CLANNAD~終わりなき坂道~   作:琥珀兎

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第十三回:三人の想い

 杏の嬉し恥ずかし折檻を受けた後、恐らく今世紀最大の衝撃に見舞われていた。

 

「こ、この小娘が春原の妹だぁあああっ!?」

「は、はい春原芽衣って言います、いつも兄がお世話になってます」

 

 な、なんて礼儀正しい小娘なんだ。

 どう考えたって春原と遺伝子レベルでのつながりがあるとは思えない。違う種で栽培された子なんじゃね、とかむしろ春原が突然変異体なのかもなんて口に出してはいけない荒唐無稽な推測が脳裏に飛び交う程に信じられない。

 けど現に小娘は否定してないし、春原もなんか気持ち悪い顔して照れ隠しにそっぽ向いてる。そういうのは杏がやるから可愛いのであって、貴様のような男がやるのはむしろ逆効果だろ。

 

「いや驚きすぎだろ、確かに以外だと俺も思ったけど」

「あたしも、人目も憚らずに大声で驚いちゃったわよ」

 

 マジで? その場面すっごく見たかった。杏の驚愕に満ちた顔とか、くそぅ脳内に焼き付けておきたかった。

 絶対に可愛いに決まってる、間違いない。こんな事ならここでだらけてないで僅かな可能性に賭けて外に散策に出るべきだった。

 

「みんな驚きすぎだろっ、僕と芽衣が兄妹ってそんなに意外か?」

「当たり前だ。お前みたいな猿人から、なんでこんなおしゃまな小娘が続いて誕生するなんて思うわけないだろ」

「家族が居ようと平常運転ですねぇあんたっ。というか、元はと言えば榊原が余計な事をするから芽衣がこっちに来ちゃったんだろっ」

「芽衣ちゃんの前でそんな酷いこと言うなよな」

「岡崎はどっちの味方だよっ?!」

 

 すかさずツッコミを岡崎にシフトするその能力は、いくら春原と言えど誇っていいと思うぞ。

 しかし、まさか本当に来てしまうとは。思いつきの冗談のつもりだったんだが、思い返してみれば確かに俺が原因と言っても過言ではないだろう。

 おかげで居心地を悪そうに俯く芽衣とか言う春原の妹を見ていると、若干良心の呵責を感じてしまう。……あと、杏と椋の二人が俺を見る視線が痛い。なにこれ拷問?

 

「ねぇ幸希。あんた、こんな幼気な女の子を騙すなんて……どうかと思うわよ」

「流石に、その……やり過ぎだと思います」

「えっ? あー、その……すんません」

 

 杏ならいつもの事なんだけど、意外な事に椋まで参加するとは思ってなかった威圧的な態度に、思わず身が竦んでしまった。

 責めるような杏の視線に、なにやら体の中心からえも言えぬ熱い感覚がこみ上げてくるのを感じ、新しい扉を開いてしまいそうな、そんな新しい真理を得てしまう所だった。

 

「謝るならあたしらじゃなくて、ほらちゃんと居るでしょっ」

 

 頭を鷲掴みにされて、さらに無理矢理回され春原の妹が座ってる方を向かされた。首の骨が軋む音がしたのは気のせいだと思いたい。

 視線が合った春原の妹がはっとなって顔を上げた。そうだよな、謝るならこの子にってのが筋だよな。

 

「すまなかった春原の妹。悪ふざけとはいえお前の兄貴を騙っちまった、許してくれ」

「あ、はい……べ、別にわたしはそんなに怒ってませんから。お陰で兄の所に行く口実も出来たし」

「そんな簡単に許しちゃって良いの芽衣ちゃん? こいつ謝ってるのに、こんな上から目線なのよ?」

 

 俺の頭を掴んでいる力が強くなった。ぎりぎりと万力のような握力が、頭蓋骨を砕かんばかりに襲いかかり変な汗が背中から流れてくるのを感じる。

 目線が上からなのは生まれつきというか、普段から態度がデカい言動ばかりなのが原因だ。だから別に偉そうにしてるとか馬鹿にしているわけじゃないんだが、弁解しようにも頭が痛くて変な呻き声しか出てこない。新しい扉がノックされ、再び開きそうになる

 

「あがが……ぎぃ、があ゛ぁ……」

「あのー杏さん、それぐらいにした方が良いんじゃないですか? なんか、変な声出てますよ?」

「良いのよ、こいつはこれぐらいしないと反省しないんだから」

「お姉ちゃんやり過ぎだよ。榊原くんも、ちゃんと謝ったんだしもう許してあげようよ……」

「……二人がそう言うなら、しょうがないわね。二人の寛大さに感謝しなさいよ幸希!」

「は……い」

 

