模型戦士ガンプラビルダーズI・B   作:コマネチ

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ナナはアイと戦った。結果ナナは心の内を吐き出し、無事立ち直る事が出来た。そして……


第21話「再戦の足し算」(フリーダムガンダム・アルクス VS ジャスティスガンダムセートゥン)

「出来た……」

 

ナナは達成感を込めた声を漏らした。場所は自室、隣にいるのはアイ、そして目の前にある物は……

 

「うん、完成したね。ナナちゃんの新しい機体……」

 

「『RGフリーダムガンダム』」

 

目の前にある物はナナが新しい愛機として作ったRGフリーダムガンダム。翼を背負った青と黒の機体だ。

 

「いやー、一時はどうなるかと思ったけどちゃんと完成してよかった。マスク割れちゃった時はどうかと思ったけどね、Oガンダムで代用できてよかったよ」

 

そう、目の前にあるRGフリーダムはマスクをOガンダムの物に取り換えており心なしかアニメに近い頭部になっていた。

 

「感謝してます。アイのジャンクパーツから持ってっちゃったけど」

 

ナナは軽くアイに頭を下げる。言葉通りの気持ちを伝えたわけだ。

 

「気にしなくていいよ。使う目途の立ってない奴だったし」

 

「とにかくまぁこれで再戦の条件は整ったわね。後はサツマに再戦するだけだわ」

 

「うん、ただちょっと遠いから向こうとも連絡取ってからと、時間かかっちゃうけどね」

 

以前サツマがアイと戦った際、サツマはアイがチームに入ることを想定してガリア大陸の店員、ハセベに自分が拠点としている模型店を教えたらしい。

経由ではあるが連絡を取ることは可能だった。

 

 

しかし翌日、ガリア大陸にて……

 

「今週はダメ?どういう事よそれ」

 

ナナの声が店内に響く、店にはタカコやムツミ、コンドウ達も一緒だ。

 

「なんか都合つかないんだって、再戦はしてくれるみたいだけどまだしばらく時間がかかるみたい」

 

「拍子抜ッス。こっちはやる気満々だってのに……」

 

説明するアイに対しソウイチがぼやく、彼も再戦に燃えていたのだろう。

 

「といってもそんな重大な事じゃないよ。単純にメンバーの予定がつかないだけだってさ、都合がついたら連絡するって」

 

「フム……やはりか」

 

「?コンドウさん?」

 

「いや、あの後『サターン』について調べてみたんだが。フジさん」

 

コンドウがタカコに促す。と「あいあ~い」とタカコが前に出てきた。

 

「あのサツマって人のチームなんだけど、確かに強いビルダーで周りを固めてるからその実力は折り紙つきなんだって、

でも反面年齢や出身地が全然違う所為か、都合で集まる日が限られてるんだってさ、挑戦者もそれで諦めたりする事が多いらしいよ」

 

「タカコ、いつの間に調べたの?」

 

「コンドウさんから頼まれてね。あたしも何か出来たらなって思って調べてみたの」

 

「数日でよくそういう状況調べられたね……」

 

「あたし新聞部だもん」

 

意外そうにするムツミに余裕の表情でタカコは返した。

 

「前は友達と一緒だったらしいけど、一人だけチーム抜けて結成したって言ってたけど、そんな事になっていたんだ」

 

「おいおい、そんな会うのが限られてるチームってチームとしてどうなんだ?全国制覇を狙うとか言ってたチームがそれって」

 

ツチヤが呆れるとコンドウが返す。

 

「あぁ、連中にはそこにつけ入るスキがある筈だ」

 

「なんにせよまだ時間はかかるって事ね。まぁこっちとしてはフリーダムに慣れる時間が出来てラッキーと思えなくもないけど……」

 

「だったらチャンスだな」

 

ナナの呟きにコンドウが口を挟む。

 

「オッサン?」

 

「今の内にフリーダムの強化や君の実力をつけるにはうってつけという事さ」

 

コンドウに対し、ナナは自信のない表情で呟く。

 

「でもアタシ、改造なんてしたことないし……」

 

「心配はいらないさ。俺達が手伝う」

 

