模型戦士ガンプラビルダーズI・B   作:コマネチ

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バトルには勝った…だがレムを救うことは適わなかった…。


第32話「好きだから!」(パーフェクトユニコーンガンダム VS ユニコーンガンダム4号機 『デュラハン・デストロイモード』)

バトルでレムを説得する事は結局叶わず…、その結果にそこにいた全員が結果に沈黙せざるをえなかった。

特にアイの顔は(レム以外の原因もあるのだろうが)悔しさや怒りを抑え込んでいるのか眉間に皺をよせていた。

 

「それじゃ、帰るかな…。いつまでもこうしてるわけにはいかないんだし」

 

マスミが口を開け沈黙を破る。時間はもう7時30分を回っていた。

「そうだね…」とヨウコが言う。が…

 

「ちょっと待てよ」

 

その言葉に異を唱える人物がいた。ゼデルだ。

 

「ゼデル?」

 

「マスミ、教えろ。お前は本当にレムに違法ビルダーのデータを渡したのか?」

 

「…それは…」

 

マスミの目をジッと見るゼデル。眼を逸らしながらどもるマスミ

 

「言えよ」

 

「…本当だ。ボクが渡した。」

 

その言葉にヨウコは衝撃を受けた。マスミは自分の口から『渡した』とは言ってなかった。

レムが嘘をつく人間とは思わなかった。しかし『もしかしたら』とヨウコはマスミの潔白を信じていたからだ。

「どうして?」とマスミに問い詰めようとするヨウコだったが…

 

「なら話は早ぇ、俺とガンプラバトルをしろ」

 

「え?」

 

渋い顔で言ったゼデル。その場にいた全員が疑問に思った。大事な一戦の後だというのに何故またバトルするのか。と、

 

「どうしてって顔してんな。教えてやる。俺はお前がなんでレムに違法データ渡したことを黙ってたのかが気に食わねェ」

 

「ゼデル。アンタそれ…」

 

ヨウコがその事はもう終わった。と言おうとしたが。

 

「それは分かってんだよ。でもなんで俺たちに言ってくれなかったのか。同じチームなのに、それが俺の頭ん中でグルグル回ってんだ。

このまま言わなかったら、今後お前の態度に影響しちまうかもしれねぇ」

 

ゼデルは自分のガンプラ、アーマーで着ぶくれたような機体、ブルデュエルをカバンから取り出す。

 

「正直な話、さっきの瞬間お前には幻滅してんだ」

 

『幻滅』という言葉にビクッとマスミは体を震わせる。

 

「だからガンプラバトルで吐きだしたい。俺はガンプラビルダーだ。あーだこーだ口で言うより、今俺がスッキリするにはそれしか思い浮かばねぇんだよ」

 

「アンタ…言ってる事メチャクチャじゃない」

 

ヨウコが呆れながら言った。だが、ヨウコ自身ゼデルの気持ちも分かった。何故同じチームに黙っていたのか。

それはエデンのメンバー全員の気持ちだ。

 

「…わかった。受けて立つ。ボクだって申し訳ないという気持ちはある」

 

マスミは真剣な顔つきで言った。真正面からゼデルの気持ちを受け止める。といった表情だ。

 

「だったら僕も参加させてほしい!」

 

次に名乗り出たのはヒロだ。

 

「後腐れしたくないのは僕だって同じなんだ!」

 

「『エデン』のメンバー総出のバトルって事ですね…。てことはヨウコさんも出るんですか…?」

 

「うーん、そりゃあたしだって不満はあるけど、バトルで発散って程でもないかな、むしろあたしより…」

 

ムツミの問いかけをヨウコはやんわりと否定する、そして彼女が見たのは…

 

「アイちゃん。あなたが出た方がいいよ」

 

「…え?私ですか?」

 

まさか自分が指名されるとは思わなかったのだろう。アイは先程の表情から一転し、素っ頓狂な声をあげた。

 

「発散したい不満はあたし達とは違うだろうけどさ。ここで溜め込んじゃ可愛い顔が台無しだよ?」

 

「え、でもこれって…」

 

エデンの仲間内の問題、アイはそう言おうとした。

 

「自分が入る余地はないって思うか?とんでもねぇよ。ここで嫌な気分持ったのはお前も同じなら尚更だぜ?」

 

