模型戦士ガンプラビルダーズI・B   作:コマネチ

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サツマがアイを立ち直らせようと誘ったサバイバルバトル。しかしそこにも違法ビルダーの魔の手は迫っていた。ラグナロクプラン・ガンダムフリストを駆る違法ビルダーはサツマに復讐を企てる。


第52話「流転とスウィートポテト(後編)」(参上!チームスゥイートポテト!)

「クックック!久しぶりだなぁ!県内予選以来か!」

 

「予選で戦った相手?!」

 

「声からして……確か二回戦辺りで戦った相手ですわ。やったら口先だけでかいのがいましたもの」

 

「ケッ!言ってやがれ!あの時は不覚をとったが今度はそうはいかねぇ!この『ラグナロクプラン・ガンダムフリスト』であんたらを倒してやるぜ!そっちのアイとか言う奴らもろともな!」

 

「アイはアタシじゃないけどアタシらも?!」

 

「あぁそうさ!この機体をくれた奴が言ったんだ!今日アイとか言う奴らがここに来るから徹底的に屈辱を与えろって……なぁ!!」

 

 そういうや否や、フリストと呼んだ機体は。下半身の両前足を上げる。そして先部についていた銃口から先程の様なビームを発射する。泡をまとった様なビームが射線上の木々をなぎ倒して二機を襲った。破壊と同時に猛烈な土煙を上げて二機を巻き込んでいく。

 

「すげぇ!すげぇぞ!この機体は!これが違法ビルダー、いや新世代ビルダーの力か!!」

 

「何が新世代ですのよ!!」

 

 土煙の中から変形したビルドイージスが飛び出してきた。迎撃しようと再び撃つフリストだが、難なくイージスはかわして突っ込んでくる。イージスはそのままスキュラを発射するがフリストは全身にバリアを張りビームを防いだ。

 

「やはりビームは通用しませんか!ならば!」

 

 プラフスキーウイングを展開させ凄まじいスピードでフリストの周りを飛び回るイージス。どうにか迎撃しようと、フリストは両前足からビームサーベルを発生させ振り回す。しかしイージスのスピードにはついていけない。

 

「くっ!ハエみてぇに!ぅおっ!!」

 

 その時、フリストにレールガンが二弾命中し、フリストは体制を崩した。ナナのストフリの撃ったレールガンだ。

 

「このっ!チビどもがぁっ!!」

 

「そのチビにみっともなくやられなさいな!!」

 

 直後、巡航形態のイージスがフリストの上半身に突っ込んできた。クローを突き出したイージスはフリストの上半身、丁度腹部の後ろ側に突っ込んでくる。高速で突っ込んだイージスは。フリストの腹部に轟音とともにめり込んだ。

衝撃で倒れそうになるフリストだったが四本脚を踏んばらせ、大地を少し滑る程度で済ませる。

 

「だ!だがこのフリストはこんなもんじゃねぇ!こんなのでやられるかよ!」

 

「噂通りの化け物ですわね!ならば!」

 

 直後、イージスのクローが展開。フリストもガンプラの扱いなので中は空洞だ。そしてイージスの10倍以上の大きさは内部でのクロー展開もたやすい。

 

「内側から破壊する!!」

 

 クローを広げるとそのままイージスはスキュラを撃ち込む。さっきと同じ拡散式だ。内部の攻撃にさすがにifsユニットでも対処できない。体内からのビームの乱射にフリストの上半身至る所からビームが突き破る。そのままフリストの上半身はもげて原型をとどめないまでに破壊。そのまま離脱しストフリの所へ戻るイージス。

 

「大したことありませんわね!この程度で終わりとは!」

 

「待って!あの連中はあれ位じゃ!」

 

 ナナがそう言うとフリストの破壊された腹部から上半身がメキメキと音を立てて生えてきた。ナナにとっては見慣れた光景だがサツマにとってはあまりにも異様な光景だった。

 

「再生ですの?!」

 

「コアになってる部分があるからそれを壊さなきゃダメだよ!ちなみにコアから広がる様に再生するからコアは多分下半身にあるわ!!」

 

「醜いですわね!機体のビジュアルといい、能力といい!!」

 