「ちょうど使えるかもしれないアイディアとかもあるからね」

 

「勝てるならそれでいいッス。特訓も欠かしませんからね」

 

「皆……、ありがとう!」

 

湧きあがるビルダー達に押され、ナナは今度こそ勝てるかもしれないという気持ちが心に芽生えつつあった。

 

「あ、言い忘れていたけどそのサツマって人面白いんだよ~下の名前がね……」

 

「タカコ……今誰も聞いてないよ……」

 

 

 

三日後、チーム『サターン』リーダー、サツマから「二週間後にワタクシの地元のプラモ屋なら都合がつく」という返事があったのだ。

そして二週間後の日曜日、それなりに広さのある一階建ての模型店『ルジャーナ』、そこが『サターン』が拠点としている模型店だった。

 

「お待ちしておりましたわ。ヤタテ・アイさん」

 

その奥のGポッドと大型観戦モニターの並んだスペースで彼女、サツマは深々と頭を下げた。

 

「お忙しい所ありがとうございます。サツマさん」

 

「ヤタテさんから挑戦していただけるなんて嬉しい限りですわ。そちらも挑戦者等で大変でしょうに」

 

「いえいえ、当面の目標はサツマさんでしたから」

 

アイが返した後、ナナが前に出る。

「でもアタシ達が自分を鍛える時間は十分とれたわ」

 

「あら?あなたはヤタテさんのお友達の……少しは実力をつけたのでしょうか?」

 

「おかげさまでね、今度は負けないから」

 

「ふぅん……少しは楽しむ要素になっていただければ嬉しいですわね」

 

「……」

 

そっけない返事だ。初めからナナは眼中にないのだろう。反応に釈然としないナナにソウイチが話しかける

 

「あんま気にしちゃいけないッス。バトルで鼻あかしてやりましょう」

 

「アサダ……アンタがフォローするなんて珍しいわね」

 

「調子悪くして負けた原因になるの嫌ッスから」

 

そしてアイ達にとって再戦ともいえるバトルが始まった。今回のステージは南太平洋上空、登場作品は『ガンダムUC』つまり空中のステージ、

下は雲海、更にその下は海、事実上空中だけという一風変わったステージだ。

 

「今回のステージは空だけだよ。一定以上落ちたら撃墜扱いになるから気をつけてね」

 

「分かったわ。アイ」

 

今回のアイ達の母艦、後方部が巨大化した緑色のスペースシャトルの様な貨物船『ガランシェール』の格納庫でナナ達は通信をかわす。

船側面のハッチの空いた景色は、海の様に広がる雲と青い空一色だ。今回のメンバーも前回と同じアイ、ナナ、ソウイチの三人だ。

 

「飛べない機体にはデータ上ですがサブフライトシステム(SFS)、ベース・ジャバーが支給されるッス。

といってもデータ上の奴はあくまで飛べるだけって感じで、実際にSFSのプラモをスキャンしてる方が能力は上なんスけどねぇ」

 

「つまりSFSとかいう乗り物を一緒にスキャンした方が有利って事ね」

 

「そういう事になるッス。ま、俺達は単独飛行の出来る機体ですから関係ないッスけどね」

 

ソウイチは会話でナナの機嫌を測っていた。

口では勝てればいいと言っておきながら、なんやかんやでソウイチもナナが変に気を張ってないか心配してる様だ。

そうこうしてる内に発進して下さいという表示がモニターに出る。

 

「それじゃ……特訓の成果、見せようか!!アンクシャ!出ます!」

 

「アストレアFR2出るっス!」

 

「今度は負けない……今度こそ……ハジメ・ナナ!フリーダム……アルクス!出るよ!」

 

ガランシェールにはカタパルトが無い。直に機体が後方側面のハッチから飛び出す。

左側面のハッチからは、ソウイチのアストレアFR2が緑の粒子を放ちながら、右側面からはアイのアンクシャが背中から落ちる。

直後にくるっと周り円盤状の飛行形態に変形し上昇、そして上部ハッチ(ガランシェールの後方形状は逆三角形な為それぞれの面にハッチあり)