それを遮ったのはゼデルだ。

 

「そうだよ。僕としても巻き込んじゃった様なものだしね」

 

ヒロが言うと同時に、エデン以外の全員も同感だと言葉の代わりに頷いた。

 

「そうだな。自分の心につっかえた物、全部吐き出してこい!」

 

「いってきなよアイ」

 

「そうッス。それに…俺としてはユニコーンとデュラハン、これの戦いも見てみたいッスから」

 

「ソウイチ、そりゃ空気読まない発言だろ」

 

ソウイチにツッコミを入れるツチヤ、アイは暫く黙りこむと、意を決するかのように深呼吸した。

 

「解ったよ。胸に湧き始めたモヤモヤ、大きくならないうちに吐き出す!」

 

 

そして本日最後のバトルが始まった。バトルフィールドは『アーモリーワン』機動戦士ガンダムSEED DESTINYにおいて三機のガンダムが奪取された始まりの場所。

軍工廠のある砂時計型コロニー『プラント』内部に四機の機体が降り立つ。 チーム構成はゼデルはアイ、マスミとヒロ。それぞれ二人ずつ、

今回はリーダーを定めておらず。両機倒されて初めて試合終了となる。

 

始まって早々、直後にゼデルのブルデュエルとマスミのデュラハン、二機が格納庫の並んだ区域を低空飛行しながら撃ち合っていた。ブルデュエルは両手のビームハンドガン、

『リトラクタブルビームライフル』を連射、デュラハンは一定の距離を保ちながら手持ちのハイパー・メガ・ライフルを発射、両機ともかわしながらの撃ち合いだった。

 

「チッ!ラチがあかねぇなっ!」

 

「!?」

 

ゼデルはブルデュエルの武器をビームサーベルに持ち替えるとデュラハンに突撃、そして横に薙ぎ払う。

だがビームサーベルを振った場所にはデュラハンはおらず、ビームサーベルは虚しく空を切っただけだった。

 

「上かっ!」

 

「もらった!」

 

マスミのデュラハンはブルデュエルの真上に飛び上がっていた。突如デュラハンの背部の翼『マガノイクタチ』が全面に展開する。

そしてマガノイクタチからワイヤーにつながれた槍上の物体が打ち出される。

マガノイクタチ内部に格納されていた『マガノシラホコ』だ。

 

「甘いんだよ!!」

 

ブルデュエルは軽くかわすとそのまま右腕シールドのレールガンを発射。

 

「んっ!」

 

マスミはそれをかわしながらデュラハンを横に一回転。すると打ち出されたままのマガノシラホコが弧を描きながらブルデュエルに襲いかかった。

 

「なにっ!」

 

シールドで防ぐゼデル。マガノシラホコはシールド表面を切り裂く、二つのマガノシラホコがシールドを通り過ぎるがゼデルは油断してなかった。

何故ならバンシィはその隙をついて左腕のカギ爪、ツムハノタチで斬りかかってきたからだ。

 

「もらったぞゼデル!」

 

「こなくそぉぉ!!」

 

それをビームサーベルで受けるブルデュエル、両者とも先程のバトルの疲れを一切見せない気迫だった。

 

 

 

一方のアイとヒロも壮絶な戦いをしていた。もっともこちらは最初からサーベルで斬り合っていたのだが、

 

「なんでマスミさんと戦わず私と戦うんですか!」

 

「しおれてる君が気になったからさ!」

 

ヒロのパーフェクトストライクが振るう対艦刀を、アイは機体右肩のビームサーベルで受け止める。

 

「どうしたヤタテさん!動きが鈍いぞ!」

 

ヒロは直観的に思った。本気を出したアイなら自分位簡単に倒せるだろうと思ったからだ。

 

「何を迷ってる!」

 

「…悔しいんですよ!!」

 

ビームサーベルでストライクを払いながらアイは叫んだ。

 

「何が!」

 

「リンネって人が言ってた事です!自分たちは正しいって!!違法モデラーが望まれたガンプラバトルの救う方法だって!私の憧れのビルダーを嫌う人間は幾らでもいるって!」

 

ヒロはパーフェクトストライクの右肩部のガンランチャーを発射、ユニコーンはかわすとすがさず両腕のビームガンとビームガトリングで応戦する。

 

