模型戦士ガンプラビルダーズI・B   作:コマネチ

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前回、女ビルダー『サツマ』とのバトルでナナは精神的焦りからアイの敗北を促がしてしまった。それは未熟なナナの心を折るには充分だった…。


第20話「好きになれた理由」(アイ VS ナナ)

「いってきます」

 

学校に行くべく自宅を出たアイは、ナナの家の玄関を見る。いつもならナナが待っているか、ナナの方から迎えが来るかのどっちかのハズなのだが、

その日はまだ姿を現していなかった。

 

――ナナちゃんは……まだ来てないか。昨日の負け方……まだ落ち込んでるのかな……――

 

アイが負けた昨日、落ち込んだままだったナナは話しかかけても力なく答えるだけだった。

いつも社交的で積極的なナナがああなるとアイも内心穏やかではない。昨日の事をナナが精神的にひきずってないかアイは心配だった。

ナナの家に入って呼び出そうとアイはする。その時……

 

「アイ!おっはよー!」

 

「うわ!ナナちゃん!?」

 

元気よく扉が開きナナが出てきた。

 

「どしたん?そんな驚いて」

 

「え?あぁうんゴメン、昨日落ち込んでたからさ、まだそのまま引きずってないかなって思って」

 

「なーに言ってんのよ、たかが一回の負けじゃない。それで何日もウジウジするなんてありえないでしょ?」

 

「まぁそうだよね普通」

 

「ハイ、それじゃあこんな所でくっちゃべってないでさっさと学校行こうよ!」

 

そう言うとナナはいきなり駆け出した。

 

「わ!もう!待ってよナナちゃん!」

 

アイも置いてかれないようにと追いかけた。この時アイは「一晩寝たら立ち直れたのかな?」と思っていた。あくまでこの時は……

 

……

 

そして学校は省略して放課後、帰路についたアイ達は商店街を歩いていた。

昨日の所為でナナが何か問題を起こしたかといえばそんな事はなく、表面上はいたっていつも通りだった。

 

「無一文の人が大富豪に、『お前なんかに金のない悔しさが分かってたまるか』って言ったんだって。大富豪はなんて言ったと思う?

『そっちこそ金のある苦労が分かってたまるか』、って答えたんだって。フフッ、面白いと思わない?」

 

ナナが自分で言った冗談に口を押さえる。自分で言って自分で受けてるのだ。

 

「ぁ、……うん、そだね」

 

力なく答えるアイ、内心『どう反応しろと?!何かの皮肉?!』と聞いていた。アイの隣にはずっと笑顔のナナがいた。

表面上はいつも通りといったが、むしろ文字通り表面が問題だった。

 

そしてそのアイとナナの後ろ……、薬局入口のマスコット人形にに身を隠す二人がいた。

 

「まずいよアレ!絶対昨日の事響いてるよ!」

 

タカコが小声で前方のナナへの違和感を口にする。

 

「あんな変なアメリカンジョーク言うなんてナナらしくないよ……。今まであんな風になった事ないもん……。やっぱり虚勢張ってるんだろうねあれ……」

 

元々控えめに喋るムツミが更に控えめなトーンで喋った。商店街はこの二人の通学路ではない。

しかし気になってアイとナナの後ろを追跡していたわけだ。

アイ、タカコ、ムツミの全員がナナの様子に強い違和感を感じていた。

表情の柔らかいナナではあるが、今日のナナは無理して笑顔を作っている感が強すぎた。まるで笑顔が顔に張りついているかのようだというのが全員の感想だった。

 

「おかげで一緒に食べた昼ごはんも食べた気がしなかったよ~。ずっとあの顔なんだもん。なんか空気張りつめてたし」

 

「ナナにとっても昨日の挫折みたいな体験、慣れてないだろうからね……。ナナ自身もどうすればいいかわかってないんだと思うよ……」

 

ムツミ自身、ナナが今のままではいけないと感じていた。

 