「ナナちゃん!サツマさん!」

 

 と、そこへアイのストライクが飛んでくる。フリストの大きさは遠目からでもあまりにも目立ちすぎた。

 

「違法ビルダーの新型機?!」

 

「アイ!気を付けて!」とナナが叫ぶなか、アイはライフルを構える。

 

「ん?アイ?そうか。お前がアイかぁ」

 

「?!」

 

 突然の反応にアイは聞くそぶりを見せながらも飛び出す。フリストの方も上半身の火器を乱射し、迎撃しようとする。

 

「この機体をくれた女から聞いたぜ。お前、友達から拒絶されたらしいなぁ!」

 

「な!!」

 

 その瞬間にアイの動作は遅くなった。それでも一瞬の事だ。「今は余計な事は考えない」アイはそう言わんばかりに首を振るうと、フリストにストライクはビームサーベルで切りかかる。フリストは袖のビームサーベルでそれを受け止めた。本来サイズが大きい分動きが緩慢になるのがお約束だが、違法ビルダーのifsユニットはその動きをカバーする。

 

「う!うるさい!!」

 

「ずっと友達だと思っていた奴が裏切るってのはショックだよなぁ!」

 

 フリストはストライクを薙ぎ払う動作で弾いた。すぐに体勢を直すストライク。

 

「どうだい?その女も新世代ビルダーになったんだ!あんたも俺達の側へ……」

 

「戯言を言うなっ!!」

 

 響き渡るアイの怒号、と同時にアイはユニバースブースターのビームキャノンを展開、スタービームライフルと一緒に撃ち込む。

 

「ヤタテさん!!ifsユニットを搭載した機体にビームは!!」

 

 サツマが止めるも遅かった。フリストは難なくビームを吸収。ifsユニットはビームを蓄えて力にするシステムだ。今のアイは頭に血が上っていた。

 

「馬鹿だな!こいつにビームを撃ち込むとは!!」

 

「しまった!!」

 

 供給したエネルギーでフリストは下半身からのスキュラを発射。アイは自分のミスに戸惑った物の、これをかわして反撃に出ようとスピードモードに切り替えようとする。

 

「ノドカだって!!自分がやった事の良い悪いの判別はつく奴だよ!違法ビルダーなんかに!!」

 

 なんやかんや言ってアイの方もノドカの事は信じていたらしい。アイの叫びと共にストライクのプラフスキーウイングはストライクの背中に発生。これで反撃に出ると思われたが、

 

「それはどうかな?俺達が使ってるこの機体はな、そのノドカって女から受け取ったんだからよ」

 

「っ?!」

 

 別の声がアイの耳に響く。それを聞いた瞬間、アイの手の動きが止まった。と同時に後方からもう一機のフリストが飛びながらビームサーベルで切りかかってくる。今のアイは棒立ちだ。

 

「アイ!!危ない!!」

 

 ナナのストフリがとっさにストライクを庇おうとする。が、それより早く一機の機体がストライクを庇った。サツマのイージスだ。袖から発生したビームサーベル同士がスパークする。

 

「実力で適わないから口先頼みですか!!とことん情けないですわね!!」

 

「サ!サツマさん!!」

 

「ふん!!物好きだなぁ!!だが!!」

 

 次の瞬間だった。イージスとストライクを横側から何条ものビームの雨が襲ってきた。ストライクとイージスはそのままビームの雨に晒される。

 

「な!なんですの!!」

 

「うわぁぁっ!!」

 

 トドメとばかりにひときわ大型のビームが二機を呑み込んだ。スキュラだ。フリストの三機目がいたらしい。そのまま蒸発かと思いきや、ストライクとイージスは大きく吹き飛ばされ開けた場所に落ちていく。二機ともスキュラを吸収しようとして吸収しきれなかったのだろう。

 二機のアブソーブシールドは大きく破損。もう吸えない状態だ。焼け野原となった大地に墜落する二機。アイ達の目の前に悠然と降り立つ三機目のフリスト。そしてそれに続く20機近くのネフィリムガンダムとマステマガンダム。スキュラの前の一斉射撃はこいつらの仕業だったらしい。

