模型戦士ガンプラビルダーズI・B   作:コマネチ

2 / 61
転校生、ヤタテ・アイは作ったガンプラで戦う『ガンプラビルダー』だった。
転校初日で荒らしを倒したアイに挑戦者が現れる。


第2話「性別の関係ない物」(ジェノアスキャノン登場)

「ヤタテさんてさ、前の高校ってどんな制服だったの?」

 

「ブレザーだったよ。前の学校の時はあんまり似合ってないとか言われたけどね」

 

「じゃあ好きな男性のタイプは?」

 

「うーん、あいにくまだ明確にそういうのはハッキリしなくて……」

 

「スリーサイズ教えて!」

 

「ノーコメント」

 

アイの席の周りに男女問わず何人もの生徒が集まっている。

ヤタテ・アイが転校してきた次の日、休み時間は転校生恒例ともいえる質問責めの状況となっていた。

転校生が珍しいのか、アイと仲良くなりたいのか積極的に話しかけてくる。

アイも早くクラスに馴染みたいと思っており積極的に答えていた。

 

「人気者だねぇアイちゃんは」

 

フジ・タカコが遠巻きにアイを見ながら言った。今タカコはアイの席から一番離れたミヨ・ムツミの席でナナとたむろしていた。

 

「人気者、になれるかは分からないけど少なくとも嫌われることはないだろうね……」

 

「最初に会った時のよそよしい感じも取れてきたしね」

 

「ところでさナナ……、さっき言ってた話、アイちゃんプラモで戦うゲームで凄く強かったんだって……?」

 

「って事はアイちゃんの作ったプラモも見たわけだよね?やっぱうまかった?」

 

そう、今ナナはムツミ達に昨日のアイのガンプラバトルの様子を語って聞かせていた。

 

「うん。あいにく知識ないアタシじゃプラモの作り方がうまいかは解んなかったけどね。ただ一人で三人を圧倒するんだもん。強いってのはよく解ったわ」

 

「ほほぅ、ていう事は模型部の連中よりうまいのかな?」

 

模型部、この学校内で聞き慣れない言葉にナナは首を傾げた。

 

「?この学校に模型部なんてあった?」

 

「あったよ?少人数だし男子しかいないけど。前新聞部の取材した時そういうゲームに力入れてるって言ってたから……」

 

と、その時教室の扉がガラッと開き一人の男子生徒が入ってきた。

 

「あっ、噂をすればなんとやらってね、早速模型部の奴が来たよ」

 

短髪で額が広い少年だ。

 

「へぇ、別のクラスの奴なんだ」

 

「ん、確か名前はヤマモト・コウヤ」

 

タカコがデジカメに保存してある写真を見せながら言った。

写真には数人の男が並んでおりヤマモト・コウヤと呼ばれた少年も写っている。

 

「なぁなぁ、ガンプラバトルがすっごいうまい転校生がいるって聞いたけどもしかしてそこにいんの?」

 

人だかりを確認するや否やとりあえず聞いてみるコウヤと呼ばれた少年。

 

「転校生……は私だけど」

 

アイは席から立ち上がる。

 

「お前?えーなんだよ女かよ」

 

アイの顔を見るや否や第一声がそれだった。「え?」と動揺するアイ。

 

「ガリア大陸でハセベさんが『凄く強いうちの制服着たビルダーが引っ越してきた』って聞いたけど女じゃん。本当にガンプラやんの?」

 

ムッとするアイ。あっけらかんとした顔で言う辺り悪気はないのだろう。が、反面遠慮もない。

 

「なんか引っかかる言い方だよ。それにハセベさんって誰?」

 

「ガリア大陸の店員の名前だよ。丸眼鏡のおっさん。ハセベ・シロウね」

 

丸眼鏡、という部分でアイは思い出した。あの暗いムードの人か。と

 

「あぁあの人。でも私が女って事とガンプラやるかってどういう関係があるの?」

 

「だってそうだろ?女がガンダム好きになるって大概美形キャラ目当てだぜ。かっこいい機体が活躍するよりかっこいいイケメンが活躍する方が嬉しがる。

メカの良さを理解しない女にガンプラを本気で作るわけないだろ」

 