「とはいえ……こうして尾行してはいるけど、見てるだけとなると……どうしたもんか……」

 

 

そしてアイとナナの方に話を戻そう。

アイはナナに対し気まずさを感じながらも昨日の事を聞きだそうとした。今日は一言もガンプラの話をしていない。

アイは内心、聞いたらまずいんじゃないかと思いながらもおそるおそる口にしようとする。しかし……

 

「ねぇアイ、今日なんか随分とよそよそしくない?」

 

ナナの方から切り出してきた。

 

「もしかして昨日アタシが負けたので変な勘繰りいれてた?」

 

「……うん、そりゃあね、なんかいきなりテンション変わり過ぎなんだもの」

 

この流れになったらもう物怖じする必要はないな、とアイは心の内を言う。

 

「アンタねぇ、時間一晩あったのよ、涙も引くし、これからどうすべきかぐらい自分で考える時間充分あったわよ」

 

丁度、模型店『ガリア大陸』の前を通った時にナナは歩を止めた。その時、今日初めてナナの表情が真剣な表情に変わる。

 

「……ナナちゃん……?」

 

「アイ……アタシさ……昨日負けて思ったんだ。やっぱりアタシ、アンタと共闘するにはまだ早すぎるんじゃないかってさ……」

 

「え?」

 

ニッとナナが笑う、本人的に空気をもう少し明るくしようとしたのだろうか。しかしどこか寂しげだ。

 

「昨日サツマと戦った時、アタシの不注意で負けちゃったじゃない?また今度もそういうのあったらマズいし、

そういう時一緒に戦うのは控えようかなって思ってさ。あ!ガンプラ辞めるってわけじゃないから安心して!」

 

「そんな……負けることは珍しい事じゃないよ?ナナちゃん実力つけてきたじゃない」

 

「でもそれは素人的に……でしょ?挑戦者とかと比較したらさすがにアタシのレベルじゃ不利になるって」

 

「でもそれじゃチーム組む相手もいなくなっちゃうよ」

 

「大丈夫だよ、オッサン達がいるじゃない。あの三人と組んだ方が確実でしょ?」

 

「でも私、ナナちゃんと組みたいし……楽しみたいよ」

 

そうアイが言った直後、ナナの顔がクシャっと歪む。

 

「……アタシだって……」

 

「え?」

 

「……アタシだって同じだよ……それ……でもさ……でもさ!仕方ないじゃない!皆!強いんだよ!?

オッサン倒したアンタにあんな自信満々で挑んで来る位強いんだよ!?アタシじゃ歯が立たなかった!全然!現にアタシの所為でアンタ負けちゃったじゃない!」

 

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眼尻に涙を浮かべ、ナナはまくしたてた。震える声には自分への無力感が込められていた。

 

「でも……負けても楽しめれば」

 

「それで自分の力も出し切れずにボロ負けしたら楽しいなんて言えないじゃない……!それもアンタの脚を引っ張る形で……!」

 

「それは……」

 

その時だった。向かい合う二人に声をかける人物がいた。

 

「やぁ二人とも!いい所に来てくれたね!」

 

「!?」

 

「!?ハセベさん!?」

 

短髪に丸眼鏡、そして作業用エプロン。声の主はガリア大陸の雇われ店員、ハセベだ。

 

「いや実は今日Gポッドのサーバー定期メンテの日なんだけどね、終わったはいいんだけど確認で誰かにガンプラバトルやってほしくて、

ビルダーが丁度いなくてさ、是非二人でバトルしてほしいんだけど!」

 

「え?でも今日はそういう気分じゃ……」

 

「アタシも……」

 

「お願い!!」

 

必死に頼み込むハセベに二人は顔を見合わせた……。

 

 

 

「で、結局ガンプラバトルになると……」

 

ナナはGポッドの中でぼやいた、あの後もハセベがどうしても折れず、しぶしぶ二人は了承する事になった。

 