 カサレリアの自然は見る影もない。大火事となった大森林に佇むフリストはまるで怪獣にも見えた。

 

「さ!三機ともそんな大型機を!!」

 

「ネフィリムとマステマまで!」

 

「そうさ。こいつはお前らを倒す為にノドカって女がくれたんだ『これを使ってアイを倒せ。徹底的な屈辱を与えろ』ってな」

 

「嘘だ……嘘だよ。ノドカがそんな事する筈ないよ」

 

 アイの声が震えている。アイの心に亀裂が入り始めていた。

 

「解らないかなぁ。この機体。それがその友達って女の答えなんだよ。普通違法ビルダーでも無い俺達にこんな貴重な新型機を与えるなんて考えられるか?」

 

「ヤタテさん!奴のたわ言に惑わされないで下さいまし!!」

 

 サツマのイージスが立ち上がろうとするも膝が震えている。そんなイージスをフリストがスキュラでトドメを刺そうとするが。発射直前で機体右側から爆発が起こりスキュラは大きくアイ達を逸れた。ナナのストフリが腰のレールガンで妨害したのだ。

 

「貴様!!」

 

「うぁっ!」

 

 フリストはストフリに腕のビームガンを撃つ。ストフリは直撃しなかったものの、大きく吹き飛ばされ倒れこむ。

 

「ハジメさん!!」

 

「フン!」

 

 イージスも切りかかるがフリストはビームサーベルで軽くいなす。イージスは地面に激突。

 

「無様だな。県内予選では敵なしだったビルダーが、友人関係一人うまくいかなかっただけでこの有様だ」

 

 二番目に出てきたフリストのビルダーが言う。勝てると確信したのか挑発には余裕が感じられた。

 

「こ……これが現実だなんて……ノドカ……なんで……!」

 

「そう!これが現実だ!お前はその友達って奴の事を何ひとつ解ってなかったって事だ!!はーっはっはっは!」

 

 フリストのビルダーが笑うと僚機の違法ビルダーも笑い声を上げた。アイは自分が消えてしまいそうだった。

 

「全機、一斉射撃だ。あのストライクとイージスを撃つ!」

 

 そう言うとフリストは全火器をアイ達に向ける。もう駄目かとアイ達が思った。その時だった。

 

「別にまだ信じてたっていいんじゃないかなぁ」

 

 気の抜けた声が響く。何だとわずかな時間に疑問に持つアイ達。

 

「この声!遅いですわよ!!」

 

 ただ一人、サツマにとっては聞き慣れた声だった。直後、最初にナナ達と遭遇したフリストめがけて二個のウェポンコンテナが突っ込んできた。ブースターを内蔵したアメイジングウェポンバインダーだ。

 とっさの事に対応出来なかったフリストに、コンテナは轟音を上げながら勢いよく突き刺さった。一つは上半身に、もう一つはスキュラに、バインダーは半開きになると。ミサイルがせり出し、フリストの内部から一斉に発射。

 

「い!いかん!スキュラの部分は!うぉぉぉおおお!!」

 

 そのまま一機目のフリストは爆炎に包まれながらバインダーもろとも崩れ落ちた。スキュラの部分が再生コアだったのだ。突然の事に違法ビルダー達は慌てる。

 

「な!なんだ!何が起きた!!」

 

「し!指示を下さい!」

 

「構うもんか!今のうちにストライクとイージスを!!」

 

 違法ビルダーは最優先でストライクとイージスを破壊しようとする。しかしそれを予想したかの様に大型のミサイルが飛んでくる。これが違法ビルダーとアイ達の間で爆発。爆風はなく代わりに『ブワッ!』と勢いよく黒煙がミサイルから発生。広範囲に包み込んだ。スモークディスチャージャーだ。

 混乱する違法ビルダー達を尻目にアイのストライクの腰に何かが挟み込まれる。有線式の鋏上のアンカーだ。

 

「うわっ!何!」

 

「大丈夫だよ。それは敵じゃない。もっちゃん!アイちゃんのついでに回収するからそれに捕まって!!」

 

 謎の声が言い終わる前にアンカーは引っ込み始める。サツマは自分への対応に呆れる。

 

「ひでぇ!まぁいいですわ!スグリ!お願い!」

 