 椋のその一声によってようやく頭の拘束が解放された。あのまま継続されていたかと思うとゾッと来るものがある。危うく頭が割れて脳漿が飛び出る所だった。一体あの身体の何処からこんな力が出てくるのか不思議でしょうがない。

 ともあれ、杏の疑似アイアンクローから解き放たれた俺は頭蓋骨が無事なのを確認して、改めて春原の妹と向き合った。

 まじまじと観察してわかったが、ホント春原とは似てないなこの少女。……とか思ってたら目を逸らされた。地味にショック。

 

「……はぁ」

「なに溜息なんて吐いてんのよ」

「いやちょっとな、顔面格差社会の無慈悲な現実とその憤りについて考察してたら、つい」

「……? よくわかんないけど、これに懲りたらもう馬鹿な事するのはやめんのよ? 他の人にだって迷惑掛かるんだから」

 

 呆れたような口調で杏にそう言われ、好感度が下がっているのを実感する。人目が無かったら泣きたいです。

 

「喧嘩だってそうよ、そのせいで色々大変だったんだからねっ。椋は目に見えて狼狽えるし、あんたに会いに行こうにも家がどこにあるのかわからなくて苦労したんだから」

「ちょっと待て。俺に会いに……来たのか?」

「そうよ、それがどうかしたの?」

「な、なんでもない」

 

 顔がにやけてしまうのを抑えられない。他の奴らにばれないよう、咄嗟に俺はポケットに入っていたマスクを装着した。なんでもは入ってないけど、入ってるものは入ってるのが俺のポケットだ。

 というか、杏が俺に会いに来た? もうそれだけで一週間を生き残る自信が湧いてくる。

 幸せの青い鳥はここに居たんだ。

 恍惚の表情で天を崇めていると、春原の妹の視線が俺に向いてるのに気が付いた。けど杏の“会いに来た”という言葉で舞い上がってる俺は、そんな彼女の視線なんて気にもならない。

 ふと、後ろから肩をとんとん、と二度叩かれた。

 

「んぁ? 岡崎か、なんだ?」

「いや、あの時の事、一応でも謝っとこうかと思ってな」

「何言ってんだお前。あれは俺が勝手にやったことだろ、お前は何も悪くないじゃん。むしろ悪いのは俺の憩いの場を荒らしたあの部外者共だ」

 

 バツの悪い顔をしてる岡崎だが、寧ろ俺は逆に怒られると思ってた。

 だって勝手に乱入して、その上あっさりと負けたと思われる岡崎を差し置いて相手をブチのめしたかと思えば、さらにその罪を一人で被るというかっこつけをしてしまったんだ。並みの男ならプライドを守る為に、勝手な事すんなと俺を責めるもんだ。

 なのに、岡崎は俺に謝ってきた。斜に構えてるクセに、こういう律儀な所があるからきっと俺はこいつと友達でいられるんだろうな。でも杏は譲る気はないぜよ。

 

「気にすんな、停学なんてただの連休だと思えばなんともないし」

 

 成績なんて気にするのも今更だし、進学なんて一切考えてない俺にはそんなの痛くもかゆくもない。

 

「いいよなー榊原は、僕も一週間休みたいなー」

「だ、駄目ですよ春原さん」

「あんまり椋の苦労を増やすんじゃないわよ陽平」

「わかってるって、ちょっとしたアメリカンジョーズだって」

「お前の存在そのものがジョーク染みてるな」

 

 その岡崎の一言に、また春原が反応して騒がしくなってきた。というか、こんなお世辞なんて飾りたくもない小さな部屋の中に六人ってのはかなり無理があると思う。現に人口密度が高くて少し熱気を感じる。

 息苦しさを感じ、俺は窓際に避難した。ここがこの部屋で一番最初に風が入ってくるところだから。

 窓際に背中を預けて、暫しみんなのやり取りを傍目に見ていると、あっと椋が声を小さくあげでこっちにやって来た。

 

「あの……いきなりですけど、よかったら榊原くんのお家がどこにあるのか、教えてくれませんか?」

「俺の家?」

「はい。学校を休んでいる間、授業のノートとかプリントを届ける為に……」

 

 成程、委員長としては落伍者の面倒を見るのも仕事の一貫だと言うわけか。そうでなくても人の良い椋の事だ、もしかして自発的なのかもしれない。

 ま、誰であろうと答えは決まってる。

 

「悪いが、俺の家はストーカー対策の為に国家レベルでの機密になってるんだ。だから教える事は出来ない」

「えっ? えっと、機密……ですか。それじゃあ仕方ないですね、すいません変な事を訊いて」

 

 しゅんとした表情で俯く椋の目尻には、涙は浮かんでなかった。直ぐに椋は持ち直して笑顔を浮かべたが、その笑顔も何処か無理をしているように、そうでなくとも悲しそうに見えた。

 