「一応……バトルやるかもしれないって思ったからガンプラ持ってきてたけどさ……あのオッサンの態度……どう見てもアタシ達をバトルさせてアタシの考え変えようって魂胆じゃん……」

 

ブツブツ文句を言ってると目の前のカタパルトデッキが開く、今回の母艦はガルダだ。『Zガンダム』に登場した空中輸送機。

全長317mにも及ぶその形状は翼を広げた巨大な太った鳥を思わせる。

 

「無理があるわよ。お互い殴り合えば分かり合えるとでも思ってるの?一昔前の少年漫画じゃあるまいし……ま、いいわ。行ってみますか。ハジメ・ナナ、ストライク、出るよ!」

 

グチグチ言っても仕方ない、ハセベの言う通りという事にしよう、とナナは操縦桿を握りしめ、ガルダから飛び出した。

 

「うわっ!何この吹雪!?」

 

出撃直後、目の前が吹雪で真っ白になる。今回のステージはキリマンジャロ基地、常に吹雪の吹き荒れるキリマンジャロ山のステージだ。登場作品はガルダ同様『Zガンダム』だ。

 

「アイは……!?」

 

こう視界が悪いと敵を捉え辛い。飛びながら周囲を確認する。その時、Gポッドに警告音が響く、自分の視界にビームの弾が飛んでくるのが見えた。

 

「くっ!?」

 

真正面から飛んできてくれて助かったとストライクのシールドを構える。

付近にビームは着弾。それによる爆発を防ぐナナ。

 

「ユニコーン……アイ!」

 

爆発で巻き上げられた雪と泥をかぶりながら、ナナは前方を見据える。

吹雪の中、アイの機体が姿を現した。ユニコーンガンダムだ。

右腕にビームマグナム、背中にアームドアーマーDE、左腕に二丁のビームガトリングを装備している。いつも通りの装備だ。先程のビームはアームドアーマーから発せられた物だ。

 

「まさか……このタイミングでナナちゃんと戦う事になるとはね……」

 

アイの声もやや沈んだ感じがする。こんな時にバトルする事に気まずさを感じてるようだ。

 

「手は抜かないでよ!やったら嫌だから!」

 

アイが迷ってるのはナナも分かっていた。でもそれで手を抜かれるのはナナ自身尚更嫌だった。

 

「わかってる!」

 

そう言うとユニコーンは一度飛び上がる、ビームガトリングでストライク目掛けてを撃ってきた。盾を前面に構えビームガトリングを防ぐ。

そこからビームライフルを構えユニコーンに撃つ、ユニコーンはそれをシールドで受けると背中のアームドアーマーDEからビームキャノンを撃つ、

 

「アタシが沈んでると思って変に気を使わないでよ!却って嫌だわ!」

 

「気を使ってなんか!」

 

「ビームマグナム使ってないのが気を使ってるってんでしょ!」

 

単発ずつで撃たれるアームドアーマーのビームを回避するストライク。そのままナナはストライクのビームライフルを投げ捨て、対艦刀を抜きユニコーンに突撃。

ユニコーンも左腕でビームトンファーを展開、ストライクを迎え撃った。重なる剣がスパークが起こる。

 

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――ここでナナちゃんに手を抜いてもナナちゃんは更に怒らせるだけ……かといって全力でナナちゃん倒しても更にナナちゃんの自信を無くす……どうすれば!――

 

『こう思ってるって事はやっぱりナナを弱いと自分は思ってるのか……』アイは自分で分析する自分の心に自己嫌悪しながらもユニコーンの腕に力を込めた。

 

 

 

「う~ん、熱くなってるねナナ」

 

アイとナナの対戦を見ていたタカコはいつもの調子で感想を述べる。周りにはコンドウ達ウルフのメンバーもいた。彼らもナナが気がかりだったのだろう。

 

「……どういう事ですか……?これって……」

 

ムツミはコンドウ達に問いかける。

 

