

この調子じゃ、家を出たゼノヴィアをあの服装のままミッテルトは追いかける流れになっているのだろう。

あと少し経てばその姿をご近所に晒すことになって、更にてんやわんやな事になるだろう。

……平和だなぁ、本当。

爺くさい思考を過ぎらせながら、窓から空を見上げた。

 




新・ペルソナ全書

ミッテルトが手に入れた《神器》(と思っていただいて結構)。
本来は有斗零のペルソナ全書だが、それをミッテルトがある程度自由に扱えるように改造が施された模造品。
模造品だが、従来のペルソナ全書と同じ扱いが可能なので、実質的にイゴールの役割を担える。ただし、その場合ミッテルトの魔力に依存してしまう。


ミッテルト自身が使える用途

ペルソナ召喚
原作同様、ペルソナ全書に登録されたペルソナを召還することが出来る。
レベルによる召喚制限に加え、ミッテルトのその時点での保有魔力で召喚条件の是非が決まる。魔力=お金ってことです。

ペルソナ合体
可能だが、ミッテルトの能力とペルソナ全書に記入されている内容も相まって、使用される機会があるかは不明。

ペルソナの独立運用

零のペルソナを間借りするという性質を利用することで、ペルソナへのダメージがミッテルトに返ってくることはなくなる。同時に、ミッテルト自身の状態異常がペルソナに反映されることもない。なので、零とは異なる独自の運用が可能となる。
文字通りペルソナと使用者が独立した運用が可能だということで、イゴールが悪魔全書と比喩したのも、ペルソナが実質悪魔と同じ運用が可能だからである。

デメリット

ペルソナのレベルは一律固定。零自身が扱わないと成長しない(ペルソナ全書の上書きが出来ないってこと)上に、ペルソナを召還して保持しておくことが出来ない為、同じペルソナを使い続けるメリットが限りなく少ない。
しかし強いペルソナを使うには魔力量を上げないといけないので、必然的にミッテルト自身も強くなる必要がある。
ペルソナを保持出来ないというのは、その都度召喚に魔力を使うということでもあるので、かなりの負担を強いられることになる。



Q:ゼノヴィア悪魔にならなかったのね。
A:そういう展開も悪くないと思うんだ。リアス達もゼノヴィアいなくてもどうにかなるだろ(ご都合主義

Q:ミッテルトペルソナキター!
A:しかし強くなるのはまだ先。しばらくはサポート役になるんじゃないだろうか。後、可愛いペルソナとキャッキャウフフするとか。

Q:ミッテルトもベルベットルームの住人か……
A:実際にベルベットルームで仕事をすることは少ないから、あまりそういう認識は持たなくてもいいかも。後、ミッテルトの新衣装誰か描いて(懇願

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