のナナのフリーダムは藍色の翼を広げ飛んで発進口から勢いよく飛翔する。

飛び出すと同時に相手のチーム目掛けて全機が飛んだ。

 

 

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二週間の猶予はナナのRGフリーダムを改造するには十分な時間だった。肩と腰には追加ブースター。両膝にはアーマーとハンドガン。

ナナの新機体はコンドウ達のアイディアを盛り込んだフリーダムの強化型だった。

なお、ナナの名前にちなんでフリーダムガンダム・アルクス『虹』という名前だがナナは未だに名前を恥ずかしがっていた。(アイが勝手につけた為)

 

「凄い……なんか違う世界みたい。仮想空間だって事忘れそう……」

 

「うん……」

 

雲の上を突っ切るという状況にナナは感嘆の声を漏らした。上は透き通った真っ青な空、下は海の様に広大な雲、

目についた雲が一瞬で通り過ぎる、アイも同様の声を通信で流した。しかし今はバトルの際中だ。いきなり下の雲から数条のビームが飛んでくる。

 

「!?」

 

フリーダムは盾を構えながらもすんでの所で機体を捻らせかわす。他の二機はもっと難なくかわした。雲の中に複数の影が見える。

そいつらが撃ったのだと判断すると同時に、撃たれたことで現実に引き戻されたナナ達は、

影めがけてお返しとばかりに撃ちまくる。

とすぐに雲から離れる。雲の中からの不意打ちを避けるためだ。

 

「アナタ……少しは動きがよくなったようですねぇ」

 

下の雲からサターンの機体が現れる。前回同様フォビドゥン、ヤクトドーガギュネイ機、そして紺色のジャスティス……

 

「ジャスティスガンダムセートゥン!」

 

ナナが叫んだ。

 

「ですが残念ながらワタクシには及びません。ヤタテさんをお守りするにはまだ足りませんわね!」

 

再び撃ってきた射撃をかわす三機、かわすと同時にナナは通信でサツマに返す

 

「……かもね。アタシ一人じゃ限界があるもの」

 

「あら?諦めがよろしいですわね」

 

「だからアタシは欲張るのをやめた。自分の出来る範疇で出来ることをする!」

 

「力量をわきまえてますのね、でもそれではワタクシ達に勝つ要因にはなりえませんわ!」

 

セートゥンがビームサーベルでフリーダム・アルクスに斬りかかる。ナナも受けようとビームサーベルを抜こうとするがアイのアンクシャが変形しつつ前に出る。

 

「結果は見えてませんよ!ナナちゃん!ここは私が!」

 

アンクシャは人型に戻る。そしてビームサーベルでセートゥンのビームサーベルを受ける。発生したスパークはお互いの機体色を青白く染める。

 

「まぁ!今回はユニコーンではないのですね!アンクシャが敵の立場のガランシェールから飛び立つなんてシュールですわ!」

 

 

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「私もそう思いますよ!このステージならコイツの能力をフルに引き出せる!ラッキーでした!」

 

「でも変形する以上予備動作が不利じゃないんですの?!」

 

「いいビルダーはどんな機体も乗りこなすものでしょう!」

 

「おっしゃる通りですわ!でも……残念ですが今回はすぐ終わらせますわ!」

 

「何ッ!?」

 

そうサツマが言うと側面からフォビドゥンが大鎌、ニーズヘグで斬りかかる。もう一本のビームサーベルで受け止めるアイのアンクシャ

 

「二人がかり!?」

 

「ええ!卑怯と罵りたいのならそれで結構!でもあなたの実力はよく解ってます。こうでもしないと確実に勝てる見込みはありませんもの!」

 

「卑怯とは思いませんよ!頭数が同じ以上!」

 

アイが叫ぶとバズーカの砲撃が飛んでくる。フォビドゥンに命中した弾は爆発を起こし体勢を崩す。その隙にアイのアンクシャは離れた。

 

「必然的に総力戦になるッスからね!」

 

援護としてアストレアのバズーカを撃ったソウイチが叫ぶ。

しかしあまりフォビドゥンには効いてる様子はない。強襲形態でアーマーを被ってる為か致命傷にはならなかったようだ。

 

「伏兵ですか!ならヤクトドーガのファンネルで!」

 