「作戦だよ。バトルさせてこうやってお互い本音をぶつけさせようってわけだ。いい勝負をすればハジメも自信が戻るはずだからな」

 

コンドウは真剣な調子で答えた。

 

「本当にこれが実を結ぶと思ってるんですか……?」

 

周りを見渡してムツミは言う。確実ではない為納得いかないという事だ。

 

「ミヨちゃんじゃないがコンドウさん。俺もこのバトルは納得いかない。ハジメに自信をつけさせるっていっても荒療治になるとはどうも俺は思えないよ」

 

ムツミに続いてツチヤも乗り気ではない。その場にいた半分が今回のプランに懐疑的だった。だがコンドウは堂々とした態度を崩さない。

 

「いや、俺はこれがベストだと思う。普通のビルダーをぶつけるよりは強いビルダーと戦わせた方がいい。少なくとも親しいビルダーだ。本音を吐き出させる条件としてはいいハズだ」

 

「無茶苦茶ですよ……」

 

反対の意思表示として渋い顔をするムツミ、だがその相方は別の受け取り方をしていた。

 

「あたしは賛成だな」

 

「タカコ……?」

 

「ナナ、泣いていたよ?ナナにとってそれほど好きだって事だもん。だったらなおさら自信つけてほしいもの。ああやって自信なくしたら自分で挑んで克服するしかないもん」

 

先程と打って変わって真剣な調子でタカコは答えた。ムツミは考える……自分も昨日のナナみたいに陸上やスポーツで壁にぶち当たることもあった。

それで立ち直るには自分で挑み自信をつけるしかなかった。ナナもその時の自分と同じ感じなのだろう。と

 

「言いたい事は解りました……でもアイちゃんとじゃ差が大きいですよ……。アイちゃんの相手になるんですか……?」

 

「ハジメは筋は悪くない。自信さえあれば昨日みたいな事はないだろうし、現状でもヤタテに食らいつく実力はあるよ」

 

「まぁ確かに前の大会で、俺達を相手にしてかなり持ちこたえたっスけど、でもいいんスか?片方は遠慮、

もう片方はテンションを高くして自分を誤魔化してる感じっス。本音出せるんでしょうか」

 

ムツミに代わってソウイチが聞く。

 

「ヤタテの方はガンプラバトルの方が自分の素を出せる。信じよう」

 

「駄目だったら……その時はその時か……」

 

 

 

「くっ!」

 

ユニコーンとの鍔迫り合いに負けて弾き飛ばされるストライク。その隙をつかれ左腕を切り裂かれた。ストライクはそのまま雪原に背中から倒れ込んだ。

 

「ナナちゃん!」

 

「……もう諦めてよ……」

 

「え……?」

 

「……やっぱり駄目だよ……アタシじゃアンタに適いっこない!」

 

ナナは勢いをつけて虚勢を張っていたがもう崩れそうだった……。

 

「これでわかったでしょ……!アタシが大事なバトルに出たって足引っ張る!必要ないでしょ!別にアタシがチームにいなくったっていいじゃない!」

 

「それは違うよ!」

 

「楽しめればいいって!?やるだけでこんなやられ役なんてゴメンだわ!アタシを前座として使いたいわけ!?」

 

「違うよ!私だってそんな事考えずにナナちゃんとやってたわけじゃ……」

 

「じゃあどういうわけ!?どうしてそうやってアタシに食いつくの!?」

 

「だって……!だってナナちゃんと一緒にやってる時が一番楽しいんだもん!!」

 

 

ナナの耳に大音量でアイの叫びが流れた。

 

「え……」

 

「こっちに初めて引っ越してきた時、馴染めるか、友達は出来るのか、ガンプラが趣味って言って周りは受け入れてくれるのか、凄く不安だった……正直隠そうかとも思ってた」

 

黙るナナ、アイはそのまま語り続ける。

 