「私自身!あんな支離滅裂なのが正しいなんて思いませんよ!でもね!あんな毅然とした態度だと逆にこっちに非がある様に感じる!私には!あんな大義名分はない!」

 

「だから納得できるってか!」

 

「そうは思ってませんよ!でもね!あれに対抗するとして、ただがむしゃらにガンプラバトルやってきた私はなんなんだって!」

 

「悔しいのは…!僕も同じさ!」

 

かわしながら後退しつつ、パーフェクトストライクは距離を取り大型ビーム砲、アグニを発射した。

舌打ちをしながらかわすアイ、

 

「またフジミヤさんを救えなかった!かつての仲間を!あの人は単純に仲間というだけじゃなかった!僕にとっては特別な人だった!」

 

アイも負けじと右肩のビームキャノンを撃つ。ぶつかり合う大型ビームは強烈な光を放ち相殺される。

光がやむと二機は再び突撃、鍔迫り合いの体勢をなる。

 

「彼女は変わってしまったよ!それでもいつか戻ると信じてきた!でもまたダメだった!」

 

「もう!諦めるという事ですか!?」

 

「違うよ!」

 

ヒロの眼がクワッと見開かれると、さらに対艦刀の勢いが増した。それはPユニコーンを、ビームサーベルを押しのけた。

尻もちをつくPユニコーン

 

「僕は諦めない!いつか彼女が戻ってきてくれると信じている!何度駄目になっても諦めないぞ!」

 

 

 

所変わって再びこちらはゼデルとマスミの方だ。機体の完成度か、ビルダーの腕か、徐々にゼデルの方が押されるようになってしまった。

お互いの機体は相対するもブルデュエルは膝をついていた。

 

「やっぱり、つぇえんだよな…!」

 

「必死でやってるだけだよ…」

 

「それだけの腕があるなら自分だけでも十分ってか?」

 

「ゼデル…!」

 

 

「ちょっとゼデル!そんな言い方ないでしょ!?」

 

観戦してるヨウコが怒りの声をあげる。黙っていたマスミに対して不満があるのは彼女も同じだがゼデルの言い方は納得できなかった。

 

「黙ってろヨウコ!俺は自分が納得できなきゃ気がすまねぇ!!」

 

ブルデュエルは再びビームサーベルを抜きデュラハンに突っ込む、デュラハンもまた迎え撃つかのようにライフルからビームトマホークを発生し飛び立つ。

 

【挿絵表示】

 

二体が斬撃でぶつかり合いながらゼデルが叫ぶ。

 

「何故だマスミ!何故俺たちに自分がレムに違法データ渡したのを黙っていた!

俺たちを信じてなかったのかよ!なんで自分一人で抱え込むような事したんだ!」

 

「信じては…いたさ!」

 

バトルで気分が高揚していたのだろうか。それともゼデルの叫びにつられてだろうか。答えるマスミの声も感情が籠ってきた。

 

「なら!!!信用してたならなんで言わなかったんだぁぁ!!!!」

 

ブルデュエルは右手でデュラハンのメガ・ライフルを殴りつけた。その瞬間。デュラハンのライフルが爆発した。

マスミはライフルが破壊されるのを見て驚愕した。見るとブルデュエルの右拳も破壊されていた。

ブルデュエルのクナイ型投擲武器、スティレット投擲噴進対装甲貫入弾を持ったまま直に殴ったのだ

 

「うぉおおおお!!!」

 

ゼデルは叫びながらデュラハンを左手で、拳のない右手で殴りつける。バトルでの高揚故か、友への怒りなのか、

はたまた両方かは定かではない。マスミはデュラハンの両腕でブルデュエルのパンチを防ぐ。

 

「こんだけ言われて!まだ何も言わないのかよ!自分の気持ち一つ言ってくれないのかよぉぉ!!」

 

「そんな事ない!ボクは…ボクは!!」

 

その瞬間、ガード一辺倒だったバンシィがブルデュエルに思いっきりストレートをかました。後方へ吹っ飛ぶブルデュエル。

 

「なっ!」

 

「自分の皆への信用を失われるのが怖かった!嫌だったんだぁぁっ!!」

 