「了解!リーダー!」

 

サツマがヤクトドーガに指示を出す。展開したヤクトドーガのファンネルはビームを射ちつつアンクシャを追いまわす。

加えてセートゥンがファトゥムーの砲撃を撃ち出す。アンクシャは攻撃を凌ぎながら両腕のビームキャノンで撃ちかえす。

 

「くぅ!変形した方がかわしやすいんだろうけど!こうも攻撃が厳しいと!」

 

「大丈夫だよ!アイ!」

 

「ナナちゃん!」

 

アイの耳にその通信が入ると同時に雲の向こうから五条のビームが飛んできた。

雲を吹き飛ばしたビームはセートゥンとヤクトドーガに襲いかかる。ナナのフリーダムが放ったハイマットフルバーストだ。

 

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「さっきのフリーダム!?いつの間に移動したんですか!?」

 

二体とも不意を突いたようだが命中するには至らずかわされてしまう。というか本体に当たる砲撃ではなかったので本来なら避ける必要すらなかった。

しかし予期せぬ攻撃はヤクトドーガの注意を引くには充分だった。

 

「動きを止めたっ!!」

 

アイのアンクシャはあらかじめ持っていたビームサーベルからビームを発生させ構え一気に距離を詰める。ヤクトドーガもそれに気付いたようだ。

 

「く……甘い!ファンネル!」

 

だがファンネルに指示を送ってもファンネルの反応はなかった。ヤクトのビルダーがそれに気付いた時には、ヤクトの胸にアンクシャのビームサーベルが深々と突き刺さっていた。

 

「な!どうしてファンネルの応答が!?」

 

「さっきのハイマットフルバースト。狙ってのは本体じゃないんです!」

 

「ま!まさか!ファンネルを!?」

 

そう、さっきのハイマットフルバーストだ。放たれた照射ビームはヤクトドーガではなくファンネルをロックし破壊する目的だった。

 

「ファンネルに……頼り過ぎたかぁぁっ!!」

 

そう叫ぶとヤクトドーガは爆散した。

 

「よしっ!まずは一機!」

 

 

「やっぱりあいつら……連携が不十分なのか!?」

 

観戦モニターを見ながらコンドウはナナの動きに感心していた。『ルジャーナ』のガンプラバトルの観戦モニターはガリア大陸の物より大きく、

コンドウ含めた多くのギャラリーが見上げる形でバトルを見ていた。その横で見ていたツチヤが呟く。

 

「そだよ、あたしが調べた結果じゃ、最初に言った通り強いスタンドプレイのメンバーを揃えてあるのがサターンの特徴。

だけど連携というよりゴリ押しの勝利という形が多い。ならこっちは連携で攻めるべきだってコンドウさんは思ったの」

 

「チーム内で会う機会が全然ないから……?そんな簡単な穴が向こうにあったなんて……」

 

横のタカコの解説にムツミは呆れる。

 

「まぁいいじゃないか、連携を鍛えておいて損をすることはないんだし」

 

「違いないな、流れ、変えたか?」

 

 

「そんな!前回では一機も落とされなかったのに!?」

 

「一回負けりゃ対策位立てるでしょ!」

 

サツマが驚愕の声を上げた。同時にナナのフリーダム・アルクスが続けざまに射撃を続行。距離を詰めながら射撃で追いつめようとする。

この二週間、フリーダムの特性を活かせるようナナは特訓を積んできた。高速戦闘をマスターするには至らなかったが

射撃に関してはかなり鍛えられていた。

 

「このっ!」

 

予想外の事態にサツマはセートゥンのリフターを背中から分離、外れたリフターに乗るとフリーダムに突撃、ビーム砲、マイクロミサイルといった全火力を以て追いつめようとする。

 

「そりゃ怒るわね!」

 

ナナはバラエーナを翼に引っ込めると後退しつつ左腕のスナイパーライフルを畳む。畳むことによりライフルは三連バルカンに変形、

下がりながらの迎撃だ。セートゥンがフリーダムを追う形での高速戦闘となった。

 

 

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「ヤタテさんならいざ知らず!あなたに追い込まれるなど!」

 