「でもさ、ナナちゃんは率先して私に友達になろうって言ってくれて……私がガンプラ好きだっていった時も受け入れてくれて凄く嬉しかった。

それどころか一緒にやるようになって、本当に楽しかったし嬉しかった」

 

「……」

 

「だからコンドウさんが協力してくれても、ナナちゃんと一緒にバトルしようって決めてた……。

でも、ナナちゃんにとってそれが逆効果になるなんて……。強い人とのガンプラバトルが……嫌な気持ちしか生み出さないって言うなら……

本当に嫌なら、もう何にも……グスッ……言えないけどさ……」

 

アイの声が震えてる。泣きたいのを抑えてるのだろう。

 

「でも……でも……楽しみたいって気持ちが残ってるのなら……せめて!せめて今のギスギスした不安は吐き出して!元のナナちゃんに戻ってよ!」

 

「……アタシだって……」

 

ナナの声も震えている。涙声になった通信がアイの耳に響く。

 

「アタシだって……わかってた……今日の自分の態度が大人げないって事位……でも……初めてだったんだよ?

熱中出来る事、流行以外の共通の趣味で盛り上がれる事……もっと活躍したいし、もっと強くなりたかった……うまくいかない事にイラついてた……嫌だったんだもん……

アンタの脚引っ張るの、戦力外扱いになるの……」

 

「ナナちゃん……」

 

「ゴメン……アイ……」

 

「私も……ゴメン……ナナちゃんの気持ち……気付かなくて……」

 

と、その時Gポッドにけたたましくアラームが鳴る。バトルの制限時間が終わりかけてる為だ。画面に表示されてるタイマーが30秒を切った。

 

「あ……もう時間がないんだ」

 

「大丈夫!ほんの少しだけどさ!楽しもうよ!ガンプラバトル!」

 

そう言うや否や、ナナのストライクがシールドのガトリングガンを連射する。アイのユニコーンはシールドでそれを防ぐが、

その隙にストライクはI.W.S.P.を最大に吹かし後方に逃げ込んだ。ストライクが逃げた先には山地林が見える。かなり広い、機体が身を隠す事は難なく出来るだろう。

 

「隠れた?!」

 

いぶり出そうと山地林にビームマグナムを撃とうとするアイ。

しかしユニコーンの側面、森から黒い影がバーニアを吹かしユニコーン目掛けて飛んできた。

 

「ストライク!?」

 

吹雪の所為でハッキリ見えたわけではないがナナのストライクと判断したアイはビームマグナムを撃ち込む。先程よりは遠慮せずに撃つ。

黒い影は爆発し周辺に破片が飛びちる。が、アイは破片を見て違和感を感じた。

 

「ストライクの残骸がない!?」

 

「そーいう事!!」

 

「!?」

 

直後真上からナナの声が響いた。吹雪吹き荒れる真上から対艦刀を振り上げたストライクが大きく振ってきた。

 

「そっか!ストライカーをオトリに!!」

 

「そう!単独で飛ばしたわけ!」

 

振り下ろしたストライクの対艦刀をアイのユニコーンはビームトンファーで受け止めた。勢いをつけた為かさっきよりストライクのパワーは増していた。

 

「アイーッ!!」

 

アイにナナの通信が響く、大声だがさっきのような悲しさのこもった叫びではなかった。

 

「アタシもさ!今気づいたよ!」

 

「え?」

 

「一人で作ったりバトルするよりも!アンタと一緒が一番楽しいってーッ!」

 

「ナナちゃん……うん!!」

 

アイが笑顔で答えると同時にタイムアップとなり、バトルは引き分けの形で終了した。

 

 

 

「お疲れ様、いいバトルだったよ」

 

二人がGポッドから出てくるとタカコとムツミ、コンドウ達が出迎えた。直後ナナは呆れた顔をしてぼやく。

 

「オッサン……タカコとムツミまで……ったく、バトルで立ち直らせようなんて強引すぎなのよ。なんか発案したのオッサン臭いけど?」

 

「ハハ……まぁよかったじゃないか。結果的に立ち直れて」

 