マスミの言葉は放った拳と同様の勢いのある本音だった。

「…レムに自信を取り戻してやりたかった…でも普通のやり方じゃダメだった…だからたまたま見つけたネットの広告からダメ元で違法ビルダーのデータを注文した。

せめて勝つ感覚位は思い出させてあげようって…」

 

「俺たちが初めてアイちゃんに会った日か!」

 

ためらいつつそうだと答えるマスミ、

 

「その後にレムが違法ビルダーとして暴れてるのを皆で止めようとして、その時は言おうとしたよ。でもレムはボクが与えたと言わなかった…

その時『もしかしたらバレない』かもしれないと思った!」

 

ゼデルはブルデュエルを起こすとデュラハンの顔面にパンチをいれる。吹き飛ぶデュラハン

 

「だからその心に従ったってか!」

 

「元々レムに自信をつけさせようと、そんな理由はあってもチートを使ってしまったのは事実だ。それは許せなかったし、

レムが暴走を始めてしまった事が悲しかったし、辛かった。でも…心の中でバレない事を祈ってる自分がいた!」

 

「本当なのかよ!納得いかねぇ!!」

 

ゼデルの言葉はなんとなく発した物だ。それだけじゃないと彼は思ったからだ。

ブルデュエルの拳がデュラハンの頬に叩き込まれる。だが吹っ飛ばずデュラハンはその場から動かない。

顔面でパンチを受けたままギギギ…とブルデュエルに向き直るデュラハン。

 

「いや、それだって違う…。そんな感情は関係ない…。ただ単純に、今の環境が変わるのが、ボクが皆に嫌われるのを恐れただけなんだろうな…」

 

「…」

 

「ボクはさ…、昔っから皆が中二病って言う様な設定を考えるのが大好きで、そういう振る舞いもしたいからしていたし、周りにも積極的に話していた。

でも当然それで馬鹿にされてた時期あったしそれで傷ついた事だってある。

気にしない様に心がけていたけど、正直しんどい時もあったよ。大学来るまでは」

 

「…俺達か?」

 

「皆と出会えてガンプラサークルを初めて、存分に話す事が出来た。楽しかったよ。

でも今回のことがバレたりして、皆が離れていったら今のサークル『エデン』は今の形が無くなる。

そう考えたら怖くて言えなかった…それでこのまま…」

 

直後ブルデュエルがまたデュラハンを殴る。そのバトルはまるで喧嘩の様に見えた。

 

「アホか!!最初っから告白してりゃいいだろうが!!変にズルズルひきずりやがって!!」

 

「…好きだからだ」

 

「あ?」

 

「レムもいたワイワイやるチームが好きだからだ!ボクだけでどうにか出来るならやろうと思った!レムを助けたいって気持ちも本当だ!

でも…どれか欠けたらエデンはエデンじゃなくなってしまうかも知れない!そう思うとなおさら怖くて言えなかった!

いらない迷惑と責任は種まいたボクだけで十分なんだ!!」

 

「!この…!どアホがぁぁっっ!!」

 

ひときわ大きくブルデュエルがバンシィの顔面を殴りつける、吹き飛んだデュラハンの顔面に亀裂が入った。

 

「うわっ!」

 

「そんなのが責任の取り方になるかよ!!迷惑だってんならとことんかけさせろよ!ベストな答えが出るまで迷惑かけりゃいいだろ?!だって俺たちはチームだろうが!」

 

「!」

 

「辛い時も苦しい時も一緒にやってきたチームだろうが!背負い込む物も共有して初めてチームだろうが!」

 

「ゼ…ゼデル…!どうしてそうまでしてボクを気に掛ける!幻滅したんじゃないのか!?」

 

いくら同じチームとはいえマスミは自分がチームの皆に悪いことをしてしまったという感覚はあった。

気にかけてくれる事に嬉しい感覚はあったが、故に納得しきれなかった。嫌われたんじゃないかという

 

「決まってんだろ…!」

 

 

 

ゼデル達が言いかける少し前、アイ達のバトルも佳境に入っていた。右手のビームガンでストライクを狙い撃つユニコーン、ビームはストライクの対艦刀に当たり爆発する。

 

「チッ!だがこっちの得物はまだまだあるぞ!!」

 