「ヒ・ヒ・ヒステリーを起こし……てぇぇぇっ!」

 

バルカンの連射される弾幕は相手の突進力を殺すのに最適だ。

遠距離装備ばかりな為、近距離対応としてとりつけた三連バルカンだが、セートゥンは螺旋を描きながら弾幕をかわし突っ込んでくる。

 

「くっ!当たらない上にスピードも殺せない!」

 

「当然ですわ!あなたとワタクシには実力差は歴然!数字で言うならワタクシが3でアナタは1!それだけの差があるというのにアナタに良い様にされるなど!」

 

「す・数字で例え……ないっでよっっ!」

 

「それだけ解りやすい差だと言うのですわ!」

 

ナナの機体がガタガタと振動しっぱなしだ。高速での戦闘により機体に負担がかかってる表れである。その影響でGポッドも大きく振動し、

ナナの声も震えてしまう。サツマの方は振動らしき反応はない。このことから分かるようにサツマの言う通り二人の実力差は歴然だ。

そしてついにフリーダムは背中からビームの直撃を受けてしまう。右の翼の付け根に当たり、翼が吹き飛んだ。

 

「アウッ!?マズイ!?踏ん張ってよフリーダム!」

 

全身のバーニアを吹かし、どうにか耐えようとするナナ、ナナは高速戦闘の影響で目の前がフラフラなのをこらえて操縦に専念する。

 

「無駄なあがきを!追加したバーニアを吹かしたところで短時間しか持ちませんわ!」

 

サツマはとどめといわんばかりにリフターの火力を撃ち込む、ミサイルが当たりシールドは破壊、そのままフリーダムは衝撃で落ち始める。

 

「しまっ!」

 

「よく持った方ですわ!でも実力不足はどうしようもありませんわね!」

 

「うわぁぁっ!!」

 

落ちるフリーダムは雲を突き抜けた。飛べないフリーダムはこのまま落ち、撃墜扱いになるだろう。

 

「これで心置きなく戦えますわね。ヤタテさん?……あれ?いない?」

 

周囲を見回しアイのアンクシャを探すセートゥン、しかし、サツマのGポッドから警告音が響く、

 

「!?」

 

下から数条のビームが飛んできた。見覚えのあるビーム、アンクシャのビームキャノンと、フリーダムの……

 

「バラエーナ(羽根の中に仕込んだビーム砲)!?どうして!?」

 

「教えてあげるよ!サツマ!」

 

「そしてお望み通り相手をしてあげますよ!ただし……」

 

『私(アタシ)達二人同時にね!!』

 

 

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姿を現したのはアイのアンクシャだ、そしてその上にはナナのフリーダムが乗っていた。

アンクシャのグリップを掴み、寝そべる体勢でフリーダムはバラエーナをセートゥンに向けていた。

アンクシャは元々SFSとしての使用が出来る機体だ。アイのアンクシャはSFS用のグリップをそのままつけていた。

アイ自身、この二週間鍛えていなかったわけではない。ナナとの連携とサポートを中心に特訓を積んでいたわけだ。

 

「フリーダムをアンクシャに乗せるとは……!ならアンクシャだけ落とせば!」

 

セートゥンもアンクシャを撃ち落そうと撃つが、アイのアンクシャはかなり素早く動き回る。そしてその上で容赦なしに撃ちまくるフリーダム、

アンクシャのビームも加えてセートゥンを追いつめようとする。

 

「クッ!援護を!」

 

サツマは僚機のフォビドゥンに援護を求めようとする。しかし……

 

「待ってくれリーダー!今はアストレアと戦ってる最中だ!」

 

そう、フォビドゥンはソウイチのアストレアFR2と交戦してる最中だ。バックパックを被った様な強襲形態のフォビドゥンは、

アストレアFR2と火器で牽制しながら何度もぶつけ合っていた。

 

「今距離的にそっちに届くのはフレスベルグ(長距離用の曲がる大型ビーム砲)しかない!こんな時に撃ったら無防備でこっちが!」

 

「いいからお願いします!こっちがやられたらそれで終わりなんです!!」

 

「リーダー……解った」

 