「もっちゃんなら簡単でしょ?!」

 

「当たり前ですわ!」とサツマは難なくアイのストライクに追いつきアンカーを掴む。そのままアンカーに繋がれた二機は黒煙を脱出。スモークの先には三体のガンプラがいた。オレンジに塗られたヤクトドーガの改造機と、MSV及びガンダムUCに登場した象の様な鼻を持つ機体。ウサギの耳をつけた様なジュアッグの改造機だ。そしてナナのストフリと、いつの間にか合流したソウイチのバイアラン・スパイダーである。

 

「無事スか!ヤタテさん!」

 

「ソウイチ君もいたんだ」とアイ。

 

「チヨコ!スグリ!もっと早く来れなかったんですの?!」

 

「ごめんねー。別の場所でも違法ビルダー達と戦っていたから。はい予備のアブソーブシールド」

 

 チヨコのヤクト・ドーガのバインダーが一つ開くと二つのアブソーブシールドが飛び出す。装備の予備も運搬しているらしい。

 

「もっちゃん。この二体が?」とナナ、ナナのもっちゃん発言にサツマは激昂。

 

「何ドサマギで呼んでますのハジメさん!!……えぇ、ヤクトドーガに乗ってる方がチヨコ、ジュアッグに乗ってる方がスグリですわ」

 

【挿絵表示】

 

「ヤクトは鳥顔が好きだから選んだんだよねー。スグリの方も動物好きだからジュアッグを選んだって感じかなー」

 

「もっと兎っぽいのがいてくれればそっちを選んだんだけどね」

 

 スグリの口調が変わってる。どうやらバトルの時に性格の変わるタイプの様だ。どうも現在進行形で危機的状況とは思えないのほほんさのあるのがチヨコとスグリだった。

 

「くっ!貴様らぁ!!ほのぼのしてるんじゃねぇ!!」

 

 スモークの中からフリストやネフィリム達が飛び出して来る。そしてアイ達に向けてビームを発射。散開し避ける各機。

 

「新型機だろうと!さっきは不覚を取りましたが本気を出せばワタクシ一人で!」と違法ビルダーに立ち向かおうとするサツマだった。だが、

 

「待って待ってもっちゃん。ザコは私達に任せて欲しいんだなこれが、皆に私達の実力を見せつけておきたいからね」

 

 やる気満々なサツマに反して呑気なままのチヨコが言った。

 

「……いいでしょう。任せますわ」

 

「へ?待ってよ!!相手は違法ビルダーの新型!それも二機よ!たった三機で!」

 

 心配するナナを他所にチヨコとスグリはお構いなしに前に出る。

 

「出来るよ?だって私達」

 

「県内予選優勝チームだからね!!行くよもっちゃん!!決め台詞決め台詞!!」

 

「あぁもう!仕切るのはワタクシですわよ!まぁいいですわ!サツマ・イモエ『メテオビルドイージス』」

 

「ヒルガオ・チヨコ『ブリザ・ドーガ』」

 

「ルコウ・スグリ『ラビットジュアッグ』」

 

 さっきまでのゆるい雰囲気はどこへやら。全員が真剣な表情で自機の名前を呼ぶ。出撃前の緊張感の再現とでも言うべきだろうか。

 

「チーム『スゥイート・ポテト』!!『目標を!!刈り取る!!』

 

【挿絵表示】

 

 三人同時に叫ぶや否や、三機とも一斉に空へと飛び出してゆく。

 

「ヘッ!飛んで火にいる夏の虫!」

 

 前面にネフィリムとマステマが出てくる。飛び出したイージス達三機をカモとばかりに狙い撃ちにするネフィリム達。しかしジュアッグとブリザ・ドーガ、そしてイージスは散会する様に回避、イージス以外の二機とも装備によって機動力は強化されていた。

 

「甘いねぇ。機体だけ変えれば勝てると思ったのかなぁ!」

 

 チヨコがそう言うとブリザ・ドーガのバインダーが少しだけ開く、隙間から飛び出したのは四丁の実弾ライフル。両腕とサブアームで掴むと同時にバインダーからミサイルを一斉に発射。その数は尋常ではない。土砂降りの如し数のミサイルが違法ビルダー達に向かっていく。