ヒロが叫ぶとパーフェクトストライクはアグニを発射、アイはアグニのビームをかわすが、そのビームが後方で爆発。

アーモリーワンの外壁に大穴を開けたのだ。周囲の物体は宇宙の真空に吸い込まれる。

実際なら大惨事だが、仮想空間であるガンプラバトルで住民がいない。無人の空間だ。アイもヒロも当然理解していた。

 

「プラントに穴が!?」

 

「まだまだ終わらないぞ!」

 

左腕からアンカー・パンツァーアイゼンを発射、アンカーはユニコーンの右手のビームガンを挟み込んむ。

 

「!?」

 

「諦めない!何故なら僕はレムの事が好きだからだ!」

 

「え!?」

 

突然の告白にドキッとするアイ、その隙を逃さずヒロはパーフェクトストライクのビームブーメラン、

マイダスメッサーを投げつけた。マイダスメッサーはユニコーンのビームキャノンに当たり爆発する。

 

「こ!告白が突然すぎます!」

 

「本心だからいいんだ!僕は心で感じた事を信じる!だからこの意志は彼女に伝わるまで折れない!」

 

ヒロは叫ぶとアンカーを巻き取る。ビキビキと音を立ててパンツァーアイゼンはユニコーンのビームガンをシールドごとはぎ取った。一度に二つの武器を失うユニコーン。

ああも言われると聞いてるこっちが恥ずかしくなる。アイは顔を赤らめながらもヒロとの気迫の差を感じていた。

 

「そんな自信、私になんて!」

 

「自信なんてのは自分が思い込めばいいだけの話だろう!?」

 

ヒロはパーフェクトストライクのビームサーベルを抜き二刀流で斬りかかる。向うのテンションに比べこちらのテンションは低い。アイはそれを凌ぐだけで精一杯だ。

 

「今の君は覇気がない!弱気すぎる!僕が最初にあった時の君の方が強かった!それは違法ビルダーなんかよりよほど解りやすい意志があったからだ!」

 

「え?!」

 

その時、ヒロではない人間が大きく叫んだ。

 

「そんなの!皆レムやお前の事が好きだからに決まってるだろうが!!」

 

「!?」

 

ゼデルだった。言った対象もアイではなくマスミにだ。

 

「嫌いな奴に心配したり気にかけたりするかよ!レムを追いかけたのだって同じチームだからじゃねぇ!

好きな奴だからだ!!そうじゃなきゃ背負い込むもん共有したいなんていいやしねぇ!!」

 

「ゼデル…」

 

聞いていたアイはゼデルが自分に言った言葉ではないと直後に理解した。でも自分の中では引っかかっていた。

 

「そんな単純な理由で?」

 

「それでいいんだよ」

 

「ヒロさん?」

 

ヒロは右手のビームサーベルを握ったままユニコーンを右手で指さす、向かい合うストライクの中でヒロは言った。

 

「僕たちは遊びでガンプラバトルをやっている。確かに才能や技術、信念も必要なのかもしれない。でもその前に一番必要な物がある。

ガンプラが好きかどうか、楽しんでるかどうかって事だ」

 

「そうだ。ヤタテ」

 

今度はコンドウの言葉だ。

 

「確かに違法の奴らには大義名分があるかもしれない。でもその為に善良なビルダーを悲しませて、それに責任を感じない。

それでガンプラバトルを変えるなんてちゃんちゃらおかしい!」

 

「コンドウさん…」

 

「自分には大義名分がないだって?それは違う。最初に僕と戦った時、ガンプラを好きだって気持ち、楽しもうという気持ち。僕にちゃんと伝わっていたよ」

 

「…私にはあいつらみたいな信念、ないですよ。でも自分がガンプラバトルで全力で楽しみたいって気持ちは

本当です。だからこそ、あぁやってビルダーの、ガンプラバトルの定義を踏みにじろうとしてるあいつらは許せない」

 

「それでいいんだよ、答えはもう…出てるじゃないか!」

 

二刀流のビームサーベルを構え。ヒロがストライクで斬りかかる。

 

「そうか…そうですよね!」

 

アイはユニコーンの両手を展開、ビームトンファーで迎え撃った。ストライクの二刀流を受け止めるアイ、

起こるスパーク、

 

「別に難しく考える必要なんてなかったんだ!だって今まで何があってもこの気持ちが、根っこにあったんだから!私、ガンプラバトルが好きです!