鬼気迫るサツマの叫びにフォビドゥンのビルダーは渋々了承する。アストレアFR2と離れたと同時にバックパック先端部のフレスベルグを発射、

 

「うをっ!?このタイミングでそれスか!?」

 

アストレアにはかわされると同時に歪曲したフレスベルグはアンクシャに向うがあっさりかわされてしまう。なおも撃ち続けようとするフォビドゥンだったが……

 

「一騎打ちの最中にそういうの!スキだらけっス!」

 

撃ってる隙をつかれてフォビドゥンは正面からアストレアのビームサーベル切り裂かれる。予備動作が大きすぎた為だ

 

「リーダー……だから言ったのに……」

 

X字に切り裂かれたフォビドゥンはそのまま落ちて行った。

 

 

「あ……ワ・ワタクシのミスで……!」

 

「情けないよアンタ!」

 

「!」

 

自分の感情的になった判断に後悔するサツマはナナの声で我に返る。

 

「強いビルダー集めたって連携がそれじゃ空回りだわ!」

 

ナナの叫びと共にバラエーナ、そしてその上部に取り付けられたクスフィアスレールガンの連射でセートゥンを追いつめる。

だがサツマはそれをやすやすと受けるつもりはなかった。

 

「友達捨ててまでやって!本当は友達との方がうまくいったんじゃないの?!」

 

「!!!……あなたに!」

 

ナナの何気ない一言、悪意はなかった。だがそれが今のサツマにとって引き金となった。

 

「あなたにそれを言う資格はありませんわ!あなたなんかにぃぃ!!」

 

セートゥンの火器の弾幕が一層濃くなる。全武装を駆使し撃ちこんできた。

 

「!?」

 

反転し逃げるアイのアンクシャ、背後から来るミサイルとビーム、後方のビームを器用にアンクシャはかわし、ナナのフリーダムは上半身を翻し武装でミサイルを迎撃していた。

 

「くっ!?」

 

「友達を捨てて!もう引き返せやしないのに!!関係のないあなたにそんな事を言う資格がぁっ!!」

 

「なんでそうまでして必死なのよ!!」

 

「ここで諦めては……ボリス・シャウアー様に会うというワタクシの夢を叶える等夢のまた夢!!」

 

「アナタの憧れがが!?シャウアーさんの!?」

 

「シャウアー?」

 

サツマの挙げた名前、アイの驚いた反応にナナは首を傾げる。

 

「昔、イレイ・ハル君と名勝負を繰り広げたガンプラマイスターだよ!」

 

「じゃあ前にアンタが言ってた影響受けた勝負って!」

 

「うん!その人!」

 

「何をゴチャゴチャと!ここで!それもあなたの様なポッと出に負けては友達のビルダーを捨てた意味すらなくなってしまいますわぁぁっ!」

 

「……」

 

『前のアイを追い詰めた自分みたいだ』とナナは思った。だからこそ、ナナはサツマの心境を察することができた。

 

「ねぇ!前の友達を今のチームに入れるって出来ないの!?」

 

「あなたは!!ワタクシをバカにしてますの!?今更どうやって会えと!!」

 

「そうやって怒るって事はさ!本当は前の友達ともまたやりたいんじゃないの!?後悔してるんじゃないの!?」

 

「!!他人事だと思ってぇ!!ワタクシは友達を裏切った様なものですわ!!出来るわけないでしょぉぉっっ!!」

 

自分にも劣ると決めつけていたナナ、それが自分の心境を言い当てる。更に自分に説教をかます。

それはプライドの高い彼女にとってあまりにも屈辱だった。

絶叫したサツマはセートゥンのビームライフルを捨て、両手にビームサーベルを抜く。直にフリーダムとアンクシャを叩ききろうというのだ。

 

「自分でチーム出てったんでしょ!?自力で今のメンバー集めたんでしょ!?それが出来てなんで元に戻るのが無理だって決めつけるのさ!」

 

なおもナナの言葉は止まらない。

 

「熱くなったら止められない性分なんでしょ!?アイを誘う為にも使った熱意を友達に使うくらいわけないじゃん!憧れてる人に近づきたいならそれ位やってみせてよ!」

 

「知ったふうな口をっっ!!」

 