とんだ偏見だ。世間じゃそういった偏見はあるっちゃあるがアイにはそう思われるのは嫌だった。

だがアイ同様に嫌な気分になった人物が彼に食ってかかった。

 

「ちょっと、よそのクラスから入ってきていきなりそう言うってどんな神経してんのよ。そんな事言う為にわざわざこっち来たわけ?」

 

ナナだった。昨日のバトル中のアイの様子を見ていたナナはアイがそう言われるのが我慢出来なかった。

他のクラスメイトもそういう挑発的な言い方ってどうなの?と言う。

 

「んにゃ、そうじゃないよ。要点だけかいつまんで言うならそこの……誰だっけ?」

 

「ヤタテ・アイだよ」

 

「ヤタテとガンプラバトルがしたいなって思ってさ」

 

「アイ、どうすんのよ?」

 

ナナの問いにアイは答える。

 

「言い方自体は釈然としないけど、バトルならいいよ。まだこっちでちゃんとしたビルダーと戦ってないからね」

 

「マジで!?よっしゃ受けたぜ!じゃ俺は戻るから、バイビー!」

 

「ってちょっと待ちなさいよ!アンタ他にいう事あるでしょ!」

 

ナナが止めるもコウヤはそのまま自分のクラスへと戻って行った。周囲はコウヤの行動に呆れるばかりだった。

 

……

 

「ったく失礼な奴だったわね~。あのデコっぱち」

 

「絶対彼女出来ないねああいうタイプ……」

 

教室にナナの声が響く、昼休み、タカコ、ムツミ、ナナの三人は弁当をいつも自分の机を合わせて食べる。

今日からアイも一緒に食べようと言う事で誘われたのだ。買ってきたもの、親に作ってもらったもの、自分で作って来たものと様々な弁当が並ぶ。

 

「でもちょっと意外だったな。ナナちゃんがあの状況で怒るなんて」

 

「なーに言ってるの、友達なんだから当然でしょ?」

 

「でも嬉しかったよ。ありがとうナナちゃん」

 

「でもさぁ、アイちゃんもああ言われて怒らなかったよね。よく平気だったね?」

 

アイがコウヤの発言に対して反応してなかったのがタカコは気になった。

 

「……平気なわけないよ。そういうの言われたらそりゃ私だって傷付くよ。今時ガンプラやってる女の子って別段珍しくないのに」

 

もぞもぞとコンビニのサンドイッチを食べながらアイは呟く。

 

「そういえば昨日、プラモ屋じゃ女の子もちらほらいたわね」

 

「世の中色んな人がいるからね。そういう偏見持ちもいるって事なんだろうね~」

 

「模型で一番とっつきやすいからね。女でガンプラやるのって変じゃないって自分では思ってるけど……

偏見とか聞き流そうとはしても、なんか引っ掛っちゃうときってあるんだよね……」

 

ポツリとアイは愚痴を吐く。反応を期待したわけではないがつい出てしまう。

 

「少なくともボク達は変だとは思わないよ……」

 

「ムツミちゃん?」

 

ムツミが反応をするのはその場にいた全員が意外に感じた。ムツミは表情を変えずに話し出す。

 

「昔、ボクは小学生の時、よく男子と混ざって野球やサッカーをやっていた……。性別なんて関係なしにね……。

でも高学年になるにつれて周りは同性とどんどんつるむ様になってきた。『女の体力じゃ男の足手まとい、女とつるむなんて変だ。』とか言われてね……」

 

アイの不満を自分に重ねたのだろう。ムツミの口調は真剣だった。

 

「変じゃない。ボクはそう男子に知らしめたくて一時期男子と一緒にいるのに拘ってたけど

最終的にボクと遊ぶ男子はいなくなって孤立してしまった……。結局ボクも女子同士でつるむ様になってしまった……」

 

思い出してるのかムツミの顔はほんのちょっぴり悔しそうだ。

 