「いいじゃない家ぐらい教えてくれたって、知られて困るものでもないでしょこの面子なら」

 

 当然そんな椋の雰囲気を感じ取れないわけがない杏が追求してきた。

 こんな時でも凜とした杏の声が、今だけは煩わしい。知られたら困るから断ってるんだ。察っする事が出来ないのはわかるが、それなのに焦燥感を抱かずにはいられない。杏相手でなければ凄めば簡単に済むが、そういうわけにもいかない。

 だから俺は道化を演じる。

 

「実は俺の家は町でも有名なゴミ屋敷と名高い家でな、半径一キロに近づくだけでその異臭に失神する人続出なんだよ。被害を抑える為にも、教えるわけにはいかないんだよ」

「いつまでそんな冗談言い続けるつもりよっ」

「ちょっと待て杏、別に良いだろ幸希の家がどこだろうと。プリントとかなら此処に持って来れば良いだろ」

「……まぁ、ほぼ毎日ここに居るなら、それでも良いけど」

 

 いっその事逃げ出そうと思った瞬間、岡崎からの思わぬ援軍に救われ難を逃れられた。

 どうして助け舟を出してくれたかはわからないが、今は岡崎に感謝せずにはいられない。言葉にしてしまったら、そうまでして家を知られたくないのか、と思われるかもしれないから口にはしないけど。

 どんなことをしようと、家は知られたくなかった。知られるという事は、いつか尋ねる時が来るかもしれない可能性が一%でも生まれるからだ。もし、それがあの時だったら……俺は今の生活全てを捨ててしまうかもしれない。それだけは避けたい。

 

「悪いな杏に椋。此処にはいつもいるから何かあったら遠慮なく来てくれ」

「僕の部屋だよっ」

「お兄ちゃんって、いいお友達が沢山いるね」

 

 そう言えば、この春原の妹に自己紹介はしてなかったな。

 一応、此処に来る原因を作った張本人なんだし、挨拶ぐらいはちゃんと済ませておくか。

 確か、ポケットに何かお菓子が入ってたような……。おっ、飴玉があった。

 

「春原の妹よ、今更ながらに自己紹介をしよう。有耶無耶になっちまったしな。俺は榊原幸希だ、よろしく。ほれっ、飴ちゃん食うか?」

「わぁ~苺味だぁ、ありがとうございます榊原さん。それと、わたしの事は芽衣と呼んでください」

「うむ芽衣よ、困ったことがあったらそこの兄貴より頼りになる俺に相談すると良い。気が向けば助けてやらんでもない」

「はいっ、迷わず相談しますねっ」

 

 苺が好きだったのか、にこにこと上機嫌にな表情をしている春原の妹……もとい芽衣は、初めての邂逅時からは考えられないぐらい一気に信頼を寄せてきたのを感じる。

 

「お前って、小さな女の子には物凄く懐かれるのな」

「もしかして…………幸希ってロリコンなの?」

「さか……榊原くん……っ」

「変な情報を追加するな岡崎っ! それと杏に椋! それはありえないからなっ!」

 

 こんな事、勘違いされたらたまらん。

 

「なんだよ小さい女には懐かれるって、自慢じゃないが学校じゃ俺は嫌われ者ナンバーワンだぞ」

「自身気に言い切る事じゃないだろ。それに、風子とか宮沢とかにはお前懐かれてるじゃねえか」

「あれは懐いてるとは言えないだろ」

 

 風子はただ俺をヒトデ協会の人間だという妄言を信じているだけだし、有紀寧は資料室でたまに会う客と店主みたいなものだ。いずれにせよ懐くという心情からは程遠い存在だろう俺は。

 それに、杏以外の人に懐かれても意味はない。

 いつだって欲しいものは思うようには手に入らない。

 

 

 時間も経過して夜が始まろうとした頃、杏達はそろそろ帰らなくちゃと腰を上げた。

 

「あっ、それじゃあわたしも。明日また来るからねお兄ちゃん」

 

 芽衣もまた一緒に立ち上がって春原に別れの挨拶をした。

 彼女は今夜から、ここにいる間の三日間を杏と椋の自宅にお世話になることになったらしい。と言う事は、杏とひとつ屋根の下で寝泊りするってことだよな。今すぐにでも代わってほしい。

 一緒に夕食とか、お風呂でバッタリ会うお約束とか、そういったイベントが目白押しだろう。

 

「それじゃあ幸希、ちゃんと大人しくしてなさいよ?」

「わかってるよ。お前がそう言うなら、ちゃんと大人しくしてるさ」

 

 当分は学校にも行けないんだし。

 ちょうど良いから古河のおっさんがやってるパン屋にでもまた行ってみようかな。

 

 

 ※

 

 