 

「う!うわぁぁっ!!」

 

 ミサイルで混乱している違法ビルダー達の中にブリザは突っ込むと同時にライフルを乱射する。やたらめったに撃ってるようにも見えるがその射撃は正確に敵のコクピットを射抜いていく。ただのライフルの威力ではない。遠目で見ていたアイ達は愕然としていた。

 

「や!野郎!!」

 

 離れていた違法ビルダー達がチヨコのブリザを狙い撃とうとする。が、それを二体の間を阻止するかのように大型ガトリングの弾丸が阻止、撃ったのは飛んでるラビットジュアッグ。スグリだ。

 

「熱くならないでよ。きたない言葉は耳障りだよ」

 

「何スかしてやがる!」とマステマとネフィリムはジュアッグに向けて一斉に撃つ。しかしジュアッグは背部にスカルウェポンのバインダーを装備している。フレシキブルに稼働するバインダーの為に変則的な動きでジュアッグは回避しつつ、両腕のロケットランチャーを違法ビルダー目掛けて撃つ。

 そのままマステマに着弾したロケットランチャーは大爆発を起こしてマステマの上半身を吹き飛ばした。爆発あっての実弾兵器ではあるが、改造してあるらしくこれまた相当な威力だった。スグリはそのままジュアッグのランチャーを撃ち続けて違法ビルダーを次々と落としていく。ジュアッグの周りで幾つもの爆発の花が咲いた。

 

「この!調子に乗るんじゃねぇ!!」

 

 そんな中、一機のネフィリムがジュアッグの後ろに回り込み、もう一機のネフィリムが前面から攻める。二機とも右腕のクローで仕留めるつもりだ。

 

「ちょっとは連携っぽいことできるんだ。でもさ!」

 

 直後、ジュアッグの頭部の耳が後ろに可動。これもロケットランチャーだ。「ゲッ!」と違法ビルダーが呻くもすでに遅い。ジュアッグは前後の敵をまとめて撃ち落とした。

 

「そ!そんな!!たった二機のガンプラに!!」

 

 フリストの違法ビルダーはこの展開に納得がいかなかった。自分は無敵の力を手に入れたはずだ。それをこんな簡単に崩されるなんて、と。そんな中、サツマのイージスは容赦なく切りかかる。

 

「性能に頼るだけだからそんな事になるんですのよ!!」

 

 イージスは両腕のビームサーベルでフリスト二機に立ち向かっていた。軽快な動きで翻弄するイージス、フリストは上半身のビームマシンガンで迎撃しようとするもイージスが小さい上に速過ぎる。しかしイージスもビームサーベルでは決定力に欠けた。

 その証拠にフリストの隙をついてイージスはフリストの首を跳ねた。が、すぐに新しい頭部が生えて来たため効果が無い。

 

「キリがありませんわ!!チヨコ!!」

 

「あいよー!」

 

 サツマの号令と共に、ブリザからのミサイルがさっきと同様に発射された。それはフリスト二機に収束されていく。フリストの大きさに合わせてか、その数はさっきの量を超えていた。土砂降りの如し数のミサイルがフリストに一機に向かっていく。早々に離れるサツマのイージス。

 

「く!うるせぇ!!」

 

 迎撃しようと違法ビルダーはスキュラでミサイルを撃つ。ビームに巻き込んだミサイルは撃破出来たが、撃ち漏らした分は真っ直ぐフリストに向かっていく。しかしそれでミサイルに気をとられる中、『ドンッ』という音と共にフリスト二機の背後に衝撃が走った。

 飛んでるジュアッグが逆さまの体勢でロケットランチャーを撃ってきたのだ。その威力にフリストの装甲は砕ける。が、決定打にはならない。再生中のままフリストの内一機は両腕のビーム砲で迎撃しようと撃ちまくるも。ジュアッグはさっき同様、鋭角的な動きで回避。背中のフレシキブルに動くスカルウェポンの恩恵だ。

 

「全然動き自体は予選の時と変わってないんだよねぇ。普通はリベンジなら戦法も変えるでしょうに」

 

「こんのや……ゥオッ!!」

 