「もう今となっては男女一緒に運動で競う事も出来ないけどね。スポーツだとどうしても男女の差ってのはあるし。

でもさ、ガンプラっていうのはそういう性別での差とかがない世界なんでしょ……?遊びか真剣かまでは知らない。

でもそういう平等なのはボクは凄く素敵だと思うよ……。変じゃない。変だって言う奴がいたら実力で知らしめてやればいい」

 

「ムツミちゃん……ありがとう!」

 

「月並みな言い方だけど、思い知らせてあげなよ……あの模型部員にアイちゃんの実力を……」

 

「うん!」

 

胸がスッとした。他人にそう言ってもらえると凄く気持ちが楽になる。

 

「ムツミがそんなに長く喋るなんて……」

 

「言っとくけどボクは無口系じゃないよ?」

 

……

 

そして放課後、山回商店街の模型店『ガリア大陸』にアイ達はバトルの為立ち寄る。

店の二階、ガンプラバトルの出来るスペースにアイ以外の三人はいた。

 

「でもよかったの?タカコもムツミも部活あったんじゃ」

 

「大丈夫、理由つけて休んできたから……、しばらくは大会もないし対して問題ないよ……」

 

「そうそう、それにアイちゃんの晴れ姿だよ~?バッチリ撮っておかなきゃ~」

 

タカコがデジカメを目の前に持っていき撮る動作を取る。と、アイが奥の女子更衣室から出てきた。

 

「お待たせ!」

 

「あ、出てきた」

 

「おーあの格好は」

 

アイの服装は学校のセーラー服からパイロットスーツに変わっていた。いや、デザイン的にはレーシングスーツと言った方が近いか。それも安物の。

体は白、手足は藍色、胸と肩にはオレンジ色のラインが走っており左胸には『GP』と描かれていた。実際はこれにヘルメットを着用してバトルに望む。

 

「前使ってた色と同じ奴探してたけど、あって良かったよ」

 

「おーカッコイイ、レーサーみたい」

 

「まぁあくまで気分出す為のものなんだけどね」

 

「お、準備万端ってわけ?」

 

と、今到着したのかコウヤが話しかけてきた。来たばかりの為格好は学ランのままだ。

 

「こっちはね、いつでもいいよ」

 

アイは気合十分とばかりに答える。

 

「まぁ慌てんなって。こっちも着替えてくるからさ、運か実力かはわかんないけど、荒らし撃退した奴と対戦一番乗りだ。腕が鳴るぜぃ」

 

反面コウヤはのんびりと更衣室に消えた。

 

「なんか調子狂うな……」

 

「大丈夫だよアイ、ファイト!」

 

 

 

そして暫くしてコウヤがパイロットスーツに着替えた後、お互いがGポッドに入る。

 

「行くよ。AGE2E」

 

Gポッド内、パーソナルデータの入ったカード、ビルダーズカードを目の前のスリットに挿入。

そしてスキャナーにガンプラを入れる。ガンプラバトルは自分のガンプラをスキャンする事から始まる。

読みこまれたガンプラは仮想空間の戦場に十数メートルの巨大兵器として降り立つ。

ガンダムシリーズの作品を超えた異種格闘技ともいうべきバトル。それが最先端ホビー、ガンプラバトルだ。

 

『今回のステージはニューヤーク市街地です』

 

Gポッドの壁がスクリーンに変換、格納庫が表示されると共にステージ名が表示される。

ステージは『ニューヤーク市街』、機動戦士ガンダムにおいて敵総帥の弟『ガルマ・ザビ』の戦死した物語の節目とも言うべき場所だ。

 

『ゲームをスタートします。戦果を期待します』

 

「ヤタテ・アイ!ガンダムAGE2E!出ます!」

 

音声アナウンスとアイの掛け声と共にアイのガンダムAGE2Eはカタパルトで出撃する。

出撃のGを体に受けながらも昨日以上の高揚感を感じていた。

やはりパイロットスーツを着ていると操縦しているという意識が高まる。

半壊した雨天野球場、その中に隠してあったホワイトベースからAGE2Eは飛び出す。

今回のAGE2Eは両足のアタッチメントに追加装備を施していた。左足はGNハンマー、右足はGNピストル。

どちらもHGガンダムアストレアタイプFに付属していた武器だ。

戦争で占領下にあった街、という設定だけあって辺り一面は廃墟だ。そして空は曇りの夜、雰囲気にも視界的にも暗いステージだ。

 