 陽平の部屋から去り、彼の妹である芽衣を連れて杏は双子の妹と一緒に自宅へと向かっていた。

 奇しくも陽平の部屋へと行く時と同じ面子で自宅に帰るとは彼女も想定しておらず、不思議とこみ上げる可笑しさに顔を綻ばせた。

 

「良かったんですか? わたしがお邪魔しちゃっても」

「気にしなくても良いのよ。ウチの両親、今日から新婚旅行に行ってて休み明けまで帰ってこないから」

「遠慮しないで良いですよ、芽衣ちゃんが来てくれて嬉しいです」

「えへへ、それじゃあお言葉に甘えてお世話になります!」

 

 初対面なのに家に迎えてくれたそれが芽衣には嬉しかったのだろう、小さな少女は向日葵のような笑顔を咲かせていた。

 杏の家に到着するのはそれほど時間を要しなかった。日も暮れ路地に点々と灯った街灯の下を歩き、到着した三人は先導する杏のあとについて家屋へと入っていった。

 

「お邪魔します」

 

 粗野な兄を反面教師にして礼儀を学んだのだろう芽衣がそう言って家に上がった。

 先導してリビングに客人を迎え、暗闇に満ちた空間を照らす為に電灯のスイッチを入れた。

 

「よしっ、まずは晩御飯にしましょっか」

「あっわたし手伝います」

 

 杏の提案に芽衣は手を挙げて主張した。

 おおかた何もしないでいるのは悪いと思ったのだろう、と杏は思った。

 事実それは間違いではないだろう。陽平の私室や、帰路での会話で感じたのは、年齢とは反比例して想像以上にしっかり者だという印象だった。

 しかしだからこそ、彼女には客人としてもてなしを受けて欲しい。中学生なのに年上に遠慮をしていては、後々後悔をする羽目になると杏は思っているからだ。

 

「芽衣ちゃんは、ここで椋と一緒に出来上がるのを待ってなさい。お客さんなんだから」

「でも……」

「良いからっ、わかった?」

「芽衣ちゃん……わたしと占いでもして待ってましょう?」

 

 年上の二人―――ましてはこの家の住人である二人に強く言われては反論など出来るわけもなく、芽衣は大人しく二人の要望に応える事になった。

 両親が結婚記念日で旅行に行って不在という現状、まともに料理が出来るのは杏一人しかいない。

 むろん椋がからっきし料理が出来ない、と言うわけではないが、彼女が完成させた品はお世辞にも“美味しい”とは言い難い味をしている。技術向上を支援している杏はこれを度々味見しているが、未だ合格点を上げるのは早すぎる、というのが杏の見解だった。唯一の例外として幸希の顔が浮かび上がったが、あれも強がりから出た言葉だろう。

 とにかく、この家唯一の料理人たる杏は、楽しげに笑う居間の二人を傍目に黙々と調理をし続けた。

 慣れた手つきで次々と料理を完成させ、出来上がった品々を椋がテーブルに運び、晩御飯が完成した。

 

「あまり時間かけられなかったから、ちょっとお粗末かもしれないけど……まっ、気にしないでくれると助かるわ」

 

 謙遜した口ぶりの杏が作った料理は、はたして本当に手抜きで作ったのだろうと疑わしい完成度の高い品ばかりだった。

 見ているだけで空腹を誘う料理を、呆けたように口を開けて見入っている芽衣は数秒そのままの態勢で静止していた。そして、思い出したように動き出した。

 

「す、凄く美味しそうです! 杏さんって、料理上手なんですね!」

「そう? これぐらいならすぐに出来るようになるわよ」

 

 感動をあらわに言葉にした芽衣に、気恥ずかしい感情が込み上げて来た杏は更に謙遜で返した。

 遠くから女子の尊敬と、同性に向けられる好意を逸脱した感情を向け続けられていた杏ではあったが、褒められるという事には慣れていなかった。それ故だろう。彼女はもう一人この場に居る事を、すっかり失念してしまった。

 

「わたしも、練習……してるのに」

 

 言わずもがな、声を落としたのは双子の妹の椋だった。

 簡単にやってのけ言ってのけた杏の言葉が突き刺さったのだろう。椋は失意に染まった顔色で俯き、周りを淀んだ空気が漂い始めている。

 

「ち、違うのよ椋。……別にこんな事も出来ないとか、そういう意味で言ったんじゃなくて―――」

 

 異変に気付いた杏は弁解を述べるが、一向に椋の気分は沈んだままで……むしろこの言葉がとどめとなってしまった。

 

「こんな事も、出来ない。……そうだよね、これじゃあ美味しいお弁当なんて、出来ないよね……」

「あちゃ~、この子ったら変な方に思考がいっちゃってるわ」

 

 杏は失言に後悔して額に手を打ち、せりあがったものを吐息にして吐き出した。

 自閉から脱するにはそれからさらに数分の時間を要した。

 