コンドウは笑ってごまかす。

 

「いい勝負して自信取り戻させるとかいったの誰だっけ?」

 

「自信と全然関係ない方向で立ち直ったスけど?」

 

「うっ……結果オーライだ結果オーライ!」

 

「……でもま……ちょっとそうやって気ぃ遣ってくれたのはありがたかったわよ……なかったらもう暫くウジウジしてたでしょうから……」

 

バツが悪そうに目を逸らしながらナナは小さな声で言った。

 

「よかった……いつものナナちゃんだ」

 

アイが安堵の声を上げる。顔も安心した笑みがこぼれていた。それにナナがVサインで返す。

 

「ま、完全復活って事で」

 

「これでメンバーは揃ったっスね。今度はサツマさんにリベンジを……」

 

「何言ってるんだソウイチ。あくまで立ち直ったが挑戦者との戦いにハジメが参加するとは一言も言ってないぞ?」

 

「あ……そっか、ナナちゃん……やっぱり……」

 

「?出るよ?アタシ、挑戦者とのバトル」

 

「えっ!?」

 

あまりにもそっけなく答えるナナにアイは驚いた。

 

「だってさ、アイにああ言われちゃいちいち気にする必要もないじゃん?言いたい事言ったらなんかスッキリしちゃったし」

 

「まぁ、そう言ったけどさ」

 

「それに、どうして足引っ張るの恐れていたのか自分でも分かったしね……」

 

「?なに?」

 

「いいのいいの、次のガンプラ買いに行こうよ!アイ!前のレースの時の金券、まだ使ってないんだ!」

 

「え?!待ってよナナちゃん!せめて着替えてから……」

 

アイの手を引き、ヘルメットを抱えながらナナは下の階へと駆け下りていった。その顔には先程の沈んだ雰囲気は微塵も感じさせなかった

 

 

――どうしてアイの足引っ張るのを恐れているのか……それはアタシがアイと一緒に思いっきりガンプラバトルしたかったから……――

 

 

【挿絵表示】

 

 

『カシャッ』

 

「やっぱりあの笑顔が一番の笑顔だよね~」

 

降りて行くアイとナナの背中をタカコはデジカメに収める。同時に二人を見送った少し後、店員のハセベが二階に上がってきた。

 

「今あの二人が降りて来たけど、あの様子だとうまくいったみたいだね」

 

「えぇ、あの二人、やり遂げましたよ」

 

答えるコンドウにハセベは安心して胸を撫で下ろした。

 

「いやいや、無事ハッピーエンドになってよかった」

 

「しかし最初聞いた時は驚きましたよ、まさかハセベさんがこんな作戦を発案するなんて」

 

今回のバトル、実は持ち出したのはコンドウではなくハセベの方だった。

失礼かもだがコンドウはその事に強く驚いていた。ハセベの性格は荒らしに口ごたえされるだけで落ち込む程臆病かつ脆い。

今回の作戦はある意味賭けでもある。ハセベの性格上これを発案したことにコンドウは未だに強い意外さを感じていた。

 

「いやいや、昨日の事情は知ってるからね。それに僕だって大人として道を誤った若者を救いたいという気持ちはあるよ」

 

「なんか……ハセベさんじゃないみたいっスねぇ」

 

目の前にいるよく知る店員、だが自分達が知ってるその姿が彼の全てではないのかもしれない、とコンドウは思っていた……。




気付けば三週間以上…コマネチです。
今回はナナ復活の話となります。普通に書いていればもっと早く投稿できたのですが
この話はどうしても挿絵をいれたくて練習してて遅くなりました。絵の方、あくまでガンプラがメインなのでペン入れや色塗り等を今後するかは
不明ですがせめて絵自体は精進していきたいです。それではまた

【挿絵表示】

…しかし自分で描いた絵を見た後にうまい人の投稿絵を見て、その後にまた自分の絵を見ると…ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!!!!!

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