「隠れるにはもってこいのステージだろうけど……。こっちも早く身を隠した方が……」

 

高度を滑空をしながらそう考える。と、その時だった。いきなりアイのGポッドに警報が鳴り響く。

攻撃による警告だった。

 

「いきなり!?」

 

突然左前方の朽ちた高層ビル、その中から大型のビームが飛んできた。それもキャノン並の出力のものだ。

 

「そこから!?」

 

予想外の場所だ。咄嗟に回避行動をとるアイの目の前をいきなりビームが通り過ぎる。

 

「あっ!」

 

機体は無事だったもののハイパードッズライフルを損傷、破壊されてしまう。

 

「AGE2か!アイだけにIガンダムでも使うかと思っていたぜ!」

 

コウヤの声だ。ビームによって穴があけられた高層ビルの中から潜んでいたガンプラが現れる。

四角い体躯に頭部中央からは一本の角が出ており顔の部分は十字型のゴーグルで覆われていた機体。それがコウヤの機体だった。

 

【挿絵表示】

 

「ジェノアスカスタム!?それも改造タイプ!?」

 

アイが叫ぶ。……ジェノアス、ガンダムAGEに登場する機体であり、世代ごとに姿を変えてきたガンダムAGEの顔とも言うべき量産機だ。

『特長のないのが特徴』ならぬ『特徴がないのが特徴』と言わんばかりの外見と素の能力の低さからかそのまま使う人はあまりいない。

が、この機体の真の能力はその改造のし易さにある。簡素なデザインだけに改造が非常にしやすいのだ。

それによりガンダム系とも互角以上に戦える機体にする事も可能だ。

その機体は高層ビルの階層を複数破った状態で立っていた。

 

「偉い人は言ってた!『ジェノアスは本編じゃどんなに頑張って改造しても、工夫しても、

一度もUE(別名ヴェイガン、AGEの敵)に勝ってないという現実に打ちのめされる』って!

しかしそれが覆せるのがガンプラバトル!改造や腕前次第でガンダムだろうがヴェイガンだろうが叩きのめせるのさ!」

 

ディープグリーンを基調としたパイロットスーツを着たコウヤが言う。機体はジェノアスカスタムという設定上の改造機を更に改造したオリジナル機体だ。

カラーリングはコウヤに合せたようにディープグリーンで塗装、背中と腕がガンダム7号機の物に換装されており更に両手にライフルを装備、

元のジェノアスよりかなり攻撃的に見える。

 

「偉い人って誰!?」

 

「勝てるかな?!俺のオリジナル!ジェノアスキャノンに!」

 

「聞いてよ人の話!」

 

アイの言葉お構いなしにジェノアスキャノンは両手の銃で滑空中のAGE2E目掛けて撃ちまくる。

 

「うわっと!」

 

両肩のスラスターとシールドを使い凌ぐアイ。

 

「この!」

 

負けじとアイもAGE2Eの左足のアタッチメントからGNハンマーを取り出す。(要はワイヤー付のトゲ付き鉄球と考えて頂きたい)

ジェノアスキャノンの立っているビル目掛けて打ち出した。

 

「来るか!」

 

シールドを構えハンマーに備えるコウヤ、だがGNハンマーはジェノアスキャノンにはぶつからずその足場にぶつかり床を破壊する。

 

「あり!?届かなかった?!凡ミスか!?」

 

「それはどうかな!?」

 

拍子抜けするコウヤにアイが余裕ありげに答えた。すると直後、ジェノアスキャノンの立っている階層が崩れ出した。

 

「なっ!」

 

突然の事に意表をつかれたジェノアスキャノン、そのまま連鎖的に崩れるビルの外に滑り台の様に滑り落ちる。

そしてガレキの地面にうつぶせの状態で倒れ込んだ。

 