 違法ビルダーが愚痴る直後、フリスト二機はミサイルにさらされる。数百メートルに及ぶフリストにとってはミサイル一つの爆発はさして意味がないだろう。しかしミサイルの数は尋常では無い。全身いたる所で起こる爆発がフリスト二機の外装を削り取っていく。瞬く間にフリスト二機の姿はボロボロになっていった。

 

「や!やってくれるじゃねぇか!だがな!」

 

 違法ビルダーが叫ぶ直後。フリスト二機の外装が中央部から広がる様に元に戻っていく。違法ビルダーのガンプラが持つ再生機構だ。

 

「確かコア部分から広がる様に再生するって言ってましたわね……」

 

 再生の中心部、二機とも上半身の腹部から再生してる。そこがコアだと判断する三人。さっきのミサイルはコアを把握する為の物だった。

 

「狙うはあそこ……どうやら……この技を見せる必要がありそうですわね!!」

 

「もっちゃん!やるの?!」

 

「もちですわ!」

 

「援護は?!エネルギーはいる!?」

 

「ノープロブレム!!」

 

 そう言ったサツマはイージスをモビルアーマー形態へ変形させる。そしてそのまま残りのエネルギーでスピードモードに切り替えた。イージスはモビルアーマー形態のままプラフスキーウィングを出現させ、フリストに突っ込ませた。

 

「さぁ!!さぁさぁ!!!正念場ですわよイージス!!ワタクシと共に!燃え上がりなさいませ!!」

 

 サツマの高揚した声に応えるかのように、そのままイージス全身の色がプラフスキーウィング同様に青く輝く。そしてその速度は更に増した。剛速球でフリストに迫るその姿はまさに光の矢。

 

「ちっ!おい!ここは任せた!!リーダー機の俺は少し身を隠すぜ」

 

 リーダー機のフリストが僚機を見捨てて退避する。再生の時間稼ぎだ。

 

「え!?ちょっとリーダー!っ!」

 

 動揺する僚機だがイージスが迫る。自分の大きさの十分の一にも満たない相手だというのに、凄まじい威圧感である。やられると恐怖した違法ビルダーは、

 

「ぅ!うわぁぁっ!!!」

 

 叫びながらスキュラの最大出力で真正面のイージスを撃つ。高出力のビームに飲みこまれるイージスだが……

 

「その程度でもっちゃんは止められないよ」

 

「舐めちゃ駄目だよ。私達の大将はね……!」

 

 スグリとチヨコが呟いた直後、イージスは飲み込んだビームを反射させる。最初にイージスが見せたスキュラの拡散の様に、ビームがかわす様に反射させてるのだ。

 

「ビルドッ!!バンカァァッ!!!」

 

 サツマが叫んだ直後、『ガッ!』と音を立ててイージスはフリストを貫通。腹部と下半身股間部を丸々と抉ったその威力に見ていたアイ達は驚愕する。

 

「ナッ!!」

 

 一瞬の事に理解しきれないビルダーと共に、二機目のフリストは爆散。そのまま逃げる三機目のフリスト目がけて突撃するイージス。

 

「う!嘘だ!嘘だ嘘だ嘘だ!!こんなアッサリと!!新型をもらったんだぞ!!」

 

「相手の友達をダシに使い、自分の友達を切り捨てたあなたに勝てると思いまして?!」

 

 そのままさっきと同じ手順でイージスはフリストに突っ込み貫通させる。

 

「がっ!!!」

 

 上半身と下半身が別れたフリストは勢いよく上半身が宙に舞い。そして地面に突き刺さった。

 

「ふぅっ!」

 

 丁度イージスのエネルギーも尽きてきたらしい。ウィングを解き、同時に変形も解くイージス。

 

「友達……ね。ク……ククク」

 

 安心していたサツマ達の耳に違法ビルダーの通信が入る。さっき上半身だけになったフリストだ。コアを外してしまったらしくフリストの上半身はうぞうぞと蠢きながら再生していた。

 

「チッ!仕留めそこなった!?」

 

 サツマは自身が一撃で仕留められなかった事に舌打ちしながらも銃を向ける。

 