 

 一悶着あった食事時が終わり、三人は順番に風呂に入り、就寝するのみとなった。

 制服や普段着からパジャマに着替え、一同は居間に敷かれた三人分の敷布団の上に座っている。勿論、杏と椋には各自の部屋がありベッドも配置されてはいるのだが、せっかくのお泊り会に一人寝は勿体無いと椋の提案で居間に寝る事に決まったのである。

 杏もこの意見には二つ返事で賛同した。

 女性が三人、就寝前に顔を突き合わせて会話に花を咲かせる。自然と、必然なのか話題は恋の話になっていた。

 

「お二人は、恋人とかは居るんですか?」

 

 この芽衣の何気ない一言によって、会話は急速に中身あるものになった。

 先制をきったのは、以外にも椋だった。

 

「わ、わたしは……いる……かな」

 

 言っている最中に意中の男性でも想像していたのか、椋の声は上擦り視線が右に左に彷徨っていた。対象は言わずもがな、現在学校で話題の渦中にいる榊原幸希だろう。が、残念ながら恋人とはお世辞にも言えないのが現状である。椋は緊張と昂揚で上手く理解できていなかったのだ。よって、杏が補足として恋人ではなく意中の人と芽衣に説明した。

 以前、ゲームセンターで問うたときに聞いた杏には新鮮さなど感じられず寧ろ―――何故椋が幸希を好きなのだろうか―――疑念の方が強かった。

 杏には当然の事実だが、芽衣には驚愕だったらしく、大きな声を上げて心意を問うように身を乗り出していた。

 

「誰なんですかそれっ!? 同じ学校の人? 年上? それとも年下ですか!?」

「えっと、あ……いや、その……」

 

 もしこの場に朋也が居合わせていたなら、やはり兄妹だな、と感慨深く感じただろう。それぐらいに、陽平が有紀寧について朋也に問いただしている時の姿と酷似している。

 同じように陽平を知る杏も、また内心でやはりこの兄妹は似通った点があったと乾いた笑い声を上げた。

 芽衣の猛攻に反撃する間も与えられない椋は、苦笑いを浮かべながら息苦しそうにしていた。

 そう簡単には言えないだろう。椋の性格から考えれば、意中の相手の名前を挙げるなんてそう簡単に出来る事じゃない。なす術もなく言葉を詰まらせる椋に、そろそろ助け舟を出そうと思った……そのときだった。

 杏が予期していた事態とは異なった行動に椋が移った。

 

「わ、わかりましたから……ちゃんと言います、ね? だから芽衣ちゃんも落ち着いて下さい」

「えっ? 言うの椋?」

 

 根負けしたのは予想外だった。意外な発言に驚き、杏は目を見張った。

 

「う、うん」

「ここまで来たんですから、止めないでくださいね? 杏さん」

「いや、まぁ椋が良いって言うならあたしに止める権利なんかありゃしないんだけど……」

 

 協力すると言った以上、杏は椋の決定に口出しをする必要もないと判断した。

 人の恋路に口出しするのは杏の性分ではある。しかし、必ずしも助言をするわけでもない。妹に不利益をもたらす発言は、杏としても本意ではないのだ。よって、彼女が決意した以上それを咎めるような気概など懐かない。

 暗に了承され、好奇心が膨らんだのだろう乙女は気を取り直し、改めて椋に問うた。

 

「それでそれで? 誰なんですか椋さん?」

「……絶対に誰にも言わないでくださいね?」

 

 もし芽衣が気まぐれや口を滑らしてばらしてしまえば、それが幸希本人に知られてしまえばもう後には引けなくなってしまう。

 未だ彼を良く知らない椋からしてみれば、短期決戦は不利としか言いようがない。よって、この秘密は絶対に漏らしてはいけない。ならば何故彼女はそれ程のリスクを背負ってまで、態々打ち明けるのだろうか。

 頬を赤くしながら深呼吸を繰り返している妹が何を考えているのか、生まれた瞬間から姉という肩書を背負う杏には理解出来なかった。

 

「大丈夫ですっ。これでもわたし口固いですから!」

「兄貴の事を考えると、ちょっと心配になってくるわあたしは」

 

 胸を叩いて豪語する芽衣。その仕草が兄の面影と重なり、杏に言いようもない不安が過ぎった。

 姉の不安などいざ知らず、大きく吸い込んだ息を吐き出して、椋は顔を上げた。

 

「じゃあ、言います…………その、同じクラスの……榊原くん……です」

「榊原……って今日兄の部屋に居た、あの人ですか?」

「はい、その榊原くんで合ってます……」

「どうしてだかわからないんだけど、本当よ。あの傍若無人が服着た、やたらと偉そうな奴が好きらしいわよ」

 