「あ!味な真似を……」

 

「人間のビルにモビルスーツが立ってるんだもの。足場を少し崩せばこうなるよ」

 

AGE2Eもある程度距離を置いたところで降り立つ。

 

「じゃあこれならどうだよ!?」

 

コウヤはうつ伏せの状態のままジェノアスキャノンの右肩のビームキャノンを展開、AGE2Eを狙う。

 

「!」

 

「吹き飛べ!」

 

放たれるビームキャノン、不意打ちだった為アイは回避を試みるが完全にかわし切れず右肩を掠めてしまう。

 

「つっ!」

 

吹き飛ぶ二枚のウィングとアーマー。右腕自体は無事だった物のAGE2E本体も後方に吹っ飛ばされ、衝撃で倒れ込んでしまう。

 

「ぅわっ!」

 

ジェノアスキャノンのビームは後方の高層ビルに大穴を開ける。倒れたAGE2Eをなおも狙うジェノアスキャノン。

アイはこの状況を打開しようと右足のホルスターからGNピストルを取り出そうとする。が……

ゴゴゴ……と突如地響きが響く

 

『何(なんだ)?……ッッ!!!』

 

直後に地響きの正体を二人は見た。ジェノアスキャノンの撃ったビルがこちらに倒れ込んで来たのだ。

 

「ぅお!こりゃラッキー!!楽して勝てそうだぜ!」

 

巻き込まれまいと早々に起き上がり退避するコウヤのジェノアスキャノン、ビルの倒壊場所には丁度AGE2Eがいた。

尻もちをついたままの体勢では避けられない。アイの目の前にビルが迫る。

 

「!!」

 

そしてビルはAGE2Eを巻き込み倒壊、大爆発を起こした。

 

 

……

 

 

「うわ!アイちゃん負けちゃったの!?」

 

観戦モニターを見る数人のギャラリー、それに混じって見ていたナナ達、タカコが慌てながらアイを心配する。

だがムツミは動じずじっとモニターを見続けた。

 

「大丈夫……アイちゃんはきっと……」

 

 

 

「どうやら俺の勝ちみたいだな」

 

火の海となった目の前を見ながらもう勝敗は決まったと確信するコウヤ。だが……

 

「とんでもない!!」

 

「!?」

 

アイの声がした直後、コウヤの目の前に球状の物体が飛んできた。

 

「う!うわ!」

 

慌ててシールドを構えるジェノアスキャノン。だが球状の物体の衝撃は凄まじく防御したシールドは砕けちる。

勢い余ってジェノアスキャノンは後方に倒れ込む。直後、炎を突き破ってAGE2Eが飛び出してきた。

両手にはハイパードッズライフルではない別の武器が握られていた。

 

「AGE2!?どうして!ビルの倒壊に巻き込まれたんじゃないのか!?」

 

「さっきと同じ!」

 

アイが見せつける様に左手に持ったトゲ付き鉄球を見せる。先程使用したGNハンマーだ。更に今は右手にGNピストルを構えている。

 

「それは!そうか!さっきのビルもそれで自分の所だけ砕いたのか!!」

 

「ご名答!」

 

そう、GNハンマーといえどビル全部を破壊するのはさすがに不可能だ。アイはビルの自分に倒れ込む場所だけを狙いGNハンマーで破壊、やり過ごしたというわけだ。

 

「だからって負けたわけじゃない!」

 

コウヤのジェノアスキャノンはAGE2Eを迎撃すべく、両手の銃を連射させる。

 

【挿絵表示】

 

「させない!!」

 

が、アイはかわしながら右手のGNピストルをジェノアスキャノンのライフルめがけて連射。

ジェノアスキャノンの両手のライフルはビームを受けて爆散。右肩を損傷しているにも関わらずAGE2Eの反応は早い。

 

「な!なんだって!」

 

続けてアイはGNピストルをしまい、AGE2Eの尻にマウントされたビームサーベルを右手に持ち替える。

一気にブーストをかけてジェノアスキャノンへダッシュをかけた。

 