「そういやぁお前も昔あの友達二人とチーム解消してたよなぁ。お前があの二人を見捨てて」

 

「だからなんだと言いますの!」

 

「同情してるのか?あのヤタテって女に。だが無理だね。お前の場合は友達を見捨てても友達は待っていた。だがあの女の場合は肝心の友達が拒絶した。お前の状況とはわけが違う」

 

「……」

 

 遠くで聞いていたアイの体が小刻みに震えている。ノドカとの関係はもう戻らない。そう間接的に言われて心に突き刺さる。

 

「ノドカって奴の本心を見抜けなかったお前に友達でいる資格なんて無いって事さ!!」

 

「……くっ」

 

「考えてることが解んなくたって、当たり前でしょ」

 

 それを遮った声がした。スグリだ。

 

「スグリ……?」

 

「友達だからって、考えてる事とか、どんな不満があるとか、口に出さないで理解は出来ないよ。だって別の命だもん」

 

「その通りだよ。解ってあげたかったらちゃんと話しなきゃ」

 

 チヨコもそれに続く。

 

「今更何を言ってるんだ!!こいつは直にその友達に『関わりたくない』そう言われた!もうどうしようもねぇんだ」

 

「一方的に、でしょ?そのノドカって人から。……ねぇ、アイちゃん。アイちゃんはどうしたい?その友達と……」

 

「私は……」

 

 アイの脳裏にノドカの笑顔が浮かぶ。それも赤ちゃんの時から現在までの成長の段階が流れる様に、だ。……ノドカ……赤ちゃんの時から一緒で、お互い親が共働きだからご飯を作ったりして、深く考えないで動くノドカのフォローで苦労して……、お互いが自立したいって分かれて……そして昨日絶交を言い渡されて……それでも……

 

「私……やっぱり……ノドカと一緒にいたい……友達に戻りたいよ!!」

 

 アイが涙で顔を濡らしながら叫んだ。拒絶されても、それでも友達でいたかったから。

 

「ちっ!!だが向こうはそうは思って……」

 

 違法ビルダーが分断されたフリストの下半身をコントロールする。起動した下半身はアイのストライクめがけてスキュラをチャージ。

 

「ねぇだろ!」

 

 そういった瞬間にスキュラを発射、ビームの濁流がストライクに向かう。

 

「アイちゃん!だからだよ、ノドカちゃんて奴にきちんと会わなきゃ!!」

 

「そうだよ!ちゃんと顔を合わせて話さなきゃ何も解らないんだもの!!」

 

 チヨコが、スグリが叫ぶ、

 

「チヨコさん。スグリさん……!私っ!!」

 

 次の瞬間にアイのストライクに光が灯る。そしてプラフスキーウィングがストライクの背中から発生、ウィングはストライクをくるむとスキュラから防御、ウィングを盾にしたストライクは無傷だった。そのままストライクは撃ち終わったフリストに突っ込む。

 

「そうだよ!だからこそ!!話がしたい!!ノドカと言葉を交わしたい!!だからこそそんな風に言われて!!」

 

 直後、ストライクのプラフスキーウィングは消える。と同時にストライクの右手が青く輝く。腕部に全てのエネルギーを集中させたRGビルドナックルだ。

 

「黙ってられるわけ!!ないでしょぉぉっ!!」

 

 そのままフリスト(下半身)を上部から殴りつけるストライク、ナックルの勢いは凄まじく直立状態だったフリストを貫通。そのままストライクは地面に降り立った、直後フリストは全身に亀裂が入り崩れていく。

 その様子を見ていた違法ビルダーは再生中のフリストの中で驚愕するばかりだった。

 

「ば!バカな!パンチ一発で!」

 

「見くびりすぎましたわね!!ついでにあなたも食らいなさいな!!」

 

 同様にイージスの方も左手を青く輝かせながら突っ込んでくる。そのままイージスはフリスト(分断された上半身)の胸中心部に拳を勢いよく打ち込んだ。

 

「メテオッ!!ナックルッッ!!」

 

 フリストの装甲を貫いたナックル。拳を引き抜くとフリストの全身に亀裂が入る。どうやらこっちの再生コアは胸だったらしい。

 