だから私は思いっきり楽しむ!全力で遊ぶ形で!『好き』って気持ちで表現する!

それがあいつらに対抗する気持ちです!だってそれは!ハル君が教えてくれたやり方なんですから!」

 

ビームトンファーはストライクを弾き飛ばす。ストライクは開けた穴に吸い込まれそうになるが

どうにかバランスを保ち、ユニコーンに突っ込んだ。お互いが剣を構え突っ込む。

 

『ぅおおおっっ!!!』

 

すれ違い、背合せになる二機、直後、ストライクが膝をつく。

 

「これだよ、君のその気迫が見たかった…」

 

ヒロがそう言った直後、ストライクが爆散した。

 

 

 

同じ頃デュラハンとブルデュエルの戦いも決着がつこうとしていた。

 

「ヒロとアイちゃんの言う通りだな…。ボクも変に身構える必要なんてなかったんだ。チームが好きなのは、ボクだって同じだ!」

 

「そういうこった!うだうだ言ってる暇あったら動けってな!」

 

「あぁ!古人曰く!あ、いやエクストリームガンダムの中の人曰く『人生はプラモデルと一緒。まずは動け!』だ!」

 

デュラハンがビームトンファーを展開、ブルデュエルもビームサーベルを構え突撃、

 

「ゼデル!!」

 

ブルデュエルの斬撃が縦にまっすぐ降りてくる。マスミはデュラハンを横にそらしかわすと右腕のビームトンファーでブルデュエルの胴体を切り裂いた。

 

「悪かったよ。黙っていて…」

 

「メンツ守りたくて俺たちに黙っていた事をか?」

 

「ゼデル!しつこい!」

 

観戦側からヨウコの声が響く。

 

「いいんだヨウコ。ボクにそういう邪な気持ちがあったのは事実だ!」

 

「正直だな。変に取り繕うよりそっちの方がスッキリするぜ。それより言ってくれよ。あの決めゼリフ」

 

「あぁ、眠れ、紅き光に包まれて…」

 

「やっぱお前はそれがいいぜ」

 

フッとゼデルが笑うとブルデュエルは爆発した。

 

「ゼデル…」

 

マスミはそのままアイのPユニコーンに向き直った。

 

「お互い、心のモヤは晴れたようですね」

 

「そういう事だよ。アイちゃん、安心すると不安もない。となればやる事は…」

 

「ええ!勝負!」

 

【挿絵表示】

 

ユニコーンとバンシィ、二機が飛び立ちぶつかる。お互い心が晴れた所為だろうか、更に動きは鋭さを増していた。

 

「ここは狭い!外で決着をつけよう!アイちゃん!」

 

「望むところですよ!」

 

二機はヒロの空けたアーモリーワンの外壁から飛び出す。高速で動きながらお互いをビームトンファーでぶつけ合う。

 

「このデュラハン・デストロイモードはフルCGのOVA『イグルー重力戦線』で出てきた死神が宿った設定だ!

君に勝てるかな!」

 

ぶつかり合うたびに二機のサイコフレームは激しく輝いていた。まるで今のビルダーの心情を表すかのように、

 

「やるな!さっきより動きがよくなってきたぞ!」

 

「色々と吹っ切れましたからね!」

 

「それはボクも同じ事だ!」

 

「ヒロさん同様!これからもレムさんを追いかけるという事ですか!?」

 

離れた状態でランサーダートを発射するマスミ、アイはかわすとビームガトリングでデュラハンを撃とうとする、が、

高速で動き回るデュラハンはあっと言う間に距離を詰め、ビームガトリングを切り落とす。

 

「当然だよ!」

 

すかさずアイは右腕のビームトンファーでバンシィを切り裂こうとする、が、コクピット狙いだったがすんでの所でかわされ、背部のマガノイクタチ左半分を切り落とした。

 

「チッ!おしい!」

 

「マガノイクタチがっ!?なら君もあのリンネとかいうビルダーと因縁が続くと思うかい!?」

 

その体勢のままバンシィはツムノハタチをユニコーンの左肩追加アーマーのつけ根に突き刺した。切り裂かれたアーマーはそのまま爆散。

 