 深く溜息を吐いて杏は瞼を閉じた。

 暗くなった視界の中に、薄ぼんやりと幸希の能天気な顔が浮かび上がり思わずその面を殴りたくなった。

 藤林杏にとって、榊原幸希という人物はよき友人であると同時に、頭痛の種でもあった。それは、不良トリオとして有名な一人ではあるが、他の二人に比べて幸希の行動は過激だったからだ。遅刻が多いぐらいと授業をさぼる以外では基本的に無害な朋也や、乱闘騒ぎを起こして退部になった陽平と比べて、幸希はそれこそ“不良”というレッテルが良く似合う人物だった。

 少なくとも、杏が知る人物は皆そう評価していた。というのも、幸希の人物像が影響しているのだろう。尊大な態度で、勝つためなら何をしても良いという卑怯者と揶揄されるような行動にも迷いが無い。

 友人として、この問題に頭を痛めないわけがないのだ。

 

「意外でした。でもわたしは良いと思いますよっ」

「えっ、あいつが?」

 

 信じられない物を見るような目で杏は芽衣を見た。

 あっけらかんとした顔で表情を崩さない所を見ると、どうやら本気で言っているらしい。

 

「はいっ、始めはわたしに嘘吐いた人で、しかも顔が怖かったですけど……なんとなく良い人だって感じました」

「それ……単なる悪口にしか聞き取れないんだけど」

「えぇ~!」

「そんなことないよお姉ちゃん。榊原くんは、優しい人だよ」

「いや、否定するつもりは無かったんだけどさ」

 

 言われずとも幸希がどんな人間なのかは杏も理解している。表面上を見れば確かに彼を恐ろしく思う者もいるだろうし、内面だって褒められるような思考をしていない。それに関しては杏も椋でも擁護するのは難しい。

 では何故、そのような男に身を寄せるのか。それは彼がそれだけの男では無いと感じ取ったから。杏にしても、椋や……そして芽衣も僅かに幸希の奥底に秘めたものを感じ取ったからこそ、ただ性格の悪い男と判ずることが出来なかった。

 自分を秘匿する事に徹底している幸希から、己を語らせるのはほぼ不可能と言っても良いだろう。それこそ、言い逃れが出来ない状況に追い詰めない限り。

 

「じゃあ次は杏さんの好きな人を教えてくださいっ」

 

 話は椋で終わりでは無かった。

 芽衣は次なる標的を杏に定め、逃さぬよう怪しく光る双眸の眼差しを突き刺している。

 

「なんであたしは居る前提なのよ!」

「細かいことは気にしたら負けですよっ」

 

 何に負けるのか理解出来ない杏は、それなら負けでも構わないと逃げの一手を講じようとする。

 

「そんなの、あたしには居ないってば!」

「えっ? お姉ちゃ―――」

 

 何も考えてないだろう椋の発現に、重ねるようにして杏は告げた。

 

「椋は黙ってて」

「あう、ごめんなさい」

「へ~……そういう事ですか」

 

 にやにやと締りのない表情で杏を見据え、確信を持ったように言った芽衣にはすでにこれが杏の吐いた咄嗟の嘘だと見抜いているのだろう。

 一方の杏にも、見え見えの嘘が既に意味を成さなくなったハリボテになってしまったのに気が付いていた。誤魔化そうにも顔は熱を持っているし、椋には嘘を咎められ、ぐるぐると思考が交錯しその中心に思い人の顔が鎮座していた。

 少しでも思い人―――岡崎朋也の顔を消し去ろうと両手で顔を覆って呻き声を上げるが、芽衣相手にこの行動は無謀だ。

 

「どうしたんですか~杏さん? なんだか、何かを必死に隠そうともがいてるように見えますよ~」

「気のせいじゃない? これは、最近流行ってるダイエット体操よ」

「……無理があるよ、お姉ちゃん」

 

 苦し紛れの発現にも現実味がなく、椋は肩を落として溜息を吐いた。

 言い訳を考えようにも、杏の頭の中では沢山の朋也が犇めき合って彼女の脳内を埋め尽くしているのだ。それ故に、上手く思考が回らずに結果空回りしてしまった。

“お願いだから、今だけはどっかに行っててよ朋也! いつもは勝手に居なくなるくせに!”