「アイ!反転して!アイツはアタシが!」

 

反転するアンクシャ、フリーダムはアンクシャから立ち上がりビームサーベルを抜く。

 

「今なら……だからこそアンタはアタシが落とす!」

 

「アナタが!?もうこちらの戦力はボロボロ!勝つ事は出来ないかもしれませんね!でもアナタがワタクシに勝つ事は不可能!口を酸っぱくして言ったのに呑み込みの悪い方ですわ!」

 

二機の距離が急速に縮まる。

 

「せめて最後にそれを分からせて差し上げますわ!」

 

「確かにアンタが言った通り数字は1だろうけど!」

 

「そうですわ!故にアナタ単体では!」

 

ナナが言い終わらないうちにセートゥンは両手のビームサーベルを横一文字に振るった。

 

「適いませんわぁぁっ!」

 

勝った!そうサツマは判断した。見た限りフリーダムはサーベルを振るってない。しかし目の前にフリーダムはいなかった。斬った手ごたえもない。

 

「!?どういう……っ!?」

 

その時セートゥンの両足が切断された。同時に足元のリフターも破壊される。

 

「えっ!!?」

 

落ちる瞬間、上下逆さまに反転したアンクシャと、そのグリップにぶら下がるフリーダムが見えた。

 

 

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「斬る瞬間に……ひっくり返ってましたの!?」

 

「確かにアタシは一人じゃ適わなかったでしょうね。所詮1でしかなかったのかもしれない。だからこそアイがいた」

 

「何を……?」

 

「1だって……他人と足せば3だか4だかにはなるって事よ」

 

負けたという状況が解ると同時に急に冷静になってきた。同時に自分のやってた事を思い返す。

一人で突っ走っていたな。無理に援護させようとしたなと言うのを今さら思い出せた。

そしてそれは相手だったアイとナナはよく分かっていた。

 

「でも私達のそれは……お互いどういう動きをするのか分かってたから動きを合わせることが出来たんです」

 

「それをやるには……実力より理解していたことの方が重要だったのよ」

 

「そうか……ワタクシは……単独の実力ばかり集めて……足し算すらうまくできないのに納得して……」

 

悟ったサツマはそのままゆっくり落ちて行った。

 

「フフッ……どうしてかな……前の友達との方が……うまく……出来たのに……」

 

暫くしてセートゥンの爆発の光が確認された。これによりアイ達の勝利でこの戦いは終わった。アイとナナはその光を黙って見ていた。

 

 

 

「よろしいこと?今回ワタクシが負けた事は素直に認めましょう」

 

バトルの後、私服に着替えた全員。

サツマはナナを扇子で指した。負けてなお毅然とした態度を崩そうとしない。ナナに対しては強気な態度でいたいのだろう。

 

「ですが次はありません。バトルで負けただけならまだしもバトル越しに大恥をかかせたアナタは決して忘れはしませんわ。『ハジメ・ナナ』その名前、忘れませんわよ!」

 

そのままサツマは踵を返し去って行く。

 

「あ、リーダー、待ってください!……あんまりリーダーの事酷い奴だと思わないでくださいね。では」

 

つきそいのビルダーがフォローを入れながらも、そのままサツマは他のビルダーと共に去って行った。連携は取れてなくとも嫌われてはいないらしい。

 

「……ヤタテじゃなくてお前を指していたな。ハジメ」

 

「これってあの人に認められたって事かもね……ナナ……」

 

「あはは……光栄って言うよりはちょっと不安だわね。また今度戦うかもって思うと……」

 

それにしても今回はかなりハードだった。今になって緊張の糸が切れたのだろう。ナナはその場でうなだれる。

 

「しかしきつかったわ今回、もう今日はスタミナ全部使ったって感じ」

 

と、丁度ナナは目の前の床に何かが落ちてる事に気が付いた。

 

「ん?何これ?」

 

すぐさま拾うナナ。学生証だった。確認の為開くと、映っていた写真には見覚えがあった。

 

――あ、さっきのサツマの学生証だわ……。2年C組……!?――

 

直後、学生証を見ていたナナが『ブフッ!』と吹き出した。

 