「クッ!解りませんね!でも彼女がまた来るというのなら私の魂全部ぶつけるまでです!!」

 

「ボクもだよ!レムがまた屁理屈こねるようなら首輪つけてでも連れて帰る!」

 

そのまま追い打ちをかけようとコクピットに突き刺した。胸部装甲に突き刺さるビームトンファー、

 

「どうだ!」

 

一瞬勝ったと確信するマスミ、だが突き刺さっていたのは宇宙空間に漂う胸部アーマーだけだった。

 

「何!?アーマーだけだと!?っ上か!?」

 

真上にユニコーンがいると判断したマスミ、真上にはアーマーを全て脱いだユニコーンがいた。

 

【挿絵表示】

 

「まだ間に合う!!」そう思い、すぐさまビームトンファーでユニコーンを突き刺そうとするマスミ、だがビームトンファーはユニコーンの前で止まる。

否、ユニコーンから溢れた緑の光が、オーラの様なフィールドで攻撃を防いだのだ。

 

「サイコ・フィールド!?」

 

「私だって!」

 

「!?」

 

ユニコーンはそのまま両手のビームトンファーをバンシィ目掛けて振り下ろす。

 

「しまっ!!!」

 

「あの日から!!」

 

一瞬、アイの脳裏に自分にとっての始まりの日がよぎった。イレイ・ハルと出会った日の事を…。

 

「あの日から続いた気持ちを否定させやしない!!」

 

胴体を両断されるデュラハン、撃墜される瞬間、マスミは目の前のユニコーンが虹色の光を発するのかのように見えた。

 

「一角獣が…死神すらも突き殺したか…」

 

その光の正体、サイコ・フィールド、サイコフレームの共鳴現象により発生する謎の力場、劇中の正体はわかってない。

またガンプラバトルでも再現される事があるというがこちらも条件は全く解明されてない。

一部ではガンプラ魂が極限に高まると発生すると噂があるが、都市伝説の域を出てない。だがマスミやコンドウを初め

信じているビルダーは多い。

 

「サイコ・フィールド…好きこそ物の上手なれ…か…」

 

次の瞬間、デュラハン・デストロイモードは爆発、アイの勝利でバトルは終わった。

 

 

バトルが終わった後、全員が憑き物が取れた様に晴れやかだった。

 

「しかし、結構脆い所あったんですね。マスミさん」

 

「そうだよアイちゃん、ボクは皆が思ってる程立派じゃないよ。皆いたからあの中二病に自信が持てたってわけだよ」

 

「いやいや。しかし最後の最後でスッキリしたぜ。これでエデンも元通り…ってわけじゃねえがな」

 

「いつか元に戻せるよ。よく知ってるからね。フジミヤさんの事も、皆が諦めない心を持ってるって事も!」

 

「そうだね」

 

マスミがフッと笑顔を見せながら言った。アイ達は久しぶりにマスミの笑顔を見た。初めて会った時と同じ、にこやかな笑顔だった。

 

「そうね。今後も頑張っていくとして、おいとましましょうか」

 

「そうだなヨウコ。んじゃマスミ、これ頼むわ」

 

「へ?」

 

ゼデルは自分のカバンをマスミに手渡した。中はガンプラと大学で使う教材だ。意味が解らないと言った顔をするマスミ

 

「いや、なんやかんやで騙っていたのは事実だから帰りの荷物運びだけで許してやろうかなって思って」

 

「ゼ・ゼデル?!」

 

「あ、そういうことだったら僕も」

 

「ヒロ!?」

 

ヒロがゼデルのカバンの上に自分のカバンも乗せる。マスミは素っ頓狂な声をあげた。

 

「ヨ!ヨウコ!せめて一緒に持って!ちょっとこれはいくらなんでも…」

 

マスミはヨウコに助けを求める。

 

「そうね…じゃあたしのもお願い」

 

ヨウコもまたカバンをマスミに持たせた。

 

「ヨ!ヨウコォォッッ!!!!」

 

「これ一回で許してやるってんだからいいだろ?いいじゃねぇか、ボロ雑巾みたいに遣い倒しにしてやるとか思ってるわけじゃねぇんだからよ」

 

「いやいやそんな怖い考えあんまりだよ!!ボクら仲間なんだから!!」

 