 現実のつれない朋也とのギャップに悩み、更に杏を煩悶させた。

 一部始終を観察していた芽衣は、はたと何か考えが浮かび上がったのか、独りでに首肯して何かを確認し始めた。そして、布団に蹲る杏に視線を転じた。

 

「すいませんでした、もうこの質問はやめます」

「……ほんと?」

 

 一転した態度に疑念を拭い去れない杏は糺すように言って、芽衣の表情を観察した。―――嘘は見られない。

 信じても大丈夫だろう、と杏は警戒を説いた瞬間だった。

 芽衣はにこやかな笑顔のまま言った。

 

「はいっ、もう岡崎さんが好きなんですね? なんて質問はやめにします」

「なんで朋也が好きなんて知って―――はっ!?」

「…………アタリ、でしたか」

 

 鎌かけだとわかったときにはもう遅かった。

 言質を取られた杏にはもう言い逃れは出来ない。感情の高ぶりのままに言ってしまった言葉を飲み込むことは出来ないのだから。

 

「やっぱりそうだったんですね」

「……な、なんで朋也だってわかったの?」

「なんとなくですっ」

「なんとなくって……あぁ、油断したわ……」

 

 額に手を当て天井を仰ぎ見た。蛍光灯の明かりが眩しくて、思わず目が細くなった。

 そもそもどうしてこうまでして朋也の事を隠し通したかったのか、それは杏が自分に関しての恋に臆病だからだった。人の恋愛相談や、思いを成就させるために暗躍するのが好きな性質であった杏だが、それなのに彼女は恐いのだ。自分が思い破れ否定されるのが。

 朋也が自分を好いているとは、好意的に考えてもまずない可能性のが高いだろうと杏は予感していた。思いたくないと目を逸らしながら、しかし直視せずにはいられないかった。そしてそれに満足している自分もまた居た。協力すると言ってくれた椋には後ろめたいが、それでも杏は自分から積極的に何か行動しよう、という考えには至らなかった。

 もし勇気を出して告白して、振られてしまったら。もう二度と元の友達ではいられないかもしれない。それが杏にはどうしようもなく怖いのだ。

 だから、真実を知って息巻いてる芽衣の提案にも、否定も肯定も出来なかった。

 

「兄のお友達二人が杏さんと椋さんの好きな人だなんて、なんだか素敵です! わたしも、短い間ですけど何かお手伝いできませんか?!」

「あ~、いや別に……あたしよりも、椋の方を手伝った方が良いわよ」

「わ、わたしっ?」

 

 自分よりも椋を優先する。この言い訳を盾に言い逃れたつもりだったが、杏は中学生のポテンシャルを見誤っていた。

 椋と芽衣は幸希にどうやって振り向いてもらうか、どんな人物なのか趣味は……など色々聞き出していた。これで自分にお鉢が回る事は無くなっただろう、と安堵していた。が、そうはいかなかった。

 

「じゃあじゃあ、杏さんは岡崎さんの何処を好きになったんですか?」

「な、なんでそんな事言わなきゃいけないのよ!?」

「良いじゃないですか、椋さんも気になりませんか?」

「そういえばお姉ちゃんから、そう言うのって聞いたことありませんでした」

「……椋まで……」

 

 協力者が増え、追求が強まった今、杏に言い逃れの道は残されていなかった。

 

「あ~もうっ、わかったわよ! 言えば良いんでしょ言えば! でもそんな大したもんじゃないわよ?」

 

 

 ※

 

 

「なぁ、明日は休みなんだし起きたらお前の妹でも迎えに行かないか?」

「なんでそんな面倒くさい事、僕がしなくちゃいけないのさ。ほっといても勝手にこっちに来るでしょ」

「わかってないなー、もしかしたら道中で誘拐されるかもしれないんだぞ。そうじゃなくても、どっかの馬鹿に絡まれるかもしれないし、迎えに行ってやった方が良いんじゃね? 俺もついて行ってやるから」

「珍しいな、榊原がそんな事言い出すなんて。芽衣ちゃんの事でも狙ってるのか?」

「だから俺はロリコンじゃねえっての!」

 

 しいて言うなら俺は杏コンだ。杏婚したい。

 春原の妹が杏の家に泊まってるなら、それを口実にすれば少なくとも明日は確実に彼女に会える。これを逃す手は無いだろう。

 

「どうせ暇なんだから、ついでにみんなで何処かに出かけようぜ」

「んー、まぁ確かに此処に来たってする事なんかないし、それならいっそ……」

「岡崎はどうだ? 明日暇か?」

 

 何やらブツブツと呟いて思案している春原だが、腹の内ではもう決まってるんだろう。こいつ、実はシスコンだったのだ。

 杏達が帰ってから妹の話をしていたら、何かと嫌そうな口ぶりをしてた癖に顔が若干緩んでいたのだ。感情が隠しきれてなかった。

 このままなら春原は賛成するだろう、と思い岡崎も巻き込んで面白おかしく行こうと誘ったんだが、肝心の岡崎の表情は優れなかった。

 

「悪いっ、俺明日は古河の家に行かなくちゃ行けないんだ」

「マジでっ!? えっ、なんで? もしかして付き合ってるとか?」

 

 もし本当なら、俺にも希望が見えてくる。

 考えに耽っていた春原には、聞こえていなかったのか依然としてベッドの上で唸っていた。

 