「?!ナナちゃんどうしたの!」

 

いきなり吹いたナナにアイが寄る。

 

「ククッ……アイ、サツマの下の名前なんだけどね……」

 

「ぐっ……恥ずかしながらちょっと忘れ物しましたわ。この辺で学生証を……」

 

「あ、『イモエ』」

 

「っ!?」

 

学生証落としたことに気付き、恥ずかしそうに戻ってきたサツマにナナがその言葉を口にした。

ナナが無意識に言った一言だったが、その瞬間サツマの顔が凍りつく。同時にアイ達はナナが何を言ったのか理解出来なかった。

 

「は?イモ……何ナナちゃん」

 

「……ワタクシの名前ですわよ……ヤタテさん……(ゴニョゴニョ)って……」

 

問いかけるアイにサツマがボソボソと答える。が、アイ達には聞こえなかったようだ。

 

「へ?」

 

「アイ、『イモエ』だって、『サツマ・イモエ』それがコイツの本名なんだってさ。……フ……アハハハ!」

 

指摘するや否や、いきなり笑い出すナナ。人の名前を笑うのが失礼だというのは理解している。が、今までがガチガチに緊張した状況な為か余計ツボにはまってしまった。

反面今の状況が理解できないアイ達(名前を知っていたタカコは除く)は固まったままだ。あまりにもふざけた名前だったからだ。

 

「な……何がおかしいんですのぉぉっ!!」

 

「いやゴメン!でもだって…そんな外見と話し方なのにイモエって……フフッ」

 

「人の名前で笑うとか失礼ですわ!言っときますけどおじい様からの小野妹子リスペクトですからね!!」

 

激昂するイモエ、反面周囲のルジャーナのギャラリーはイモエの名前を知っていた為『またか』と思っていた。

彼女の名前を笑う人間は多かった。

 

「上等ですわ!忘れないどころか今度会った時は絶対あなたを叩きのめして差し上げますわ!覚えてらっしゃい!ハジメ・ナナ!!」

 

「え?!アタシだけ!?」

 

「笑ったのはアナタでしょう!首洗ってなさいませ!!」

 

そう言うとイモエ……サツマはチームメイトと共にルジャーナを去っていった。

 

「最後は何故かナナちゃんに因縁がついちゃったね……」

 

「いや最後にあんな名前だったとは思わなかったからつい……でも、また戦う事になるでしょうし、こうなったらいつかはアタシ一人で勝ってみせるよ……イモエ……」

 

「やっぱ絞まらない名前だね……」

 

……

 

「無理な援護を強要したりして申し訳ありませんでした……敗因はワタクシのミスみたいなものですわ……」

 

その後、サツマはチームメイトに頭を下げ、駅の入り口で別れた。見送ったサツマの耳には、ナナの言った言葉が残る。

 

―― 自分でチーム出てったんでしょ!?自力で今のメンバー集めたんでしょ!?それが出来てなんで元に戻るのが無理だって決めつけるのさ!――

 

「……アナタは気にいりませんが、ワタクシも無駄に高いプライドが嫌いになる事がありましてよ……」

 

サツマは呟くとスマホを取り出した。そして電話帳から電話をかける。その相手は……

 

「もしもし、ワタクシです。今更どのツラ下げてって感じでしょうけど……、明日会ってくれませんか?直接会って言わなければならない事があるんです。……『散々勝手なことして、ゴメンナサイ……』って……




登場オリジナルガンプラ
フリーダムガンダム・アルクス

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使用ビルダー 『ハジメ・ナナ』

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『サツマ・イモエ』設定画

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これにて21話終了です。コマネチです。
まずなんでサツマをこんな変な名前にしたのかと言いますと、本来彼女はナナのライバルポジションとして作ったキャラでした。
その時はもっと普通のお嬢様的な名前でした。しかしそれだとずっと嫌な女的イメージをぬぐいきれなかった為、こんな名前を付けたという流れです。
その為乗機もあえてジャスティス系だったり。

※挿絵でアンクシャにフリーダムが乗ってる写真ですが、翼が片方壊れてるのに翼が外せなかったのでついたままになってますのでご了承頂ければ嬉しいです。

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