「追加武装といい動きといい!素人の動きじゃあない!」

 

「そりゃそうだよ!だって私が本気で作ったガンプラだからね!」

 

アイが自信に満ちた声を上げる。

ガレキの地面を走るAGE2Eを落とそうとジェノアスキャノンは肩部のビームキャノンを撃つ。

だがAGE2Eは軽く横へ回避、そのまま距離をつめビームサーベルを振り上げるAGE2E。ジェノアスキャノンもビームサーベルでそれを受け止めた。スパークが起こった。

 

【挿絵表示】

 

「本気なら俺だって!女のお前に!女のお前に……」

 

コウヤの声が次第にどもる。自分が言ってた『女だから』、それが間違いだと言う事を今見せつけられているからだ。

 

「確かに私は女だよ!でもね!その前に!」

 

ビームサーベルで競り勝ったAGE2Eがジェノアスキャノンのビームサーベルをはねのける。

その際にジェノアスキャノンは大きくよろけた。

 

「今ここにいる分には!私はガンプラビルダー!ヤタテ・アイ!」

 

その隙をつき、アイはジェノアスキャノンを腹部から横一文字に切り裂く。

 

「お!俺のオリジナル!ジェノアスキャノンがぁぁっ!」

 

「あー……後言っとくけどジェノアスキャノンってAGE公式であるよ」

 

「え?……マジで?」

 

「マジだよ。小説版だけど」

 

「なん……だって!?ウソォォっっ!!!!」

 

間違いを指摘された叫びに答える様に改造ジェノアスは爆発した。これによりバトルはアイの勝利で幕を閉じた。

 

 

 

「次からは『ガンナージェノアス』にしよ……」

 

Gポッドから出てくるコウヤ

 

「あ……」

 

直後彼は固まる。目の前にアイが立っていた。

 

「いい戦いが出来たと思うよ。やっぱバトルはこれ位やらないと」

 

「あ、うん……悪かったよ。女がなんて無神経な事をいって……」

 

気まずそうに謝るコウヤ、負けた事と今さらになってアイに言った事に罪悪感が出て来たらしい。

 

「今となっては気にしてないから大丈夫。必死にバトルしてたら全部吹き飛んじゃった。それよりさ……」

 

ニッと笑うアイが右手を差し出す。握手しようというのだ。

 

「こういう時はこうするのが礼儀でしょ?気分よくバトル出来たし、せっかく同じ学校のビルダーなんだしさ」

 

「え?!あ!」

 

女の子と握手をする。慣れない事にコウヤは赤面しながら慌てて自分の手を拭うが、お互いパイロットスーツで手が覆われてる事にコウヤは気付いた。

 

「うん……」

 

渋々とコウヤは手を出す。

 

「またバトルしようよ」

 

「……あぁ!」

 

握手をする二人、カシャッとタカコはその握手のシーンを写真に収めた。

 

「凄い凄い!もぉバッチグ~だよぉ!」

 

タカコが叫ぶ。観戦モニターでアイの闘いを見ていた他の二人もガンプラバトルをスポーツの試合の様に見ていた。

そしてアイの勝利を嬉しく思っていた。

 

「やっぱり変じゃないよ……アイちゃん。好きな事に打ち込む姿、格好良かった……」

 

「あれがアイの真の姿なのかもね……熱中出来る位好きな事、か。羨ましいな」

 

 

しかし、その握手とバトルを見ていたギャラリーの中に目を光らせる大男がいることにまだアイは気付いてなかった

 

――あの子が新しく引っ越してきたガンプラビルダーか…これは面白いバトルが出来そうだ――




登場オリジナルガンプラ『ジェノアスキャノン』
使用ビルダー『ヤマモト・コウヤ』

【挿絵表示】


【挿絵表示】


読んで頂きありがとうございます。これにて第二話終了です。

ボールでも腕と完成度次第でターンエーも圧倒出来るのがガンプラバトルというものです。

ちなみに偉い人の発言は実際にあった発言だったり……
指摘やご意見、感想ありましたらよろしくお願いします。
また、今回もオリジナル機体を貼って行きますのでよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。