「ちげぇよ! いま風子が古河の家に厄介になってるから、それで様子を見に行くんだよ」

「なんだ……風子か」

 

 古河じゃないのね。別に風子と言い仲になっても俺は構わないんだけど。

 嘆息したとき、春原が丁度考えがまとまったのか俯き加減だった頭を上げた。

 

「しょうがないなぁ、まったくそれじゃあ僕が迎えに行ってあげるか」

「あーはいはい、わかったから。それじゃあ明日の朝行くぞ」

「お前ら、杏の家がどこにあるのか知ってるのか?」

「あっ、僕知らないや」

「俺知ってるぞ」

「マジかよっ!?」

 

 二年の時にストーカー行為すれすれの、愛という名の尾行活動が実を結ぶ日が来るとは。

 いずれにせよ、これで明日の予定は決まったな。後は現地に赴いて杏と椋が俺達の誘いに乗ってくれるかどうか……だが。まあ大丈夫だろう。杏はああ見えて面倒見が良い他人思いだし、椋は断れない性格だし。

 杏……今頃三人で盛り上がってる最中だろうか。俺の話題で盛り上がったりしてないかな。

 

 

 ※

 

 

「朋也を意識したのは二年生の時だけど……別に好きなった理由なんて、大したものじゃないわよ」

 

 椋と芽衣に降伏した杏は、当時の心境を振り返ってみた。

 いつの間にか話す様になっていた朋也だが、考えてみればいつ、どこで、どうして彼を好きになったのかなんて明確な理由が出てこなかった。彼女としてはこれが普通で、今の感情が大事だった。

 だけど、芽衣はそれじゃあ納得がいかない様子だった。

 

「え~、じゃあ特に理由もなくて……気が付けば好きになってたっていうんですか?」

「簡単に言えばそうね。しょっちゅうあいつらと遊んでて思ったのよ―――あ、あたしこいつの事が好きなんだ……って」

「お姉ちゃんのこんな話、初めて聞いた」

 

 ますます話は盛り上がった。

 

 

 翌朝になったら杏の家に行くというのが、楽しみでしょうがない幸希は心躍る気持ちを抑えきれず顔に出ていた。

 それを見た朋也は、話しの流れから考え付いた理由を訊ねてみた。

 

「もしかして藤林の家に行けるのが、そんなに嬉しいのか?」

「バッ、な……なな、なに言ってんだよ! 別に俺ぁ―――」

 

 図星を突かれ狼狽する幸希だったが、心中で朋也が“藤林”と呼称したのに気が付き、次第に冷静さを取り戻した。

 違うと言えば違うのだが、違わないというのもまた事実であり、幸希は返答に困ってしまった。

 

 

 いつの間にか布団からテーブルに場所移動をした三人娘は、お菓子を広げて話に花咲かせていた。

 朋也についての話が終わり安堵した杏だったが、次に標的になった椋に、彼女は仕返しするために芽衣に助勢して詰め寄った。

 

「幸希の何処が好きになったのよ椋。この際だから、お姉ちゃんに行って御覧なさい?」

「杏さんだって言ったんですから、腹をくくった方が良いですよ?」

「あうう……」

 

 勢力が一転し、あっという間に窮地に立たされた椋は限界まで身体を捻って彼女らから視線を逸らそうと必死になっていた。

 椋にとって、幸希を意識するきっかけになった出来事は、大切な思い出であっておいそれと話せる事ではないと思っているのだ。きっと幸希本人は覚えていない、そんな小さな事だが、椋には確かにそれからの自分を形成する大切な思い出だった。だから、

 

「い、言えないよぉー」

 

 こんなお菓子をつまみながら話せるような事じゃない。

 椋の嘆きは夜の空まで響き渡った。

 

 

 朋也は藤林と呼称するのは椋に対してだ。よって、さっきの発言は杏の家という表現ではなく、椋の家という事になる。

 幸希としては椋よりも杏のが圧倒的に優先されるので、考えに入っていなかった。

 

「ま、まあ……楽しみじゃないと言ったら嘘になるな」

「回りくどいな」

 

 幸希の言動に苦笑いを浮かべる朋也だった。

 

 

「お二人は、いつ告白するんですか?」

「えっ、告白ですかっ? そんなの、恥ずかしくて……まだ出来ません」

「告白よりも、今は椋が上手くいく方があたしにとっては先決ね」

「付き合いたいとは思わないんですか?」

「……まぁ、失敗するよりは、成功するほうが良いに決まってるわね」

 

 

 

 

「(いつの日か、杏に告白してもし上手く行ったら……やべぇ、想像しただけでトリップしてしまう)」

「な、なあ岡崎。なんか榊原が不気味な顔してるんだけど……」

「う~ん、こりゃまた酒でも飲んだか?」


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