「仲間なら酸いも甘いもあってこそでしょ?」

 

【挿絵表示】

 

仲間、ヨウコがそう言ったところでヒロがアイとマスミに向き直る。

 

「仲間といえば、ところでマスミ、そしてアイちゃん」

 

「ん?」

 

「なんですか?」

 

ヒロは二人を見据えると意を決したかのように話し出す。

 

「フジミヤさんは言っていた。『自分は違法ビルダーとしてガンプラ選手権に出る』って、僕は次の選手権、アイちゃんと同じチームに入ろうと思う」

 

『えっ!?』

 

その場にいた全員が驚きの声を上げた。

 

「別に選手権は出るつもりですけど、まだチームなんて立派な物はまだないですよ?そもそもどうしてそんな事を?」

 

「レムやあの違法ビルダーはアイちゃんを狙っていた。僕達のチーム『エデン』にいればフジミヤさんに会うことは出来るかもしれないけれど

フジミヤさんを手分けして、という意味でもこっちにいた方がいいと思うんだ

引き続きマスミ達はフジミヤさんを追いかけるんだろう?だから僕はアイちゃんの側で追いかけたい」

 

「挟み撃ちにするって事か」

 

「うーん」

 

マスミは一瞬思案する。がすぐに答えが出た様だ。

 

「ちょっと思うところはあるけれど、そういう事ならいいよ」

 

「勝手いってすまない。マスミ」

 

「いいさ、このままイタチごっこやってるわけにもいかない。でもその気持ちがあるって事は

いつまでも君はエデンのメンバーでもあるという事を忘れないでくれ」

 

「解ったよマスミ…」

 

「後カバン持って」

 

「それはダメだよマスミ…」

 

「なんでだ」

 

 

そしてエデンのメンバーとタカコとムツミと解れたアイはウルフのメンバーと帰路についていた。これは夜道を歩くにあたりコンドウ達にボディーガードしてもらうのも兼ねていた。

 

「凄まじい一日だったね」

 

「そうね。でもま、ヒロさん達のギスギスが解消されたのが救いだったかもね」

 

「そうだね、ヒロさんも私のチームに入ってくれるって言うし、違法ビルダーの心配もあるけど選手権への気合も入ってきたよ」

 

「チーム結成もしてないけどね。でも当然アタシはいれてくれるんでしょ?」

 

「そりゃあもう、三人は必要だからナナちゃんとヒロさん入れれば規定数に達するよ」

 

アイ達の会話を聞きながらコンドウはアイとナナを考え込むように見つめていた。そんなコンドウに小声でツチヤが話しかける。

 

―フクオウジ・マスミすら倒した。ヤタテ、恐ろしい女の子だ―

 

―それより、いいのか?コンドウさん、アイちゃんにあの事話さなくて―

 

―いいさ。あんまり彼女たちに押し付けるのはよくない…―

 

―だいたいコンドウさんに時間がない事も知らないんだろ?―

 

―まぁそれは後々話すさ…―

 

そういうとコンドウは違法ビルダーの事を思い出していた。

 

―違法ビルダーか…でもあの二人の機体、あの禍々しい雰囲気はどこかで見たような…まさかな―




登場オリジナルガンプラ
パーフェクトユニコーンガンダム
使用ビルダー『ヤタテ・アイ』

【挿絵表示】

ユニコーンガンダム4号機 デュラハン(デストロイモード)

【挿絵表示】


ちょっと遅れました。コマネチです。言い訳ですが、ちょっとマスミの「受け入れて~」のくだりは唐突だったかもしれません。
彼の心理は書いててなんか不自然だったので気付いたらこうなってました。


そして…突然ですが、この章が終わったら少しの間充電期間を置こうと思ってます。設定を整理したり、改造機や話を作り置きしたりしておきたいのです。
このままだとますます一話一話に時間がかかってしまいそうなので、せめてもう少しスムーズになる様にそうしよう。と思いました。
何度も勝手なことをしてしまいすいませんホント…、エピローグはもう一つあります。ではまた

※マスミの心情、及びアイの回答の下りを書き直しました。急ぎ焦って書いてしまった為、今回の話は未完成同然で投稿してしまいました。マスミのキャラが崩壊してしまい、不快に感じた方、本当に御免なさい。

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