「『挑戦する気概が人を成長させる』……。それを機械に頼ったあなた達ではこうなって当然でしたわね」

 

「……誰の受け売りだそりゃぁ」

 

「……死んだおじい様ですわ。この扇子をくれた……」

 

 フリストの爆発、もう事切れた相手に見せるかのようにサツマは扇子を開く。蘭の花の描かれた扇子だ。そしてその後もサバイバルバトルは続いたが、結果的にアイ達とサツマ達の勝利となった。

 

……

 

「……ありがとうございます。あそこで励ましてくれなかったらどうなってたか」

 

 バトルが終わった後、アイはチヨコとスグリに頭を下げた。

 

「気にしなくていいよ。厳密にはナナちゃんに言われた事らしいけど。借りを返したわけだから」

 

「その……本当はナナちゃんへ返したかったんだすけどね……」

 

 元のおどおどした態度に戻ったスグリがボソボソと答える。

 

「借り?」とナナがきょとんとした顔で言った。

 

「私たちもさ。元々もっちゃんと疎遠になっていたの知ってるよね」

 

 疎遠……サツマは元々チヨコ達とはトップを目指して徹底的にやるか。楽しさ重視でそこそこのところで満足するか。という考えの違いからすれ違っていた。それを正したのはナナだった。(17・19話参照)

 

「もっちゃんてば一回決めたらガンコだからねぇ。そのもっちゃんがある日突然頭下げてきて、それがアイちゃん達とバトルした直後だよ!」

 

「何が言いたいんですのよ!!」と横でサツマが顔を真っ赤にして言った。

 

「やっぱり、直接会って、同じ目線で話をしないと分かり合えないな……って思ったんです……。その時の私達って、もっちゃんが考えを変えるまでひたすら待とうって決めてたんです……。もっちゃんガンコだから言っても聞かないなって勝手に私達で思ってて……」

 

「……でもそれはお互いの勝手な決めつけ、ですわよ」

 

 「そう言う事か」と言いたげな表情で、今度は冷静にサツマが答え始める。

 

「あの時、ワタクシがハジメさん達に負けたのは連携がまともに取れなかったから。そして、今ワタクシが一番連携を取れるのは……チヨコとスグリの二人だけ。それを理解出来たのはあなた達に負けてからですわ」

 

「私達も似たようなもんだよ。もっちゃん」答えるチヨコの横でうんうんと首を縦に振るスグリ。

 

「早い話が、ノドカも暫くしたら言った事を後悔してるかもしれない。こうやって時間を置いてから、また話し合ってみたら仲直りできるかもしれない。そう言う事ですわ。この二人がいいたいのは、昨日あなたの友達が同じ事を言ってたでしょう?」

 

「そうだよ」とチヨコは相槌を打つ。

 

「ありがとうございます。……私、やっぱり諦めません。ノドカと、もう一度話し合ってみます」

 

 今回のバトルを経由して、信じてみることをより深くアイは理解できた。とにかく今は行動に移そう。アイはそう心に決めるのだった。

 

「アイ。復活ってわけ?よかったぁ。とりあえずこれで決勝には万全で望めるわね」

 

「ちょっとハジメさん!何他人事みたいに言ってますのよ!!」

 

 満面の笑みのナナにサツマは詰め寄る。

 

「え?……イモエ?」

 

「あなたのあの戦い方はなんですのよ!!ストフリに乗ったにも関わらずまるで羽根をもがれた蝶ですわ!」

 

「え?だってストフリには乗り換えたばっかりだし……」

 

「問答無用!!バトルの時に言った通り!決勝までにビシバシ行きますわよ!!強くなってもらわないとこっちが恥ですわ!!とりあえずルジャーナで猛特訓ですわね」

 

「えぇっ!ちょ!ちょっと休ませてよ~!!」

 

 不機嫌気味にナナの手を引くサツマにナナは悲痛な叫びをあげた。何故サツマがナナにこだわるのか。まだナナ本人はそれを知らない……。

 




一度の話で複数のガンプラを製作するのはこれで最後にしようと思います。今後は一話につき一体にするつもりです。でもってこれが挿絵でつかいそこねたストライクとイージスのツーショット、そしてサツマ達の設定資料です。


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